今回は平成24年度 法規科目 A問題1、電気の使用制限等の空欄補充問題です。東日本大震災の翌年に出題され、その後令和7年度下期 A問題1でそのまま再出題されました。
この条文は「使用」する側を制限するのが一貫した性格です。命令・勧告するのは経済産業大臣、限度を定めるのは使用電力量と使用最大電力、停止すべき日時、そして受電電力の容量。この向きさえ間違えなければ確実に取れます。
平成24年度 法規科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題1
電験3種 法規科目 【電気事業法】 平成24年度 A問題1
次の文章は、「電気事業法」における、電気の使用制限等に関する記述である。
(ア)は、電気の需給の調整を行わなければ電気の供給の不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし、公共の利益を阻害するおそれがあると認められるときは、その事態を克服するため必要な限度において、政令で定めるところにより、(イ)の限度、(ウ)の限度、用途若しくは使用を停止すべき(エ)を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者の供給する電気の使用を制限し、又は(オ)電力の容量の限度を定めて、一般電気事業者、特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者からの(オ)を制限することができる。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 経済産業大臣 使用電力量 使用最大電力 区域 受電 (2) 内閣総理大臣 供給電力量 供給最大電力 区域 送電 (3) 経済産業大臣 供給電力量 供給最大電力 区域 送電 (4) 内閣総理大臣 使用電力量 使用最大電力 日時 受電 (5) 経済産業大臣 使用電力量 使用最大電力 日時 受電

答えは(5):使う側を絞る条文
空欄の答えは13年後の令和7年度下期とまったく同じです——経済産業大臣・使用電力量・使用最大電力・日時・受電。
この問題は東日本大震災の翌年に出題されました——実際に使用制限令が発動された直後だったのです。
2011年に何が起きたか
震災で発電所が一斉に止まり、東京電力・東北電力の管内で供給力が大きく落ちました。
そこで契約電力500kW以上の大口需要家に対し、この条文にもとづく使用制限令が出されました——前年比15%の削減義務です。
戦後の混乱期を除けば、きわめて異例の措置でした——だから翌年の試験に出たのです。
計画停電と使用制限はどう違うか
| 使用制限(法34条の2) | 計画停電 | |
| ★誰が | ★★経済産業大臣 | ★★電力会社 |
| ★何を | ★★使う量に上限をかける | ★★送電そのものを止める |
| ★対象 | ★★主に大口需要家 | ★★区域を区切って全需要家 |
使用制限は「使ってよい量を決める」措置です——電気を止めるわけではありません。
計画停電は最後の手段で、区域ごとに順番に止めます——ここが(エ)で「区域」を選びたくなる原因です。
しかし法34条の2が定めるのは「日時」です——区域で切るのは計画停電のほうだと切り分けましょう。
旧事業者名を現行名に読み替える
| 出題当時の呼称 | 現在に対応するもの |
| ★一般電気事業者 | ★★大手電力会社(小売+一般送配電に分割) |
| ★特定電気事業者 | ★★登録特定送配電事業者 |
| ★特定規模電気事業者 | ★★小売電気事業者(新電力) |
2016年の小売全面自由化で、事業区分がすべて組み替えられました——古い過去問の用語は、この表で読み替えます。
用語が古くても、解く手順は今とまったく同じです——「使う側の語を選ぶ」だけだからです。
「用途若しくは使用を停止すべき日時」の読み方
この部分は「用途」と「使用を停止すべき日時」の2つを並べています——用途とは、何に使うかの限定です。
たとえばネオンサインや広告照明への使用を止める、といった使い方が想定されています。
量・ピーク・用途・日時と、絞り方が4通り用意されている——事態に応じて選べるようにしてあるのです。
需給ひっ迫はなぜ起きるのか
| 原因 | 起きること |
| ★猛暑・厳寒 | ★★冷暖房で需要が跳ね上がる |
| ★発電所の停止 | ★★事故・地震で供給力が落ちる |
| ★天候不順 | ★★太陽光の出力が読めなくなる |
電気は大量には貯められません——だから、その瞬間に作る量と使う量を合わせ続ける必要があるのです。
供給を増やせないときは、需要を減らすしかありません——それがこの条文の存在理由です。
使用制限令はどう運用されたか
| 項目 | 2011年の運用 |
| ★対象 | ★★契約電力500kW以上の大口需要家 |
| ★内容 | ★★前年同期比で使用最大電力を15%削減 |
| ★期間 | ★★夏季の平日昼間 |
削減が求められたのは使用最大電力、つまりピークです——総量ではなくピークを絞ったのは、発電設備が足りなかったからです。
条文が総量とピークの両方を用意している意味が、ここで効いてきます——足りない理由に合わせて手を選べるのです。
大口と小口で扱いが違った
大口需要家には、法律にもとづく制限がかかりました——従わなければ処分の対象になります。
いっぽう一般家庭や小規模事業者には、節電の呼びかけにとどめられました——数が多く、一律の制限がなじまないからです。
効果の大きいところに強い手を集中させる——限られた行政の力を効率よく使う考え方です。
節電要請と使用制限はどう違うか
| 節電要請 | 使用制限 | |
| ★根拠 | ★★法律によらない呼びかけ | ★★法34条の2 |
| ★従う義務 | ★★ない | ★★ある(命令の場合) |
| ★対象 | ★★すべての需要家 | ★★政令で定める範囲 |
ニュースで見る「節電のお願い」は、この条文の手前の段階です——法律の出番が来る前に、自主的に減らしてもらうのです。
条文の勧告も、命令の一歩手前に置かれた弱い手です——要請・勧告・命令の三段構えと整理しておきましょう。
⏱️ 本番での進め方
① 古い年度でも事業者名は読み飛ばしてよい——空欄になるのは制限の中身。
② 「使用」「受電」を含む語をすべて選ぶ——それだけで(5)に絞れる。
③ 「区域」に引かれたら、計画停電と混ざっていないか疑う。
④ (ア)は考えるまでもなく経済産業大臣。
この条文を一行でまとめると
「足りないときは、使う側を絞る」——それだけの条文です。
絞り方が4通り(総量・ピーク・用途・日時)、受け取り方の制限が1通り(受電容量)——合わせて5つの手段が用意されています。
行政庁は経済産業大臣、手段は勧告と命令——この3点さえ言えれば、どの空欄でも埋まります。
震災のあと、電気は「あって当たり前」ではないと多くの人が知りました——この条文は、その記憶とともにある規定です。
だから出題されると、ただの暗記問題以上の重みがあります。
条文が現実に動いた場面を知っていると、語の向きで迷わなくなります——絞られたのは使う側だったのです。
出題履歴——令和7年度下期に同一問題で再登場
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成24年度 問1 | ★★本問(震災の翌年) |
| ★令和2年度 問1 | ★★同じ条文を別の形で |
| ★令和7年度下期 問1 | ★★本問と同一(呼称のみ現行法に更新) |
令和7年度下期 A問題1が本問の再出題版です。選択肢の並びも答えも同じで、事業者の呼び名だけが現行法に直されています。
13年あいての再出題は、法規では珍しくありません——古い年度を解く価値は十分にあるのです。
💡 覚え方
使用制限(法34条の2)=経済産業大臣が、使用電力量の限度・使用最大電力の限度・用途・使用を停止すべき日時を定めて使用を制限、又は受電電力の容量の限度を定めて受電を制限。2011年の震災後に実際に発動された条文。
⚠️ よくある間違い
(エ)を「区域」としない——区域で切るのは計画停電。条文が定めるのは日時。供給側の語(供給電力量・送電)を選ばない。
まとめ
| (ア) | 経済産業大臣 |
| (イ) | 使用電力量(の限度) |
| (ウ) | 使用最大電力(の限度) |
| (エ) | 日時 |
| (オ) | 受電 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同一問題(電気事業法1):【法規】令和7年度下期 A問題1
・電気事業の定義(電気事業法13):【法規】令和1年度 A問題1

コメント