今回は平成23年度 法規科目 B問題13、中性点非接地方式の1線地絡電流を求める計算と地絡保護協調の論述を組み合わせた総合問題です。地絡電流の公式は電力科目でも頻出です。
非接地系の1線完全地絡電流はIg=3ωCE(C=一相の全対地静電容量の合計、E=相電圧)。地絡点から見ると系統全体の対地静電容量が並列で効くのがポイントです。
平成23年度 法規科目 B問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題13
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成23年度 B問題13
図は、電圧6600V、周波数50Hz、中性点非接地方式の三相3線式配電線路及び需要家Aの高圧地絡保護システムを簡易に表した単線図である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(問題文と図・付表は上の画像を参照してください。C₁=3.0μF、C₂=0.015μF。)
図は、電圧6600V、周波数50Hz、中性点非接地方式の三相3線式配電線路及び需要家Aの高圧地絡保護システムを簡易に表した単線図である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、図で使用している主要な文字記号は付表のとおりとし、C₁=3.0μF、C₂=0.015μFとする。なお、図示されていない線路定数及び配電用変電所の制限抵抗は無視するものとする。
(a) 図の配電線路において、遮断器CBが「入」の状態で地絡事故点に一線完全地絡事故が発生した場合の地絡電流Ig[A]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、間欠アークによる高調波の影響は無視できるものとする。
(1)4 (2)7 (3)11 (4)19 (5)33 A
(b) 図のような高圧配電線路に接続される需要家が、需要家構内の地絡保護のために設置する継電器の保護協調に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。なお、記述中「不必要動作」とは、需要家の構外事故において継電器が動作することをいう。
(1) 需要家が設置する地絡継電器の動作電流及び動作時限整定値は、配電用変電所の整定値より小さくする必要がある。
(2) 需要家の構内高圧ケーブルが極めて短い場合、需要家が設置する継電器が無方向性地絡継電器でも、不必要動作の発生は少ない。
(3) 需要家が地絡方向継電器を設置すれば、構内高圧ケーブルが長い場合でも不必要動作は防げる。
(4) 需要家が地絡方向継電器を設置した場合、その整定値は配電用変電所との保護協調に関し動作時限のみ考慮すればよい。
(5) 地絡事故電流の大きさを考える場合、地絡事故が間欠アーク現象を伴うことを想定し、波形ひずみによる高調波の影響を考慮する必要がある。





答えは(a)11A・(b)(4)
計算と論述を組み合わせた総合問題です。
★★(a)なぜ3倍なのか
★線間電圧をそのまま使わない
配電線と需要家構内を合計する
(a)の答え
3倍になるのは、健全2相の対地静電容量を通じて電流が流れるためです。
ベクトル的に合成すると、ちょうど3ωCEになります——公式として覚えます。
Eは相電圧——線間電圧6 600Vをそのまま使うと√3倍ずれます。
★系統全体の静電容量を足す
| 対象 | 静電容量 | 扱い |
| ★配電線 C₁ | ★★3.0μF | ★★系統側の全対地容量 |
| ★需要家構内 C₂ | ★★0.015μF | ★★構内ケーブルの対地容量 |
| ★合計 C | ★★3.015μF | ★★★並列なので単純に加算 |
地絡点から見れば、すべての対地静電容量が並列です——だから足し合わせる。
C₂は非常に小さいので、ほぼC₁で決まります——系統の規模が地絡電流を決めるのです。
これが解釈17条の1線地絡電流の算出式の背景でもあります。
★★非接地方式の特徴
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 非接地方式(高圧配電) | ★★非接地方式(高圧配電) | ★直接接地方式(特別高圧) | ★★地絡電流が小さい/地絡電流が大きい |
| 継続運転が可能 | ★★継続運転が可能 | ★即座に遮断が必要 | ★★地絡時の対応が違う |
非接地なので、地絡電流は対地静電容量を通る分だけです——数A〜数十A。
だから機器の損傷が小さく、通信線への誘導障害も少ない——高圧配電に適しているのです。
ただし健全相の対地電圧が√3倍に上昇します——絶縁に余裕が要る。
★(b)なぜ(4)が誤りなのか
| 整定項目 | 協調の要否 |
| ★動作時限 | ★★必要(需要家が先に動作する) |
| ★動作電流 | ★★★必要(DGRでも省略できない) |
DGRは方向判別ができるので、もらい事故は防げます——それは(3)のとおり。
しかし構内事故のときは、変電所より先に動作する必要があります——動作電流も動作時限も協調が要るのです。
「動作時限のみ考慮すればよい」は言い過ぎ——だから誤りです。
★(1)(2)(3)(5)が正しい理由
| 選択肢 | 内容 | 判定 |
| ★(1) | ★★整定値は変電所より小さくする | ★★正しい(先に動作させる) |
| ★(2) | ★★構内ケーブルが短ければ無方向性でも可 | ★★正しい(充電電流が小さい) |
| ★(3) | ★★DGRなら長くても不必要動作を防げる | ★★正しい(方向判別できる) |
| ★(5) | ★★間欠アークの高調波を考慮する | ★★正しい(波形がひずむ) |
(2)と(3)は対になっています——短ければGRでよい、長ければDGRが要る。
(5)の間欠アークは、地絡が断続的に起きる現象——高調波を含む大きな電流になります。
★間欠アーク地絡
地絡点でアークが点いたり消えたりを繰り返す現象です。
そのたびに過渡的な振動電流が流れ、定常値より大きな電流と高い電圧を生じます。
だから(a)の計算値より実際は大きくなりうる——(5)が正しい理由です。
もらい事故が起きる仕組み
構外事故のときも流れる
無方向性GRが誤動作する
構外で地絡が起きても、自分のZCTには電流が流れます——構内の対地容量を通る分。
無方向性のGRはこれを地絡と誤認する——不必要動作です。
本問のC₂=0.015μFは小さいので、無方向性でも問題は少ない——(2)の内容です。
DGRが方向を判別する仕組み
| 構内事故 | 構外事故 | |
| ★零相電流の向き | ★★構内→系統 | ★★系統→構内 |
| ★零相電圧との位相 | ★★ある関係 | ★★逆の関係 |
| ★DGRの動作 | ★★動作する | ★★動作しない |
零相電圧を基準にすれば、電流の向きがわかります——だからZPDが必要なのです。
電流の大きさだけでは方向がわからない——これが無方向性の限界です。
解釈17条の算出式との関係
| 本問(I_g=3ωCE) | 解釈17条の式 | |
| ★性質 | ★★物理から導いた理論値 | ★★線路長から求める経験式 |
| ★入力 | ★★対地静電容量 | ★★電線延長・線路延長 |
どちらも1線地絡電流を求めますが、アプローチが違います。
解釈17条は静電容量を測らなくても線路長からわかる式——実用的な近似です。
その背景にあるのが本問のI_g=3ωCE——2つはつながっています。
⏱️ 本番での進め方
① I_g=3ωCE——Eは相電圧(線間電圧÷√3)。
② Cは系統全体の一相分の対地静電容量の合計。
③ 需要家の整定値は変電所より小さくする。
④ DGRでも動作電流の協調は必要——時限のみは誤り。
💡 覚え方
中性点非接地方式の1線完全地絡電流=I_g=3ωCE(C:一相の全対地静電容量の合計、E:相電圧=線間電圧÷√3)。地絡点から見て系統全体の対地静電容量が並列に効く。地絡保護協調では、需要家の整定値(動作電流・動作時限とも)を配電用変電所より小さくする。
⚠️ よくある間違い
Eは相電圧——線間電圧をそのまま使うと√3倍ずれる。DGRを設置しても動作電流の協調は必要——動作時限のみでよいというのは誤り。
まとめ
| C | C₁+C₂=3.0+0.015=3.015μF |
| E | 6600/√3≒3810.5V |
| ω | 2π×50≒314.2rad/s |
| (a)Ig | 3ωCE≒10.8A→11 →(3) |
| (b)誤り | (4)DGRは動作電流も協調が必要 |
| 答え | (a)-(3),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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