今回は平成24年度 法規科目 A問題3、電気設備に係る公害等の防止の正誤判定問題です。電気事業法の目的規定から、大気汚染防止法との関係、PCB規制まで幅広く問われます。
決め手はc のPCB。ポリ塩化ビフェニル(PCB)含有絶縁油の電気機械器具は新たに電路に施設してはならず、既設のものも一度取り外したら二度と施設できません。「流用・転用のため新たに施設できる」は明確な誤りです。
答えは(2):a適切・b適切・c不適切
決め手はcのPCBです——一度取り外したものを、流用・転用のために再び施設することはできません。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| ★a | ★★規制の目的は公共の安全の確保と環境の保全 | ★★適切(法1条) |
| ★b | ★★変電所等のばい煙規制は電気事業法の相当規定による | ★★適切 |
| ★c | ★★取り外したPCB機器を流用・転用のため再施設できる | ★不適切 |
aは法第1条の目的規定そのままです——「環境の保全」が目的に入っているのが盲点になります。
bは同じ規制を二重にかけないための適用除外の仕組みです。
平成24年度 法規科目 A問題3:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題3
電験3種 法規科目 【電気事業法】 平成24年度 A問題3
次のaからcの文章は、電気設備に係る公害等の防止に関する記述の一部である。「電気事業法」並びに「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」に基づき、適切なものと不適切なものの組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
a.電気事業法において、電気工作物の工事、維持及び運用を規制するのは、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図るためである。
b.変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に設置する、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設(一定の燃焼能力以上のガスタービン及びディーゼル機関)から発生するばい煙の排出に関する規制については、電気設備技術基準など電気事業法の相当規定の定めるところによることとなっている。
c.電気機械器具であって、ポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油を使用するものは、新しく電路に施設してはならない。ただし、この規制が施行された時点で現に電路に施設されていたものは、一度取り外しても、それを流用、転用するため新たに電路に施設することができる。
a b c (1) 適切 適切 適切 (2) 適切 適切 不適切 (3) 適切 不適切 不適切 (4) 不適切 適切 適切 (5) 不適切 不適切 適切

★PCBとは何か
| 内容 | |
| ★正式名 | ★★ポリ塩化ビフェニル |
| ★使われた理由 | ★★絶縁性が高く、燃えにくく、化学的に安定 |
| ★問題 | ★★分解されず生体に蓄積し、健康被害を起こす |
| ★使われた機器 | ★★変圧器・コンデンサの絶縁油、安定器 |
性能がよかったからこそ、広く使われてしまいました——その安定性が、環境中で分解されない原因にもなりました。
1968年のカネミ油症事件をきっかけに、製造が禁止されました。
★取り外したら再施設できない
| 状態 | できるか |
| ★新たに電路に施設する | ★できない |
| ★規制施行時から施設されているものを使い続ける | ★★できる |
| ★一度取り外して別の場所に施設する | ★できない |
使い続けることは認められています——いきなり全部止めさせるのは現実的でないからです。
しかし外したら、そこで終わりです——PCB特別措置法にもとづいて適正に処分する対象になります。
だからcの「流用、転用するため新たに電路に施設することができる」は明確な誤りです。
なぜ既設のものは使い続けてよいのか
PCB機器は全国に大量に残っていました——一斉に取り替えるだけの処理能力がなかったのです。
そこで新設だけを止め、既設は使いながら順次処分する方針が取られました——現実的な移行措置です。
ただし処分の期限は法律で定められています——いつまでも使ってよいわけではありません。
★適用除外という仕組み
| 対象 | 一般法 | 電気工作物では |
| ★ばい煙 | ★★大気汚染防止法 | ★★電気事業法の相当規定 |
| ★排水 | ★★水質汚濁防止法 | ★★電気事業法の相当規定 |
| ★騒音・振動 | ★★騒音規制法など | ★★電気事業法の相当規定 |
同じ設備に2つの法律が別々の基準をかけると、現場が混乱します——だから電気工作物は電気事業法側にまとめてあるのです。
規制が緩くなるわけではありません——窓口を一本化しているだけだと理解しましょう。
目的規定とのつながり
aが問うているのは法第1条の「環境の保全」です——この一語があるから、公害の規定が電気事業法に入れるのです。
目的に書いていないことは、その法律では扱えません——目的規定は、法律の守備範囲を決めています。
だから第1条は暗記する価値があります——本問はその実例だと言えます。
正誤問題としての作り
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 環境の保全 | ★★環境の保全 | ★公共の安全のみ | ★★目的には環境の保全も含まれる |
| 電気事業法の相当規定 | ★★電気事業法の相当規定 | ★大気汚染防止法が直接適用 | ★★電気工作物は適用除外 |
| 再施設できない | ★★再施設できない | ★流用・転用のため施設できる | ★★取り外したら終わり |
aとbは正しい記述で、cだけが誤りです——1つだけ変える、という定番の作り方です。
cは「ただし」以下が長いので、そこに誤りが仕込まれています——但し書きは疑ってかかるのが定石です。
公害防止まわりの規定
| 規定 | 内容 |
| ★法28条 | ★★公害の防止(大臣の勧告等) |
| ★省令19条 | ★★公害等の防止(ばい煙・PCB等) |
| ★PCB特別措置法 | ★★保管・処分の義務と期限 |
電気事業法と別の法律が組み合わさって、規制が成り立っています——PCBの処分は電気事業法だけでは完結しません。
実務では、保管状況の届出も必要になります。
実務で問題になる場面
古い変電設備を更新するとき、PCBの有無を必ず確認します——絶縁油を分析して判定するのが一般的です。
微量のPCBが混入している機器も見つかっています——製造時に意図せず混ざったものです。
主任技術者にとって、避けて通れない知識です——試験だけの話ではありません。
環境まわりで問われる論点
| 論点 | 要点 |
| ★ばい煙 | ★★電気工作物は電気事業法側で規制(適用除外) |
| ★PCB | ★★新設禁止・取り外したら再施設不可 |
| ★騒音・振動 | ★★同じく電気事業法の相当規定による |
| ★絶縁油の流出 | ★★変圧器の油流出防止措置が求められる |
いずれも法第1条の「環境の保全」から派生した規定です——目的規定を起点に整理すると覚えやすくなります。
出題頻度は高くありませんが、出れば確実に取りたい分野です——覚えることが少ないからです。
⏱️ 本番での進め方
① まずcのPCBを見る——「流用・転用のため施設できる」は明確な誤り。
② aは法1条の目的。「環境の保全」を目的から外さない。
③ bは適用除外。電気工作物のばい煙は電気事業法側で規制する。
④ 但し書きが長い記述はそこに誤りがあると疑ってよい。
PCBの処分はいつまでか
| 区分 | 扱い |
| ★高濃度PCB | ★★処分期間が地域ごとに定められ、順次終了している |
| ★低濃度PCB | ★★令和9年3月末までに処分することとされている |
いつまでも使い続けてよいわけではありません——PCB特別措置法が期限を定めています。
保管している場合は、毎年の届出も必要になります——主任技術者が関わる実務のひとつです。
なぜ電気の分野でPCBが問題になるのか
変圧器やコンデンサの絶縁油に、大量に使われたからです——燃えにくく絶縁性が高いという、理想的な性質だったのです。
その結果、電気設備がPCBの主要な保管場所になりました——だから電気事業法で規制されているのです。
出題履歴——目的規定から派生する論点
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成21年度 問1 | ★★法1条の目的そのもの |
| ★平成24年度 問3 | ★★公害防止・PCB(本問) |
平成21年度 A問題1で問われた「環境の保全」が、本問のaで実際に働いているのが分かります。
目的規定と個別条文をつなげて読むと、法律の構造が見えてきます——暗記が理解に変わるところです。
💡 覚え方
電気事業法第1条の目的=公共の安全の確保+環境の保全(+電気事業の健全な発達)。電気工作物のばい煙・排水・騒音は電気事業法側の規定で規制(大気汚染防止法等は適用除外)。PCB含有絶縁油の電気機械器具は新設禁止、取り外したら再施設不可。
⚠️ よくある間違い
「環境の保全」を法の目的から外さない。ばい煙規制を大気汚染防止法が直接かけると考えない——電気事業法の相当規定による。PCB機器の流用・転用は不可(既設のまま使い続けるのは可)。
まとめ
| a | 適切(法1条の目的) |
| b | 適切(ばい煙規制は電気事業法側) |
| c | 不適切(PCB機器の再施設は不可) |
| 答え | (2) |
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