今回は平成21年度 法規科目 B問題12、支線の張力と素線の条数を求める問題です。法規の計算のなかでも力学の要素が最も濃い一問です。
山場は2つ。①電線2本の張力の合力を角度から求める ②電線と支線で取り付け高さが違うのでモーメントで釣り合わせる。単純に水平力を等置すると答えが合いません。
平成21年度 法規科目 B問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題12
電験3種 法規科目 【技術基準の計算】 平成21年度 B問題12
図のように、高圧架空電線路中で水平角度が60°の電線路となる部分の支持物(A種鉄筋コンクリート柱)に、下記の条件で電気設備技術基準の解釈に適合する支線を設けるものとする。
(ア) 高圧架空電線の取り付け高さを10m、支線の支持物への取り付け高さを8m、この支持物の地表面の中心点と支線の地表面までの距離を6mとする。
(イ) 高圧架空電線と支線の水平角度を120°、高圧架空電線の想定最大水平張力を9.8kNとする。
(ウ) 支線には亜鉛めっき鋼より線を用いる。その素線は、直径2.6mm、引張強さ1.23kN/mm²である。素線のより合わせによる引張荷重の減少係数を0.92とし、支線の安全率を1.5とする。
(a) 支線に働く想定最大荷重[kN]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)10.2 (2)12.3 (3)20.4 (4)24.5 (5)40.1 kN
(b) 支線の素線の最少の条数として、正しいのは次のうちどれか。
(1)3 (2)7 (3)9 (4)13 (5)19 条



答えは(a)20.4kN・(b)7条
法規の計算のなかで最も力学の要素が濃い問題です——合力とモーメントの2段構え。
★★STEP1:電線2本の合力
角の二等分線方向に生じる
★ちょうど1本分と同じ大きさになる
120度のときは、合力が1本分の張力と等しくなります——cos60°=0.5だから2×0.5=1。
水平角度60°で曲がると、電線どうしの角は120度——ここを取り違えないことです。
この合力が、支線と反対向きに支持物を引きます。
★★STEP2:モーメントの釣り合い
三平方の定理
支線の張力のうち水平方向に効く割合
★電線は高さ10m、支線は高さ8m
(a)の答え
取り付け高さが違うので、水平力をそのまま等置してはいけません——ここが本問最大の急所です。
電線は10m、支線は8m——てこの原理で、支線側により大きな力が要るのです。
高さを無視すると9.8/0.6=16.3kNとなり、選択肢にありません——誤りに気づけます。
★STEP3:安全率を適用する
★本問は問題文で安全率1.5が指定されている
解釈61条の原則は安全率2.5ですが、本問は1.5と指定——問題文の条件に従います。
安全率は「引張強さ÷実際の張力」——だから必要な引張強さは張力×安全率です。
★STEP4:素線の条数
計算上は6条で足りる
計算では約5.1条となり、切り上げて6条です——しかし選択肢は3・7・9・13・19。
より線の条数は3・7・19といった構成になります——実際に作れる本数から選ぶのです。
5.1条以上を満たす最小の選択肢は7条——切り上げた6条は選択肢にないので、その次の7条です。
★なぜモーメントで考えるのか
根元まわりのモーメントの和がゼロ
★力×高さ(腕の長さ)
支持物は根元を支点として倒れようとします——だからモーメントで釣り合わせるのです。
高い位置にかかる力ほど、倒す効果が大きい——腕の長さが長いからです。
支線は低い位置なので、より大きな力が必要——てこの原理そのものです。
支線の角度と効率
| 支線の角度 | 水平成分の比 | 効率 |
| ★30度(寝かせる) | ★★0.87 | ★★高い |
| ★37度(本問) | ★★0.6 | ★★中 |
| ★60度(立てる) | ★★0.5 | ★★低い |
支線を寝かせるほど水平成分が大きくなり、効率がよいのです——ただし用地が要ります。
本問は高さ8m・距離6mなので、水平成分は0.6——3:4:5の直角三角形です。
支線の規定(解釈61条)
| 項目 | 基準 |
| ★安全率 | ★★2.5以上 |
| ★許容引張荷重の最低 | ★★10.7kN |
| ★素線の条数 | ★★3条以上 |
| ★素線の直径 | ★★2mm以上(引張強さ0.69kN/mm²以上) |
| ★地中部分 | ★★耐食性のあるもの又は防食措置 |
2.5/10.7/3条/2mm——4つの数値をセットで覚えます。
本問の安全率1.5は問題文の指定——条文の2.5とは別です。
より合わせによる減少係数
素線をより合わせると、斜めに巻かれるため軸方向の強度がやや落ちます。
その効果を表すのが減少係数0.92——8%の低下です。
より線の常識的な値——問題文で与えられます。
計算の手順をまとめる
| 手順 | やること | 落とし穴 |
| ★① | ★★電線2本の合力=2Tcos(θ/2) | ★★角度の取り方 |
| ★② | ★★支線の長さと水平成分の比を求める | ★★三平方の定理 |
| ★③ | ★★モーメントで釣り合わせる | ★★★高さの違いを無視しない |
| ★④ | ★★安全率を掛けて必要な引張強さ | ★★掛けるのか割るのか |
| ★⑤ | ★★素線1本の強さで割り、減少係数で補正 | ★★切り上げ |
③が本問の核心——力学の問題として解くのです。
⏱️ 本番での進め方
① 2力の合力は2Tcos(θ/2)——120度なら1本分と同じ。
② 取り付け高さが違うのでモーメントで釣り合わせる。
③ 必要な引張強さ=張力×安全率。
④ 条数=必要な強さ÷(素線1本の強さ×減少係数)、切り上げ。
💡 覚え方
支線の計算=①電線2本の合力F=2Tcos(θ/2)(θは電線どうしの角) ②支線の水平成分の比=水平距離÷支線長 ③モーメントの釣り合い F×h₁=T_s×(水平成分比)×h₂ ④必要な引張強さ=T_s×安全率 ⑤条数=必要な強さ÷(素線1本の引張強さ×より合わせ減少係数)、切り上げ。解釈61条=支線の安全率2.5以上・許容引張荷重10.7kN以上・素線3条以上。
⚠️ よくある間違い
取り付け高さの違いを無視しない——水平力をそのまま等置すると誤る。モーメントで釣り合わせる。電線どうしの角は120度——水平角度60°と混同しない。
まとめ
| 電線の合力 | 2×9.8×cos60°=9.8 kN |
| 支線長 | √(8²+6²)=10 m(水平成分比0.6) |
| (a)支線の張力 | 9.8×10/(0.6×8)≒20.4 kN →(3) |
| 必要強度 | 20.4×1.5≒30.6 kN |
| 素線1条 | 1.23×5.31×0.92≒6.01 kN |
| (b)条数 | 30.6/6.01≒5.1 → 7条 →(2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・支持物の倒壊の防止(電技省令14):【法規】令和5年度上期 A問題5
・安全率と許容引張荷重(技術基準の計算9):【法規】令和4年度下期 B問題11

コメント