電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「磁束と電流の関係」は直流機の界磁方式とV/f一定制御を横断的に問う応用テーマです。本記事では、平成25年度 A問題7「磁束が電流に比例して変化する駆動システムはどれか」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
判定基準はただ一つ——「その電動機の磁束は何で作られるか」。他励は独立した界磁電源、直巻は電機子と直列の界磁、V/f一定制御はV/f比。答えは電機子電流と磁束が直結する直巻(b)だけです。
平成25年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
「その機械の磁束は何が作っているか」を機種ごとに確かめます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成25年度 A問題7(要約)
a. 他励直流電動機(電機子・界磁が別電源)、b. 直流直巻電動機(電機子・界磁が共用電源)、c. 定格V/f比のV/f一定制御誘導電動機、d. 定格の0.9倍のV/f比のV/f一定制御誘導電動機。負荷トルクが増加し、a・bは電機子電流を増加して速度一定、c・dは電圧・周波数を維持し滑りと一次電流が増加する運転をするとき、電機子電流(a・b)または一次電流(c・d)に対して電動機内の磁束がほぼ比例して変化するのはどの駆動システムか。
(1) a (2) b (3) cとd (4) d (5) bとd
出題のポイント:磁束の出どころを機種ごとに言えるか
問われているのは「電流が増えたとき、磁束も比例して増えるか」です。答えるには、その機械の磁束が何によって作られているかを知っていなければなりません。
| 駆動システム | 磁束を作っているもの | 電流が増えると磁束は | 判定 |
| a 他励直流電動機 | 独立した界磁電源 | 変わらない | ✗ |
| b 直流直巻電動機 | 電機子と直列の界磁巻線 | 比例して増える | ○ 正解 |
| c V/f 一定(定格比) | V/f 比 | 変わらない | ✗ |
| d V/f 一定(0.9倍) | V/f 比 | 変わらない(レベルが9割なだけ) | ✗ |
「電流が増えたから磁束も増えるだろう」という直感は通用しません。磁束を作る回路と、負荷電流が流れる回路が別なら、いくら負荷電流が増えても磁束は変わらないからです。



直巻だけが特別なのはなぜか
直巻電動機は、界磁巻線が電機子巻線と直列につながっています。つまり、界磁電流と電機子電流が同じもの——負荷電流が増えれば、磁束を作る電流も同じだけ増えるのです。
この「2乗」が直巻電動機の性格を決めています。電流が2倍になればトルクは4倍——他励や分巻なら2倍にしかならないところです。始動時のように大電流が流れる場面で、圧倒的なトルクを出せるということになります。
だから直巻電動機は電車やクレーンに使われてきました。発進時に大きなトルクが要り、高速では小さなトルクで足りる——直巻の特性は、この要求にそのまま合致します。
ただし裏返しの危険もあります。負荷が軽くなって電流が減ると、磁束も減ってしまうのです。回転速度は N∝(V−IaR)/φ で磁束が分母にありますから、磁束が減れば速度は上がる——無負荷では理論上、速度が無限大に発散します。直巻電動機を無負荷で回してはいけないと言われるのは、この性質によります。
本問は「磁束が電流に比例する」という一点だけを聞いていますが、その一点から直巻の長所も短所も導ける——そういう構造の問題だと言えます。
誘導機の一次電流は2つの成分でできている
c と d が不正解になる理由を、もう少し丁寧に見ておきましょう。「負荷が増えて一次電流が増えた」のに磁束が変わらない——これは一次電流の中身を知らないと納得しにくいところです。
| 励磁電流 I0 | 負荷電流 I2′ | |
| 何で決まるか | V/f 比(磁束の大きさ) | 負荷トルク |
| 負荷が増えると | 変わらない | 増える |
| 位相 | ほぼ90°遅れ | ほぼ同相(力率が良い) |
| 大きさの目安 | 定格の30〜50 % | 負荷に応じて0〜定格 |
負荷が増えたときに増えるのは、トルクを作る成分だけです。磁束を作る成分は、電圧と周波数が変わらない限りそのまま——だから「一次電流が増えても磁束は変わらない」ということになります。
この2成分を分けて制御しようというのがベクトル制御です。本問の c・d は「V/f 一定制御」なので成分を分けていませんが、磁束が V/f で決まるという点では同じです。
選択肢 d の「0.9倍のV/f比」は、迷わせるためのダミーです。磁束のレベルが定格の9割になるだけで、運転中は一定に保たれます——「比が定格と違う」ことと「比例して変化する」ことは、まったく別の話です。選択肢(4)(5)に d が入っているのは、この混同を狙った配置でしょう。
⏱️ 本番での進め方
① 「磁束は何が作っているか」を機種ごとに言えるようにする。
② 他励=独立、直巻=直列(φ∝Ia)、V/f 一定=比で決まる。
③ 誘導機の一次電流は励磁成分+負荷成分。増えるのは負荷成分だけ。
④ d の「0.9倍」はダミー——レベルが違うだけで、一定であることは変わらない。
直流機の4つの励磁方式を、磁束の観点で並べる
本問は他励と直巻だけを扱っていますが、直流機の励磁方式は4つあります。「磁束が何で決まるか」という軸で並べると、性格の違いがはっきりします。
| 方式 | 界磁巻線の接続 | 磁束は何で決まるか | トルクと電流の関係 |
| 他励 | 独立した電源 | 界磁電源で自由に制御 | T∝Ia |
| 分巻 | 電機子と並列 | 端子電圧でほぼ決まる(ほぼ一定) | T∝Ia |
| 直巻 | 電機子と直列 | 電機子電流そのもの(φ∝Ia) | T∝Ia2 |
| 複巻 | 直列と並列の両方 | 両者の中間 | 中間 |
「電機子電流が磁束にも関与するか」——これが4方式を分ける唯一の軸です。他励と分巻では関与しない(だから磁束はほぼ一定)、直巻では完全に関与する(だから磁束は電流に比例)、複巻はその中間という並びになります。
本問が他励(a)と直巻(b)だけを選んでいるのは、この軸の両端を対比させるためでしょう。「まったく関与しない」と「完全に関与する」を並べれば、違いがいちばん際立ちます。
磁気飽和すると比例が崩れる
問題文の「ほぼ比例して変化する」——この「ほぼ」には理由があります。直巻でも、電流が大きくなると磁束は電流に比例しなくなるのです。
鉄心には磁気飽和という限界があります。ある程度まで磁化してしまうと、それ以上電流を増やしても磁束はあまり増えません——磁化曲線が寝てくるのです。
| 電流の領域 | 磁束と電流の関係 | トルクと電流の関係 | どんな場面か |
| 小さい(未飽和) | φ∝Ia | T∝Ia2 | 軽負荷〜定格付近 |
| 大きい(飽和域) | φ はほぼ一定に頭打ち | T∝Ia に近づく | 始動時・過負荷時 |
始動の瞬間のように大電流が流れる場面では、直巻でも T∝Ia2 は成り立ちません。飽和して磁束が頭打ちになるので、トルクの伸びも鈍る——「2乗で効く」のは、あくまで未飽和の範囲の話です。
試験問題で「磁気飽和は無視する」「未飽和領域では」といった但し書きが付くのは、この事情によります。逆に、そうした条件がない問題で「2乗」を無条件に使うと危ない——条件文をよく読む理由がここにもあります。
設計の観点では、飽和はむしろ味方になることもあります。始動時に磁束が頭打ちになれば、トルクも電流も際限なくは増えない——一種の自然な保護として働くからです。直巻発電機の電圧が飽和のおかげで安定するという話と、同じ構図です。
💡 覚え方
「他励=独立、直巻=φ∝Ia(T∝Ia2)、V/f 一定=φ一定」。磁束の出どころ(界磁電源・直列界磁・V/f 比)を言えれば判定は自動。直巻は電流の2乗でトルクが出るので始動に強いが、無負荷では磁束が減って暴走する。誘導機の一次電流のうち増えるのはトルク成分だけ。
⚠️ よくある間違い
「一次電流が増える=磁束も増える」と考えて c・d を選ぶのが最頻の誤りです。増えるのはトルク成分だけで、励磁成分は V/f が決めています。もう一つはd の0.9倍を「磁束が変化する」と誤読すること——レベルが9割で一定というだけです。

コメント