今回は令和2年度 法規科目 B問題11、波及事故(供給支障事故)の報告義務と保護協調の総合問題です。実はこの問題、令和5年度下期 B問題13とまったく同一の問題——過去問がそのまま再出題された典型例です。
(a)は電気関係報告規則の波及事故報告——自家用電気工作物を設置する者が、電圧3000V以上で他者に供給支障を起こしたら報告義務。(b)は保護協調——事故点直近上位のみ動作する仕組みと下位遮断器Bの動作特性曲線を読み取ります。
令和2年度 法規科目 B問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題11
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 令和2年度 B問題11
電気工作物に起因する供給支障事故について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(問題文と図は上の画像を参照してください。)
(a) 次の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
① 電気事業法第39条(事業用電気工作物の維持)において、事業用電気工作物の損壊により(ア)者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすることが規定されている。
② 「電気関係報告規則」において、(イ)を設置する者は、(ア)の用に供する電気工作物と電気的に接続されている電圧(ウ)V以上の(イ)の破損又は(イ)の誤操作若しくは(イ)を操作しないことにより(ア)者に供給支障を発生させた場合、電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長に事故報告をしなければならないことが規定されている。
③ 図1に示す高圧配電系統により高圧需要家が受電している。事故点1、事故点2又は事故点3のいずれかで短絡等により高圧配電系統に供給支障が発した場合、②の報告対象となるのは(エ)である。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 一般送配電事業 自家用電気工作物 6000 事故点1又は事故点2 (2) 送電事業 事業用電気工作物 3000 事故点1又は事故点3 (3) 一般送配電事業 事業用電気工作物 6000 事故点2又は事故点3 (4) 送電事業 事業用電気工作物 6000 事故点1又は事故点2 (5) 一般送配電事業 自家用電気工作物 3000 事故点2又は事故点3 (b) 次の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
① 受電設備を含む配電系統において、過負荷又は短絡あるいは地絡が生じたとき、供給支障の拡大を防ぐため、事故点直近上位の遮断器のみが動作し、他の遮断器は動作しないとき、これらの遮断器の間では(ア)がとられているという。
② 図2は、図1の高圧需要家の事故点2又は事故点3で短絡が発生した場合の過電流と遮断器(遮断器A及び遮断器B)の継電器動作時間の関係を示したものである。(ア)がとられている場合、遮断器Bの継電器動作特性曲線は、(イ)である。
③ 図3は、図1の高圧需要家の事故点2で地絡が発生した場合の零相電流と遮断器(遮断器A及び遮断器B)の継電器動作時間の関係を示したものである。(ア)がとられている場合、遮断器Bの継電器動作特性曲線は、(ウ)である。また、地絡の発生箇所が零相変流器より負荷側か電源側かを判別するため(エ)の使用が推奨されている。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 同期協調 曲線2 曲線3 地絡距離継電器 (2) 同期協調 曲線1 曲線3 地絡方向継電器 (3) 保護協調 曲線1 曲線4 地絡距離継電器 (4) 保護協調 曲線2 曲線4 地絡方向継電器 (5) 保護協調 曲線2 曲線3 地絡距離継電器





答えは(a)(5)・(b)(4)
この問題は令和5年度下期B問題13に、そのまま再出題されました。
★★報告義務の3つの要件
| 要件 | 内容 |
| ★①誰が | ★★自家用電気工作物を設置する者 |
| ★②何が | ★★電圧3 000V以上の自家用電気工作物の破損・誤操作等 |
| ★③結果 | ★★一般送配電事業者に供給支障を発生させた |
3つがそろって初めて報告義務が生じます——どれか1つでも欠ければ対象外。
報告先は産業保安監督部長——電気工作物の設置場所を管轄するところ。
「事業用電気工作物」ではなく自家用電気工作物——より狭い区分です。
★★なぜ3 000Vなのか
| 電圧 | 区分 | 報告対象 |
| ★6 600V(高圧受電) | ★★3 000V以上 | ★★対象 |
| ★400V(低圧) | ★★3 000V未満 | ★★対象外 |
高圧受電の需要家はすべて対象になります——6 600Vは3 000V以上だから。
「6 000V」というダミーが用意されています——正しくは3 000V。
数字を正確に覚えることが求められます。
★どの事故点が報告対象か
| 事故点 | 場所 | 報告対象か |
| ★事故点1 | ★★配電線(電力会社の設備) | ★★対象外(需要家の設備ではない) |
| ★事故点2 | ★★需要家の高圧引込部 | ★★対象 |
| ★事故点3 | ★★需要家構内 | ★★対象 |
報告義務を負うのは自家用電気工作物の設置者です——自分の設備の事故だけ。
配電線の事故は電力会社の責任——需要家に報告義務はありません。
だから事故点2又は事故点3——(5)が正解です。
★★電気事業法第39条
「事業用電気工作物の維持」を定めた条文です——技術基準適合維持義務。
その中に「他の電気的設備その他の物件の機能に電気的又は磁気的な障害を与えないようにすること」があります。
波及事故の防止は、この条文が根拠——法律上の義務なのです。
★(b)保護協調と動作特性曲線
★これが協調がとれている状態
両対数グラフに、電流と動作時間の関係を描きます——横軸が電流、縦軸が時間。
Bの曲線がAより下(速い)にあれば協調がとれています。
交差していれば、その電流域で協調が崩れる——整定を見直す必要があるのです。
★瞬時要素と限時要素
| 要素 | 動作 | 用途 |
| ★限時要素 | ★★電流が大きいほど速く動作(反限時) | ★★過負荷保護 |
| ★瞬時要素 | ★★整定値を超えると即座に動作 | ★★短絡保護 |
OCRは2つの要素を持っています——特性曲線が2段になるのです。
瞬時要素は短絡電流を素早く切るため——設備の損傷を最小にする。
この2要素の整定も協調の対象です。
事故報告の期限
| 段階 | 期限 |
| ★速報 | ★★事故を知った時から24時間以内(電話等) |
| ★詳報 | ★★事故を知った日から30日以内(報告書) |
まず速報で第一報を入れ、後から詳しい報告書を出します。
期限の数字も出題されます——24時間と30日。
電気関係報告規則第3条に規定されています。
波及事故を防ぐ備え
| 備え | 内容 |
| ★区分開閉器の設置 | ★★責任分界点で確実に切り離す |
| ★保護協調の確保 | ★★需要家側が先に動作するよう整定 |
| ★定期点検 | ★★事故そのものを起こさない |
報告義務があるということは、避けるべき事態だということです。
その防止が電気主任技術者の中心的な職務——本問が(a)(b)で構成されている理由です。
その他の事故報告の対象
| 事故 | 報告の要否 |
| ★感電死傷事故 | ★★報告する(電気工作物に起因するもの) |
| ★電気火災事故 | ★★報告する |
| ★主要電気工作物の破損事故 | ★★報告する |
| ★供給支障事故(本問) | ★★報告する |
電気関係報告規則第3条に一覧が定められています——波及事故はその1つ。
人身事故や火災も対象——設備の事故だけではありません。
どれも「電気工作物に起因する」ことが要件です。
電気工作物の区分
| 区分 | 内容 |
| ★事業用電気工作物 | ★★一般用電気工作物以外のすべて |
| ★ うち電気事業の用に供するもの | ★★発電所・変電所・送配電設備 |
| ★ うち自家用電気工作物 | ★★高圧受電の需要家など(本問) |
| ★一般用電気工作物 | ★★低圧受電の一般家庭など |
自家用電気工作物は事業用電気工作物の一部です——包含関係を押さえます。
報告規則が「自家用電気工作物」と限定しているのは、電力会社側の設備を除くためです。
だから「事業用電気工作物」ではダミーになります。
なぜ報告を義務づけるのか
| 目的 | 内容 |
| ★再発防止 | ★★原因を分析し、他の設備に水平展開する |
| ★統計の把握 | ★★事故の傾向から規制の要否を判断する |
| ★保安水準の維持 | ★★国が実態を把握して指導する |
報告は罰するためではなく、次の事故を防ぐためです——制度の趣旨。
集められた情報は事故分析として公表されます——波及事故の原因の多くはPASの劣化です。
⏱️ 本番での進め方
① 報告義務者は自家用電気工作物を設置する者。
② 電圧は3 000V以上——「6 000V」ではない。
③ 対象は自分の設備で起きた事故——配電線の事故は対象外。
④ 保護協調=事故点直近上位の遮断器のみが動作。
💡 覚え方
電気関係報告規則の事故報告=自家用電気工作物を設置する者は、一般送配電事業の用に供する電気工作物と電気的に接続されている電圧3 000V以上の自家用電気工作物の破損・誤操作等により一般送配電事業者に供給支障を発生させた場合、設置場所を管轄する産業保安監督部長に事故報告をしなければならない。
⚠️ よくある間違い
「6 000V」ではなく3 000V以上。「事業用電気工作物」ではなく自家用電気工作物。配電線(事故点1)は報告対象外——自分の設備ではない。
まとめ
| (a)(ア) | 一般送配電事業(法39条) |
| (a)(イ)(ウ) | 自家用電気工作物/3000V以上 |
| (a)(エ) | 事故点2又は事故点3(分界点の負荷側)→(5) |
| (b)(ア) | 保護協調(直近上位のみ動作) |
| (b)(イ)(ウ) | 曲線2/曲線4(下位Bは速い) |
| (b)(エ) | 地絡方向継電器(DGR)→(4) |
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