誘導機29【電験3種 機械】トルク発生のメカニズムとは?平成28年 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成28年度 A問題6 なぜ回転子は回るのか?トルクが生まれる仕組み

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「トルク発生のメカニズム」は直流機・誘導機・同期機の動作原理を一気に確認できる良問テーマです。本記事では、平成28年度 A問題6「無負荷から負荷が掛かったとき、各電動機で何が起きるか」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

3機種のトルクの源はそれぞれ「電圧差(V−E)」「速度差(滑り)」「位相差(負荷角)」。この対比を掴めば、空欄は自動的に埋まります。

目次

平成28年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢

3機種のトルクの源を対比するところが核心です。

電験3種 機械科目 平成28年度 A問題6 問題文(トルク発生のメカニズムとは)
平成28年度 機械科目 A問題6 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成28年度 A問題6(要約)

無負荷の直流分巻電動機では、回転速度に比例する(ア)と(イ)とがほぼ等しく電機子電流がほぼ零。無負荷の誘導電動機では、周波数及び極数で決まる(ウ)と回転速度とがほぼ等しく(エ)がほぼ零。負荷が掛かると(エ)が増大してトルクが発生する。無負荷の同期電動機では界磁磁束と電機子磁束の位相差がほぼ零で、負荷が掛かると位相差すなわち(オ)が増大してトルクが発生する。

(1) 逆起電力・電源電圧・同期速度・滑り・負荷角 (2) 誘導起電力・逆起電力・回転磁界・二次抵抗・負荷角 (3) 逆起電力・電源電圧・定格速度・二次抵抗・力率角 (4) 誘導起電力・逆起電力・同期速度・滑り・負荷角 (5) 逆起電力・電源電圧・回転磁界・滑り・力率角

出題のポイント:3機種のトルクの源を対比する

この問題は「負荷が掛かったとき、何が増えてトルクを生むか」を3機種で並べています答えは三者三様で、そこに各機械の性格が現れています

機種トルクの源無負荷でほぼ零になる量負荷が掛かると
直流分巻電圧差(V−E)電機子電流減速 → 逆起電力が下がる → 電流が増える
誘導機速度差(滑り)滑り減速 → 滑りが増える → 二次電流が増える
同期機位相差(負荷角)負荷角速度は変わらず → 負荷角が開く

「電圧差・速度差・位相差」——この3語で本問は終わりますどれも「無負荷ではほぼ零で、負荷が掛かると増える量」という共通の構造を持っています。

直流分巻電動機は電圧差V-E、誘導電動機は速度差と滑りs、同期電動機は位相差と負荷角δがトルクの源であることを示す比較図
分巻は電圧差、誘導機は速度差、同期機は位相差で負荷に応答します。

空欄を確定する

(ア)(イ):直流分巻は電圧差

「回転速度に比例する(ア)」——回転速度に比例するのは逆起電力 E=kφN です。(ア)=逆起電力それとほぼ等しくなるのは(イ)=電源電圧で、差がほぼ零だから電機子電流もほぼ零になります。

「誘導起電力」ではありません。直流機で使う正式な用語は「逆起電力」——電源電圧に逆らう向きに発生するからです。用語の帰属で(4)が消せます

(ウ)(エ):誘導機は速度差

「周波数及び極数で決まる(ウ)」=同期速度 Ns=120f/p(ウ)=同期速度回転速度がそれとほぼ等しいということは、滑りがほぼ零——(エ)=滑りです。

「二次抵抗」を入れると意味が通りません。負荷が掛かって抵抗が増えるということはあり得ないからです。これで(2)(3)が消えます

(オ):同期機は位相差

問題文が「位相差すなわち(オ)」と書いているので、位相差の別名を答えればよいことになります。界磁磁束と電機子磁束の位相差=負荷角(オ)=負荷角です。

「力率角」は電圧と電流の位相差であって、磁束どうしの位相差ではありません回路一般の用語であって同期機固有の量ではない——これで(5)も消えます

答え(ア)逆起電力/(イ)電源電圧/(ウ)同期速度/(エ)滑り/(オ)負荷角 ⇒ (1)
負荷増加時に直流分巻は逆起電力低下から電機子電流増、誘導機は滑り増から二次電流増、同期機は速度一定のまま負荷角増となる流れ図
同期機だけは同期速度を保ち、速度低下ではなく負荷角の増加でトルクを増やします。
ア逆起電力、イ電源電圧、ウ同期速度、エ滑り、オ負荷角の5空欄と正解1を示す解答図
5空欄は逆起電力、電源電圧、同期速度、滑り、負荷角の順となり、正解は(1)です。

速度フィードバックと位相フィードバック

直流分巻と誘導機は「減速することでトルクを増やす」——速度そのものが調整の役目を果たしていますところが同期機だけは速度を変えませんこの違いは、機械の性格を根本から分けています

直流分巻・誘導機同期機
負荷に応じるもの回転速度が下がる負荷角が開く
速度負荷で数 % 変わるまったく変わらない
限界を超えると停動(止まる)脱調(同期を失う)
限界の目安最大トルク(s=sm負荷角90°
復帰負荷を軽くすれば回り出すいったん止めて始動し直す

直流分巻や誘導機は、いわば「ばね」ではなく「粘り」で負荷に応じています。遅れることそのものがトルクを生むので、負荷が重くなれば自然に遅くなって釣り合う——制御装置がなくても勝手に安定するのです。

同期機は「ばね」で引っ張っているようなものです。負荷が重くなるほど角度が開いてトルクが増えますが、速度は絶対に落ちません——そのかわり、開ききると(90°を超えると)ばねが切れるように同期を失います

脱調は停動より厄介です。誘導機なら負荷を軽くすれば自然に回り出しますが、同期機は一度脱調すると自力では戻れません——止めて始動し直す必要があるので、脱調を起こさない余裕を持った設計が求められます

用語の帰属で選択肢を斬る

本問は、用語がどの機種のものかを知っているだけで大きく絞れますこの対応表は他の論説問題でも繰り返し使えます

用語どの機種の言葉か意味
逆起電力直流機電源電圧に逆らう向きの起電力
誘導起電力誘導機・変圧器電磁誘導で生じる起電力
同期速度誘導機・同期機回転磁界の速さ 120f/p
滑り誘導機同期速度と回転速度のずれの割合
負荷角同期機界磁磁束と電機子磁束の位相差
力率角回路一般電圧と電流の位相差

組合せ問題では、選択肢に「機種違いの用語」が必ず混ぜられます。本問なら(4)の「誘導起電力」、(5)の「力率角」がそれです——意味を考える前に、帰属だけで消せます

逆に言えば、用語の帰属さえ覚えておけば、内容を深く理解していなくても正答にたどり着けるということでもあります。時間が足りないときの現実的な武器として、この対応表を頭に入れておいてください。

⏱️ 本番での進め方
3語で覚える:分巻は電圧差、誘導機は速度差、同期機は位相差。
無負荷でほぼ零になる量:電機子電流・滑り・負荷角。
用語の帰属で斬る:逆起電力=直流機、負荷角=同期機、力率角=回路一般。
(エ)に「二次抵抗」は不自然——負荷が掛かって抵抗が増えることはない。

「ほぼ零」であって「零」ではない

問題文は「電機子電流がほぼ零」「滑りがほぼ零」「位相差がほぼ零」と、3か所とも「ほぼ」を付けています。この「ほぼ」には、ちゃんと意味があります

無負荷といっても、電動機はまったく仕事をしていないわけではありません。自分自身を回すための仕事——軸受の摩擦に打ち勝ち、冷却ファンを回し、鉄心の中で渦電流やヒステリシスによる損失を賄う——これらは無負荷でも必ず発生します

損失無負荷でも出るか何を賄うために電流が要るか
機械損(軸受摩擦・風損)出る回転を維持するトルク
鉄損出る磁束を作り続ける電力
銅損わずかに出る上の2つを賄う電流が流れるため

だから無負荷でも、機械損と鉄損を賄うだけのトルクが必要です。直流分巻なら、その分だけ電機子電流が流れます誘導機なら、その分だけ滑りが残ります——実際、無負荷でも滑りは0.1〜0.5 % 程度あります

同期機の負荷角も同様です。無負荷でも機械損を賄う分だけ、わずかに角度が開いています——完全にゼロになるのは、外から回してもらっているときだけです。

「ほぼ零」という表現は、この事情を正確に反映しています。問題文の言葉づかいが厳密であることに気づくと、出題者の意図も読めるようになります——「ほぼ」が付いていたら、完全なゼロではない理由が必ずあるのです。

同期機の負荷角は、電動機と発電機で向きが逆

(オ)の負荷角は、同期機を理解するうえで中心的な概念です。電動機として使うか発電機として使うかで、向きが逆になる点を押さえておきましょう。

同期電動機同期発電機
回転子と回転磁界の関係回転子が遅れる回転子が進む
トルクの向き回転を助ける回転を妨げる
エネルギーの流れ電気 → 機械機械 → 電気
負荷角の符号負(遅れ)とする流儀が多い正(進み)
限界90°で脱調90°で脱調(安定限界)

誘導機の滑りが、電動機なら正・発電機なら負になったのと同じ構図です。「ずれの向き」が運転モードを決めている——同期機では速度のずれではなく角度のずれだ、というだけの違いです。

そして、どちらも90°が限界です。P∝sinδ ですから、δ=90°で出力が最大になり、それを超えると sinδ が減り始めてトルクが足りなくなる——負荷を支えきれずに同期を失います

実際の運転では、δ=30〜40°程度で使うのが普通です。90°まで余裕を残しておかないと、負荷の急変や系統事故に耐えられないからです——誘導機で最大トルクの手前で運転するのと、まったく同じ発想です。

💡 覚え方
「分巻は電圧差、誘導機は速度差、同期機は位相差」——V−E・滑り・負荷角どれも無負荷でほぼ零、負荷で増えてトルクになる分巻と誘導機は減速して応じる(自己安定)/同期機は速度を変えず角度で応じる限界は停動と脱調で、脱調は自力で復帰できない

⚠️ よくある間違い
(ア)に「誘導起電力」を選ぶのが典型です。直流機の正式な用語は「逆起電力」——誘導起電力は誘導機・変圧器の言葉です。もう一つは(オ)に「力率角」——力率角は電圧と電流の位相差であって、磁束どうしの位相差である負荷角とは別物です。

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