技術基準の計算9【電験3種 法規】硬銅線の安全率は2.2!最小弛度の許容引張荷重はT/R 令和4年度下期 B問題11 完全解説

電験3種 法規科目 技術基準の計算 令和4年度下期 B問題11 硬銅線の安全率は2.2!許容引張荷重を求める

今回は令和4年度下期 法規科目 B問題11高圧架空電線の安全率と弛度を扱う問題です。数値計算ではなく数字と式の意味を理解しているかが問われる、少し珍しいタイプです。

覚えるのは2つ。安全率は硬銅線・耐熱銅合金線が2.2以上、その他(ACSRなど)が2.5以上。そして許容引張荷重=引張強さ÷安全率で、弛度 D=WS²/(8T) の分母に入るため、許容引張荷重が最大のとき弛度は最小になります。

目次

令和4年度下期 法規科目 B問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 法規科目 配電 令和4年度下期 B問題11 問題文
令和4年度下期 法規科目 B問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 B問題11

電験3種 法規科目 【技術基準の計算】 令和4年度下期 B問題11

 高圧架空電線において、電線に硬銅線を使用して架設する場合、電線の設計に伴う許容引張荷重と弛度について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

 ただし、径間S[m]、電線の引張強さT[kN]、電線の重量による垂直荷重と風圧による水平荷重の合成荷重がW[kN/m]とする。

(a) 「電気設備技術基準の解釈」によれば、規定する荷重が加わる場合における電線の引張強さに対する安全率が、R 以上となるような弛度に施設しなければならない。この場合R の値として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)1.5 (2)1.8 (3)2.0 (4)2.2 (5)2.5

(b) 弛度の計算において、最小の弛度を求める場合の許容引張荷重[kN]として、正しい式を次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)T/R (2)T×R (3)S×W/R (4)S×W×R (5)(T+S×W)/R

答え(a)硬銅線なのでR=2.2 = (4)/(b)許容引張荷重=T/R = (1)

答えは(a)2.2・(b)T/R

電気設備技術基準の解釈 第66条(低高圧架空電線の引張強さに対する安全率)

高圧架空電線は、ケーブルである場合を除き、次に規定する荷重が加わる場合における引張強さに対する安全率が、硬銅線又は耐熱銅合金線にあっては2.2以上、その他の電線にあっては2.5以上となるような弛度により施設すること。

★硬銅線・耐熱銅合金線は2.2、ACSR等その他は2.5。2つセットで覚えます。

数値計算ではなく、数字と式の意味を問う珍しい型です——理解していれば確実に取れます

★安全率とは何か

$$R = \dfrac{T}{T_{\text{実際}}}$$
安全率の定義(Tは電線の引張強さ)
実際に加わる張力の何倍まで耐えられるか
$$R \geq 2.2 \Rightarrow T_{\text{実際}} \leq \dfrac{T}{2.2}$$
安全率を2.2以上に保つ条件
張力をT/R以下に抑えるということ

「安全率をR以上にする」=「張力をT/R以下に抑える」——言い換えれば同じことです。

だから許容引張荷重はT÷R——「×R」では強度より大きな力をかけてよいことになり、意味が逆転します。

式の形を丸暗記せず、定義から導けるようにします

★なぜ硬銅線は2.2でよいのか

電線安全率理由
★硬銅線・耐熱銅合金線★★2.2以上★★材質が均一で強度のばらつきが小さい
★その他(ACSR・アルミ線等)★★2.5以上★★複合材で、より線の構造も含めばらつきが大きい

ACSRは鋼心とアルミの複合材です——2つの材料の分担が理論どおりにいかないことがあります。

ばらつきが大きいぶん、余裕を多めに取る——これが2.5という値の理由です。

★弛度と張力の関係

$$D = \dfrac{W S^2}{8 T_{\text{実際}}}$$
弛度D(Wは合成荷重、Sは径間)
張力が分母にあるので、張るほど弛度は小さくなる
$$T_{\text{実際}} = \dfrac{T}{R} \Rightarrow D_{min} = \dfrac{W S^2 R}{8 T}$$
許容の上限まで張ったときの弛度
これが最小の弛度

ピンと張れば弛みは減りますが、安全率を割ってはいけません——その限界がT/Rです。

だから「最小の弛度を求める場合の許容引張荷重」=T/R——設計の実務そのままです。

弛度と張力は反比例——この関係が(b)の答えを決めます

★弛度が小さすぎても困る

弛度起きること
★大きすぎる★★地上高が不足する・風で揺れて他物に接触する
★小さすぎる★★張力が大きくなり、断線や支持物の倒壊を招く

両方に上限がある——その間で設計するのです。

安全率の規定は「張りすぎるな」という下限側の制約——高さの規定は「たるませすぎるな」という上限側です。

温度による弛度の変化

$$L = L_0 \{1 + \alpha (t – t_0)\}$$
電線の長さの温度変化(αは線膨張係数)
温度が上がると電線が伸びる
$$t \uparrow \Rightarrow L \uparrow \Rightarrow D \uparrow,\ T \downarrow$$
夏の高温時
弛度が大きくなり、張力は小さくなる

夏は電線が伸びてたるみ、冬は縮んで張ります——だから条件が季節で変わるのです。

地上高の検討は最も垂れ下がる高温時——張力の検討は最も張る低温時です。

安全率は最も厳しい条件で満たす必要があります

荷重の種類

荷重内容
★垂直荷重★★電線の自重・氷雪の重さ
★水平荷重★★風圧による横向きの力
★合成荷重W★★垂直荷重と水平荷重のベクトル和
$$W = \sqrt{W_V^2 + W_H^2}$$
合成荷重の求め方
垂直と水平は直交するのでベクトル和

問題文の「電線の重量による垂直荷重と風圧による水平荷重の合成荷重がW」がこれです。

単純に足すのではなく、二乗和の平方根——B問題の計算で使います

風圧荷重の3種類

種類適用
★甲種風圧荷重★★高温季(980Pa等)
★乙種風圧荷重★★低温季で氷雪の多い地方(甲種の0.5倍+厚さ6mmの氷雪)
★丙種風圧荷重★★低温季で氷雪の少ない地方(甲種の0.5倍)

季節と地方で使い分けます——夏は台風、冬は着氷という日本の気候を反映しています。

安全率の計算では、この荷重が加わった状態で判定します。

低圧架空電線の安全率

条文の言葉ダミー語違い
低圧・高圧架空電線=硬銅線2.2/その他2.5★★低圧・高圧架空電線=硬銅線2.2/その他2.5★支線=2.5以上★★対象が違う
引張強さに対する安全率★★引張強さに対する安全率★風圧荷重に対する安全率(木柱)★★何に対する安全率か

電線は「引張強さ」、木柱は「風圧荷重」に対する安全率です——語を取り違えないこと

支線は安全率2.5以上・引張荷重10.7kN以上——あわせて覚えたい数値です。

計算問題での使われ方

$$T = 34.8\,\mathrm{kN},\ R = 2.2$$
硬銅より線の引張強さと安全率の例
許容引張荷重を求める
$$T_{\text{実際}} \leq \dfrac{34.8}{2.2} \approx 15.8\,\mathrm{kN}$$
許容引張荷重
この値を弛度の式に代入する

B問題では、この許容引張荷重を弛度の式に代入します——2段構えの計算になります。

まず安全率で張力の上限を出し、次に弛度を計算する——手順を固めておきます

支持物の安全率と並べる

対象安全率何に対して
★架空電線(硬銅線等)★★2.2以上★★引張強さ
★架空電線(その他)★★2.5以上★★引張強さ
★木柱(高圧保安工事)★★2.0以上★★風圧荷重
★支線★★2.5以上★★引張荷重

「何に対する安全率か」が対象ごとに違います——電線は引張強さ、木柱は風圧荷重

2.0/2.2/2.5という3つの値——対象とセットで覚えます

⏱️ 本番での進め方
① 安全率は硬銅線・耐熱銅合金線2.2/その他2.5
② 許容引張荷重はT÷R——「×R」では意味が逆転する。
③ 弛度はD=WS²/(8T)——張力が大きいほど弛度は小さい。
④ 最小の弛度=許容の上限いっぱいまで張ったとき

💡 覚え方
解釈66条=低高圧架空電線の引張強さに対する安全率は、硬銅線又は耐熱銅合金線で2.2以上、その他の電線で2.5以上。許容引張荷重=引張強さT÷安全率R。弛度D=WS²/(8T)で、張力が大きいほど弛度は小さくなるので、最小の弛度は許容引張荷重いっぱいまで張ったときに得られる。

⚠️ よくある間違い
許容引張荷重は「T×R」ではなくT÷R——安全率は「何倍まで耐えられるか」だから割る。硬銅線2.2/その他2.5を取り違えない。

まとめ

(a)安全率硬銅線・耐熱銅合金線 2.2以上 →(4)
その他の電線2.5以上
(b)許容引張荷重T÷R →(1)
弛度の式D=WS²/(8T)
関係張力が最大=T/R のとき弛度が最小
答え(a)-(4),(b)-(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・風圧荷重の計算(技術基準の計算8):【法規】令和5年度上期 B問題13
・支持物の倒壊の防止(電技省令14):【法規】令和5年度上期 A問題5

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