今回は平成22年度 法規科目 A問題10、配電系統の高調波について不適切な記述を選ぶ問題です。高調波は電力品質の重要テーマで、コンデンサ・リアクトル・フィルタの知識が問われます。
押さえる原則は「フィルタは発生源の近くに置く」。高調波発生源が変圧器の低圧側にあるなら、抑制設備も低圧側に置いた方が系統への流出を抑えられます。また第3次高調波は零相成分で高圧側に出にくい点も頻出です。
平成22年度 法規科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題10
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成22年度 A問題10
次の文章は、配電系統の高調波についての記述である。不適切なものは次のうちどれか。
(1) 高調波電流を多く含んだ程度に応じて電圧ひずみが大きくなる。
(2) 高調波発生機器を設置していない高圧需要家であっても直列リアクトルを付けないコンデンサ設備が存在する場合、電圧ひずみを増大させることがある。
(3) 低圧側の第3次高調波は、零相(各相が同相)となるため高圧側にあまり現れない。
(4) 高調波電流流出抑制対策のコンデンサ設備は、高調波発生源が変圧器の低圧側にある場合、高圧側に設置した方が高調波電流流出抑制の効果が大きい。
(5) 高調波電流流出抑制対策設備に、高調波電流を吸収する受動フィルタと高調波電流の逆極性の電流を発生する能動フィルタがある。

答え(不適切なもの)は(4)
高調波は電力品質の重要テーマです——コンデンサ・リアクトルの知識も問われます。
★★なぜ発生源の近くがよいのか
★これが原則
高調波は発生源から系統へ流れ出ていきます——その途中で電圧ひずみを起こすのです。
発生源の隣で吸収すれば、流れ出る量そのものが減る——最も効果的です。
だから低圧側に発生源があるなら低圧側に置く——選択肢(4)は逆です。
★高調波の発生源
| 機器 | なぜ高調波を出すか |
| ★インバータ | ★★スイッチングで電流を断続させる |
| ★整流器(コンバータ) | ★★正弦波の一部だけを取り出す |
| ★アーク炉 | ★★アークが非線形な電流を流す |
| ★変圧器の励磁 | ★★磁気飽和による非線形性 |
共通するのは「電流が正弦波でない」ことです——非線形負荷と呼ばれます。
省エネ機器の普及で、むしろ増えている——インバータは高調波を出すのです。
これらは多くが低圧側にあります——だから低圧側での対策が中心になります。
★★電圧ひずみが生じる仕組み
選択肢(1)の内容
電流のひずみが、インピーダンスを通じて電圧のひずみになります。
系統インピーダンスが大きいほど、ひずみも大きい——弱い系統ほど影響を受けやすいのです。
だから選択肢(1)は適切です。
★★直列リアクトルがないと共振する
★他所からの高調波も引き寄せる
コンデンサだけを設置すると、系統のリアクタンスと共振します——高調波を増幅してしまうのです。
自分は高調波を出していなくても、他所からの高調波を拡大する——選択肢(2)の内容。
だから6%直列リアクトルを付けるのが基本です。
★6%直列リアクトルの意味
★共振点を5次より低い次数にずらす
6%にすると、第5次高調波に対して回路が誘導性になります——共振が起きないのです。
最も多い第5次高調波を狙った値——根拠のある数字です。
13%を使う場合は第3次高調波が多い系統です。
★★第3次高調波が高圧側に出ない理由
| 次数 | 相順 | Δ結線での振る舞い |
| ★3・6・9次(3の倍数) | ★★零相(各相同相) | ★★★Δ内を環流して外に出ない |
| ★5・11次 | ★★逆相 | ★★外に出る |
| ★7・13次 | ★★正相 | ★★外に出る |
3の倍数次は各相が同位相(零相)になります——だからΔ結線の中をぐるぐる回るのです。
環流するだけで、外部の回路には流れ出ません——選択肢(3)は適切。
だから高圧側で問題になるのは主に第5次・第7次です。
★受動フィルタと能動フィルタ
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 受動(パッシブ)フィルタ | ★★受動(パッシブ)フィルタ | ★能動(アクティブ)フィルタ | ★★LCの共振で特定次数を吸収/逆極性の電流を注入して打ち消す |
| 安価・特定次数のみ | ★★安価・特定次数のみ | ★高価・広範囲に対応 | ★★選択肢(5)の内容 |
受動フィルタは、狙った次数に共振するLC回路です——その次数の電流を吸い込む。
能動フィルタは、高調波を検出して逆位相の電流を注入——打ち消すのです。
両方とも実在するので選択肢(5)は適切です。
高調波が引き起こす障害
| 障害 | 内容 |
| ★コンデンサの過熱・焼損 | ★★高次ほどインピーダンスが小さく電流が流れる |
| ★変圧器のうなり・過熱 | ★★鉄損が増える |
| ★中性線の過熱 | ★★第3次高調波が3相分重なる |
| ★計器の誤差 | ★★波形がひずむと正しく測れない |
中性線は平衡していれば電流が流れないはずですが、第3次高調波は3相分が足し合わさります。
だから中性線が過熱する——設計時に太くしておく必要があるのです。
高調波抑制対策ガイドライン
| 対象 | 内容 |
| ★高圧・特別高圧需要家 | ★★契約電力1kWあたりの流出電流の上限を規定 |
| ★対象設備 | ★★等価容量が50kV·Aを超える場合に算定が必要 |
| ★対策 | ★★上限を超えるならフィルタ等を設置する |
需要家が系統に流出させる高調波電流には上限があります——受電契約時に確認されます。
インバータ機器を増設するときは、この計算が要る——電気主任技術者の業務です。
⏱️ 本番での進め方
① フィルタは発生源の近くに置くほど効果的。
② 直列リアクトルのないコンデンサは並列共振で高調波を拡大する。
③ 3の倍数次は零相でΔ結線を環流し高圧側に出にくい。
④ 抑制設備には受動フィルタと能動フィルタがある。
💡 覚え方
高調波対策=①フィルタ・コンデンサは発生源の近くに設置する(低圧側に発生源があれば低圧側に設置)②直列リアクトル(6%)を付けないと系統のインダクタンスと並列共振して高調波を拡大する ③第3次(3の倍数次)高調波は零相成分でΔ結線を環流し高圧側に出にくい ④受動フィルタ(LCで吸収)と能動フィルタ(逆極性電流で打消し)がある。
⚠️ よくある間違い
抑制設備は発生源の近くに置く——低圧側の発生源に対して高圧側に置くのは逆で効果が小さい。
まとめ
| (1) | 適切(高調波電流↑で電圧ひずみ↑) |
| (2) | 適切(直列リアクトルなしは並列共振で拡大) |
| (3) | 適切(第3次は零相でΔ環流) |
| (4) | 不適切(低圧発生源は低圧側設置が効果大) |
| (5) | 適切(受動・能動フィルタ) |
| 答え | (4) |
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