今回は平成21年度 法規科目 A問題9、工場等における電気設備の運用管理に関する空欄補充問題です。省エネ・電力損失抑制の実務知識が問われる、電気管理者にとって基本のテーマです。
ポイントは3つ。①適正電圧のための電圧降下の検討、②並列コンデンサによる力率改善(電力損失は力率の2乗に反比例)、③稼働台数・負荷配分による需要率の管理。
答えは(4):電圧降下・力率改善・需要率
電気管理者の実務そのものが問われています——計算はありませんが理屈は必要です。
平成21年度 法規科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題9
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成21年度 A問題9
次の文章は、工場等における電気設備の運用管理に関する記述である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
電気機器は適正な電圧で使用することにより、効率的な運用を図ることができる。このため電気管理者にとって、(ア)の検討を行うことは重要である。また、電力損失の抑制対策として、次のように幾つかの例が挙げられる。
① 電気機器と並列にコンデンサ設備を設置し、(イ)をすることにより電力損失の低減を図る。
② 変圧器は、適正な(ウ)を維持するように、機器の稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行う。
(ア) (イ) (ウ) (1) 短絡保護協調 力率改善 需要率 (2) 電圧降下 電圧維持 負荷率 (3) 地絡保護協調 力率改善 不等率 (4) 電圧降下 力率改善 需要率 (5) 短絡保護協調 電圧維持 需要率

★なぜ「電圧降下」なのか
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 電圧降下の検討 | ★★電圧降下の検討 | ★短絡・地絡保護協調 | ★★適正電圧の維持/事故時の保護の話 |
| 効率的な運用 | ★★効率的な運用 | ★安全の確保 | ★★目的が違う |
問題文は「適正な電圧で使用することにより効率的な運用」——電圧の話です。
保護協調は事故時に上位の遮断器を落とさないための検討——効率とは別の論点です。
問題文の文脈を読めば、どちらかは明らかです。
★★電圧が下がると何が困るか
★電圧が下がるとトルクが大きく落ちる
始動不能や過熱の原因になる
誘導電動機のトルクは電圧の2乗に比例します——電圧低下の影響が大きいのです。
トルクが足りないと電流が増え、巻線が過熱します——寿命が縮むのです。
照明も暗くなり、寿命が変わります——だから適正電圧の維持が重要です。
★★力率改善で損失が減る理由
同じ有効電力なら力率が低いほど電流が大きい
力率を上げると損失が大きく減る
力率0.8を1.0にすれば、損失は(0.8)²=0.64倍になります——36%の削減。
2乗で効くので、効果が大きい——これが力率改善の価値です。
電力会社の料金割引もあります——経済的な動機もあるのです。
★並列コンデンサの働き
| 電流の位相 | 効果 | |
| ★誘導性負荷(電動機等) | ★★遅れ | ★★力率を下げる |
| ★進相コンデンサ | ★★進み | ★★遅れ分を打ち消す |
遅れ無効電流を進み無効電流で打ち消します——だから「進相」コンデンサ。
負荷と並列に接続する——電圧が同じ場所で逆向きの電流を流すのです。
目的は力率改善であって「電圧維持」ではありません——結果として電圧も改善しますが。
★★需要率とは
通常100%未満
設備をフルに使うことは普通ありません——だから需要率は1未満。
変圧器の稼働台数を調整すれば、需要率を適正に保てます——軽負荷の変圧器を止めるのです。
「負荷率」「不等率」ではなく需要率——設備容量に対する割合だからです。
★変圧器の効率と負荷率
鉄損は一定、銅損は負荷の2乗に比例
鉄損と銅損が等しいとき効率が最大になります——一般に負荷率50〜70%程度。
軽負荷では鉄損の割合が増えて効率が落ちます——だから台数を減らすのです。
これが「稼働台数の調整」の理論的根拠です。
3つの率の使い分け
| 率 | 式 | 何を見るか |
| ★需要率 | ★★最大需要/総設備容量 | ★★設備の使われ具合 |
| ★負荷率 | ★★平均需要/最大需要 | ★★需要の平坦さ |
| ★不等率 | ★★各最大の和/合成最大 | ★★ピークのずれ(≧1) |
分母と分子が何かで区別します——3つとも法規・電力で頻出。
本問は「設備容量に対する割合」なので需要率です。
その他の省エネ対策
| 対策 | 内容 |
| ★デマンド監視 | ★★最大需要電力を抑えて契約電力を下げる |
| ★高効率機器への更新 | ★★トップランナー変圧器・LED照明等 |
| ★インバータ制御 | ★★ポンプ・ファンの回転数を負荷に合わせる |
電気管理者の業務は、安全だけでなく省エネにも及びます。
本問の3項目は、その基本となる考え方です。
電圧降下の計算式
抵抗分とリアクタンス分の両方が効く
★力率改善は電圧改善にもつながる
力率を改善すると、電流が減るうえにリアクタンス分の寄与も減ります——二重の効果。
だから力率改善は損失低減と電圧維持の両方に効く——ただし条文上の目的は力率改善です。
(ア)と(イ)がつながっている——問題文の構成にも意味があります。
進相コンデンサの設置場所
| 場所 | 効果 |
| ★高圧側(受電点)に一括 | ★★管理が容易だが構内の損失は減らない |
| ★負荷の近く(分散) | ★★構内の電流も減り損失低減効果が大きい |
負荷に近いほど、無効電流が流れる区間が短くなります——損失低減の効果が大きいのです。
問題文が「電気機器と並列に」としているのはこの発想——機器のそばに置くのです。
ただし台数が増えて管理は煩雑になります。
⏱️ 本番での進め方
① 適正電圧のためには電圧降下の検討。
② 並列コンデンサの目的は力率改善——電圧維持ではない。
③ 電力損失は力率の2乗に反比例する。
④ 稼働台数の調整・負荷配分は需要率の管理。
💡 覚え方
工場等の運用管理=①適正電圧のため電圧降下の検討 ②電気機器と並列にコンデンサを設置して力率改善(電力損失は力率の2乗に反比例)③変圧器は適正な需要率を維持するよう稼働台数の調整と負荷の適正配分を行う。需要率=最大需要電力/総負荷設備容量。
⚠️ よくある間違い
「保護協調」ではなく電圧降下——効率の話。並列コンデンサの目的は「電圧維持」ではなく力率改善。「負荷率」「不等率」ではなく需要率。
まとめ
| (ア) | 電圧降下(の検討) |
| (イ) | 力率改善(並列コンデンサ) |
| (ウ) | 需要率(最大需要/設備容量) |
| 損失と力率 | 電力損失は力率の2乗に反比例 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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