電気施設管理13【電験3種 法規】絶縁油は空気の酸素で酸化・温度で促進!絶縁耐力試験=(1) 平成26年度 A問題8 完全解説

電験3種 法規科目 電気施設管理 平成26年度 A問題8 絶縁油はなぜ劣化する?酸素と温度が犯人

今回は平成26年度 法規科目 A問題8油入変圧器の絶縁油の劣化に関する空欄補充問題です。変圧器の保守で必ず押さえる、絶縁油の酸化劣化のメカニズムが問われます。

絶縁油は空気中の酸素で酸化し、温度が高いほど劣化が進みます。酸化が進むと酸価が上がり、抵抗率・耐圧が下がって、最後はスラッジ(泥状物)ができます。保守では絶縁耐力試験と酸価度試験が基本です。

目次

平成26年度 法規科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 法規科目 配電 平成26年度 A問題8 問題文
平成26年度 法規科目 A問題8 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題8

電験3種 法規科目 【電気施設管理】 平成26年度 A問題8

 次の文章は、油入変圧器における絶縁油の劣化についての記述である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

a.自家用需要家が絶縁油の保守、点検のために行う試験には、(ア)試験及び酸価度試験が一般に実施されている。

b.絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸価が上がり、(イ)や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。

c.変圧器油劣化の主原因は、油と接触する(ウ)が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による(エ)の上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)絶縁耐力抵抗率空気温度
(2)濃度熱伝導率絶縁物温度
(3)絶縁耐力熱伝導率空気湿度
(4)絶縁抵抗濃度絶縁物温度
(5)濃度抵抗率空気湿度
答え(ア)絶縁耐力・(イ)抵抗率・(ウ)空気・(エ)温度 = (1)

答えは(1):絶縁耐力・抵抗率・空気・温度

油入変圧器における絶縁油の劣化(電気施設管理)

a 保守・点検のために行う試験には、絶縁耐力試験及び酸価度試験が一般に実施されている。/b 使用中に次第に劣化して酸価が上がり、抵抗率や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。/c 劣化の主原因は、油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は運転による温度の上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。

★問題文の最後の一文に、促進因子が列挙されています。

平成19年度 A問題10が同系統です。そちらは試験の役割分担を扱っています

この記事は、空気が入る経路と促進因子を主軸にします

★★空気はどこから入るのか——呼吸作用

$$V \propto T$$
油は温度によって膨張・収縮する
負荷や外気温で油温が変わる
$$\text{油が縮む} \Rightarrow \text{外の空気を吸い込む}$$
これを呼吸作用という
★空気が油中に溶け込む経路

変圧器は密閉されているようで、実は呼吸しています——油の膨張収縮に伴って空気が出入りするのです。

その空気に含まれる酸素が油に溶け込み、酸化を引き起こす——これが劣化の出発点です。

「絶縁物」が溶け込むのではありません——溶け込むのは空気です。

★呼吸を抑える構造

方式仕組み効果
★開放形★★吸湿呼吸器を通して外気と出入り★★水分は防げるが酸素は入る
★コンサベータ★★油面の上に小さな油槽を設ける★★空気と接する面積を減らす
★窒素封入★★油面上を窒素で満たす★★酸素を遮断できる
★密閉形★★完全に外気を遮断する★★劣化が非常に遅い

コンサベータは、空気と触れる油の面積を小さくする工夫です——本体の油はほとんど空気に触れません

窒素封入なら酸素そのものを断てます——最も効果的です。

構造を知ると、なぜ空気が主原因なのかが腑に落ちます

★★その他の促進因子

因子なぜ促進するか
★金属(銅・鉄)★★酸化反応の触媒として働く
★絶縁ワニス★★成分が油に溶け出し反応を促す
★光線★★紫外線が分子結合を切り反応の起点をつくる
★劣化生成物★★★生成物自体が触媒となる(自触媒作用)

特に重要なのが最後の「劣化生成物のうちにも反応を促進するもの」——自触媒作用です。

劣化が進むほど、さらに劣化が速くなる——加速度的に進行するのです。

だから早期発見・早期処置が決定的に重要——問題文の一文に深い意味があります

★銅が触媒になる理由

変圧器の巻線は銅です——油と常に接しています

銅イオンが油中に溶け出すと、酸化反応の触媒となります——反応の活性化エネルギーを下げるのです。

避けられない因子なので、他の要因を減らすことが対策になります

★温度が10℃上がると反応速度は約2倍

$$k \propto e^{-E_a/RT}$$
アレニウスの式
温度が上がると指数的に速くなる
$$\Delta T = 10^\circ\mathrm{C} \Rightarrow k \approx 2k$$
経験則(10℃2倍則)
★寿命は半分になる

過負荷運転で油温が10℃上がれば、劣化速度は倍になります——寿命は半分

だから温度管理が保守の中心になるのです——冷却装置の点検も重要

「湿度」は運転で上昇するものではありません——上がるのは温度です。

★スラッジができるまで

段階状態
★①★★空気中の酸素が油に溶け込む
★②★★温度上昇により酸化反応が進む
★③★★酸価が上がり、抵抗率・耐圧が下がる
★④★★劣化生成物が油に溶けきれず析出する
★⑤★★泥状のスラッジとなって堆積する

問題文のbが③〜⑤を、cが①②を述べています——順序が入れ替わっているのです。

スラッジは冷却を妨げ、さらに温度を上げます——悪循環に入るのです。

酸価と抵抗率の向き

指標劣化すると
★酸価★★上がる
★体積抵抗率★★下がる
★絶縁破壊電圧(耐圧)★★下がる
★色★★濃くなる

酸価だけが上がり、他は下がります——向きを覚えると迷いません

「熱伝導率」は劣化で問題になる性能ではありません——問われているのは絶縁性能です。

絶縁耐力試験の実際

項目内容
★方法★★規定の電極間(2.5mm)で電圧を上げ破壊電圧を測る
★新油の目安★★30kV以上
★管理値★★20kV程度を下回れば要注意

絶縁破壊電圧試験とも呼ばれます——「何Vまで耐えるか」を直接測るのです。

水分の影響が大きく、わずかな吸湿で大きく下がります——採油時の取扱いにも注意が要ります。

油中ガス分析という手法

検出ガス推定される異常
★水素・メタン★★部分放電
★エチレン★★過熱
★アセチレン★★アーク放電(重大)
★一酸化炭素・二酸化炭素★★絶縁紙の劣化

分解せずに内部の異常が推定できる——非常に有力な診断法です。

アセチレンが出ればアーク放電の疑い——緊急性が高いのです。

本問の範囲外ですが、実務では重要です。

劣化油をどう処置するか

処置内容適用
★ろ過★★不純物と水分を除去する★★軽度の劣化
★再生★★吸着剤で酸性成分を取り除く★★中程度の劣化
★交換★★新油と入れ替える★★劣化が進んだ場合

油は高価なので、可能なら再生して使い続けます——経済的な判断です。

ただし絶縁紙の劣化は元に戻りません——油を替えても変圧器の寿命は延びないのです。

だから劣化させないことが最善の対策です。

⏱️ 本番での進め方
① 溶け込むのは空気——「絶縁物」ではない。
② 促進するのは温度——「湿度」ではない。
③ 下がるのは抵抗率と耐圧——「熱伝導率」ではない。
劣化生成物自体が反応を促進する(自触媒作用)。

💡 覚え方
絶縁油の劣化=油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化が主原因。運転による温度上昇で促進される(10℃で約2倍)。金属・絶縁ワニス・光線、そして劣化生成物自体も反応を促進する。劣化すると酸価が上がり抵抗率・耐圧が下がり、ついにはスラッジができる。保守試験=絶縁耐力試験+酸価度試験。

⚠️ よくある間違い
溶け込むのは「絶縁物」ではなく空気促進するのは「湿度」ではなく温度下がるのは「熱伝導率」ではなく抵抗率

まとめ

(ア)絶縁耐力(試験)+酸価度試験
(イ)抵抗率(や耐圧が下がる)
(ウ)空気(の酸素で酸化)
(エ)温度(上昇で酸化促進)
劣化の終着スラッジ(泥状物)生成
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・絶縁油の保守・点検試験(電気施設管理19):【法規】平成19年度 A問題10
・変流器(電気施設管理12):【法規】平成27年度 A問題10

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