今回は令和3年度 法規科目 A問題1、一般用電気工作物の調査の義務と、それに関連する低圧屋内電路の絶縁性能を組み合わせた空欄補充問題です。電気事業法と解釈をまたぐ、法規らしい良問です。
覚えるのは4つ。調査するのは電線路維持運用者、立入りの承諾を得る相手は所有者又は占有者、通知するのはとるべき措置、そして絶縁抵抗測定が困難な場合の漏えい電流は1mA以下です。
答えは(4):電線路維持運用者・占有者・措置・1mA
(ア)は「電線路維持運用者」——問題文がその場で定義してくれています。
(イ)(ウ)は「占有者」「措置」——条文は必ず「所有者又は占有者」と対で書きます。
(エ)は「1」mA——絶縁抵抗が測れないときの代替判定です。
令和3年度 法規科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題1
電験3種 法規科目 【電気事業法】 令和3年度 A問題1
次の文章は、「電気事業法」に基づく調査の義務及びこれに関連する「電気設備技術基準の解釈」に関する記述である。
a) 一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(以下、「(ア)」という。)は、その一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならない。ただし、その一般用電気工作物の設置の場所に立ち入ることにつき、その所有者又は(イ)の承諾を得ることができないときは、この限りでない。
b) (ア)又はその(ア)から委託を受けた登録調査機関は、上記a)の規定による調査の結果、電気工作物が技術基準に適合していないと認めるときは、遅滞なく、その技術基準に適合するようにするためとるべき(ウ)及びその(ウ)をとらなかった場合に生ずべき結果をその所有者又は(イ)に通知しなければならない。
c) 低圧屋内電路の絶縁性能は、開閉器又は過電流遮断器で区切ることができる電路ごとに、絶縁抵抗測定が困難な場合においては、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が(エ)mA以下であること。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 一般送配電事業者等 占有者 措置 2 (2) 電線路維持運用者 使用者 工事方法 1 (3) 一般送配電事業者等 使用者 措置 1 (4) 電線路維持運用者 占有者 措置 1 (5) 電線路維持運用者 使用者 工事方法 2

★絶縁抵抗値の一覧(省令58条)
| 電路の使用電圧 | 絶縁抵抗値 |
| ★300V以下・対地電圧150V以下 | ★★0.1MΩ以上 |
| ★300V以下・対地電圧150V超 | ★★0.2MΩ以上 |
| ★300V超 | ★★0.4MΩ以上 |
電圧が高いほど、要求される絶縁抵抗も大きくなります——0.1/0.2/0.4という並びで覚えます。
この数字は法規で頻出です——本問の1mAとセットで押さえましょう。
なぜ漏えい電流1mAで代替できるのか
絶縁抵抗を測るには、電路を停電させる必要があります——病院や工場では、簡単には止められません。
そこで電圧が加わったまま漏れている電流を測る方法が認められています——活線のまま点検できるのが利点です。
1mAという値は、感電しても致命的にならない目安でもあります——人が感じ始めるのが1mA程度だからです。
2つの判定方法の比較
| 方法 | 測るもの | 停電 |
| ★絶縁抵抗測定 | ★★絶縁抵抗〔MΩ〕 | ★★必要 |
| ★漏えい電流測定 | ★★漏えい電流〔mA〕 | ★★不要(活線のまま) |
原則は絶縁抵抗、困難な場合に漏えい電流です——いつでも好きなほうを選べるわけではありません。
条文も「絶縁抵抗測定が困難な場合においては」と条件を付けています——この前提を落とさないことです。
法律と解釈をまたぐ問題の読み方
| 部分 | 根拠 | 内容 |
| ★a b | ★★電気事業法57条 | ★★調査の義務 |
| ★c | ★★解釈14条 | ★★低圧屋内電路の絶縁性能 |
1問の中で、法律と解釈の両方が問われています——近年ふえている出題形式です。
調査で実際に何を測るのか、という流れでつながっています——ばらばらの知識ではなく、一続きの話なのです。
調査で実際に見るもの
| 点検箇所 | 見ること |
| ★分電盤 | ★★漏電遮断器の有無と動作 |
| ★屋内配線 | ★★絶縁抵抗または漏えい電流 |
| ★接地 | ★★接地線の接続と接地抵抗 |
感電と火災につながるところに絞られています——限られた時間で危険を見つけるためです。
cの絶縁性能は、まさにこの調査で確かめる項目です——aとcが実務でつながっているのが分かります。
「一般送配電事業者等」がダミーである理由
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 電線路維持運用者 | ★★電線路維持運用者 | ★一般送配電事業者等 | ★★条文の用語はこちら |
| 占有者 | ★★占有者 | ★使用者 | ★★この条文に「使用者」という語はない |
| 措置 | ★★措置 | ★工事方法 | ★★通知するのは措置であって施工方法ではない |
実際に調査を担うのは一般送配電事業者です——しかし条文の用語は「電線路維持運用者」です。
実態と条文用語がずれている典型例です——試験では常に条文の語が正解になります。
「工事方法」まで指定しない理由
通知するのは、とるべき措置と、とらなかった場合に生ずべき結果です——どう直すかまでは指定しません。
電線路維持運用者は行政ではなく、命令する立場にないからです——危険を知らせて、判断は所有者に委ねるのです。
実際の工事は、電気工事士が行います——役割が分かれていることの表れです。
4年に1回という頻度
一般用電気工作物の調査は、原則として4年に1回以上行われます——施行規則で定められた頻度です。
調査は登録調査機関に委託されているのがほとんどです——法57条の2がその根拠になります。
家庭に調査員が来るのは、この規定にもとづく訪問です。
漏えい電流はどう測るのか
| 測定器 | 使い方 |
| ★絶縁抵抗計(メガー) | ★★停電させて電路に直流電圧を加える |
| ★クランプ式漏れ電流計 | ★★活線のまま電線をはさんで測る |
クランプ式なら、電気を止めずに測れます——だから「測定が困難な場合」の代替として使えるのです。
行きと帰りの電線をまとめてはさむと、差分=漏れた分が読めます——正常なら差はゼロになるはずだからです。
この原理は、漏電遮断器(ZCT)とまったく同じです——測定器と保護装置が同じ考え方でできているのです。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は問題文の定義をそのまま使う——電線路維持運用者。
② (イ)は「所有者又は占有者」——使用者はこの条文の語ではない。
③ (ウ)は「措置」。工事方法までは指定しない。
④ (エ)は1mA。2mAとしない。絶縁抵抗は0.1/0.2/0.4MΩ。
絶縁が悪いとどうなるのか
絶縁が劣化すると、本来流れないはずのところへ電流が漏れ出します——それが漏電です。
漏れた電流が人体を通れば感電、木材や埃を通れば発熱して火災になります。
だから調査では、まず絶縁を確かめます——数値で判定できる、いちばん確実な指標だからです。
出題履歴——調査義務は繰り返し出る
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成19年度 問1 | ★★調査・占有者・結果 |
| ★令和3年度 問1 | ★★調査+解釈14条の1mA(本問) |
| ★令和4年度上期 問1 | ★★保安体系の図のなかで |
平成19年度 A問題1は法57条だけを問う純粋な条文問題です。本問は解釈14条まで踏み込んだ複合型という違いがあります。
近年は法律と解釈をまたぐ出題がふえています——条文を単体で覚えるだけでは足りません。
💡 覚え方
法57条=電線路維持運用者が一般用電気工作物を調査(所有者又は占有者の承諾が得られなければ立入不要)。不適合ならとるべき措置と、とらなかった場合に生ずべき結果を通知。法57条の2で登録調査機関に委託可。解釈14条=絶縁抵抗測定が困難なら漏えい電流1mA以下。
⚠️ よくある間違い
(ア)は「一般送配電事業者等」ではなく条文用語の電線路維持運用者。(イ)は「使用者」ではなく占有者。(エ)を2mAとしない——1mA。
まとめ
| (ア) | 電線路維持運用者 |
| (イ) | 占有者(所有者又は占有者) |
| (ウ) | 措置 |
| (エ) | 1(mA以下) |
| 根拠 | 法57条・57条の2/解釈14条 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・保安体系の図(電気事業法9):【法規】令和4年度上期 A問題1
・調査の義務(電気事業法38):【法規】平成19年度 A問題1

コメント