電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の直流機の誘導起電力。本記事では、平成18年度 A問題1で問われた、重ね巻4極の直流発電機の磁極の平均磁束密度を求める問題を解説します。
カギは誘導起電力 \( E=\dfrac{pZ\phi n}{60a} \)。無負荷なので端子電圧=E です。これから毎極磁束 \( \phi \) を求め、\( B=\dfrac{\phi}{A} \) で平均磁束密度に直します。重ね巻なので \( a=p=4 \) です。
平成18年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
起電力の公式を逆向きに使って磁束密度まで戻します。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 平成18年度 A問題1
電機子巻線が重ね巻である4極の直流発電機がある。電機子の全導体数は576で、磁極の断面積は0.025 [m²] である。この発電機を回転速度600 [min⁻¹] で無負荷運転しているとき、端子電圧は110 [V] である。このときの磁極の平均磁束密度 [T] の値として、最も近いものは次のうちどれか。
ただし、漏れ磁束はないものとする。(1) 0.38 (2) 0.52 (3) 0.64 (4) 0.76 (5) 0.88
出題のポイント:無負荷なら端子電圧=誘導起電力
この問題は起電力の公式を「逆向き」に使う問題です。ふつうは磁束から起電力を求めますが、ここでは起電力から磁束を求め、さらに磁束密度へ換算します。
出発点は「無負荷運転」という条件。電機子電流がほぼゼロなので抵抗降下もゼロ——端子電圧110 V がそのまま誘導起電力 E です。発電機は E=V+IaRa ですが、Ia≒0 なので E=V になります。
そして重ね巻なので a=p=4。4極だから a も4——ここを波巻の2と取り違えると答えが半分になります。

問題の解説:E → φ → B の3ステップ
電機子電流がほぼ0 ⇒ 抵抗降下がゼロ。
重ね巻なので a=p=4。p と a が約分されることに注目。
p/a=1 なので、実質 Zn/60 だけが残る。
磁束を磁極の断面積で割るだけ。


重ね巻だと p と a が約分される
重ね巻では a=p なので、公式の p/a が1になって消えます。
これは物理的にも納得できます。極数を増やすと1回転で横切る磁極の数が増えて起電力は上がるのですが、同時に並列回路の数も増えて1つの道の導体が減るので、ちょうど打ち消し合うのです。
波巻なら a=2 で固定なので、極数を増やせばそのぶん起電力が上がります。多極の高電圧機に波巻が使われるのはこのためです。
選択肢を逆算する
| 選択肢 | 対応する条件 | 判定 |
| (1) 0.38 | a=2(波巻と誤認)とした場合 | 正解のちょうど半分。並列回路数の取り違え |
| (2) 0.52 | 自然な計算では出にくい | 散らしのダミー |
| (3) 0.64 | 自然な計算では出にくい | 散らしのダミー |
| (4) 0.76 | a=p=4(重ね巻) | 正解 |
| (5) 0.88 | 自然な計算では出にくい | 散らしのダミー |
(1)0.38 が本命の罠です。「a=2」と決めつけると、答えがちょうど半分になります。問題文に「重ね巻である」と明記されているので、読み落とさなければ確実に避けられます。
値の妥当性でも確認できます。直流機の磁極の磁束密度は0.6〜0.9 T 程度が相場です。鉄心の飽和磁束密度が1.5〜2 T 程度なので、0.38 T は低すぎ、1 T を超えると飽和に近づきすぎ——0.76 T はちょうど妥当な値です。相場観を持っておくと、計算ミスに気づけます。
磁極の断面積とエアギャップの関係
この問題では磁極の断面積0.025 m2 で割って磁束密度を出しました。なぜ「磁極の」断面積なのかを考えておくと、直流機の構造がよりはっきりします。
磁束は 界磁巻線 → 主磁極 → エアギャップ → 電機子鉄心 → 電機子 → エアギャップ → 隣の主磁極 → 継鉄 という閉じた路を通ります。この磁路のうちいちばん狭いところ(=磁束密度がいちばん高いところ)が問題になるので、磁極の断面積で評価するわけです。
| 磁路の部分 | 断面積 | 磁束密度 | 設計上の注意 |
| 主磁極(磁極片) | 本問の0.025 m2 | 0.76 T | ここが飽和すると起電力が頭打ち |
| エアギャップ | 磁極片よりやや広がる | やや低い | 磁気抵抗の大半がここ |
| 電機子鉄心 | スロットのぶん実効面積が減る | 歯の部分は高い | 歯の飽和にも注意 |
| 継鉄 | 磁束が2分される | 低め | 鋳鉄でもよい |
0.76 T という値は、けい素鋼板の飽和磁束密度(1.5〜2 T)に対して十分な余裕があります。飽和に近づけると、界磁電流を増やしても磁束が増えなくなるため、実機では0.6〜0.9 T あたりに収めるのが一般的です。
電機子反作用が問題になるのも、この余裕が関係します。反作用磁束が加わって磁極の片側が飽和に達すると、その側では磁束が増えない——だから差し引きで減磁になるのでした。設計時に余裕を取っておけば減磁の度合いも小さくできるわけです。
極弧率という考え方
磁極の断面積は、電機子の全周のうち磁極が覆っている割合で決まります。この割合を極弧率と呼びます。
本問は磁極の断面積が直接与えられているので極弧率を使う必要はありませんが、「なぜ電機子の全表面積ではなく磁極の断面積で割るのか」を理解するには重要な考え方です。
起電力の公式を導くときは平均の磁束密度 B=pφ/(πDl) を使いましたが、これは全周に磁束が均一に分布していると仮定した平均値です。実際には磁極の下だけに集中しているので、磁極部分の実際の磁束密度は平均値より1/α 倍(1.3〜1.7倍)高くなります。飽和を論じるときは、この実際の値で見なければなりません——本問が「磁極の平均磁束密度」を聞いているのは、まさにその値だからです。
磁束と磁束密度の使い分け
この問題では磁束 φ[Wb] と磁束密度 B[T] を行き来します。混同しやすいので整理しておきましょう。
| 量 | 記号・単位 | 意味 | 本問での値 |
| 磁束 | φ [Wb] | 面を貫く磁力線の総量 | 1極あたり 0.0191 Wb |
| 磁束密度 | B [T]=[Wb/m2] | 単位面積あたりの磁束 | 0.76 T |
| 関係 | φ=BA | 磁束=磁束密度×面積 | 0.76×0.025=0.019 Wb |
起電力の公式に入るのは「磁束 φ」のほうです。導体が1回転で横切る磁力線の総量が起電力を決めるので、面積で割る前の量が必要になります。
一方、鉄心が飽和するかどうかを判断するのは「磁束密度 B」です。材料の限界は「単位面積あたりどれだけ通せるか」で決まるので、こちらは面積で割った量で見ます。設計では「必要な φ を得るのに、B が限界を超えない断面積はいくつか」という順で考えます——本問はまさにその逆算です。
⏱️ 本番での進め方
① 「無負荷」=端子電圧がそのまま起電力と読み替える。
② 巻線方式を確認:重ね巻なら a=p、波巻なら a=2。重ね巻は p/a が約分で消える。
③ E=Zφn/60(重ね巻の簡略形)で φ を出し、B=φ/A で割る。
④ 0.6〜0.9 T が相場。桁や倍率のミスはこれで気づける。
💡 覚え方
無負荷なら E=V。重ね巻は a=p なので E=Zφn/60 と簡単になる(極数が消える)。波巻は a=2 固定なので極数がそのまま効く——だから多極の高電圧機は波巻。磁束 φ[Wb] は起電力を決め、磁束密度 B[T] は飽和を決める。φ=BA。
⚠️ よくある間違い
「4極だから a=2」と波巻の値を使うのが本命の罠です(→(1)0.38、ちょうど半分)。問題文の「重ね巻である」を必ず確認してください。もう一つは磁束と磁束密度の混同——公式に入るのは φ、答えるのは B なので、最後に断面積で割るのを忘れないこと。

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