電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「巻線形誘導電動機の構造」は材料知識まで問う細部型の構造問題です。本記事では、平成19年度 A問題3を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
難所は絶縁電線の(ウ)(エ)ですが、確実な(ア)回転磁界と(オ)始動特性だけで2択まで絞れます。残りは「耐熱グレード」の序列——ポリエステル線(丸線)とガラス巻線(平角銅線)で決まりです。
平成19年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成19年度 A問題3(要約)
三相巻線形誘導電動機は(ア)を作る固定子と巻線形回転子で構成。固定子は(イ)を打ち抜いて積層鉄心を構成。回転子の絶縁電線には、小出力用ではホルマール線や(ウ)などの丸線が、大出力用では(エ)の平角銅線が用いられる。三相巻線はスリップリング+ブラシで外部端子に接続され、可変抵抗器を接続することにより(オ)を改善したり速度制御したりすることができる。
(1) 回転磁界・高張力鋼板・ビニル線・ガラス巻線・効率 (2) 回転磁界・けい素鋼板・ポリエステル線・ガラス巻線・始動特性 (3) 電磁力・けい素鋼板・ビニル線・エナメル線・効率 (4) 電磁力・高張力鋼板・ポリエステル線・エナメル線・効率 (5) 回転磁界・けい素鋼板・ポリエステル線・エナメル線・始動特性
本問は令和4年度上期 A問題3(誘導機45)でほぼそのまま再出題されました(「けい素鋼板」が「電磁鋼板」表記に変わった程度)。材料の序列ごと覚えておけば二度おいしい問題です。
出題のポイント:確実な2か所で3肢を消してから材料へ
(ウ)(エ)の絶縁電線は、正直なところ細かい知識です。しかし本問は、確実に分かる(ア)と(オ)だけで2択まで絞れる構成になっています。知らない部分に先に手を出さないのが実戦的な解き方です。
| 段階 | 根拠 | 残る選択肢 |
| (ア)=回転磁界 | 固定子が「作る」のは磁界。電磁力は結果として生じる力 | (3)(4)が消えて(1)(2)(5) |
| (オ)=始動特性 | 外部抵抗は発熱源なので効率は改善しない | (1)が消えて(2)(5) |
| (エ)=ガラス巻線 | 「大出力・平角銅線」なら最上級の耐熱が要る | (2)に確定 |
最後の一点は「エナメル線かガラス巻線か」だけです。仮に分からなくても2択——確実な知識から順に使えば、細部を知らなくても十分に戦えます。
本問は令和4年度上期 A問題3(誘導機45)でほぼそのまま再出題されました(「けい素鋼板」が「電磁鋼板」表記に変わった程度)。材料の序列ごと覚えておけば二度おいしい問題です。

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(ア):作るのは「磁界」であって「力」ではない
問題文は「(ア)を作る固定子」と書いています。固定子巻線に電流を流して直接作られるのは磁界——電磁力は、その磁界が回転子電流に及ぼす結果です。(ア)=回転磁界。原因と結果を取り違えさせる仕掛けだと読めます。
(イ):けい素鋼板=電磁鋼板
鉄心は薄いけい素鋼板を打ち抜いて積層します。(イ)=けい素鋼板。「高張力鋼板」は自動車の車体などに使う構造材で、磁気回路には使いません。
☝️ ひっかけの作り方:「けい素鋼板」と「電磁鋼板」は同じものです。本問(平成19年度)では「けい素鋼板」、令和4年度上期の再出題では「電磁鋼板」と表記が変わっています。年度によって呼び方が違うので、両方を同一視できるようにしておいてください。
(ウ)(エ):丸線はエナメル系、平角銅線はガラス巻線
小出力用の丸線にはホルマール線・ポリエステル線などの耐熱エナメル系。(ウ)=ポリエステル線。「ビニル線」は屋内配線用で耐熱性が足りず、回転機の巻線には使えません。
大出力用の平角銅線にはガラス繊維を巻き付けた絶縁(ガラス巻線)。(エ)=ガラス巻線。
なぜ(エ)に「エナメル線」が入らないのか——エナメル線は丸線の総称だからです。問題文が「(エ)の平角銅線」と書いているのですから、平角の絶縁方法を答えなければなりません。丸線の呼び名を入れても文が成立しないのです。
(オ):外部抵抗の目的は始動特性
可変抵抗器を二次側に入れると、比例推移で始動トルクが増え始動電流が減ります。(オ)=始動特性。抵抗は熱を出す部品ですから、効率はむしろ悪化します。


なぜ巻線形の回転子巻線には高い絶縁が要るのか
材料の話が問われる背景を知っておくと、記憶が定着します。巻線形の回転子巻線には、かご形にはない厳しさがあるのです。
| かご形の回転子 | 巻線形の回転子 | |
| 導体 | 裸の導体棒(絶縁不要のことも多い) | 絶縁電線を巻いた三相巻線 |
| 停止時の電圧 | 1本あたりごくわずか | スリップリング間に数百 V が現れる |
| 始動時の電流 | 大きい | 大きい(外部抵抗で抑えるが) |
| 遠心力 | 端絡環で固められている | 巻線が飛び出さないよう固定が要る |
停止しているとき、二次誘導起電力は最大(s=1)です。巻線形ではそれがスリップリングにそのまま現れるので、数百 V に達することもあります。始動抵抗器の耐電圧も、この値で決まります。
つまり巻線形の回転子巻線は「高電圧・大電流・高温・遠心力」の4つに同時に耐えなければなりません。だからこそ絶縁材料の選定が問われる——材料問題が誘導機の分野に登場する理由がここにあります。
★同一問題:令和4年度上期 A問題3として再出題されている
この問題は令和4年度上期 A問題3としてほぼそのまま再出題されています。ところが正解の番号が違います。
| 平成19年度 A問題3(本問) | 令和4年度上期 A問題3 | |
| (ア) | 回転磁界 | 回転磁界(同じ) |
| (イ) | けい素鋼板 | 電磁鋼板(表記が変わっただけ) |
| (ウ)(エ) | ポリエステル線・ガラス巻線 | ポリエステル線・ガラス巻線(同じ) |
| (オ) | 始動特性 | 始動特性(同じ) |
| 正解の番号 | (2) | (5) |
15年ぶりの再出題で、選択肢が並べ替えられて正解が (2) から (5) へ移動しています。用語も「けい素鋼板」から「電磁鋼板」へ現代的な表記に改められました——中身は同じものです。
材料問題は計算がないぶん、知っているか知らないかで決まります。逆に言えば、一度覚えれば確実な得点源——15年の間隔を置いて再登場した実績があるのですから、押さえておく価値は十分にあります。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)と(オ)だけで2択に絞れる。細かい材料名は最後に使う。
② けい素鋼板=電磁鋼板。年度で表記が違うだけ。
③ 耐熱の序列:ビニル < ホルマール・ポリエステル < ガラス巻線。
④ 「(エ)の平角銅線」なので平角の絶縁を答える——エナメル線は丸線の総称。
💡 覚え方
「作るのは回転磁界、鉄心はけい素鋼板、小は丸線・大は平角+ガラス、外部抵抗は始動のため」。停止時の二次電圧は最大(s=1)でスリップリング間に数百 V——だから巻線形の絶縁は厳しい。正解の番号は年度で違う(本問(2)、令和4年度上期(5))。
⚠️ よくある間違い
(エ)にエナメル線を選ぶのが本問最大の罠です(選択肢(5))。エナメル線は丸線の総称で、平角銅線の絶縁としては話が合いません。もう一つは(ア)に「電磁力」——固定子が作るのは磁界で、力はその結果です。

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