今回は平成21年度 法規科目 A問題4、絶縁油の流出防止と、それが漏れてしまったときの届出を組み合わせた空欄補充問題です。電技と報告規則をまたぐ問題です。
キーワードは中性点直接接地式電路。この電路に接続する変圧器は地絡電流が大きく、事故時に絶縁油が噴出・流出するおそれがあるため、構外への流出と地下への浸透を防止する措置(防油堤など)が義務づけられています。
平成21年度 法規科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題4
電験3種 法規科目 【電気関係報告規則】 平成21年度 A問題4
次の文章は、「電気設備技術基準」の公害等の防止について及び「電気関係報告規則」の公害防止等に関する届出についての記述の一部である。
a. (ア)に接続する変圧器を設置する箇所には、(イ)の構外への流出及び地下への浸透を防止するための措置が施されていなければならない。
b. 電気事業者又は自家用電気工作物を設置する者は、(ウ)の破損その他の事故が発生し、(イ)が構内以外に排出された、又は地下に浸透した場合には、事故の発生後可能な限り速やかに事故の状況及び講じた措置の概要を当該(ウ)の設置の場所を管轄する産業保安監督部長へ届け出なければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (1) 中性点非接地式電路 絶縁油 変圧器 (2) 中性点直接接地式電路 廃液 貯油施設 (3) 中性点非接地式電路 廃液 変圧器 (4) 送電線路 絶縁油 電気工作物 (5) 中性点直接接地式電路 絶縁油 電気工作物

答えは(5):中性点直接接地式電路・絶縁油・電気工作物
(ア)は「中性点直接接地式電路」——地絡電流が大きく、変圧器が破損しやすいからです。
(イ)は「絶縁油」——「廃液」は電気設備技術基準の用語ではありません。
(ウ)は「電気工作物」——変圧器に限らず一般が対象です。
★なぜ中性点直接接地式なのか
| 接地方式 | 地絡電流 | 絶縁油対策 |
| ★中性点直接接地式 | ★★非常に大きい | ★★必要 |
| ★中性点非接地式 | ★★小さい | ★★規定の対象外 |
| ★抵抗接地式 | ★★中程度 | ★★規定の対象外 |
直接接地すると、地絡時に短絡に近い大電流が流れます——変圧器が破損して絶縁油が噴出する危険が高いのです。
非接地式では地絡電流が小さく、そこまでの事態になりません——だから規定の対象外です。
接地方式と危険の大きさが結びついている——理由から考えれば覚えられます。
どんな措置をするのか
| 措置 | 役割 |
| ★防油堤 | ★★変圧器の周りを囲んで油を受け止める |
| ★油だめ | ★★漏れた油をためる |
| ★油水分離槽 | ★★雨水と油を分けて排出する |
変電所に行くと、変圧器の周りにコンクリートの堤があります——あれが防油堤です。
油が構外へ流れ出さないようにする、物理的な対策です。
★なぜ絶縁油が問題になるのか
絶縁油が土壌や河川に流れ出せば、深刻な環境汚染になります——油は水に溶けず、広く拡散します。
変圧器1台には、数千リットルの油が入っていることもあります——漏れれば大量です。
電気事業法第1条の目的に「環境の保全」があるからこそ、こうした規定が置かれています——目的規定とつながっているのです。
★この届出は事故報告とは別制度
| 事故報告(規則3条) | 絶縁油の届出(規則4条) | |
| ★対象 | ★★人身・火災・供給支障など | ★★絶縁油の構外排出・地下浸透 |
| ★期限 | ★★24時間以内/30日以内 | ★★事故の発生後可能な限り速やかに |
| ★内容 | ★★速報+詳報 | ★★事故の状況と講じた措置の概要 |
期限の書き方が違います——こちらは「可能な限り速やかに」で、数字がありません。
24時間/30日と混同しないようにしましょう——別の条文です。
届出の起点は「電気工作物の破損その他の事故」
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 中性点直接接地式電路 | ★★中性点直接接地式電路 | ★中性点非接地式電路 | ★★地絡電流が大きいほうが対象 |
| 絶縁油 | ★★絶縁油 | ★廃液 | ★★電技の用語は絶縁油 |
| 電気工作物 | ★★電気工作物 | ★変圧器・貯油施設 | ★★対象を狭めない |
変圧器の事故に限りません——電気工作物一般が対象です。
ケーブルの油が漏れる場合もありえます——だから広く書いてあるのです。
報告規則の中での位置づけ
| 条 | 内容 |
| ★3条 | ★★事故報告(24時間/30日) |
| ★4条 | ★★公害防止等に関する届出(絶縁油等) |
| ★5条 | ★★その他の報告(出力・電圧の変更、廃止) |
電気関係報告規則には、事故報告以外の条文も並んでいます——本問は4条の話です。
PCB電気工作物の報告も、この規則に置かれています——環境まわりの報告がまとまっているのです。
実務での対応
油漏れを見つけたら、まず拡散を止めます——オイルマットや土のうで囲うのです。
そのうえで、状況と講じた措置を届け出ます——「講じた措置の概要」まで求められているのはこのためです。
何をしたかまで報告させることで、対応を促している——制度の意図が読み取れます。
中性点接地方式の使い分け
| 方式 | 使われる場面 | 地絡電流 |
| ★直接接地 | ★★187kV以上の超高圧 | ★★大きい |
| ★抵抗接地 | ★★22〜154kV | ★★中程度 |
| ★非接地 | ★★6.6kV配電 | ★★小さい |
電圧が高いほど直接接地が使われます——絶縁を軽くできるという利点があるからです。
そのかわり地絡電流が大きくなります——だから絶縁油対策が必要になるのです。
環境への影響を防ぐ規定
電気設備技術基準には、公害等の防止という章があります——絶縁油だけでなく、ばい煙や騒音も扱います。
いずれも電気事業法第1条の「環境の保全」から派生した規定です。
電気の安全だけでなく、環境も守る——それがこの法体系の守備範囲です。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「中性点直接接地式電路」——地絡電流が大きいほうが対象。
② (イ)は「絶縁油」。廃液は電技の用語ではない。
③ (ウ)は「電気工作物」——変圧器・貯油施設と狭めない。
④ 期限は「可能な限り速やかに」——24時間/30日ではない。
届出の内容は2つ
| 項目 | 内容 |
| ★事故の状況 | ★★いつ・どこで・どれだけ漏れたか |
| ★講じた措置の概要 | ★★どう食い止め、どう回収したか |
状況だけでなく、対応まで報告させます——放置していないかを確かめるためです。
事故報告の速報が「概要」までなのと比べると、こちらは措置まで求めています。
「可能な限り速やかに」という期限
事故報告の24時間のような具体的な数字はありません——状況の把握に時間がかかることもあるからです。
それでも「速やかに」と求められています——汚染は時間とともに広がるからです。
出題履歴——環境系は3本セット
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成20年度 問8 | ★★PCB電気工作物の報告 |
| ★平成21年度 問4 | ★★絶縁油の流出防止と届出(本問) |
| ★平成24年度 問3 | ★★公害防止とPCB |
平成24年度 A問題3で法第1条の「環境の保全」を、本問でその具体化を——目的から個別条文への流れが見えます。
平成20年度 A問題8のPCBと合わせて、環境まわり3本として押さえましょう。
💡 覚え方
電技19条=中性点直接接地式電路に接続する変圧器の箇所は絶縁油の構外流出・地下浸透を防止する措置。報告規則4条=電気工作物の破損等で絶縁油が構内以外に排出・地下浸透したら、事故の発生後可能な限り速やかに産業保安監督部長へ届出。
⚠️ よくある間違い
「中性点非接地式」では対象外——直接接地式だから地絡電流が大きい。「廃液」「貯油施設」は条文の語ではない。この届出は事故報告(24時間・30日)とは別制度。
まとめ
| (ア) | 中性点直接接地式電路 |
| (イ) | 絶縁油 |
| (ウ) | 電気工作物 |
| 措置 | 構外への流出・地下への浸透の防止 |
| 届出時期 | 事故の発生後可能な限り速やかに |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・公害等の防止(電気事業法28):【法規】平成24年度 A問題3
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