今回は令和4年度上期 法規科目 A問題2、サイバーセキュリティの確保の空欄補充問題です。2018年(平成30年)に電技へ追加された最も新しい条文のひとつで、出題が増えている分野です。
押さえるのは「誰の設備の・何を・何のために守るか」。対象は電気事業(一般送配電・送電・配電・特定送配電・発電)の用に供する電気工作物、守るのは運転を管理する電子計算機、目的は人体・物件の被害と供給支障の防止です。
令和4年度上期 法規科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題2
電験3種 法規科目 【電技省令】 令和4年度上期 A問題2
次の文章は、「電気設備技術基準」におけるサイバーセキュリティの確保に関する記述である。
電気工作物(一般送配電事業、送電事業、配電事業、特定送配電事業又は(ア)の用に供するものに限る。)の運転を管理する(イ)は、当該電気工作物が人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれ及び(ウ)又は配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう、サイバーセキュリティ(サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)第2条に規定するサイバーセキュリティをいう。)を確保しなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 発電事業 電子計算機 一般送配電事業 (2) 小売電気事業 制御装置 電気使用場所 (3) 小売電気事業 電子計算機 一般送配電事業 (4) 発電事業 制御装置 電気使用場所 (5) 小売電気事業 電子計算機 電気使用場所

答えは(1):発電事業・電子計算機・一般送配電事業
(ア)は「発電事業」——列挙されるのは電気を作る・送る事業です。
(イ)は「電子計算機」——法令用語でコンピュータを指す語です。
(ウ)は「一般送配電事業」——防ぐのは停電の波及です。
★なぜ小売電気事業が入らないのか
| 事業 | 電気工作物を運転するか | 対象 |
| ★一般送配電事業 | ★★する(送配電網) | ★★対象 |
| ★送電事業・配電事業 | ★★する | ★★対象 |
| ★発電事業 | ★★する(発電所) | ★★対象 |
| ★小売電気事業 | ★しない(電気を売るだけ) | ★対象外 |
小売電気事業は、電気を売る商行為です——自前の電気工作物を運転しないのが原則です。
「モノを動かす事業かどうか」で見分けられます——この視点があれば迷いません。
★「電子計算機」という法令用語
| 日常語 | 法令用語 |
| ★コンピュータ | ★★電子計算機 |
| ★プログラム | ★★電磁的記録 |
| ★ネットワーク | ★★電気通信回線 |
法令は日常語をそのまま使わないことがあります——「電子計算機」は刑法などでも使われる語です。
「制御装置」ではありません——サイバー攻撃の入口はネットワークにつながったコンピュータだからです。
監視制御システム(SCADA)などがこれに当たります。
★なぜこの条文ができたのか
| 年 | できごと |
| ★2015年 | ★★ウクライナでサイバー攻撃による大規模停電 |
| ★2014年 | ★★日本でサイバーセキュリティ基本法が成立 |
| ★2018年 | ★★電技にサイバーセキュリティの条文が追加 |
電力設備がネットワークにつながる時代になりました——遠隔監視・遠隔制御が普通になったのです。
便利になったぶん、攻撃を受ける入口も増えました——だから新しい条文が必要になったのです。
ウクライナでは、実際に数十万戸が停電しました——絵空事ではありません。
防ぐべき2つの結果
| 結果 | 内容 |
| ★① | ★★人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与える |
| ★② | ★★一般送配電事業又は配電事業に係る電気の供給に著しい支障 |
①は設備が暴走して事故を起こすこと、②は停電の波及です。
「電気使用場所」は需要家側の話で、供給支障の主語になりません——だからダミーです。
小規模事業用電気工作物にも規定がある
太陽光や風力の小規模事業用電気工作物にも、サイバーセキュリティの規定が及びます。
遠隔監視されている設備が多く、乗っ取られる危険があるからです——数が多いだけに、影響も大きくなりえます。
新しい制度なので、今後の出題がふえる可能性があります。
サイバーセキュリティ基本法
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 発電事業 | ★★発電事業 | ★小売電気事業 | ★★電気工作物を運転する事業が対象 |
| 電子計算機 | ★★電子計算機 | ★制御装置 | ★★法令用語でコンピュータを指す |
| 一般送配電事業 | ★★一般送配電事業 | ★電気使用場所 | ★★供給支障の主語 |
条文は「サイバーセキュリティ基本法第2条に規定するもの」と定義を借りています。
情報の漏えい・改ざん・破壊を防ぎ、安全性と信頼性を確保することという意味です。
他の法律から定義を借りるのは、法令によくある手法です。
新しい条文は狙われやすい
2018年に追加された条文が、2022年にはもう出題されました——新しい条文ほど早く出るという傾向です。
改正情報に目を配ることが、法規では有効な戦略になります。
覚える量も少ないので、確実に取りたい問題です。
電力設備の情報化
| 設備 | ネットワークとのつながり |
| ★監視制御システム | ★★遠隔で運転状態を監視・操作する |
| ★スマートメーター | ★★通信で検針データを送る |
| ★遠隔監視の発電設備 | ★★太陽光・風力の運転を遠隔で管理 |
電力設備は急速にネットワーク化しています——省力化と効率化のためです。
そのぶん、外部から攻撃を受ける入口も増えました——だから新しい条文が必要になったのです。
守るべきものは何か
情報が漏れることより、設備が誤動作することが問題です——遮断器が勝手に開けば停電します。
だから条文も「人体への危害」と「供給支障」を挙げています——情報漏えいは書かれていません。
電気設備の安全という観点から書かれた条文だと分かります。
新しい条文は数年以内に出る
電技に追加された条文は、数年以内に出題される傾向があります——サイバーセキュリティは2018年追加、2022年に出題されました。
電磁誘導(27条の2)も2011年追加、2015年に出題です。
改正情報に目を配ることが、法規では有効な戦略になります。
覚えることは3語だけなので、確実に取りたい問題です——発電事業・電子計算機・一般送配電事業。
サイバーセキュリティの定義
サイバーセキュリティ基本法第2条の定義を借りています——情報の漏えい・滅失・毀損の防止と、情報システムの安全性・信頼性の確保です。
他の法律から定義を借りるのは、法令によくある手法です——同じ内容を二度書かないためです。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「発電事業」——小売は電気工作物を運転しない。
② (イ)は「電子計算機」。法令用語でコンピュータを指す。
③ (ウ)は「一般送配電事業」——供給支障の主語。
④ 新しい条文は狙われやすい——改正情報に注意する。
出題履歴——最も新しい分野
| 年度 | 問われ方 |
| ★令和4年度上期 問2 | ★★サイバーセキュリティの確保(本問) |
追加から4年で出題されました——今後も繰り返し出る可能性があります。
令和6年度上期 A問題3の光ファイバケーブルも、比較的新しい分野です。電力設備の情報化に関わる条文としてつながっています。
💡 覚え方
サイバーセキュリティの確保=一般送配電事業・送電事業・配電事業・特定送配電事業・発電事業の用に供する電気工作物の運転を管理する電子計算機は、人体への危害・物件への損傷及び一般送配電事業又は配電事業に係る供給支障のおそれがないようサイバーセキュリティを確保。
⚠️ よくある間違い
「小売電気事業」は入らない——電気工作物を運転しない。「制御装置」ではなく電子計算機。「電気使用場所」は供給支障の主語にならない。
まとめ
| (ア) | 発電事業 |
| (イ) | 電子計算機 |
| (ウ) | 一般送配電事業 |
| 根拠 | 電技 第15条の2 |
| 防ぐ結果 | 人体・物件の被害/供給支障 |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
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