電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「VVVFインバータとV/f一定制御」は原理の理解をそのまま数値計算で試してくる実戦型テーマです。本記事では、平成18年度 A問題8を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
計算は2ステップだけ:電圧は周波数比の1乗(100×50/60≈83%)、トルクは電圧の2乗((5/6)²≈69%)。V/f一定制御の意味が分かっていれば1分で解けます。
平成18年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題8
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成18年度 A問題8(要約)
誘導電動機をVVVFインバータで駆動する。一般的な制御方式として(ア)が用いられる。このインバータは60 Hz電動機用で、60 Hzのとき100%電圧で運転するよう調整されている。これを用いて50 Hz用電動機を50 Hzで運転すると電圧は約(イ)%となる。トルクは電圧のほぼ(ウ)に比例するので、最大発生トルクは定格電圧印加時の約(エ)%となる(両電動機の定格電圧は同一)。
(1) V/f一定制御・83・2乗・69 (2) V/f一定制御・83・3乗・57 (3) 電流一定制御・120・2乗・144 (4) 電圧位相制御・120・3乗・173 (5) 電圧位相制御・83・2乗・69
出題のポイント:比を作って、1乗と2乗を使い分ける
計算は2段階だけです。電圧は周波数比の1乗、トルクは電圧比の2乗——この使い分けさえできれば1分で解けます。

2ステップで解く
60 Hz で100 % になるよう調整された直線を50 Hz で読む。
電圧の2乗。約69 %。


この問題が言いたいこと
状況を整理しておきましょう。60 Hz 用に調整されたインバータで、50 Hz 用の電動機を50 Hz で回している——一見すると何も問題がなさそうです。
| 本来(50 Hz 用インバータ) | 本問(60 Hz 用インバータ) | |
| 50 Hz での出力電圧 | 100 % | 83 % |
| V/f 比 | 電動機に合っている | 低すぎる |
| 磁束 | 定格 | 83 %(痩せている) |
| 最大トルク | 100 % | 69 % |
インバータ側の V/f 直線が、電動機の定格に合っていないのです。60 Hz で100 % になる直線は、50 Hz では83 % しか出しません——50 Hz 用の電動機にとっては電圧不足です。
磁束が83 % に痩せるので、同じ電流でも出せるトルクが減ります。最大トルクは電圧の2乗で効くので69 %——3割以上の余裕を失っていることになります。実務では「インバータの V/f 設定を電動機に合わせる」必要があるという教訓です。
インバータを使わずに周波数を変えたらどうなるか
本問と混同しやすいのが、「50/60 Hz 地域をまたいで電動機を使う」という話です。こちらは電圧が固定されているので、まったく違うことが起きます。
| ケース | 電圧 | 周波数 | V/f | 磁束 | 結果 |
| 本問(V/f 直線に従う) | 83 % | 50 Hz | 低い | 83 % | トルク不足(69 %) |
| 60 Hz 機を50 Hz 電源へ直結 | 100 % | 50 Hz | 1.2倍 | 1.2倍 | 磁気飽和・励磁電流が激増して危険 |
| 50 Hz 機を60 Hz 電源へ直結 | 100 % | 60 Hz | 0.83倍 | 0.83倍 | トルクは落ちるが焼けはしない |
「60 Hz 機を50 Hz で使う」のは危険、「50 Hz 機を60 Hz で使う」のは比較的安全——この非対称は磁束が V/f に比例することから来ています。周波数が下がると磁束が増えるので、飽和して励磁電流が跳ね上がり、焼損につながります。
50 Hz 機を60 Hz で使う場合は、回転速度が1.2倍になる点にも注意が要ります。ポンプや送風機なら動力が1.23=1.73倍になり、電動機が過負荷になる——「回るから大丈夫」とは限りません。
5/6 と25/36 は覚えておく
50 Hz ⇔ 60 Hz の換算は電験の定番です。この2つの数字を暗記しておくと計算が速くなります。
| 比 | 値 | 使いどころ |
| 50/60=5/6 | 0.833(約83 %) | 電圧・速度・磁束(1乗の量) |
| (5/6)2=25/36 | 0.694(約69 %) | トルク(2乗の量) |
| 60/50=6/5 | 1.2 | 逆向きのとき |
| (6/5)2=36/25 | 1.44 | 同上 |
選択肢を見ると、83・69・120・144・173 が並んでいます——まさにこの表の数字です。「どの比を、何乗で使うか」を取り違えると、用意された誤答に着地するようになっています。
(2)の「3乗・57 %」は(5/6)3=0.579 の計算だけ合わせたダミーです。トルクが電圧の3乗に比例する物理はありません——3乗が出てくるのはポンプ・送風機の動力(速度の3乗)で、まったく別の話です。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)だけで3肢が消える——VVVF の標準は V/f 一定制御。
② 電圧は1乗(5/6→83 %)、トルクは2乗(25/36→69 %)。
③ 5/6=0.83、25/36=0.69 は暗記。50/60 Hz 換算の定番。
④ T∝V2 は誘導機の万能公式——Y-Δ の1/3、一次電圧制御、本問すべてに効く。
最大トルクが69 % になると、何が困るのか
問題が聞いているのは「最大トルク」であって「定格トルク」ではありません。この区別が、実務的な意味を持ちます。
| 本来(V/f が合っている) | 本問(電圧83 %) | |
| 最大トルク | 定格の200 % | 200×0.694=定格の139 % |
| 定格負荷を運べるか | 運べる(余裕100 %) | 運べる(余裕39 %) |
| 定格の150 % の突発負荷 | 耐えられる | 停動して止まる |
| 始動トルク | 定格程度 | その0.694倍 |
定格運転そのものは、まだできます。問題は余裕がなくなること——突発的な過負荷や、始動時の負荷が重いときに、止まってしまう危険が出てきます。
「電圧が17 % 下がっただけ」に見えて、過負荷耐量は100 % から39 % へ落ちている——2乗で効くというのは、こういうことです。電圧不足を軽く見てはいけない理由が、この数字に表れています。
実務では、インバータの V/f 設定(基底周波数)を電動機の定格に合わせるのが正解です。50 Hz 用の電動機なら「50 Hz で100 % 電圧」となるよう設定し直す——本問は「設定を間違えたらどうなるか」を数値で示した問題だと読めます。
💡 覚え方
「V/f 一定——電圧は比の1乗(5/6→83 %)、トルクは2乗(25/36→69 %)」。磁束は V/f に比例するので、周波数だけ下げると磁束が増えて飽和、電圧だけ下げるとトルク不足。60 Hz 機を50 Hz 電源へ直結すると磁束1.2倍で危険、逆は比較的安全。
⚠️ よくある間違い
トルクを3乗で計算して57 % とする(選択肢(2))のが本問の罠です。3乗が出るのはポンプ・送風機の動力であって、トルクと電圧の関係は2乗です。もう一つは比を逆に取って120 % や144 % とすること——60 Hz 用の直線を50 Hz で読むのだから、電圧は下がると方向で確認してください。

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