今回は平成19年度 機械科目 B問題15を解説します。同期電動機の同期速度(角速度)とトルクを求める2問構成です。
角速度 \(\omega=\dfrac{4\pi f}{p}\)、出力 \(P=\dfrac{V_0V}{x_s}\sin\delta\)、トルク \(T=P/\omega\) を順に使います。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15
6極,定格周波数60 Hz,電機子巻線がY結線の円筒形三相同期電動機がある。この電動機の一相当たりの同期リアクタンスは3.52 Ωであり,また,電機子抵抗は無視できるものとする。端子電圧(線間)440 V,定格周波数の電源に接続し,励磁電流を一定に保ってこの電動機を運転したとき,次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) この電動機の同期速度を角速度[rad/s]で表した値として,最も近いのは次のうちどれか。
(1) 12.6 (2) 48 (3) 63 (4) 126 (5) 253
(b) 無負荷誘導起電力(線間)が400 V,負荷角が60°のとき,この電動機のトルク[N・m]の値として,最も近いのは次のうちどれか。
(1) 115 (2) 199 (3) 345 (4) 597 (5) 1 034
出題のポイント:(a)で作った角速度を(b)で使う
B問題は(a)の答えを(b)で使う構成が基本です。本問も、(a)で求めた同期角速度が(b)のトルク計算の分母になります——(a)を落とすと(b)も連鎖して落とすので、(a)を確実に取りましょう。

(a) 同期角速度を求める
6極・60 Hz
1 200÷60=20 回転/秒
選択肢の126に一致
⚠️ よくある間違い
電気角速度 ω=2πf=377 rad/s と混同しないことです。トルクの計算に使うのは機械的な角速度(回転子が実際に回る速さ)——極数で割った同期速度から作ります。2極機なら両者は一致しますが、本問は6極なので3倍の差が出ます。
(b) 出力からトルクを求める
相電圧で書くと \( 3\times\dfrac{(V_{\ell}/\sqrt{3})(E_{\ell}/\sqrt{3})}{x_s}\sin\delta \)——\( 3/(\sqrt{3}\times\sqrt{3})=1 \) なので、線間どうしを掛けた形と一致します。√3 を2回割って3を掛ける手間が、まるごと省けるのです。
線間電圧どうしを掛ける
440×400=176 000
176 000÷3.52=50 000
約43.3 kW
出力÷角速度
選択肢の345に一致

選択肢の作られ方を読む
| 選択肢 | 正解との関係 | どんな誤りか |
| (1) 115 | 345÷3 | 1相分のまま答えた(3倍を忘れた) |
| (2) 199 | 345÷√3 | √3 を1回余分に割った |
| (3) 345 ← 正解 | — | — |
| (4) 597 | 345×√3 | √3 を1回余分に掛けた |
| (5) 1 034 | 345×3 | 3倍を2回掛けた |
5つの選択肢が、正解を中心に 1/3・1/√3・1・√3・3 の比で並んでいます。三相の係数をどう扱ったかだけで、5通りの答えが作れる——だからこそ「線間どうしを掛ければ3も √3 も出てこない」形が有利なのです。
☝️ ひっかけの作り方:負荷角60°の sin を cos と取り違えるのも起きやすい誤りです。sin60°=0.866、cos60°=0.5——cos で計算すると25 000 W → 199 N・m となり、(2)に落ちます。「トルクは sin δ に比例」を最初に確認してください。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 1 200 min-1=毎秒20回転 → ω=20×2π≒126 rad/s。
②(b) P=V線間E線間/xs×sin δ。3も √3 も出てこない。
③ 440×400/3.52=50 000。割り切れたら道筋が正しい。
④ T=P/ω。43 300/125.7≒345。
💡 覚え方
「線間どうしを掛ければ、三相の係数はもう入っている」——相電圧で書くときだけ3を掛ける。そして「トルクは出力÷機械角速度」——電気角速度ではないことに注意すれば、この型は完答できます。

負荷角60°はどれくらい余裕があるのか
本問の運転点は負荷角60°です。トルクは \( \sin\delta \) に比例し、最大は90°ですから、いまどれくらいの余裕があるのかを確かめておきましょう。
| 負荷角 δ | sin δ | 最大トルクに対する割合 | 本問の値なら |
| 30° | 0.500 | 50 % | 199 N・m |
| 60°(本問) | 0.866 | 87 % | 345 N・m |
| 90° | 1.000 | 100 %(脱出トルク) | 398 N・m |
脱出トルクは 176 000/3.52=50 000 W を角速度で割った398 N・mです。本問の345 N・m は、その87 %に達しています——かなり重い負荷だと分かります。
ここからさらに負荷を15 %増やせば脱出トルクを超え、同期外れを起こします。実機ではこれほど δ を大きくして運転することはなく、30〜40°程度に抑えるのが普通です。外乱で δ が跳ね上がっても90°に届かない余裕を残しておくためです。
本問が60°という大きめの角度を設定しているのは、sin60°=0.866 という計算しやすい値だからでしょう。ただし出てきた数字の意味を考えると、この電動機は限界近くで運転されている——計算結果を物理的に解釈する習慣が、論説問題の理解にもつながります。
まとめ
| 同期角速度 | \(\omega=4\pi\times60/6\fallingdotseq125.7\,\mathrm{rad/s}\)…(a)(4) |
| 出力 | \(P=\dfrac{400\times440}{3.52}\sin60^\circ\fallingdotseq43\,300\,\mathrm W\) |
| トルク | \(T=43\,300/125.7\fallingdotseq345\,\mathrm{N\cdot m}\)…(b)(3) |
| 答え | (a) (4)、(b) (3) |
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