今回は平成24年度 法規科目 A問題2、立入検査の空欄補充問題です。行政法の共通ルールが電気事業法にもそのまま入っている、覚えやすい条文です。
立入検査の3点セットは①法の施行に必要な限度で行う ②職員は身分を示す証明書を携帯し請求があれば提示 ③権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。この3つはほぼどの業法にも共通して置かれています。
答えは(4):電気事業法の施行・身分・犯罪捜査
(ア)は「電気事業法の施行」——緊急時に限った規定ではありません。
(イ)は「身分」——身分を示す証明書を携帯し、請求があったときに提示します。
(ウ)は「犯罪捜査」——行政調査と刑事捜査を切り分ける規定です。
平成24年度 法規科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題2
電験3種 法規科目 【電気事業法】 平成24年度 A問題2
次の文章は、「電気事業法」に基づく、立入検査に関する記述の一部である。
経済産業大臣は、(ア)に必要な限度において、経済産業省の職員に、電気事業者の事業所、その他事業場に立ち入り、業務の状況、電気工作物、書類その他の物件を検査させることができる。また、自家用電気工作物を設置する者の工場、事務所その他の事業場に立ち入り、電気工作物、書類その他の物件を検査させることができる。
立入検査をする職員は、その(イ)を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
立入検査の権限は、(ウ)のために認められたものと解釈してはならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 電気事業法の施行 理由 行政処分 (2) 緊急時 身分 犯罪捜査 (3) 緊急時 理由 行政処分 (4) 電気事業法の施行 身分 犯罪捜査 (5) 緊急時 身分 行政処分

立入検査の3点セット
| 内容 | 意味 | |
| ★① | ★★法の施行に必要な限度で行う | ★★やりすぎてはいけないという歯止め |
| ★② | ★★身分証を携帯し、請求があれば提示 | ★★相手が本物か確かめられるようにする |
| ★③ | ★★犯罪捜査のために認められたものではない | ★★行政調査と刑事捜査の峻別 |
この3つは電気事業法に限らず、多くの業法で同じ形をしています——一度覚えれば、他の法令でも使える知識です。
だから「見たことがある形だ」と気づけば、すぐに答えが出ます。
なぜ「犯罪捜査のためではない」と書くのか
刑事捜査で家宅捜索をするには、裁判官の令状が要ります——憲法第35条が定める令状主義です。
いっぽう行政の立入検査には、令状は要りません——目的が処罰ではなく、法律を守らせることだからです。
もし立入検査を捜査に流用できてしまうと、令状主義が骨抜きになります——だからわざわざ条文で釘を刺しているのです。
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 電気事業法の施行 | ★★電気事業法の施行 | ★緊急時 | ★★日常的な保安監督として行える |
| 身分 | ★★身分 | ★理由 | ★★示すのは職員が本物であること |
| 犯罪捜査 | ★★犯罪捜査 | ★行政処分 | ★★行政調査と刑事捜査を分ける規定 |
報告徴収(法106条)とセットで覚える
| 報告徴収(法106条) | 立入検査(法107条) | |
| ★何をする | ★★報告又は資料の提出を求める | ★★現場に立ち入って検査する |
| ★負担 | ★★軽い(書類で済む) | ★★重い(人が出向く) |
| ★順番 | ★★まずこちら | ★★必要なら |
まず書類で確かめ、それで足りなければ現場を見る——負担の軽いほうから使うという順番です。
2つの条文は並んで置かれています——106条と107条はセットで出題されると思っておきましょう。
検査の対象は事業者だけではない
条文は、電気事業者の事業場に加えて「自家用電気工作物を設置する者の工場、事務所その他の事業場」も対象にしています。
つまり工場やビルにも、立入検査は来ます——自家用の主任技術者にとっては他人事ではありません。
年次点検の記録や保安規程が整っているかが見られます——だから記録を残すことが7項目に入っているのです。
「必要な限度において」が守るもの
この言い回しは、行政の権限に枠をはめるための決まり文句です——目的に照らして必要な範囲を超えてはいけません。
電気の使用制限(法34条の2)にも同じ表現があります——権限を与える条文には、必ず歯止めが付いているのです。
この形を覚えておくと、条文を読む速度が上がります。
「関係人」とは誰のことか
関係人とは、その場にいて検査に関わりのある人です——事業場の責任者や、立ち会っている従業員が当たります。
その人から求められたら、職員は身分証を見せなければなりません——本物かどうか確かめる手段を与えているのです。
逆に、請求がなければ提示しなくてもかまいません——常に掲げて回る必要はない、という点も条文どおりです。
検査を拒んだらどうなるか
立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した場合には罰則があります——拒めるなら制度が成り立たないからです。
ただし令状は不要でも、実力で押し入る権限はありません——あくまで罰則によって間接的に担保しているのです。
この「間接強制」という形も、行政調査に共通する特徴です。
行政調査は他の場面にもある
| 場面 | 誰が誰に |
| ★報告徴収(法106条) | ★★大臣が事業者・自家用設置者に報告を求める |
| ★立入検査(法107条) | ★★職員が現場に立ち入る |
| ★調査(法57条) | ★★電線路維持運用者が一般用電気工作物を調べる |
3つとも「実態を確かめる」仕組みですが、主体が違います——法57条だけは行政ではなく民間が行うのが特徴です。
誰が調べるのかを整理しておくと、条文の取り違えが減ります。
⏱️ 本番での進め方
① 「緊急時」に限定した肢は落とす——日常的に行える検査。
② 「身分」を示す証明書——理由を示すのではない。
③ 「犯罪捜査のためではない」は業法共通の決まり文句。
④ 3空欄とも独立に判断できる——1つでも確実なら肢が絞れる。
3点セットは他の法律でも使える
「法の施行に必要な限度・身分証の携帯と提示・犯罪捜査ではない」——この形はほとんどの業法に共通しています。
だから一度覚えれば、電気工事士法でも消防法でも同じ判断ができます——つぶしの効く知識です。
法規の勉強では、こうした共通の型を見つけると効率が上がります——条文を1本ずつ覚えるのではなく、型で覚えるのです。
行政の権限を定める条文には、必ず歯止めが付いています——「必要な限度において」がその代表です。
権限と歯止めはセットで書かれる、と覚えておきましょう。
出題履歴と関連条文
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成24年度 問2 | ★★立入検査の3点セット(本問) |
| ★令和4年度上期 問1 | ★★保安体系の図のなかで |
平成23年度 A問題2(技術基準適合命令)と合わせると、維持義務→立入検査→適合命令という保安規制の流れが完成します。
義務を課し、守られているか確かめ、破られていたら直させる——この3点で電気事業法の保安規制は回っています。
💡 覚え方
立入検査(法107条)=①法の施行に必要な限度 ②職員は身分証を携帯し請求時に提示 ③犯罪捜査のためではない。対象は電気事業者のほか自家用電気工作物を設置する者の工場・事務所も含む。法106条の報告徴収とセット。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「緊急時」に限定しない。(イ)は「理由」ではなく身分。(ウ)は「行政処分」ではなく犯罪捜査——令状主義との関係が趣旨。
まとめ
| (ア) | 電気事業法の施行(に必要な限度) |
| (イ) | 身分(を示す証明書) |
| (ウ) | 犯罪捜査 |
| 根拠 | 電気事業法 第107条 |
| 関連 | 法106条=報告徴収 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・保安体系の図(電気事業法9):【法規】令和4年度上期 A問題1
・技術基準適合命令(電気事業法30):【法規】平成23年度 A問題2

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