今回は平成26年度 法規科目 A問題8、油入変圧器の絶縁油の劣化に関する空欄補充問題です。変圧器の保守で必ず押さえる、絶縁油の酸化劣化のメカニズムが問われます。
絶縁油は空気中の酸素で酸化し、温度が高いほど劣化が進みます。酸化が進むと酸価が上がり、抵抗率・耐圧が下がって、最後はスラッジ(泥状物)ができます。保守では絶縁耐力試験と酸価度試験が基本です。
平成26年度 法規科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題8
電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成26年度 A問題8
次の文章は、油入変圧器における絶縁油の劣化についての記述である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
a.自家用需要家が絶縁油の保守、点検のために行う試験には、(ア)試験及び酸価度試験が一般に実施されている。
b.絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸価が上がり、(イ)や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。
c.変圧器油劣化の主原因は、油と接触する(ウ)が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による(エ)の上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 絶縁耐力 抵抗率 空気 温度 (2) 濃度 熱伝導率 絶縁物 温度 (3) 絶縁耐力 熱伝導率 空気 湿度 (4) 絶縁抵抗 濃度 絶縁物 温度 (5) 濃度 抵抗率 空気 湿度

答えは(1):絶縁耐力・抵抗率・空気・温度
平成19年度 A問題10が同系統です。そちらは試験の役割分担を扱っています。
この記事は、空気が入る経路と促進因子を主軸にします。
★★空気はどこから入るのか——呼吸作用
負荷や外気温で油温が変わる
★空気が油中に溶け込む経路
変圧器は密閉されているようで、実は呼吸しています——油の膨張収縮に伴って空気が出入りするのです。
その空気に含まれる酸素が油に溶け込み、酸化を引き起こす——これが劣化の出発点です。
「絶縁物」が溶け込むのではありません——溶け込むのは空気です。
★呼吸を抑える構造
| 方式 | 仕組み | 効果 |
| ★開放形 | ★★吸湿呼吸器を通して外気と出入り | ★★水分は防げるが酸素は入る |
| ★コンサベータ | ★★油面の上に小さな油槽を設ける | ★★空気と接する面積を減らす |
| ★窒素封入 | ★★油面上を窒素で満たす | ★★酸素を遮断できる |
| ★密閉形 | ★★完全に外気を遮断する | ★★劣化が非常に遅い |
コンサベータは、空気と触れる油の面積を小さくする工夫です——本体の油はほとんど空気に触れません。
窒素封入なら酸素そのものを断てます——最も効果的です。
構造を知ると、なぜ空気が主原因なのかが腑に落ちます。
★★その他の促進因子
| 因子 | なぜ促進するか |
| ★金属(銅・鉄) | ★★酸化反応の触媒として働く |
| ★絶縁ワニス | ★★成分が油に溶け出し反応を促す |
| ★光線 | ★★紫外線が分子結合を切り反応の起点をつくる |
| ★劣化生成物 | ★★★生成物自体が触媒となる(自触媒作用) |
特に重要なのが最後の「劣化生成物のうちにも反応を促進するもの」——自触媒作用です。
劣化が進むほど、さらに劣化が速くなる——加速度的に進行するのです。
だから早期発見・早期処置が決定的に重要——問題文の一文に深い意味があります。
★銅が触媒になる理由
変圧器の巻線は銅です——油と常に接しています。
銅イオンが油中に溶け出すと、酸化反応の触媒となります——反応の活性化エネルギーを下げるのです。
避けられない因子なので、他の要因を減らすことが対策になります。
★温度が10℃上がると反応速度は約2倍
温度が上がると指数的に速くなる
★寿命は半分になる
過負荷運転で油温が10℃上がれば、劣化速度は倍になります——寿命は半分。
だから温度管理が保守の中心になるのです——冷却装置の点検も重要。
「湿度」は運転で上昇するものではありません——上がるのは温度です。
★スラッジができるまで
| 段階 | 状態 |
| ★① | ★★空気中の酸素が油に溶け込む |
| ★② | ★★温度上昇により酸化反応が進む |
| ★③ | ★★酸価が上がり、抵抗率・耐圧が下がる |
| ★④ | ★★劣化生成物が油に溶けきれず析出する |
| ★⑤ | ★★泥状のスラッジとなって堆積する |
問題文のbが③〜⑤を、cが①②を述べています——順序が入れ替わっているのです。
スラッジは冷却を妨げ、さらに温度を上げます——悪循環に入るのです。
酸価と抵抗率の向き
| 指標 | 劣化すると |
| ★酸価 | ★★上がる |
| ★体積抵抗率 | ★★下がる |
| ★絶縁破壊電圧(耐圧) | ★★下がる |
| ★色 | ★★濃くなる |
酸価だけが上がり、他は下がります——向きを覚えると迷いません。
「熱伝導率」は劣化で問題になる性能ではありません——問われているのは絶縁性能です。
絶縁耐力試験の実際
| 項目 | 内容 |
| ★方法 | ★★規定の電極間(2.5mm)で電圧を上げ破壊電圧を測る |
| ★新油の目安 | ★★30kV以上 |
| ★管理値 | ★★20kV程度を下回れば要注意 |
絶縁破壊電圧試験とも呼ばれます——「何Vまで耐えるか」を直接測るのです。
水分の影響が大きく、わずかな吸湿で大きく下がります——採油時の取扱いにも注意が要ります。
油中ガス分析という手法
| 検出ガス | 推定される異常 |
| ★水素・メタン | ★★部分放電 |
| ★エチレン | ★★過熱 |
| ★アセチレン | ★★アーク放電(重大) |
| ★一酸化炭素・二酸化炭素 | ★★絶縁紙の劣化 |
分解せずに内部の異常が推定できる——非常に有力な診断法です。
アセチレンが出ればアーク放電の疑い——緊急性が高いのです。
本問の範囲外ですが、実務では重要です。
劣化油をどう処置するか
| 処置 | 内容 | 適用 |
| ★ろ過 | ★★不純物と水分を除去する | ★★軽度の劣化 |
| ★再生 | ★★吸着剤で酸性成分を取り除く | ★★中程度の劣化 |
| ★交換 | ★★新油と入れ替える | ★★劣化が進んだ場合 |
油は高価なので、可能なら再生して使い続けます——経済的な判断です。
ただし絶縁紙の劣化は元に戻りません——油を替えても変圧器の寿命は延びないのです。
だから劣化させないことが最善の対策です。
⏱️ 本番での進め方
① 溶け込むのは空気——「絶縁物」ではない。
② 促進するのは温度——「湿度」ではない。
③ 下がるのは抵抗率と耐圧——「熱伝導率」ではない。
④ 劣化生成物自体が反応を促進する(自触媒作用)。
💡 覚え方
絶縁油の劣化=油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化が主原因。運転による温度上昇で促進される(10℃で約2倍)。金属・絶縁ワニス・光線、そして劣化生成物自体も反応を促進する。劣化すると酸価が上がり抵抗率・耐圧が下がり、ついにはスラッジができる。保守試験=絶縁耐力試験+酸価度試験。
⚠️ よくある間違い
溶け込むのは「絶縁物」ではなく空気。促進するのは「湿度」ではなく温度。下がるのは「熱伝導率」ではなく抵抗率。
まとめ
| (ア) | 絶縁耐力(試験)+酸価度試験 |
| (イ) | 抵抗率(や耐圧が下がる) |
| (ウ) | 空気(の酸素で酸化) |
| (エ) | 温度(上昇で酸化促進) |
| 劣化の終着 | スラッジ(泥状物)生成 |
| 答え | (1) |
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