今回は平成20年度 法規科目 A問題8、PCB電気工作物の取扱いを問う空欄補充問題です。過去に大量に使われたPCB機器をどう管理するか、という実務直結のテーマです。
制度は3階建て。まず新たに電路に施設することは禁止。次に持っているものは判明時・変更時・廃止時の3回報告。対象機器の代表が電力用コンデンサと変圧器です。
答えは(5):禁止・廃止・電力用コンデンサ
(ア)は「禁止」——「制約」ではなく、はっきりとした禁止です。
(イ)は「廃止」——「転用」はそもそも認められていないので報告事由になりません。
(ウ)は「電力用コンデンサ」——CVケーブルの絶縁体は架橋ポリエチレンでPCBとは無関係です。
平成20年度 法規科目 A問題8:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題8
電験3種 法規科目 【電気関係報告規則】 平成20年度 A問題8
次の文章は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する電気工作物(以下「PCB電気工作物」という。)の取扱いに関する記述である。
a. PCB電気工作物を新しく電路に施設することは(ア)されている。
b. PCB電気工作物に関しては、次の報告が義務付けられている。
① PCB電気工作物であることが判明した場合の報告 ② 上記①の報告内容が変更になった場合の報告 ③ PCB電気工作物を(イ)した場合の報告
c. 上記bの報告の対象となるPCB電気工作物には、(ウ)がある。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(注)平成20年度は公式問題PDFが公表されていないため、条文と過去問データに基づいて問題文を再構成しています。
(ア) (イ) (ウ) (1) 禁止 廃止 CVケーブル (2) 制約 廃止 電力用コンデンサ (3) 制約 転用 電力用コンデンサ (4) 制約 転用 CVケーブル (5) 禁止 廃止 電力用コンデンサ

★報告の3つのタイミング
| タイミング | 内容 | なぜ必要か |
| ★①判明したとき | ★★PCB電気工作物だと分かった | ★★どこに何台あるかを把握する |
| ★②変更になったとき | ★★報告内容に変更が生じた | ★★台帳を最新に保つ |
| ★③廃止したとき | ★★機器を電路から外した | ★★確実に処分されたか追跡する |
見つけてから処分し終わるまで、行政が追いかけ続けます——途中で行方不明にならないようにするためです。
PCBは不法投棄されると深刻な汚染を起こします——だからここまで厳しく追跡するのです。
★対象となる機器
| 機器 | PCBの用途 |
| ★変圧器 | ★★絶縁油 |
| ★電力用コンデンサ | ★★絶縁油 |
| ★リアクトル | ★★絶縁油 |
| ★計器用変成器 | ★★絶縁油 |
| ★整流器・放電コイル | ★★絶縁油 |
いずれも油を使う機器です——PCBは絶縁油として使われたからです。
CVケーブルは油を使いません——絶縁体は架橋ポリエチレンという固体です。
「油を使うかどうか」で見分けられます。
なぜPCBが使われたのか
絶縁性が高く、燃えにくく、化学的に安定していたからです——絶縁油として理想的な性質でした。
その安定性が、環境中で分解されない原因にもなりました——長所がそのまま短所になったのです。
生体に蓄積し、健康被害を引き起こします——1968年のカネミ油症事件をきっかけに製造が禁止されました。
「制約」と「禁止」の違い
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 禁止 | ★★禁止 | ★制約 | ★★新設は例外なく認められない |
| 廃止 | ★★廃止 | ★転用 | ★★転用はそもそも不可なので報告事由にならない |
| 電力用コンデンサ | ★★電力用コンデンサ | ★CVケーブル | ★★油を使う機器が対象 |
制約なら、条件を満たせば施設できることになります——しかしPCB機器は一切だめです。
既設のものを使い続けることだけが認められています——一斉に止めるのが現実的でなかったからです。
取り外したら再施設できない
| 行為 | できるか |
| ★新たに施設する | ★できない |
| ★既設のまま使い続ける | ★★できる |
| ★取り外して別の場所に施設する | ★できない |
いったん外したら、そこで終わりです——PCB特別措置法にもとづいて処分することになります。
だから「転用」は報告事由になりません——そういう場面が制度上ありえないからです。
PCB特別措置法との関係
| 法令 | 役割 |
| ★電気設備技術基準の解釈 | ★★新たに電路に施設することを禁止 |
| ★電気関係報告規則 | ★★判明・変更・廃止の報告 |
| ★PCB特別措置法 | ★★保管・処分の義務と期限 |
3つの法令が組み合わさって、PCB対策が成り立っています——電気事業法だけでは完結しません。
処分には期限が定められています——いつまでも保管してよいわけではないのです。
微量PCBという問題
意図せず微量のPCBが混入した機器も見つかっています——製造工程で混ざったものです。
見た目では分からないので、絶縁油を分析して判定します——だから「判明した場合」という報告事由があるのです。
古い変圧器を更新するときは、必ず確認します——主任技術者の実務そのものです。
実務での流れ
| 順 | すること |
| ★① | ★★機器の銘板や絶縁油の分析で有無を確かめる |
| ★② | ★★判明したら産業保安監督部長へ報告 |
| ★③ | ★★適正に保管する |
| ★④ | ★★処分し、廃止の報告をする |
見つけて、届けて、保管して、処分する——この流れが制度の全体像です。
試験の3つの報告タイミングは、この流れの中に位置づけられます。
なぜ既設だけ使い続けてよいのか
規制が始まった時点で、全国に大量のPCB機器が使われていました——一斉に止めれば、社会が回らなくなります。
しかも処理する施設の能力にも限りがありました——外しても処分できないのです。
そこで新設だけを止め、既設は使いながら順次処分する方針が取られました——現実的な移行措置です。
報告を怠るとどうなるか
| 行為 | 問題 |
| ★判明したのに報告しない | ★★行政が所在を把握できない |
| ★廃止を報告しない | ★★処分されたか確認できない |
| ★不適正に処分する | ★★環境汚染につながる |
報告制度は、PCBを最後まで追跡するための仕組みです——どこかで途切れると意味がなくなります。
だから3つのタイミングすべてで報告が求められるのです。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「禁止」——制約という緩い語ではない。
② (イ)は「廃止」。転用はそもそも不可なので報告事由にならない。
③ (ウ)は油を使う機器——CVケーブルは架橋ポリエチレンで無関係。
④ 報告は判明・変更・廃止の3回。
処分の期限が決まっている
PCB特別措置法は、処分の期限を定めています——高濃度は地域ごとに順次終了し、低濃度も期限が設けられています。
期限を過ぎても処分せずに保管し続けることは認められません——だから廃止の報告まで制度に組み込まれているのです。
出題履歴——PCBは環境系の定番
| 年度 | 問われ方 |
| ★平成20年度 問8 | ★★PCB電気工作物の報告(本問) |
| ★平成21年度 問4 | ★★絶縁油の流出防止と届出 |
| ★平成24年度 問3 | ★★公害防止とPCBの再施設 |
平成24年度 A問題3では、取り外したPCB機器を転用できるかが問われました。答えは「できない」——本問の(イ)とつながっています。
平成21年度 A問題4は絶縁油の流出防止です。環境まわりの3本セットとして押さえておきましょう。
💡 覚え方
PCB電気工作物=新たに電路に施設することは禁止(取り外したものの流用・転用も不可)。報告は①判明したとき ②報告内容が変更になったとき ③廃止したとき。対象機器は変圧器・電力用コンデンサ・リアクトル・計器用変成器など(CVケーブルは対象外)。
⚠️ よくある間違い
「制約」ではなく禁止。「転用」は報告事由ではなくそもそも不可。CVケーブルはPCBと無関係。
まとめ
| (ア) | 禁止(新たな施設) |
| (イ) | 廃止(したときの報告) |
| (ウ) | 電力用コンデンサ |
| 報告の3タイミング | 判明時・変更時・廃止時 |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
・公害等の防止(電気事業法28):【法規】平成24年度 A問題3
・公害防止等に関する届出(電気関係報告規則8):【法規】平成21年度 A問題4

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