今回は令和6年度下期 法規科目 A問題4、B種接地工事の接地抵抗値を求める計算問題です。法規の計算のなかでも最頻出のパターンで、毎年どこかの年度で出題されています。
手順は2つだけ。①与えられた式で1線地絡電流 I₁ を求め、小数点以下を切り上げる(2未満なら2とする)②遮断時間に応じて 150/300/600 を I₁ で割る。今回は2A未満になるのが最大の落とし穴です。
答えは(4):300Ω
平成24年度 A問題10が同一問題です。そちらは式の意味を主軸にしています。
この記事は、下限2Aという規定の意味を掘り下げます。
令和6年度下期 法規科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題4
電験3種 法規科目 【技術基準の計算】 令和6年度下期 A問題4
公称電圧6 600Vの三相3線式中性点非接地方式の架空配電線路(電線はケーブル以外を使用)があり、そのこう長は20kmである。この配電線路に接続される柱上変圧器の低圧電路側に施設されるB種接地工事の接地抵抗値[Ω]の上限として、「電気設備技術基準の解釈」に基づき、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、高圧電路と低圧電路の混触により低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合に、1秒以内に自動的に高圧電路を遮断する装置を施設しているものとする。
なお、高圧配電線路の1線地絡電流 I₁[A]は次式によって求めるものとする。V は配電線路の公称電圧を1.1で除した電圧[kV]、L は同一母線に接続される架空配電線路の電線延長[km]。
なお、高圧配電線路の1線地絡電流 I₁[A]は、I₁ = 1 + ( (V/3)×L − 100 ) / 150 [A] によって求めるものとする。V は配電線路の公称電圧を1.1で除した電圧[kV]、L は同一母線に接続される架空配電線路の電線延長[km]
(1) 75 (2) 150 (3) 225 (4) 300 (5) 600

★計算の流れ
単位はkV
L=20km
★2段階の処理が要る
答えは300Ω
4行で解けますが、3行目に2つの処理が入っています——ここが差のつくところです。
★★下限2Aはなぜ設けられているのか
| 理由 | 内容 |
| ★算出式は経験式 | ★★短い線路では実態より小さい値が出る |
| ★機器の対地静電容量 | ★★変圧器・機器の分は式に含まれていない |
| ★安全側に倒す | ★★接地抵抗を小さめに要求することになる |
I₁が小さいほど、許される接地抵抗は大きくなります——600/0.6=1 000Ωでは緩すぎるのです。
実際にはもっと大きな地絡電流が流れうる——だから2Aを下限として設定しています。
「安全側に倒す」という法令の思想が表れています。
★切り上げと下限の順序
| 計算結果 | 切り上げ後 | 下限適用後 |
| ★0.6A | ★★1A | ★★2A |
| ★1.2A | ★★2A | ★★2A |
| ★2.3A | ★★3A | ★★3A |
| ★5.1A | ★★6A | ★★6A |
まず切り上げ、それでも2未満なら2にします——2段階です。
2A以上になれば、切り上げた値をそのまま使います——下限は効きません。
切り捨てではなく切り上げ——ここも安全側です。
★遮断時間で3段階
| 遮断時間 | 接地抵抗値 | 許される対地電圧 |
| ★遮断装置なし | ★★150/I₁ | ★★150V |
| ★1秒超2秒以下 | ★★300/I₁ | ★★300V |
| ★1秒以下 | ★★600/I₁ | ★★600V |
速く切れるなら高い電圧が出てもよい——危険は「電圧×時間」で決まるからです。
分子の150→300→600は倍々——覚えやすい並びです。
問題文の「1秒以内」を読み落とさないこと——150や300を選んでしまいます。
★選択肢の設計を読む
| 選択肢 | どこで間違えたか |
| ★(1)75Ω | ★★150/2——遮断装置なしと誤読 |
| ★(2)150Ω | ★★300/2——1〜2秒と誤読 |
| ★(3)225Ω | ★★撹乱用 |
| ★(4)300Ω | ★★正しい |
| ★(5)600Ω | ★★600/1——下限2Aを見落とした |
(5)は「下限2Aを忘れた人」を待ち構えています——いちばん多い誤答でしょう。
(1)(2)は遮断時間の読み違い——選択肢の作りから、出題者の意図が読めます。
なぜ150Vを基準にするのか
150V以下に抑えることが原則
150Vは、低圧の対地電圧の1つの区切りです——住宅の屋内電路の上限(143条)と同じ値。
絶縁抵抗値の区分(14条)でも150Vが境目——解釈全体で共通する感覚です。
この電圧を超えると危険が一段上がるという理解です。
非接地式配電線の地絡電流
| 方式 | 1線地絡電流 |
| ★非接地式(日本の高圧配電) | ★★対地静電容量を通る数A程度 |
| ★直接接地式 | ★★短絡に近い大電流 |
非接地だから地絡電流が小さい——だからI₁が数Aという計算になるのです。
その小ささが、B種接地抵抗を大きく取れる理由——系統の方式と接地が結びついています。
12年ぶりの再出題
| 年度 | 問題 | 正解 |
| ★平成24年度 問10 | ★★6 600V・20km・1秒以内 | ★★(4) 300Ω |
| ★令和6年度下期 問4(本問) | ★★数値まで同一 | ★★(4) 300Ω |
12年を経て、数値も選択肢も同じ問題が出ました——法規の計算は定番の型が繰り返されます。
過去問を解く価値がここにあります——ただし手順を理解して解くことです。
接地工事の4種類と抵抗値
| 種類 | 対象 | 接地抵抗値 |
| ★A種 | ★★高圧・特別高圧機器の外箱、避雷器 | ★★10Ω以下 |
| ★B種 | ★★高圧と低圧を結合する変圧器の低圧側 | ★★150/300/600÷I₁ |
| ★C種 | ★★300V超の低圧機器の外箱 | ★★10Ω以下(0.5秒以内遮断で500Ω以下) |
| ★D種 | ★★300V以下の低圧機器の外箱 | ★★100Ω以下(同500Ω以下) |
B種だけが計算式で、他は固定値です——目的が違うから。
A・C・Dは「触れた人を守る」、Bは「系統の電位を抑える」——この違いが式の有無に現れます。
接地抵抗を下げる方法
| 方法 | 内容 |
| ★接地極を深く打ち込む | ★★深部ほど土壌が湿っていて抵抗率が低い |
| ★接地極を並列に増やす | ★★十分に離して打つと合成抵抗が下がる |
| ★接地抵抗低減剤 | ★★接地極の周囲の土壌抵抗率を下げる |
I₁が大きい系統ほど、低い接地抵抗が要求されます——計算値が小さくなるからです。
都市部の長い配電線ではI₁が大きく、施工が難しくなります。
⏱️ 本番での進め方
① Vの単位はkV——公称電圧÷1.1。
② 算出結果は切り上げ——切り捨てではない。
③ ★2未満は2とする——最も多い失点。
④ 遮断時間で150/300/600を使い分ける。
💡 覚え方
解釈17条2項=B種接地抵抗値は遮断装置なし150/I₁、1秒超2秒以下300/I₁、1秒以下600/I₁(Ω)。I₁は高圧側の1線地絡電流で、算出結果は小数点以下を切り上げ、2未満となる場合は2とする。本問はV=6kV・L=20kmでI₁=0.6→切り上げ1→下限で2A、1秒以内なので600/2=300Ω。
⚠️ よくある間違い
下限2Aを忘れると600/1=600Ωを選んでしまう。遮断時間を読み違えると150/2=75Ωや300/2=150Ωになる。
まとめ
| V | 6.6/1.1=6 kV |
| L | 20 km |
| I₁(生値) | 1+(6/3×20−100)/150=0.6 A |
| I₁(採用値) | 切り上げ・下限2 → 2 A |
| 遮断時間 | 1秒以内 → 600/I₁ |
| 答え | 600/2=300 Ω →(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・B種接地工事の計算(技術基準の計算4):【法規】令和6年度下期 B問題12
・B種接地工事の計算(技術基準の計算20):【法規】平成24年度 A問題10

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