今回は令和5年度下期 法規科目 A問題5、地中電線にまつわる2つの条文をまとめて問う空欄補充問題です。地中設備は目に見えないぶん、規定が具体的です。
押さえどころは「何が他の設備を壊すのか」。答えは故障時のアーク放電です。そして内部で作業が可能な地中電線路(洞道など)には防火措置——人が入る空間だから火災対策が要る、と理解しましょう。
令和5年度下期 法規科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題5
電験3種 法規科目 【電技省令】 令和5年度下期 A問題5
次の文章は、「電気設備技術基準」における(地中電線等による他の電線及び工作物への危険の防止)及び(地中電線路の保護)に関する記述である。
a) 地中電線、屋側電線及びトンネル内電線その他の工作物に固定して施設する電線は、他の電線、弱電流電線等又は管(以下、「他の電線等」という。)と(ア)し、又は交さする場合には、故障時の(イ)により他の電線等を損傷するおそれがないように施設しなければならない。ただし、感電又は火災のおそれがない場合であって、(ウ)場合は、この限りでない。
b) 地中電線路は、車両その他の重量物による圧力に耐え、かつ、当該地中電線路を埋設している旨の表示等により掘削工事からの影響を受けないように施設しなければならない。
c) 地中電線路のうちその内部で作業が可能なものには、(エ)を講じなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 接触 短絡電流 取扱者以外の者が容易に触れることがない 防火措置 (2) 接近 アーク放電 他の電線等の管理者の承諾を得た 防火措置 (3) 接近 アーク放電 他の電線等の管理者の承諾を得た 感電防止措置 (4) 接触 短絡電流 他の電線等の管理者の承諾を得た 防火措置 (5) 接近 短絡電流 取扱者以外の者が容易に触れることがない 感電防止措置

答えは(2):接近・アーク放電・管理者の承諾・防火措置
(ア)は「接近」・(イ)は「アーク放電」——接触してしまえば、それは既に事故です。
(ウ)は「管理者の承諾」・(エ)は「防火措置」です。
この記事では、地中ケーブルの維持管理と劣化診断に踏み込みます。
★地中ケーブルはどう劣化するか
| 原因 | 起きること |
| ★水トリー | ★★水分が絶縁体に樹枝状に侵入する |
| ★電気トリー | ★★部分放電で絶縁体が樹枝状に破壊される |
| ★熱劣化 | ★★長年の通電で絶縁体が固くなる |
| ★外傷 | ★★掘削や重量物で被覆が傷つく |
CVケーブルで最も問題になるのが水トリーです——水分と電界が組み合わさって、樹の枝のような跡が伸びるのです。
進行すると絶縁破壊に至り、地絡事故を起こします——地中は湿気が多いので、水トリーが起きやすいのです。
だから定期的な診断が欠かせません。
★ケーブルの劣化診断
| 方法 | 内容 |
| ★絶縁抵抗測定 | ★★メガーで基本的な健全性を見る |
| ★直流漏れ電流測定 | ★★直流電圧を加えて漏れ電流の変化を見る |
| ★部分放電測定 | ★★絶縁体内部の微小放電を検出する |
| ★誘電正接(tanδ)測定 | ★★絶縁体の誘電損を測って劣化を判定する |
絶縁抵抗だけでは、内部の水トリーを見つけられません——破壊寸前まで値が下がらないことがあるからです。
だから複数の方法を組み合わせて判断します——電力科目・機械科目でも扱われるテーマです。
★事故点はどう探すのか
| 方法 | 原理 |
| ★マーレーループ法 | ★★ブリッジの平衡で距離を算出する |
| ★パルスレーダ法 | ★★パルスの反射時間から距離を求める |
| ★音響法 | ★★放電音を地上から聴いて位置を特定する |
地中は目視できないので、測定で位置を絞り込みます——掘る場所を間違えると大変だからです。
マーレーループ法は理論科目のブリッジ回路そのもの——科目をまたいでつながる知識です。
重量物による圧力への備え
| 方式 | 圧力への対応 |
| ★管路式 | ★★管が荷重を受け止める |
| ★暗きょ式 | ★★構造物が荷重を受け止める |
| ★直接埋設式 | ★★土冠を深くする(車両圧力を受ける場所は1.2m以上) |
車が通る場所では、ケーブルに直接荷重がかかります——だから深く埋めるか、管で守るのです。
「重量物による圧力に耐え」という条文は、この対策を求めています。
洞道と共同溝の違い
| 洞道 | 共同溝 | |
| ★収めるもの | ★★電力ケーブルが中心 | ★★電力・通信・ガス・水道 |
| ★管理者 | ★★電力会社 | ★★道路管理者と各事業者 |
| ★防火措置 | ★★必要 | ★★必要 |
どちらも人が入れるので、防火措置が要ります——「内部で作業が可能なもの」に当たるからです。
共同溝では複数の事業者が関わるので、協議が欠かせません——条文の「管理者の承諾」が生きる場面です。
地中化のメリットとデメリット
| 内容 | |
| ★利点 | ★★景観・台風や雪に強い・交通の支障がない |
| ★欠点 | ★★建設費が高い・事故点を探しにくい・復旧に時間 |
事故は少ないが、起きると復旧に時間がかかります——だから事故を起こさない施設方法が重要なのです。
本条が細かく定めているのは、そのためです。
「接近」と「交さ」
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 接近 | ★★接近 | ★接触 | ★★接触してしまえば既に事故 |
| アーク放電 | ★★アーク放電 | ★短絡電流 | ★★隣を焼くのはアーク |
| 防火措置 | ★★防火措置 | ★感電防止措置 | ★★地中でも守るのは火 |
接近は並んで施設されること、交さは立体的に交わることです——どちらも事故が隣に波及しうる位置関係です。
法令ではこの2語がセットで使われます——覚えておくと他の条文でも役に立ちます。
地中電線路の点検
| 点検 | 内容 |
| ★マンホールの内部点検 | ★★接続部の変色・浸水・異臭を確かめる |
| ★ケーブルの絶縁診断 | ★★劣化の進み具合を数値で把握する |
| ★埋設表示の確認 | ★★掘削工事から守るための表示が健全か |
地中は見えないぶん、点検の機会が限られます——入れる場所では確実に見るのが大切です。
洞道に入るときは、酸欠とガスの確認も必要になります。
なぜ防火措置が必要なのか
洞道の中には、大量のケーブルが束ねられています——被覆は可燃物です。
1本が燃えれば、隣へ次々と燃え移ります——密閉空間なので煙と熱が逃げません。
1984年の世田谷ケーブル火災では、大規模な通信障害が起きました——条文が防火措置を求める背景です。
水トリーはなぜ起きるのか
CVケーブルの絶縁体に微小な空隙や不純物があると、そこに水分が入り込みます。
電界が加わると、水分が樹枝状に伸びていきます——これが水トリーです。
地中は湿気が多いので、水トリーが進みやすい環境です——だから定期診断が欠かせません。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「接近」——接触は既に事故。
② (イ)は「アーク放電」。短絡電流は電流そのものの名前。
③ (ウ)は「管理者の承諾」——相手の設備の話だから相手の同意。
④ (エ)は「防火措置」。感電防止措置ではない。
出題履歴——18年間に3回
| 年度 | 問われ方 | 正解番号 |
| ★平成18年度 問3 | ★★3空欄版 | ★★(5) |
| ★平成30年度 問3 | ★★4空欄版 | ★★(2) |
| ★令和5年度下期 問5 | ★★本問 | ★★(2) |
平成18年度 A問題3はアーク放電と防火措置の仕組み、平成30年度 A問題3はただし書きと埋設表示を扱っています。
本記事は維持管理と劣化診断に寄せました——3本で地中電線路が立体的に見えてきます。
💡 覚え方
電技30条=地中電線等が他の電線等と接近・交さする場合、故障時のアーク放電で損傷させない。ただし感電・火災のおそれがなく、他の電線等の管理者の承諾を得た場合は除く。電技47条=地中電線路は重量物の圧力に耐え・埋設表示、内部で作業が可能なものは防火措置。
⚠️ よくある間違い
「接触」ではなく接近。「短絡電流」ではなくアーク放電。「防水措置」「感電防止措置」ではなく防火措置。
まとめ
| (ア) | 接近(し、又は交さ) |
| (イ) | アーク放電(故障時の) |
| (ウ) | 他の電線等の管理者の承諾を得た |
| (エ) | 防火措置 |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・地中電線の危険防止(電技省令28):【法規】平成30年度 A問題3
・地中電線等の施設(電技省令49):【法規】平成18年度 A問題3

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