今回は令和7年度下期 法規科目 B問題12、高圧CVケーブルの交流絶縁耐力試験の計算問題です。ケーブルは静電容量が大きく充電電流が問題になるという、実務直結のテーマです。
流れは3ステップ。①試験電圧=最大使用電圧×1.5 ②充電電流 Ic=2πfCV ③変圧器で足りない分を補償リアクトルで打ち消す。(b)は「割って切り上げ」なので、端数処理で迷わないことが大切です。
令和7年度下期 法規科目 B問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題12
電験3種 法規科目 【技術基準の計算】 令和7年度下期 B問題12
「電気設備技術基準の解釈」に基づいて、最大使用電圧が6.9kVの電路に接続する、導体断面積100mm²、長さ800mの高圧CVケーブル(単心)の絶縁耐力試験を交流で実施する場合について、次の(a)及び(b)に答えよ。ただし、周波数は50Hz、ケーブルの対地静電容量は1km当たり0.45μFとする。
(a) ケーブルに試験電圧を印加した場合の充電電流[A]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)0.78 (2)1.17 (3)1.46 (4)2.34 (5)3.51 A
(b) 図のような試験回路でケーブルの絶縁耐力試験を行う場合、試験用変圧器の容量を5kV·Aとしたとき、補償リアクトルの必要最少の設置台数として、正しいのは次のうちどれか。ただし、試験電圧を印加したとき、1台の補償リアクトルに流すことができる電流(電流容量)は270mAとする。
(1)1 (2)2 (3)3 (4)4 (5)5 台



答えは(a)1.17A・(b)3台
平成19年度 B問題11が同一問題です。そちらは補償リアクトルの原理を扱っています。
この記事は、試験回路と撹乱情報の見抜き方を主軸にします。
★★撹乱情報を見抜く
| 与えられた値 | 使うか | 理由 |
| ★最大使用電圧6.9kV | ★★使う | ★★試験電圧=×1.5 |
| ★導体断面積100mm² | ★★使わない | ★★静電容量が直接与えられている |
| ★長さ800m | ★★使う | ★★静電容量が1kmあたりで与えられている |
| ★周波数50Hz | ★★使う | ★★I_c=2πfCV |
| ★対地静電容量0.45μF/km | ★★使う | ★★同上 |
導体断面積は使いません——静電容量が与えられているので不要です。
与えられた値をすべて使おうとすると、かえって迷います——「何を求めるか」から逆算するのです。
B問題では撹乱情報がよく混ぜられます——見抜く練習も必要です。
★STEP1:試験電圧と静電容量
7 000V以下なので1.5倍
単心ケーブル1条なので3倍しない
長さの単位をkmに直してから掛けます——800m=0.8km。
「単心」と書かれていれば1条分——3心なら扱いが変わります。
★STEP2:充電電流
μF→Fの換算に注意
(a)の答えは(2)
2π×50≒314——314×0.36×10⁻⁶≒1.13×10⁻⁴。
それに10 350を掛けて1.17A——電卓なしでも概算できます。
★STEP3:試験回路の構成
| 機器 | 役割 |
| ★試験用変圧器 | ★★低圧側の電圧を試験電圧まで昇圧する |
| ★電圧調整器 | ★★試験電圧をゆっくり上げる |
| ★補償リアクトル | ★★充電電流を打ち消し、変圧器の負担を減らす |
| ★電圧計・電流計 | ★★試験電圧と漏れ電流を監視する |
補償リアクトルはケーブルと並列に接続します——試験電圧が同じようにかかる位置です。
変圧器から見ると、進み電流と遅れ電流が打ち消し合った差分だけが流れます。
★STEP4:台数の計算と切り上げ
補償リアクトルで打ち消す量
(b)の答え
2.55を切り捨てて2台にすると、電流が足りません——「必要最少」は切り上げです。
2台なら0.54A、残り0.63Aを変圧器が負担——0.48Aを超えるので不可です。
3台なら0.81A、残り0.36A——0.48A以内に収まります。
★端数処理で迷わないために
| 場面 | 処理 | 理由 |
| ★補償リアクトルの台数 | ★★切り上げ | ★★足りないと試験できない |
| ★B種接地の1線地絡電流 | ★★切り上げ(2未満は2) | ★★安全側に倒す |
| ★電線の太さ選定 | ★★上位のサイズを選ぶ | ★★足りないと焼損する |
法規の計算では、ほぼすべて「安全側に倒す」処理です——迷ったら厳しいほうを選びます。
切り捨てが正解になる場面はまずありません。
なぜ補償リアクトルが要るのか
12kV·A級の装置が要る
容量が足りない
12kV·Aの試験装置は大型で、現場に持ち込みにくいのです。
補償リアクトルを使えば5kV·Aの装置で足りる——実務上の工夫です。
これは進相コンデンサによる力率改善と同じ発想——無効電力を現地で融通するのです。
18年ぶりの再出題
| 年度 | 問題 | 答え |
| ★平成19年度 問11 | ★★6.9kV・100mm²・800m・0.45μF/km・5kV·A・270mA | ★★(a)1.17A (b)3台 |
| ★令和7年度下期 問12(本問) | ★★数値も選択肢も同一 | ★★同一 |
18年を経て、まったく同じ問題が出ました——法規の計算では珍しくありません。
古い過去問も解く価値がある——ただし条文の改正には注意します。
直流試験という選択肢
| 交流試験 | 直流試験 | |
| ★試験電圧 | ★★10 350V | ★★20 700V(交流の2倍) |
| ★流れる電流 | ★★充電電流1.17A | ★★漏れ電流のみ |
| ★必要な装置 | ★★12kV·A級(又は補償リアクトル) | ★★数百V·A |
ケーブルなら直流試験も認められています——解釈15条。
本問はあえて交流で実施する場合の計算——補償リアクトルを使う実務を問うています。
⏱️ 本番での進め方
① 導体断面積は撹乱情報——静電容量が与えられていれば使わない。
② 静電容量は1kmあたりの値×長さ[km]。
③ 変圧器が出せる電流はI_T=S/V。
④ 台数は切り上げ——「必要最少」は足りることが条件。
💡 覚え方
ケーブルの絶縁耐力試験=①試験電圧V=最大使用電圧×1.5 ②静電容量C=1kmあたりの値×長さ[km](単心1条なら3倍しない)③充電電流I_c=2πfCV ④試験用変圧器が供給できる電流I_T=S/V ⑤補償リアクトルの台数=(I_c−I_T)÷1台の電流容量、切り上げ。
⚠️ よくある間違い
導体断面積は使わない——撹乱情報。台数は切り上げ——2.55なら3台。2台では充電電流を打ち消しきれない。
まとめ
| 試験電圧 | 6 900×1.5=10 350 V |
| 静電容量 | 0.45μF/km×0.8km=0.36 μF |
| (a)充電電流 | 2πfCV≒1.17 A →(2) |
| 変圧器の電流 | 5 000/10 350≒0.483 A |
| 不足分 | 1.171−0.483≒0.688 A |
| (b)台数 | 0.688/0.27≒2.55→3台 →(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・6600V電路の絶縁性能(電技省令23):【法規】令和2年度 A問題3
・ケーブルの絶縁耐力試験(技術基準の計算27):【法規】平成19年度 B問題11

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