今回は令和3年度 法規科目 A問題10、高圧受電設備の保護協調についてa)〜e)の記述が適切か不適切かを判定する問題です。単線結線図と保護機器の役割を総合的に問う良問です。
保護協調の大原則は「事故点直近上位の保護機器だけが動作する」こと。下位(負荷側)ほど速く動作させ、上位(電源側)は動作しないよう整定します。これで事故の影響を最小範囲に閉じ込められます。
答えは(1):a〜d適切・e不適切
単線結線図と保護機器の役割を総合的に問う良問です。
令和3年度 法規科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題10
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 令和3年度 A問題10
次のa)〜e)の文章は、図の高圧受電設備における保護協調に関する記述である。これらの文章の内容について、適切なものと不適切なものの組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
a)受電設備内(図中A点)において短絡事故が発生した場合、VCB(真空遮断器)が、一般送配電事業者の配電用変電所の送り出し遮断器よりも早く動作するようにOCR(過電流継電器)の整定値を決定した。
b)TR2(変圧器)の低圧側で、かつMCCB2(配線用遮断器)の電源側(図中B点)で短絡事故が発生した場合、VCB(真空遮断器)が動作するよりも早くLBS2(負荷開閉器)のPF2(電力ヒューズ)が溶断するように設計した。
c)低圧のMCCB2(配線用遮断器)の負荷側(図中C点)で短絡事故が発生した場合、MCCB2(配線用遮断器)が動作するよりも先にLBS2(負荷開閉器)のPF2(電力ヒューズ)が溶断しないように設計した。
d)SC(高圧コンデンサ)の端子間(図中D点)で短絡事故が発生した場合、VCB(真空遮断器)が動作するよりも早くLBS3(負荷開閉器)のPF3(電力ヒューズ)が溶断するように設計した。
e)GR付PAS(地絡継電装置付高圧交流負荷開閉器)は、高圧引込ケーブルで1線地絡事故が発生した場合であっても動作しないように設計した。
a b c d e (1) 適切 適切 適切 適切 不適切 (2) 不適切 不適切 適切 不適切 適切 (3) 適切 適切 不適切 不適切 不適切 (4) 適切 不適切 適切 適切 適切 (5) 不適切 適切 不適切 不適切 不適切



★★判定の基準は1つだけ
| 事故点 | 直近上位 | 動作すべき機器 |
| ★A点(受電設備内) | ★★VCB | ★★VCBが変電所より先に |
| ★B点(TR2低圧側) | ★★PF2 | ★★PF2がVCBより先に |
| ★C点(MCCB2負荷側) | ★★MCCB2 | ★★MCCB2がPF2より先に |
| ★D点(SC端子間) | ★★PF3 | ★★PF3がVCBより先に |
事故点から見て最も近い上位の機器が動く——それだけで4つとも判定できます。
a〜dはすべてこの原則どおり——だから適切です。
★a)を検証——波及事故の防止
受電設備内の短絡で、電力会社の遮断器が先に切れたら——同じ配電線の他需要家も停電します。
自分の事故は自分で先に切る——これが波及事故を防ぐ基本です。
だからVCBのOCRを変電所より速く整定する——適切です。
★b)c)を検証——上下の関係
| 記述 | 内容 | 判定 |
| ★b) | ★★B点の短絡でPF2がVCBより早く溶断 | ★★適切(TR2回路だけ切れる) |
| ★c) | ★★C点の短絡でPF2がMCCB2より先に溶断しない | ★★適切(MCCB2が先に切る) |
b)はPF2が下位、c)はMCCB2が下位——事故点の位置で上下が変わります。
同じPF2でも、事故点によって「先に切るべき」か「切ってはいけない」かが変わるのです。
ここが本問の巧妙なところ——事故点を必ず確認します。
★d)を検証——コンデンサの保護
SC(高圧コンデンサ)の端子間の短絡は、SC回路だけの事故です。
直近上位のPF3が切れれば、他の回路は生きたまま——影響が最小になります。
VCBが切れれば構内全停電——だからPF3を先に。適切です。
★★e)を検証——ここだけが不適切
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 構内の地絡(高圧引込ケーブル) | ★★構内の地絡(高圧引込ケーブル) | ★構外の地絡(もらい事故) | ★★GR付PASは動作すべき/動作すべきでない |
| 自分の事故 | ★★自分の事故 | ★他人の事故 | ★★動作の要否が逆 |
高圧引込ケーブルは需要家の設備です——そこの地絡は自分の事故。
GR付PASはまさにそれを検出して切り離すための装置——動作しなければ意味がないのです。
「動作しないように設計した」は完全に逆——だから不適切です。
動作すべきでないのは構外事故(もらい事故)のとき——そのためにDGRを使うのです。
★時限協調の考え方
Δtは協調時間差(0.2〜0.3秒程度)
単に「上位を遅く」ではなく、確実な時間差を設けます——誤差を見込むのです。
下位が動作し、遮断が完了するまでの時間を考慮——それが協調時間差です。
ヒューズと継電器では特性曲線が違うので、重ならないよう確認します。
動作特性曲線で確認する
| 軸 | 内容 |
| ★横軸 | ★★電流[A](対数目盛) |
| ★縦軸 | ★★動作時間[s](対数目盛) |
| ★協調がとれている | ★★下位の曲線が上位より下(速い) |
両対数グラフに各機器の特性を重ねて描きます——曲線が交差しなければ協調がとれている。
令和2年度B問題11では、この曲線を読む問題が出ました。
保護協調が崩れる原因
| 原因 | 内容 |
| ★整定値の変更 | ★★機器増設時に見直しを忘れる |
| ★機器の更新 | ★★特性の違う機器に交換した |
| ★継電器の劣化 | ★★動作時間がずれてくる |
設置時に協調がとれていても、年月が経てば崩れます——だから定期試験が要るのです。
増設のたびに保護協調を再検討する——電気主任技術者の職務です。
なぜ電力ヒューズを使うのか
| 用途 | 理由 |
| ★変圧器の保護 | ★★短絡電流を素早く限流遮断できる |
| ★コンデンサの保護 | ★★内部短絡時に確実に切り離す |
| ★経済性 | ★★遮断器より安価で小型 |
変圧器やコンデンサごとに遮断器を置くのは高価すぎます——ヒューズなら安く済む。
しかも遮断器より速く、限流効果もあります——機器へのストレスが小さいのです。
本問のPF2・PF3がその役割を担っています。
低圧側の保護
| 機器 | 役割 |
| ★MCCB(配線用遮断器) | ★★低圧幹線・分岐回路の過電流保護 |
| ★ELCB(漏電遮断器) | ★★低圧側の地絡保護 |
低圧側にも段階的な保護があります——幹線用と分岐用。
C点の事故ではMCCB2が最も近い上位——だからMCCB2が先に切るべきです。
高圧から低圧まで、全体で協調をとるのです。
進相コンデンサの保護
| 異常 | 対応 |
| ★内部短絡 | ★★電力ヒューズ(PF3)が溶断する |
| ★過電圧 | ★★直列リアクトルで抑制する |
| ★高調波の流入 | ★★6%直列リアクトルで共振を避ける |
コンデンサは高調波に弱く、過熱・膨張して故障します——だから直列リアクトルが必須。
故障時にはPF3が切り離す——他の回路に影響を及ぼさないのです。
d)の記述はこの設計を述べています。
適否判定問題の解き方
a〜eを1つずつ、原則に照らして判定します——まとめて考えないこと。
本問は原則が1つ(直近上位のみ動作)なので、判定の基準がぶれません。
1つだけ性質の違う記述(e)が混じっている——それを見つけるのが問題の狙いです。
⏱️ 本番での進め方
① 原則は事故点直近上位のみ動作。
② 同じ機器でも事故点の位置で上下が変わる。
③ GR付PASは構内の地絡で動作すべき——e)が不適切。
④ 動作すべきでないのは構外事故のとき(DGRで対応)。
💡 覚え方
保護協調の原則=事故点直近上位の保護機器だけが動作するように整定する。下位(負荷側)ほど速く、上位(電源側)は動作しないようにし、協調時間差を設ける。GR付PASは構内(高圧引込ケーブル)の地絡では動作すべきで、動作すべきでないのは構外事故(もらい事故)のとき。
⚠️ よくある間違い
GR付PASを「地絡で動作しないように設計」は不適切——構内地絡では動作しなければならない。事故点の位置で上位・下位が入れ替わる——必ず確認する。
まとめ
| a | 適切(VCBが電力会社より速く) |
| b | 適切(PF2がVCBより速く) |
| c | 適切(MCCB2優先、PF2は飛ばさない) |
| d | 適切(PF3がVCBより速く) |
| e | 不適切(GR付PASは地絡で動作すべき) |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・SOG付PASの短絡時動作(電気施設管理4):【法規】令和6年度上期 A問題10
・波及事故の報告と保護協調(電気施設管理6):【法規】令和5年度下期 B問題13

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