電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「誘導機の種類と特徴」はかご形・巻線形・単相・深溝・二重かごを一気に横断する総合問題です。本記事では、平成27年度 A問題3「誤り探し」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
誤りは(5)。二重かご形は外側(表面側)の導体が高抵抗(始動用)、内側が低抵抗(運転用)——(5)は内外を逆に書いています。始動時の電流が表皮効果で外側に集まるからこそ、外側を高抵抗にするのです。
平成27年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成27年度 A問題3(要約)
誤っているものを選ぶ。(1) かご形回転子は導体棒+導体環で短絡、二次誘導起電力は導体本数に応じた多相交流。(2) 巻線形はスリップリング経由の抵抗で比例推移を利用し速度制御。(3) 単相誘導電動機は始動巻線+コンデンサで回転磁界を作り始動。(4) 深溝かご形は始動時に電流密度が不均一になり等価インピーダンスが増加、始動トルク増。(5) 二重かご形は内側の導体を外側より高抵抗にして大きな始動トルクを得る。
出題のポイント:5機種を1行ずつで裁く
この問題は誘導機の主な型式を横断する総合問題です。1機種につき1行の要点を持っていれば、選択肢と照合するだけで終わります。
| 型式 | 1行で言うと | 本問での判定 |
| かご形 | 導体棒+端絡環で短絡。二次は導体本数に応じた多相交流 | (1) 正しい |
| 巻線形 | スリップリングで外部抵抗を接続し比例推移 | (2) 正しい |
| 単相 | 交番磁界だけでは始動できないので始動巻線+コンデンサ | (3) 正しい |
| 深溝かご形 | 始動時に表皮効果で電流が偏り、実効抵抗が増える | (4) 正しい |
| 二重かご形 | 外側が高抵抗(始動用)、内側が低抵抗(運転用) | (5) 誤り ✗ 内外が逆 |

(5):外と内を入れ替えただけの記述
二重かご形の役割分担は「外=始動・高抵抗/内=運転・低抵抗」です。(5)は「内側の導体を外側より高抵抗にして」と、まるごと逆に書いています。
なぜ外側が高抵抗でなければならないのか——始動時に電流が流れるのが外側だからです。始動トルクを大きくしたければ、電流が流れる側の抵抗を大きくする必要があります。
| 始動時(s=1) | 定格運転時(s≒0.03) | |
| 二次周波数 sf1 | 50 Hz(電源と同じ) | 1.5 Hz(ほぼ直流) |
| 内側導体のリアクタンス | 大きい(電流が入りにくい) | ほぼゼロ(自由に流れる) |
| 電流が流れる場所 | 外側(高抵抗) | 内側(低抵抗) |
| 結果 | 二次抵抗が大きい=始動トルク大 | 二次抵抗が小さい=効率よく回る |


深溝形と二重かご形は何が違うのか
どちらも「始動時だけ二次抵抗を大きくする」仕掛けですが、やり方が違います。
| 深溝かご形 | 二重かご形 | |
| 構造 | 1本の導体を細長く深く埋める | 2組の導体を上下に配置する |
| 効く仕組み | 1本の導体の中で電流が上部に偏る(表皮効果) | 2本のうちどちらに電流が流れるかが変わる |
| 抵抗の変化 | 連続的に変わる | 2つの値の間で切り替わる |
| 始動トルク | 大きい | より大きい |
| 製作 | 単純(溝の形だけ) | やや複雑 |
二重かご形が効く本当の理由は、表皮効果というより「2本の導体の漏れリアクタンスの差」です。内側の導体は鉄心の奥にあるので、まわりを鉄に取り囲まれて漏れ磁束が多く、リアクタンスが大きくなります。
滑りが小さくなるにつれて、電流の通り道が外側から内側へ移っていく——二重かご形は「回転数に応じて自動的に二次抵抗を切り替える機械」だと言えます。巻線形なら人が抵抗器を操作して実現することを、導体の配置だけでやってしまうのです。
(1)の「多相交流」は正しい記述
「二次誘導起電力は導体本数に応じた多相交流」——細かい表現なので誤りと疑われがちですが、これは正しい記述です。
かご形の導体棒は1本1本が独立した回路の一部で、隣の導体とは回転子の円周上の角度だけ位相がずれた起電力を持ちます。導体が36本あれば36相、48本あれば48相——相数=導体本数ということです。
巻線形の回転子は「三相巻線」と決まっているのに対し、かご形は導体を並べただけなので相数が自由——これも構造が単純であることの現れです。等価回路を描くときは三相に換算して扱います。
⏱️ 本番での進め方
① 「外=始動・高抵抗/内=運転・低抵抗」を1行で覚える。内外を逆に書くのが定番の罠。
② 理由は「始動電流が外側に集まるから」。電流が流れる側の抵抗を大きくしたい。
③ 深溝=1本の中で偏る/二重かご=2本のどちらに流れるかが変わる。
④ (1)の「多相交流」は正しい——かご形の相数は導体本数。誤りと即断しない。
始動トルクと効率は両立しない——だから工夫が要る
本問に並んだ5つの型式は、じつは1つの悩みへの別々の答えです。その悩みとは「二次抵抗をいくつにすればよいか」——始動と運転で、望ましい値が正反対になるのです。
| 二次抵抗 | 始動トルク | 定格運転時の滑り | 二次銅損(=sP2) | 総合評価 |
| 小さい | 小さい(始動が苦しい) | 小さい(1〜3 %) | 少ない | 運転には最適 |
| 大きい | 大きい(よく始動する) | 大きい(10 % 以上) | 多い | 始動には最適 |
「始動時だけ大きく、運転時は小さく」できれば理想です。本問の型式は、この理想への3通りのアプローチになっています。
| アプローチ | 型式 | どうやって切り替えるか | 評価 |
| 人が切り替える | 巻線形 | 外部抵抗器を段階的に短絡していく | 自由自在だがブラシの保守が要る |
| 周波数に任せる(1本の中で) | 深溝かご形 | 表皮効果で電流が上部に偏る | 構造が単純で保守不要 |
| 周波数に任せる(2本で) | 二重かご形 | リアクタンス差でどちらに流れるかが変わる | より大きな始動トルク |
共通しているのは「二次周波数が滑りに比例する(f2=sf1)」という性質を利用していることです。始動時だけ周波数が高くなるので、リアクタンスや表皮効果が始動時だけ強く効く——誘導機は「いま始動中か運転中か」を、二次周波数という形で自分で知っているのです。
この視点で見ると、(2)の巻線形と(4)(5)の特殊かご形が同じ問題への別解だと分かります。5つの選択肢が並列に並んでいるように見えて、実は構造の系譜になっている——そう読めると、この分野の知識が一本につながります。
💡 覚え方
「始動の電流は外に集まる——だから外を高抵抗に」。二次周波数が sf1 なので、始動時(50 Hz)はリアクタンスが効いて内側が使えず、運転時(1.5 Hz)は抵抗だけで決まって内側に流れる。深溝形は1本の中で、二重かご形は2本の間で電流の場所が変わる。
⚠️ よくある間違い
(5)を流し読みして見逃すのがこの問題の怖いところです。「内側」と「外側」の2文字が入れ替わっているだけで、他はすべて正しい文になっています。二重かご形が出てきたら、まず内外の対応を確認する癖をつけてください。もう一つは(1)の「多相交流」を誤りと判定することです。

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