今回は令和1年度 法規科目 A問題1、電気事業の定義と参入規制の空欄補充問題です。2016年の電力小売全面自由化で作られた枠組みが、そのまま条文になっています。
最重要は参入規制の3段階。小売電気事業=登録/発電事業=届出/一般送配電事業・送電事業=許可。ネットワークを独占する事業ほど規制が重い、と理解すれば丸暗記が要りません。
令和1年度 法規科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和1年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題1
電験3種 法規科目 【電気事業法】 令和1年度 A問題1
次の文章は、「電気事業法」に基づく電気事業に関する記述である。
a 小売供給とは、(ア)の需要に応じ電気を供給することをいい、小売電気事業を営もうとする者は、経済産業大臣の(イ)を受けなければならない。小売電気事業者は、正当な理由がある場合を除き、その小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要な(ウ)能力を確保しなければならない。
b 一般送配電事業とは、自らの送配電設備により、その供給区域において、(エ)供給及び電力量調整供給を行う事業をいい、その供給区域における最終保障供給及び離島の需要家への離島供給を含む。一般送配電事業を営もうとする者は、経済産業大臣の(オ)を受けなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 一般 登録 供給 託送 許可 (2) 特定 許可 発電 特定卸 認可 (3) 一般 登録 発電 特定卸 許可 (4) 一般 許可 供給 特定卸 認可 (5) 特定 登録 供給 託送 認可

答えは(1):一般・登録・供給・託送・許可
(ア)は「一般」——不特定多数を相手にするから一般です。
(イ)は「登録」・(オ)は「許可」——競争させたい分野は軽く、独占する分野は重く規制します。
(ウ)は「供給」能力・(エ)は「託送」供給——売る約束をした分を調達できること、他人の電気を運ぶことです。
参入規制は「独占の度合い」で決まる
| 事業 | 規制 | 理由 |
| ★小売電気事業 | ★★登録 | ★★競争させたい。要件を満たせば参入できる |
| ★発電事業 | ★★届出 | ★★最も軽い。出せばよい |
| ★特定送配電事業 | ★★届出 | ★★区域が限られる |
| ★一般送配電・送電・配電事業 | ★★許可 | ★★地域独占の社会インフラ。最も重い |
電線は二重三重に引けません——だから送配電は独占にせざるを得ず、そのぶん規制が重くなるのです。
逆に小売は電線を持たなくても始められます——だから登録で足りる、という理屈です。
届出・登録・許可の3段階を、この「独占の度合い」で並べ替えて覚えましょう。
「託送供給」とは他人の電気を運ぶこと
小売電気事業者は、自分では電線を持っていません——だから一般送配電事業者の電線を借りて電気を届けます。
この「借りて運んでもらう」仕組みが託送供給です——自由化した小売が成り立つのは、託送があるからです。
もう一方の電力量調整供給は、発電量と需要のズレを埋める供給です——電気は貯めにくいので、この調整がないと系統が保てません。
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 登録 | ★★登録 | ★許可 | ★★小売は競争分野なので登録 |
| 許可 | ★★許可 | ★認可 | ★★一般送配電事業は許可。認可は料金などに使う語 |
| 託送供給 | ★★託送供給 | ★特定卸 | ★★他人の電気を自社の網で運ぶのが託送 |
供給能力確保義務——電気は貯めにくいから
小売電気事業者には、売る約束をした分の電気を調達できる見通しを持つ義務があります。
ただし自前で発電する必要はありません——市場から買ってもよいので「発電能力」ではなく供給能力です。
この義務がないと、売るだけ売って電気が足りない事業者が出てしまいます——停電は社会全体に及ぶので、入口で防ぐのです。
⏱️ 本番での進め方
① まずどの事業の話かを見分ける。小売か送配電かで規制が変わる。
② 小売=登録/送配電=許可——この2つだけは反射で出るようにする。
③ 「認可」が出てきたら疑う。事業への参入は許可・登録・届出のいずれか。
④ (ウ)は「発電」ではなく「供給」——自前発電は要らない。
出題履歴——自由化以降の新しい定番
| 年度 | 問われ方 |
| ★令和1年度 問1 | ★★小売と一般送配電の定義(本問) |
| ★令和4年度下期 問10 | ★★広域的運営・供給計画 |
この分野は2016年以降に整備された条文なので、古い年度の過去問には出てきません——近年の問題で重点的に練習しましょう。
平成21年度 A問題1(法第1条)の前半「電気事業の運営を適正かつ合理的に」が、この参入規制として具体化しています。
一般送配電事業の4つの仕事
| 仕事 | 中身 |
| ★託送供給 | ★★他人の電気を自社の送配電網で運ぶ |
| ★電力量調整供給 | ★★発電量と需要のズレを埋める |
| ★最終保障供給 | ★★どこからも買えなくなった需要家に供給する |
| ★離島供給 | ★★離島の需要家に供給する |
前の2つが本業、後ろの2つがセーフティネットです——自由化しても電気が止まらないようにするための仕組みです。
小売事業者が倒れても、最終保障供給があるので電気は消えません——ただし料金は割高に設定されています。
この4つを言えるようにしておくと、定義の空欄はまず落としません。
自由化前と後で何が変わったか
| 自由化前 | 自由化後 | |
| ★事業区分 | ★★一般電気事業者がすべて担う | ★★発電・送配電・小売に分離 |
| ★小売 | ★★地域独占 | ★★登録すれば誰でも参入できる |
| ★送配電 | ★★同じ会社が持つ | ★★中立化され、託送で貸し出す |
古い過去問には「一般電気事業者」という語が出てきます——今は使われていない用語なので、注意して読みましょう。
逆に「託送供給」「電力量調整供給」は自由化後の語です——どちらの時代の問題かを意識すると混乱しません。
なぜ発電事業は届出でよいのか
発電所は、1か所止まっても他から融通できます——代わりがきくので、参入を厳しく絞る必要がないのです。
むしろ発電は数が増えたほうが、供給力にも競争にもプラスに働きます——だから最も軽い届出になっています。
いっぽう送配電網は、止まればその地域全体が停電します——代わりがきかないから許可、という対比で理解しましょう。
| 代わりがきくか | 規制 | |
| ★発電事業 | ★★きく(他所から融通できる) | ★★届出 |
| ★小売電気事業 | ★★きく(他社に乗り換えられる) | ★★登録 |
| ★一般送配電事業 | ★★きかない(電線は1本) | ★★許可 |
事業者の呼び名を整理しておく
| 名称 | やっていること |
| ★小売電気事業者 | ★★需要家に電気を売る |
| ★一般送配電事業者 | ★★供給区域の送配電網を持ち、託送する |
| ★送電事業者 | ★★一般送配電事業者に振替供給する |
| ★発電事業者 | ★★一定規模以上の発電設備を持つ |
名前が似ているので、問題文では必ず主語を確認しましょう——誰の話かで、答えの規制が変わります。
「一般送配電事業者」と「送電事業者」は特に紛らわしい——供給区域を持つのが一般送配電事業者と覚えておきます。
需要家から見ると何が起きているか
契約先を新電力に変えても、家まで来ている電線は同じままです——変わるのは電気を売る相手だけだからです。
電気そのものは一般送配電事業者の網を通って届きます——これが託送供給です。
だから新電力が撤退しても、停電はしません——最終保障供給が受け皿になるという設計です。
💡 覚え方
参入規制=小売電気事業は登録/発電事業は届出/一般送配電事業・送電事業・配電事業は許可/特定送配電事業は届出。一般送配電事業の中身=託送供給+電力量調整供給(+最終保障供給・離島供給)。小売電気事業者には供給能力確保義務。
⚠️ よくある間違い
小売電気事業を「許可」としないこと——登録。一般送配電事業を「認可」としないこと——許可。(エ)は「特定卸」ではなく託送供給。
まとめ
| (ア) | 一般(の需要) |
| (イ) | 登録(小売電気事業) |
| (ウ) | 供給(能力の確保) |
| (エ) | 託送(供給) |
| (オ) | 許可(一般送配電事業) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・広域的運営・供給計画(電気事業法8):【法規】令和4年度下期 A問題10
・電気事業法の目的(電気事業法32):【法規】平成21年度 A問題1

コメント