今回は平成19年度 法規科目 A問題10、絶縁油の保守・点検のための試験を扱う空欄補充問題です。平成26年度 A問題8(電気施設管理13)と同系統で、絶縁油の劣化メカニズムが問われます。
覚えるのは「保守は絶縁耐力試験+酸価度試験」。劣化すると酸価が上がり、抵抗率・耐圧が下がる。そして酸化反応は運転による温度上昇で促進される——この流れを押さえれば即答できます。
平成19年度 法規科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題10
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成19年度 A問題10
自家用需要家が絶縁油の保守・点検のため行う試験に関する空欄補充問題です。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(注)平成19年度は公式問題PDFが公表されていないため、電験王等の過去問データに基づいて問題文を再構成しています。
自家用需要家が絶縁油の保守・点検のため行う試験には、絶縁耐力試験及び(ア)試験が一般に実施されている。絶縁油は使用中に劣化して酸価が上がり、(イ)や耐圧が下がるなどの性能が低下する。酸化反応は変圧器の運転による(ウ)の上昇によって特に促進される。
(ア) (イ) (ウ) (1) 酸価度 濃度 湿度 (2) 酸価度 抵抗率 湿度 (3) 重合度 濃度 湿度 (4) 酸価度 抵抗率 温度 (5) 重合度 抵抗率 温度

答えは(4):酸価度・抵抗率・温度
条文ではなく実務知識の問題です——電気管理者の日常業務。
★2つの試験の役割分担
| 試験 | 測るもの | 意味 |
| ★絶縁耐力試験 | ★★絶縁破壊電圧[kV] | ★★今の絶縁性能そのもの |
| ★酸価度試験 | ★★酸価[mgKOH/g] | ★★劣化の進み具合 |
耐力試験は「今どうか」、酸価度試験は「どこまで進んだか」——役割が違います。
両方を組み合わせて、交換や再生の時期を判断します。
「重合度」は絶縁紙(固体絶縁)の劣化診断の指標——油の一般試験ではありません。
★★酸価が上がると何が起きるか
| 指標 | 劣化すると | 意味 |
| ★酸価 | ★★上がる | ★★酸性成分が増える |
| ★体積抵抗率 | ★★下がる | ★★電気を通しやすくなる |
| ★絶縁破壊電圧(耐圧) | ★★下がる | ★★絶縁性能が落ちる |
| ★色 | ★★濃くなる | ★★目視でもわかる |
酸価だけが上がり、他は下がります——向きを覚えると迷いません。
「濃度」は何の濃度か曖昧——絶縁性能を表す語は抵抗率です。
★★温度が10℃上がると反応速度は約2倍
温度が上がると指数的に速くなる
★絶縁物の寿命にも使われる
温度が10℃上がると化学反応の速度は約2倍になります——逆に言えば寿命は半分。
変圧器を過負荷で運転すれば油温が上がり、劣化が加速します——だから温度管理が重要なのです。
「湿度」は運転で上昇するものではありません——上がるのは温度です。
★絶縁油の劣化3因子
| 因子 | 影響 | 対策 |
| ★温度 | ★★酸化反応を加速する | ★★過負荷を避ける・冷却を保つ |
| ★酸素 | ★★酸化の原因そのもの | ★★窒素封入・コンサベータ |
| ★水分 | ★★絶縁破壊電圧を大きく下げる | ★★吸湿呼吸器(シリカゲル) |
3つが互いに影響し合って劣化が進みます——水分は特に耐圧への影響が大きい。
わずか数十ppmの水分で耐圧が半減することもあります。
だから吸湿呼吸器の点検が日常業務になるのです。
コンサベータと呼吸作用
変圧器の油は温度で膨張・収縮します——それに伴って空気が出入りするのです。
これを呼吸作用といい、外気の湿気が入る経路になります。
吸湿呼吸器のシリカゲルが青からピンクに変われば交換——目視点検の代表例です。
絶縁油に求められる性能
| 性能 | 理由 |
| ★絶縁耐力が高い | ★★巻線間・対地間を絶縁する |
| ★冷却性がよい | ★★対流で熱を運ぶ(粘度が低い) |
| ★引火点が高い | ★★火災の危険を減らす |
| ★化学的に安定 | ★★長期間劣化しにくい |
絶縁と冷却の2役を担っています——だから劣化が両方に影響するのです。
油が劣化すると粘度も上がり、冷却性能も落ちます。
その他の診断方法
| 方法 | わかること |
| ★油中ガス分析 | ★★内部の異常(過熱・部分放電・アーク) |
| ★水分測定 | ★★吸湿の程度 |
| ★重合度測定 | ★★絶縁紙の劣化(寿命判定) |
油中ガス分析は、分解して見なくても内部異常がわかる——非常に有力な手法です。
アセチレンが検出されればアーク放電の疑い——ガスの種類で異常の種類がわかります。
重合度は絶縁紙の寿命を判定する指標——変圧器の寿命は紙で決まります。
劣化油の処置
| 処置 | 内容 |
| ★ろ過 | ★★不純物・水分を除去する |
| ★再生 | ★★吸着剤で酸性成分を除去する |
| ★交換 | ★★劣化が進んだ場合に新油と入れ替える |
軽度ならろ過や再生で使い続けられます——油は高価なので経済的。
ただし絶縁紙の劣化は元に戻りません——油を替えても寿命は延びないのです。
酸価という指標
| 項目 | 内容 |
| ★単位 | ★★mgKOH/g(油1gの中和に要する水酸化カリウム量) |
| ★新油 | ★★0.02以下 |
| ★管理値の目安 | ★★0.2程度で要注意 |
酸価は「油の中の酸性成分の量」を表します——中和に必要なアルカリの量で測るのです。
数値が上がるほど劣化が進んでいる——単調に増えるので進行度がわかります。
酸性成分は金属を腐食させ、スラッジを生成します。
スラッジが引き起こす問題
| 影響 | 内容 |
| ★冷却の阻害 | ★★放熱器や巻線の隙間に堆積して熱がこもる |
| ★温度上昇 | ★★冷却が悪化するとさらに劣化が加速する |
| ★悪循環 | ★★劣化→スラッジ→温度上昇→さらに劣化 |
スラッジは劣化生成物が固まったものです——油に溶けきれなくなって析出します。
いったんこの悪循環に入ると、劣化が加速度的に進みます——だから早期発見が重要なのです。
変圧器の寿命を決めるもの
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 絶縁油 | ★★絶縁油 | ★絶縁紙 | ★★交換・再生できる/交換できない |
| 劣化しても対処可能 | ★★劣化しても対処可能 | ★劣化したら寿命 | ★★変圧器の寿命は絶縁紙で決まる |
油は交換できますが、巻線に巻かれた絶縁紙は交換できません——だから紙の劣化が寿命です。
紙の劣化は重合度で判定します——本問の「重合度」がダミーとして出る理由。
油を良好に保つことが、紙を守ることにつながります——油の管理が寿命を延ばすのです。
絶縁油の種類
| 種類 | 特徴 |
| ★鉱油(パラフィン系・ナフテン系) | ★★最も一般的。安価で性能も十分 |
| ★シリコーン油 | ★★引火点が高く難燃性。屋内変圧器に使う |
| ★植物油(エステル系) | ★★生分解性が高く環境負荷が小さい |
かつてはPCB入りの絶縁油が使われていました——現在は使用禁止で、処理が進められています。
用途に応じて油の種類を選ぶ——屋内なら難燃性が重視されます。
⏱️ 本番での進め方
① 保守試験は絶縁耐力試験+酸価度試験。
② 劣化すると酸価は上がり、抵抗率・耐圧は下がる。
③ 酸化は温度の上昇で促進——10℃で約2倍。
④ 「重合度」は絶縁紙の劣化指標——油ではない。
💡 覚え方
絶縁油の保守・点検試験=絶縁耐力試験+酸価度試験。劣化すると酸価が上がり、体積抵抗率と絶縁破壊電圧(耐圧)が下がる。酸化反応は運転による温度上昇で促進される(10℃上昇で約2倍)。劣化3因子=温度・酸素・水分。
⚠️ よくある間違い
「重合度」は絶縁紙の指標——油の一般試験ではない。下がるのは「濃度」ではなく抵抗率。運転で上がるのは「湿度」ではなく温度。
まとめ
| (ア) | 酸価度(試験) |
| (イ) | 抵抗率(や耐圧が低下) |
| (ウ) | 温度(上昇で酸化促進) |
| 保守試験 | 絶縁耐力試験+酸価度試験 |
| 答え | (4) |
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