誘導機50【電験3種 機械】かご形誘導電動機の始動方式とは?平成18年 A問題2 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成18年度 A問題2 始動電流を抑えたい!かご形の始動法を選ぶ

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「かご形の始動方式」は容量別の使い分けを問う頻出テーマです。本記事では、平成18年度 A問題2「3つの始動方式」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

整理はシンプル——小容量=全電圧(直入れ)、中容量=Y−Δ始動(電流・トルク1/3)、大容量=始動補償器(三相単巻変圧器)。容量の階段に3方式を並べれば完答です。

目次

平成18年度 機械科目 A問題2:問題文と選択肢

容量の階段に3つの始動方式を並べるところから始めます。

電験3種 機械科目 平成18年度 A問題2 問題文(かご形誘導電動機の始動方式)
平成18年度 機械科目 A問題2 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題2

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成18年度 A問題2(要約)

a. 5 kW程度以下の小容量では、(ア)に与える影響が小さいので直接電源電圧を印加する。b. 5〜15 kW程度では、まず固定子巻線を(イ)にして加速し、定格速度近くで(ウ)に切り換える。この方法では(ウ)で直接始動した場合に比べ、始動電流・始動トルクはともに(エ)倍になる。c. 15 kW程度以上では、まず(オ)により低電圧を供給し、定格速度近くで全電圧を供給する。

(1) 絶縁電線・Δ結線・Y結線・1/√3・三相単巻変圧器 (2) 電源系統・Δ結線・Y結線・1/√3・三相単巻変圧器 (3) 絶縁電線・Y結線・Δ結線・1/√3・三相可変抵抗器 (4) 電源系統・Δ結線・Y結線・1/3・三相可変抵抗器 (5) 電源系統・Y結線・Δ結線・1/3・三相単巻変圧器

出題のポイント:容量の階段に3方式を並べる

かご形誘導電動機の始動法は「容量が大きくなるほど、電圧を下げる手間をかける」という一本の筋で並んでいます。問題文が容量を明示してくれているので、階段に当てはめるだけです。

容量の目安始動方式どうやって電圧を下げるか始動電流・トルク
〜5 kW全電圧始動(直入れ)下げない電流は定格の4〜6倍
5〜15 kWY-Δ始動結線をYにして相電圧を1/√3どちらも1/3
15 kW〜始動補償器三相単巻変圧器のタップどちらも k2
かご形誘導電動機の容量別始動方式として5キロワット以下の直入れ、5から15キロワットのYデルタ始動、15キロワット以上の始動補償器を示す図
問題文の容量区分に従い、小容量は直入れ、中容量はY−Δ、大容量は始動補償器と対応させます。

空欄を確定する

(ア):直入れが許されるのは電源系統への影響が小さいから

始動電流は定格の4〜6倍ですが、5 kW 程度なら絶対値そのものが小さいので、電源系統の電圧降下が許容範囲に収まります(ア)=電源系統

☝️ ひっかけの作り方:「絶縁電線に与える影響が小さい」では文の意味が通りません。始動電流が問題になるのは電線の発熱ではなく、系統電圧の瞬時低下です(始動は数秒で終わるので電線は熱くなりません)。(ア)で(1)(3)が消えます

(イ)(ウ):Yで始めてΔで回す

低い電圧で始動したいのだから、相電圧が1/√3になるY結線で始動し、加速したらΔに戻して定格電圧で運転します。(イ)=Y結線、(ウ)=Δ結線順序が逆では意味がありません

(エ):電流もトルクも1/3

Y-Δ始動の3つの比

相電圧 \( \dfrac{1}{\sqrt3} \)  線電流 \( \dfrac{1}{3} \)  トルク \( \dfrac{1}{3} \)

\( T\propto V^2 \;\Rightarrow\; \left(\dfrac{1}{\sqrt3}\right)^2=\dfrac{1}{3} \)

1/√3 なのは電圧だけ電流もトルクも1/3——この非対称が引っかけどころです。

(エ)=1/3「1/√3」を選ばせるのが定番の罠ですが、1/√3 は相電圧の比であって、問われているのは始動電流と始動トルクの比です。

(オ):大容量は三相単巻変圧器

始動補償器(コンドルファ始動器)は三相単巻変圧器です。タップで50〜80 % の電圧を作って始動し、加速したら全電圧に切り替えます(オ)=三相単巻変圧器

「三相可変抵抗器」は不適切です。一次側に抵抗を入れれば確かに電圧は下がりますが、抵抗で消費される分がすべて熱になり、大容量では発熱が大きすぎます変圧器なら損失なしで電圧を下げられる——これが単巻変圧器を使う理由です。

答え(ア)電源系統/(イ)Y結線/(ウ)Δ結線/(エ)1/3/(オ)三相単巻変圧器 ⇒ (5)
同じ線間電圧でデルタ直入れとY始動を比較し、相電圧比1ルート3、線電流比と始動トルク比が1対3になることを示す図
Y始動の相電圧はΔ直入れの1/√3となるため、電源線電流と始動トルクはいずれも1/3です。
平成18年度機械A問題2の空欄を電源系統、Y結線、デルタ結線、1対3、三相単巻変圧器と確定し正解5を導く表
容量、結線の順序、1/3法則、始動補償器を対応させると正解は(5)です。

なぜ始動電流を抑えなければならないのか

始動電流が大きいと何が困るのか——電動機自身ではなく、周りの機器が困ります。数字で見てみましょう。

線路インピーダンス0.1 Ω の系統(200 V)に、定格50 A の電動機をつないだとします。

\( I_{\text{始動}}=6\times50=300\ \mathrm{A} \)
❶ 直入れの始動電流
定格の6倍。
\( \Delta V=300\times0.1=30\ \mathrm{V} \)
❷ 線路での電圧降下
200 V に対して15 % の低下
\( I_{\text{始動}}=\dfrac{300}{3}=100\ \mathrm{A}\;\Rightarrow\;\Delta V=10\ \mathrm{V} \)
❸ Y-Δ始動なら
電圧降下は5 % に収まる

15 % も電圧が下がると、同じ系統の照明がちらつき、他の電動機のトルクが不足し(T∝V² なので72 % に落ちます)、電子機器が誤動作します。始動電流を抑えるのは、自分のためではなく系統のため——(ア)が「電源系統」である理由がここにあります

始動電流を抑える代償は、必ずトルクの低下です。電流を1/3にすればトルクも1/3——電圧を下げる方式では、この2つを分離できません分離できるのは、巻線形の二次抵抗制御(電流を下げてトルクを上げられる)とインバータ(周波数を下げるので電流を増やさずトルクを保てる)だけです。

始動補償器はY-Δ始動の一般化

始動補償器のタップで電圧を k 倍にしたとき、電流とトルクがどうなるかを整理すると、Y-Δ始動が特別な場合にすぎないことが分かります。

電動機の端子電圧電動機に流れる電流電源側の線電流始動トルク
始動補償器(タップ k)kVkIk2Ik2T
Y-Δ(k=1/√3)V/√3I/√3I/3T/3
50 % タップ0.5V0.5I0.25I0.25T
80 % タップ0.8V0.8I0.64I0.64T

電源側の線電流が k2 倍になるのは、変圧器が電圧を下げた分だけ一次側の電流を減らすからです。電動機には kI が流れているのに、電源から見ると k2I しか流れていない——この「もう一段の得」が、リアクトル始動(電流は k 倍のまま)に対する始動補償器の優位点です。

k=1/√3=0.577 を代入すると、電源電流もトルクも1/3——Y-Δ始動とぴったり一致しますY-Δ始動は「変圧器を使わずに k=0.577 を実現する方法」だと言えます。安い代わりに比率を選べないのが違いで、始動補償器ならタップで50 %・65 %・80 % と選べます

⏱️ 本番での進め方
容量の階段:〜5 kW 直入れ/5〜15 kW Y-Δ/15 kW〜 始動補償器。
(エ)は1/3。1/√3 は相電圧の比であって、電流・トルクの比ではない。
(イ)(ウ)の順序でも2肢消える——低い電圧で始めたいのだからYが先。
始動補償器=三相単巻変圧器。抵抗器では熱になるだけで大容量に使えない。

💡 覚え方
小は直入れ、中はY-Δ(電流もトルクも1/3)、大は始動補償器(三相単巻変圧器)始動電流を抑えるのは電源系統の電圧降下を防ぐためタップ k の始動補償器では、電動機電流 kI に対して電源側は k2I——k=1/√3 を入れるとY-Δ始動と一致する。

⚠️ よくある間違い
(エ)に1/√3を入れるのが最頻の誤りです。1/√3 は電圧の比で、トルクは2乗に比例するので1/3電源側の線電流も1/3です。もう一つは(オ)に「三相可変抵抗器」——抵抗では下げた分が全部熱になるので、大容量の標準始動法にはなりません。

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