今回は令和7年度上期 法規科目 A問題1、電気の需給状況が悪化した場合の対応の空欄補充問題です。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の指示と、経済産業大臣の供給命令という2つの仕組みが並べて問われます。
ポイントは主語の違い。前半はOCCTOが業務規程で定めるところにより会員に指示(法第28条の44)。後半は経済産業大臣が電気事業者に命令(法第31条)。「保安規程」は自家用電気工作物の話なので、ここでは選べません。
令和7年度上期 法規科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題1
電験3種 法規科目 【電気事業法】 令和7年度上期 A問題1
次の文章は、電気の需給状況が悪化した場合における電気事業法に基づく対応に関する記述である。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、会員である小売電気事業者、一般送配電事業者、配電事業者又は特定送配電事業者の電気の需給の状況が悪化し、又は悪化するおそれがある場合において、必要と認めるときは、当該電気の需給の状況を改善するために、電力広域的運営推進機関の(ア)で定めるところにより、(イ)に対し、相互に電気の供給をすることや電気工作物を共用することなどの措置を取るように指示することができる。
また、経済産業大臣は、災害等により電気の安定供給の確保に支障が生じたり、生じるおそれがある場合において、公共の利益を確保するために特に必要があり、かつ適切であると認めるときは(ウ)に対し、電気の供給を他のエリアに行うことなど電気の安定供給の確保を図るために必要な措置をとることを命ずることができる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして、適切なものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 保安規程 会員 電気事業者 (2) 保安規程 事業者 一般送配電事業者 (3) 送配電等業務指針 特定事業者 特定自家用電気工作物設置者 (4) 業務規程 事業者 特定自家用電気工作物設置者 (5) 業務規程 会員 電気事業者

答えは(5):業務規程・会員・電気事業者
(ア)は「業務規程」——保安規程は設置者が保安のために定めるもので、別物です。
(イ)は「会員」——問題文の冒頭で定義されている語をそのまま受けます。
(ウ)は「電気事業者」——一般送配電事業者に狭めてはいけません。
★エリアをまたぐ融通には物理的な制約がある
| 区間 | つなぐもの | 制約 |
| ★東日本←→西日本 | ★★周波数変換所(FC) | ★★50Hzと60Hzで直接つなげない |
| ★本州←→北海道 | ★★北本連系(直流) | ★★容量が限られる |
| ★エリア間(同一周波数) | ★★連系線 | ★★送れる量に上限がある |
「相互に電気の供給をする」と条文は言いますが、無限には送れません——連系線の容量という物理的な壁があります。
とくに東西をまたぐ融通は、周波数変換所の容量で頭打ちになります——2011年に融通が進まなかった最大の理由がこれです。
だから設備の増強計画もOCCTOの仕事に含まれています。
★需給ひっ迫は3段階で知らされる
| 段階 | 予備率の目安 | 内容 |
| ★需給ひっ迫準備情報 | ★★— | ★★数日前に注意を促す |
| ★需給ひっ迫注意報 | ★★5%を下回る見込み | ★★節電を呼びかける |
| ★需給ひっ迫警報 | ★★3%を下回る見込み | ★★強く節電を求める |
予備率とは、需要に対してどれだけ余裕があるかの割合です——3%を切ると、突発的な発電所停止で停電しかねません。
2022年3月には、初めて需給ひっ迫警報が出されました——地震で火力発電所が止まり、寒波が重なったためです。
この呼びかけは、本条の指示や命令より手前の段階です——まず自主的な協力を求めるのが順番です。
会員には誰がなるのか
| 事業者 | 加入 |
| ★小売電気事業者 | ★★義務 |
| ★一般送配電事業者 | ★★義務 |
| ★送電事業者・配電事業者 | ★★義務 |
| ★発電事業者 | ★★義務 |
電気事業を営む者は、原則としてOCCTOへの加入が義務づけられています——だから「会員」に指示すれば、業界全体に届くのです。
本条が指示の相手を「会員」と書けるのは、この加入義務があるから——制度の仕組みと条文の言葉がつながっています。
「電気工作物を共用する」とは
条文は、電気の融通だけでなく設備の共用も挙げています——他社の変電所や送電線を使わせてもらうことです。
災害で自社の設備が壊れたとき、隣の会社の設備を借りれば復旧が早まります——ものを融通し合うという発想です。
電気そのものと設備の両方を融通できる——だから条文は2つ並べて書いてあります。
大臣の命令は「エリアを越えて送れ」と言える
後半の法31条は、他のエリアへの供給まで命じられる規定です——自社の供給区域を越えた話になります。
事業者にとっては、自分の顧客より他社の顧客を優先することになりかねません——だから「公共の利益」という重い要件が付いています。
権限が強いほど発動の条件が厳しくなる——法律の一貫した作り方です。
「保安規程」がダミーになる理由
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 業務規程 | ★★業務規程 | ★保安規程 | ★★保安規程は設置者が保安のために定める文書 |
| 会員 | ★★会員 | ★事業者 | ★★問題文が「会員である〜」と定義している |
| 電気事業者 | ★★電気事業者 | ★特定自家用電気工作物設置者 | ★★命令の相手は事業者一般 |
「規程」という語が共通しているので引っかかります——誰が作る何の文書かで区別しましょう。
保安規程は法規で頻出なので、つい選びたくなります——作問者はその心理を突いています。
2018年の北海道の事例
2018年の地震では、北海道全域が停電しました——いわゆるブラックアウトです。
大きな火力発電所が一度に止まり、周波数が保てなくなったのが原因でした。
本州とつながる北本連系の容量が限られていたことも影響しました——広域運用の重要性が改めて認識された出来事です。
この条文の位置づけ
| 条文 | 場面 | 誰が誰に |
| ★法28条 | ★★平時 | ★★事業者どうしが相互に協調 |
| ★法28条の44 | ★★需給悪化時 | ★★OCCTOが会員に指示 |
| ★法31条 | ★★災害等 | ★★大臣が電気事業者に命令 |
| ★法34条の2 | ★★供給不足 | ★★大臣が需要家に使用制限 |
事態が重くなるにつれて、使える手が変わっていきます——協調→指示→命令→使用制限という順です。
この並びで覚えると、どの条文の話かを取り違えません。
需給の問題は、ここ数年で急に出題がふえました——再エネの拡大と電力ひっ迫が背景にあります。
⏱️ 本番での進め方
① (イ)は問題文の冒頭を見るだけ——「会員である〜」と定義されている。
② (ア)は「保安規程」を落とすところから。推進機関の文書ではない。
③ (ウ)は広いほうの語を選ぶ。非常時は対象を狭めない。
④ OCCTOは指示、大臣は命令——主語と動詞をセットで覚える。
出題履歴——3年で2回出た重要テーマ
| 年度 | 問われ方 |
| ★令和4年度上期 問9 | ★★本問と同一問題 |
| ★令和4年度下期 問10 | ★★広域的運営・供給計画 |
| ★令和7年度上期 問1 | ★★本問 |
令和4年度上期 A問題9が本問とまったく同じ問題です。3年後にそのまま再出題されました。
令和4年度下期 A問題10は平時の広域的運営を扱っています。平時と非常時を並べて読むと、制度の全体像が見えます。
💡 覚え方
需給悪化時の2段構え=①OCCTOが業務規程により会員へ指示(法28条の44)②経済産業大臣が電気事業者へ供給命令(法31条)。OCCTOの3大文書=定款・業務規程・送配電等業務指針。事態の重さに応じて協調→指示→命令→使用制限と手が変わる。
⚠️ よくある間違い
OCCTOの規程を「保安規程」としない——業務規程。指示の相手は文中で定義された会員。大臣の命令先を「一般送配電事業者」に狭めない——電気事業者。
まとめ
| (ア) | 業務規程(OCCTOが定める) |
| (イ) | 会員 |
| (ウ) | 電気事業者 |
| 前半の根拠 | 電気事業法 第28条の44 |
| 後半の根拠 | 電気事業法 第31条(供給命令等) |
| 答え | (5) |
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