今回は令和1年度 法規科目 A問題10、電力の需給に関する空欄補充問題です。令和1年度・平成30年度で連続して問われた頻出テーマで、計算不要の得点源です。
キーワードは3つ。①電気は発生と消費が同時(同時同量)、②想定される最大電力に見合う供給力、③常に適量の供給予備力。電力は貯められないので、需要変動に即応できる備えが不可欠です。
令和1年度 法規科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和1年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題10
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 令和1年度 A問題10
次の文章は、電力の需給に関する記述である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
電気は(ア)とが同時的であるため、不断の供給を使命とする電気事業においては、常に変動する需要に対処しうる供給力を準備しなければならない。
しかし、発電設備は事故発生の可能性があり、また、水力発電所の供給力は河川流量の豊渇水による影響で変化する。一方、太陽光発電、風力発電などの供給力は天候により変化する。さらに、原子力発電所や火力発電所も定期検査などの補修作業のため一定期間の停止を必要とする。このように供給力は変動する要因が多い。他方、需要も予想と異なるおそれもある。
したがって、不断の供給を維持するためには、想定される(イ)に見合う供給力を保有することに加え、常に適量の(ウ)を保持しなければならない。
電気事業法に基づき設立された電力広域的運営推進機関は毎年、各供給区域(エリア)及び全国の供給力について需給バランス評価を行い、この評価を踏まえてその後の需給の状況を監視し、対策の実施状況を確認する役割を担っている。
(ア) (イ) (ウ) (1) 発生と消費 最大電力 送電容量 (2) 発電と蓄電 使用電力量 送電容量 (3) 発生と消費 最大電力 供給予備力 (4) 発電と蓄電 使用電力量 供給予備力 (5) 発生と消費 使用電力量 供給予備力

答えは(3):発生と消費・最大電力・供給予備力
計算不要の得点源です——令和元年度・平成30年度で連続出題。
★★同時同量の原則
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 発生と消費が同時的 | ★★発生と消費が同時的 | ★発電と蓄電 | ★★つくった瞬間に使われる/貯めてから使う |
| 電力システムの本質 | ★★電力システムの本質 | ★一部の調整手段 | ★★蓄電で需給を合わせているわけではない |
電気は大量に貯蔵できません——つくった瞬間に使われるのです。
だから需要の変動にリアルタイムで供給を合わせ続ける——これが同時同量です。
蓄電池は増えていますが、系統全体から見ればごく一部——「発電と蓄電」ではありません。
★周波数が需給のバロメータ
余ったエネルギーが回転体の加速に回る
回転体の運動エネルギーが取り崩される
需給の一致は、周波数を見ればわかります——50Hz/60Hzを保つのです。
周波数が大きく下がると発電機が脱落し、連鎖的な停電に至ります——2018年の北海道の事例。
だから同時同量は「原則」ではなく物理的な必然なのです。
★★なぜ「最大電力」なのか
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 最大電力[kW] | ★★最大電力[kW] | ★使用電力量[kWh] | ★★瞬間の値/期間の積算値 |
| 設備を決める基準 | ★★設備を決める基準 | ★料金や燃料を決める基準 | ★★用途が違う |
1年で最も需要が高くなる瞬間に停電させない——それが供給力の目標です。
だから基準は電力量[kWh]ではなく電力[kW]の最大値——真夏の昼など。
設備は瞬間の最大値で決まる——需要率・負荷率の考え方と同じです。
★供給予備力とは
| 予備力 | 応動時間 | 役割 |
| ★瞬動予備力 | ★★10秒程度 | ★★発電機の調速機が自動応答 |
| ★運転予備力 | ★★10分程度 | ★★部分負荷運転中の機器を増出力 |
| ★待機予備力 | ★★数時間 | ★★停止中の火力を起動する |
応動の速さで3段階に分かれます——速いものから順に使うのです。
一般に最大電力の8〜10%程度を確保します——予備率。
「送電容量」は設備の話であって、予備力ではありません。
★供給力が変動する要因
| 要因 | 内容 |
| ★発電設備の事故 | ★★突発的に脱落する |
| ★水力の豊渇水 | ★★河川流量で出力が変わる |
| ★太陽光・風力 | ★★天候により大きく変動する |
| ★定期検査 | ★★原子力・火力は一定期間停止する |
問題文が丁寧に列挙しています——読めば答えの方向が見えます。
再エネの拡大で変動要因が増えている——予備力の重要性が増しています。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)
| 役割 | 内容 |
| ★需給バランス評価 | ★★各エリア及び全国の供給力を毎年評価 |
| ★需給状況の監視 | ★★評価を踏まえて監視・対策確認 |
| ★需給ひっ迫時の指示 | ★★エリア間の融通を指示する |
電気事業法に基づき、平成27年に設立されました——電力システム改革の一環です。
エリアをまたいだ広域運用を可能にする組織——東日本大震災の教訓から生まれました。
需給ひっ迫への備え
| 手段 | 内容 |
| ★供給側 | ★★予備力の確保・他エリアからの融通 |
| ★需要側 | ★★デマンドレスポンス・節電要請 |
| ★最終手段 | ★★計画停電 |
近年は需要側での調整(デマンドレスポンス)も活用されます——供給を増やすだけではないのです。
需給ひっ迫警報・注意報という仕組みもあります。
再エネ拡大がもたらす課題
太陽光は昼に集中し、夕方に急減します——ダックカーブと呼ばれる形。
夕方の急激な立ち上がりに対応する調整力が要る——火力の役割が変わってきました。
出力制御(抑制)が実施される地域もあります——供給過剰への対応です。
予備率の考え方
一般に8〜10%を確保
最大電力に対してどれだけ余裕があるかを表します——3%を下回ると需給ひっ迫とされます。
なぜ8〜10%かというと、最大級の発電機1台が脱落しても持ちこたえられる水準だからです。
数字に根拠がある——単なる目安ではありません。
電源のベストミックス
| 電源 | 役割 | 特徴 |
| ★ベース供給力 | ★★原子力・石炭・流込式水力・地熱 | ★★出力一定で安価 |
| ★ミドル供給力 | ★★LNG火力 | ★★負荷追従できる |
| ★ピーク供給力 | ★★揚水式水力・石油火力 | ★★起動が速いが高コスト |
需要の変動に合わせて、性質の違う電源を組み合わせます——これがベストミックス。
揚水式水力は、余剰電力で水を汲み上げてピーク時に発電します——大規模な蓄電手段です。
日負荷曲線と年負荷曲線
| 曲線 | 見るもの |
| ★日負荷曲線 | ★★1日の需要の変化(昼にピーク) |
| ★年負荷曲線 | ★★1年の需要の変化(夏冬にピーク) |
| ★負荷持続曲線 | ★★需要を大きい順に並べたもの |
年間の最大電力は、真夏の昼か真冬の夕方に現れます——冷暖房需要です。
その一瞬のために設備を持つ——だから負荷率を上げる努力が要るのです。
なぜ「不断の供給」が使命なのか
電気は現代社会の基盤であり、止まれば社会的な影響が甚大です——医療も交通も通信も止まります。
だから電気事業法は「不断の供給」を事業者の使命としています——単なる商品ではないのです。
供給予備力を持つのは、そのための備え——コストをかけてでも確保するのです。
⏱️ 本番での進め方
① 電気は発生と消費が同時的——同時同量の原則。
② 供給力の基準は想定される最大電力[kW]——電力量ではない。
③ 加えて常に適量の供給予備力を保持する。
④ 需給バランス評価は電力広域的運営推進機関が行う。
💡 覚え方
電力の需給=①電気は発生と消費が同時的(同時同量の原則)②想定される最大電力に見合う供給力を保有 ③常に適量の供給予備力を保持。供給力の変動要因=発電設備の事故・水力の豊渇水・太陽光や風力の天候・定期検査。電力広域的運営推進機関が需給バランス評価を行う。
⚠️ よくある間違い
「発電と蓄電」ではなく発生と消費。「使用電力量」ではなく最大電力——基準は[kW]。「送電容量」ではなく供給予備力。
まとめ
| (ア) | 発生と消費(同時同量) |
| (イ) | 最大電力(ピーク需要) |
| (ウ) | 供給予備力 |
| 監視機関 | 電力広域的運営推進機関(OCCTO) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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