今回は平成23年度 法規科目 A問題1、電気主任技術者の選任等を4つの事業場の具体例で問う問題です。選任のバリエーションを一気に整理できる良問です。
覚えるべきは4形態。①通常の選任(免状保有者・届出)②許可選任(免状がない者・許可)③兼任(承認)④外部委託(承認)。許可選任を受けていても、兼任させるには別に承認が要る——ここが本問の急所です。
平成23年度 法規科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題1
電験3種 法規科目 【電気事業法】 平成23年度 A問題1
次のaからcの文章は、自家用電気工作物を設置するX社が、需要設備又は変電所のみを直接統括する同社のA、B、C及びD事業場ごとに行う電気主任技術者の選任等に関する記述である。ただし、A〜Dの各事業場は、すべてY産業保安監督部の管轄区域内のみにある。「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」に基づき、適切なものと不適切なものの組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
a.受電電圧33kV、最大電力12000kWの需要設備を直接統括するA事業場に、X社の従業員で第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、電気主任技術者を選任し、遅滞なく、その旨をY産業保安監督部長に届け出た。
b.最大電力400kWの需要設備を直接統括するB事業場には、X社の従業員で第一種電気工事士試験に合格している者をあてることとして、保安上支障がないと認められたため、Y産業保安監督部長の許可を受けてその者を電気主任技術者に選任した。その後、その電気主任技術者を電圧6600Vの変電所を直接統括するC事業場の電気主任技術者として兼任させた。その際、B事業場への選任の許可を受けているので、Y産業保安監督部長の承認は求めなかった。
c.受電電圧6600Vの需要設備を直接統括するD事業場については、その需要設備の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務を委託する契約をZ法人(電気保安法人)と締結し、保安上支障がないものとしてY産業保安監督部長の承認を受けたので、電気主任技術者を選任しないこととした。
a b c (1) 不適切 適切 適切 (2) 適切 不適切 適切 (3) 適切 適切 不適切 (4) 不適切 適切 不適切 (5) 適切 不適切 不適切

答えは(2):a適切・b不適切・c適切
決め手はbです——許可選任を受けていても、兼任させるには別に承認が要ります。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| ★a | ★★33kV・12000kWの需要設備に第3種を選任し監督部長へ届出 | ★★適切 |
| ★b | ★★許可選任した者を別事業場に兼任させ、承認を求めなかった | ★不適切 |
| ★c | ★★6600V需要設備を電気保安法人に委託し承認を受けて選任せず | ★★適切 |
aは受電電圧33kVが第3種の範囲(5万V未満)に収まります——出力5000kWの制限は発電所の話で、需要設備には及びません。
★主任技術者の4形態
| 形態 | 誰が主任技術者か | 手続 |
| ★選任 | ★★免状を持つ自社の者 | ★★遅滞なく届出 |
| ★許可選任 | ★★免状のない自社の者 | ★★許可 |
| ★兼任 | ★★選任した者が他事業場も見る | ★★承認 |
| ★外部委託 | ★★選任しない(外部に委託) | ★★承認 |
手続の名前が届出・許可・承認と3種類あります——ここが混乱のもとです。
通常の選任だけが届出、あとはすべて行政の判断が要ります——例外だから審査されると理解しましょう。
★許可選任と兼任承認は別の手続
bの論理は「許可をもらっているから承認は要らない」というものです——これが成り立ちません。
許可選任は「この人を主任技術者にしてよいか」の判断です——B事業場について認められただけです。
兼任承認は「1人で複数を見られるか」の判断です——問うている中身がまったく違うのです。
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 兼任には承認が必要 | ★★兼任には承認が必要 | ★許可があれば承認不要 | ★★審査している中身が違う |
| 需要設備に出力制限なし | ★★需要設備に出力制限なし | ★12000kWは第3種の範囲外 | ★★5000kWは発電所の制限 |
| 外部委託は承認 | ★★外部委託は承認 | ★外部委託は届出 | ★★行政の判断が要る例外 |
aが適切である3つの理由
| 確認点 | 判定 |
| ★受電電圧33kV | ★★第3種の範囲(5万V未満)に収まる |
| ★最大電力12000kW | ★★需要設備には出力制限がない |
| ★届出先が監督部長 | ★★一の管轄区域内のみなので正しい |
3つとも確かめないと、適切だと言い切れません——1つでも外れれば不適切になります。
特に「12000kW」は大きな数字なので、5000kWの制限と混ざりやすい——あれは発電所の話だと切り分けましょう。
★「出力5000kW以上の発電所を除く」の読み方
第3種の範囲は「電圧5万V未満(出力5000kW以上の発電所を除く)」です——括弧の中は発電所だけを指しています。
需要設備の最大電力が何kWでも、この制限はかかりません——受電する設備には出力という概念がないからです。
ここを取り違えると、aを不適切と判断してしまいます——本問のもうひとつの罠です。
届出先が産業保安監督部長になる場合
| 事業場の所在 | 届出・承認の相手 |
| ★一の産業保安監督部の管轄区域内のみ | ★★産業保安監督部長 |
| ★複数の管轄区域にまたがる | ★★経済産業大臣 |
本問は「すべてY産業保安監督部の管轄区域内のみ」と書かれています——だから監督部長が正しい相手です。
問題文のこうした前提条件は、必ず読み飛ばさないこと——答えを左右します。
外部委託承認の典型例
cは6600V受電の需要設備を電気保安法人に委託した例です——7000V以下なので対象になります。
町の高圧受電のビルや工場では、これがいちばん一般的な形です——自社で主任技術者を雇うより現実的だからです。
承認を受けてはじめて、選任しないことが認められます——契約しただけでは足りません。
なぜ兼任に承認が要るのか
1人が複数の事業場を見れば、目が届かなくなる危険があります——距離や設備の規模によっては無理が生じます。
だから、その組み合わせで本当に保安が保てるかを行政が判断します——だから承認という重い手続なのです。
「人」を審査する許可選任とは、見ているものが違います。
実務で起きやすい間違い
| 思い込み | 正しくは |
| ★許可をもらえば何でもできる | ★★手続ごとに別の判断が必要 |
| ★委託契約を結べば選任不要 | ★★承認を受けてはじめて不要になる |
| ★大きな需要設備は第3種では無理 | ★★電圧が5万V未満なら可能 |
どれも「なんとなくそう思っていた」で済ませがちなところです——条文に戻って確かめる習慣が大切です。
本問は、その確認をひととおりさせてくれる良問です。
なぜ手続の名前が3つに分かれるのか
| 手続 | 行政の関与 | 使われる場面 |
| ★届出 | ★★出せばよい | ★★原則どおりの選任 |
| ★許可 | ★★人を審査する | ★★免状のない者を選ぶとき |
| ★承認 | ★★体制を審査する | ★★兼任・外部委託 |
原則どおりなら届出、例外なら審査——その審査の中身で許可と承認が分かれています。
許可は「この人でよいか」、承認は「この体制でよいか」を見ています——見ているものが違うから、名前も違うのです。
bが不適切なのは、この2つを取り違えているから——人の審査が済んでも、体制の審査は別に要ります。
⏱️ 本番での進め方
① 選任まわりは届出・許可・承認の3語を区別する。
② 許可選任と兼任承認は別手続——片方があっても他方は要る。
③ 出力5000kWの制限は発電所だけ。需要設備には無関係。
④ 問題文の「一の管轄区域内のみ」という前提を見落とさない。
誰が主任技術者になれるのか
原則は免状を持っている人です——第1種・第2種・第3種のいずれかの交付を受けている必要があります。
bのように第一種電気工事士の合格者は、主任技術者免状を持っていません——だから許可がなければ選任できないのです。
電気工事士と電気主任技術者は、まったく別の資格です——工事をする人と、保安を監督する人という違いがあります。
出題履歴——選任は毎年のように出る
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成23年度 問1 | ★★4形態を具体例で(本問) |
| ★平成28年度 問1 | ★★外部委託承認の対象 |
| ★令和2年度 問1 | ★★免状の範囲 |
平成28年度 A問題1は外部委託承認だけを掘り下げた問題です。本問の4形態を押さえておけば、そちらも自然に解けます。
令和2年度 A問題1で免状の範囲を、この3本で選任まわりが一通りそろいます。
💡 覚え方
主任技術者の4形態=①選任(免状保有者/遅滞なく届出)②許可選任(免状なしでも保安上支障なければ許可)③兼任(承認が必要)④外部委託(7000V以下等・承認で選任不要)。手続の名前が届出/許可/承認で違う点に注意。
⚠️ よくある間違い
許可選任と兼任承認は別手続——片方があるからもう片方が不要にはならない。第3種の範囲は5万V未満、出力5000kWの制限は発電所のみで需要設備には無関係。
まとめ
| a | 適切(33kV=5万V未満・届出先は監督部長) |
| b | 不適切(兼任には別途承認が必要) |
| c | 適切(6600V需要設備は外部委託承認の対象) |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・外部委託承認の対象(電気事業法19):【法規】平成28年度 A問題1
・主任技術者の範囲(電気事業法12):【法規】令和2年度 A問題1

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