今回は令和5年度上期 法規科目 A問題5、支持物の倒壊の防止の空欄補充問題です。台風被害が続いたこともあり、近年よく出題される条文です。
覚える数字は10分間平均で風速40m/s。そして人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路は、施設場所を考慮すればその2分の1の風圧荷重で足ります——建物が風を遮るため緩和されるのです。
令和5年度上期 法規科目 A問題5:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題5
電験3種 法規科目 【電技省令】 令和5年度上期 A問題5
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく支持物の倒壊の防止に関する記述の一部である。
架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む。)は、その支持物が支持する電線等による(ア)、10分間平均で風速(イ)m/sの風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される地理的条件、(ウ)の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、10分間平均で風速(イ)m/sの風圧荷重の(エ)の風圧荷重を考慮して施設することができる。
上記の記述中の空白箇所(ア)〜(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 引張荷重 60 温度 3分の2 (2) 重量荷重 60 気象 3分の2 (3) 引張荷重 40 気象 2分の1 (4) 重量荷重 60 温度 2分の1 (5) 重量荷重 40 気象 2分の1

答えは(3):引張荷重・40m/s・気象・2分の1
(ア)は「引張荷重」・(イ)は「40」・(ウ)は「気象」・(エ)は「2分の1」——倒壊させるのは横向きの力です。
この記事では、支持物そのもの——柱の種類と強度に踏み込みます。
条文の趣旨と風圧荷重の考え方は、令和1年度の記事で扱っています。
★支持物の種類
| 種類 | 特徴 | 使われる場所 |
| ★木柱 | ★★安いが腐食する | ★★現在はほとんど使われない |
| ★鉄筋コンクリート柱 | ★★丈夫で保守が楽 | ★★配電線路の主力 |
| ★鉄柱 | ★★強度が高い | ★★特殊な箇所 |
| ★鉄塔 | ★★最も強い | ★★送電線路 |
街で見かける電柱のほとんどは鉄筋コンクリート柱です——コンクリート柱とも呼ばれます。
種類によって、適用される規定も変わります——解釈第58条以下に細かく定められています。
★A種とB種の違い
| A種 | B種 | |
| ★基礎 | ★★根入れ深さで安全率を確保 | ★★基礎の強度計算で確保 |
| ★径間の制限 | ★★厳しい(高圧保安工事で100m) | ★★緩い(同150m) |
| ★使い分け | ★★一般的な配電線路 | ★★条件の厳しい箇所 |
A種は根入れ深さで、B種は基礎の計算で強度を確保します——手軽さと確実さの違いです。
だからB種のほうが径間を長く取れます——高圧保安工事の100m/150mという数字につながります。
★根入れ深さの規定
| 柱の全長 | 根入れ深さ |
| ★15m以下 | ★★全長の6分の1以上 |
| ★15m超 | ★★2.5m以上 |
電柱は、全長の6分の1ほどが地中に埋まっています——10mの柱なら約1.7mです。
この深さが、倒壊を防ぐ支えになります——省令の「倒壊のおそれがないよう」を具体化したものです。
設計荷重が大きい場合は、さらに深くします。
安全率という考え方
| 対象 | 安全率 |
| ★木柱・A種柱 | ★★1.0以上(風圧荷重に対して) |
| ★B種柱・鉄塔 | ★★2.0以上(常時想定荷重に対して) |
| ★支線 | ★★2.5以上 |
| ★電線(硬銅線等) | ★★2.2以上 |
安全率とは、実際にかかる力に対してどれだけ余裕を持たせるかです。
支線の2.5、電線の2.2は技術基準の計算でよく使います——条文の数字と計算がつながるところです。
「地理的条件」とは何か
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 引張荷重 | ★★引張荷重 | ★重量荷重 | ★★倒壊させるのは横向きの力 |
| 40m/s | ★★40m/s | ★60m/s | ★★10分間平均で40m/s |
| 気象 | ★★気象 | ★温度 | ★★着雪・着氷・風向なども含む |
本問の条文には「地理的条件」という語も入っています——令和1年度版では省略されていた部分です。
海岸に近いか、山間部か、盆地かで条件が変わります——塩害や着氷雪の有無にも関わります。
台風で電柱が倒れるとき
2019年の房総半島台風では、約2 000本の電柱が倒れました——想定を超える風が吹いたのです。
倒木が電線を巻き込んで倒したケースも多くありました——風圧荷重の計算では想定しきれない要因です。
この経験から、無電柱化や設備強化が議論されています——条文の数字も見直される可能性があります。
径間という考え方
| 語 | 意味 |
| ★径間 | ★★支持物と支持物の間の距離 |
| ★標準径間 | ★★木柱・A種柱は150m、B種柱は250m、鉄塔は600m |
| ★高圧保安工事 | ★★A種柱100m、B種柱150m、鉄塔400m |
径間が長いほど、電線の張力も風圧も大きくなります——だから支持物の種類ごとに上限があるのです。
高圧保安工事では、より短く制限されます——他の設備と接近する危険な場所だからです。
弛度(たるみ)との関係
W:電線の荷重/S:径間/T:張力
★たるみは小さくなる
★たるみは2乗で増える
たるみを小さくしようと張力を上げると、支持物への負担が増えます——倒壊のリスクが高まるのです。
だから弛度と張力はつり合いで決めます——技術基準の計算で頻出の関係式です。
支持物が支持するもの
電線だけでなく、がいし・腕金・変圧器なども支えています——柱上変圧器は数百kgあります。
それらの重量と、電線の張力と、風圧が同時にかかります——だから条文が複数の荷重を並べているのです。
設計では、これらを組み合わせて最も厳しい条件で検討します。
電柱1本の倒壊が、広い範囲の停電につながります——だから倒壊防止に独立した条文が置かれているのです。
無電柱化という流れ
倒壊を根本から防ぐには、電柱をなくすのがいちばんです——それが無電柱化です。
ただし費用が高く、進むには時間がかかります——当面は支持物の強度で守るしかありません。
⏱️ 本番での進め方
① (ア)は「引張荷重」——倒壊させるのは横向きの力。
② (イ)は40m/s(10分間平均)。60m/sはダミー。
③ (ウ)は「気象」。温度だけでは狭すぎる。
④ (エ)は2分の1——丙種風圧荷重と同じ考え方。
出題履歴——4年をおいて同じ問題
| 年度 | 問われ方 | 正解番号 |
| ★令和1年度 問4 | ★★同一問題 | ★★(3) |
| ★令和5年度上期 問5 | ★★本問 | ★★(3) |
令和1年度 A問題4では、風圧荷重の種類と支線の役割を中心に解説しています。本記事は支持物そのものの構造に寄せました。
技術基準の計算では、この条文の数値が具体的に使われます——条文と計算をつなげて覚えましょう。
💡 覚え方
電技32条=支持物は電線等による引張荷重+10分間平均で風速40m/sの風圧荷重+地理的条件・気象の変化・振動・衝撃を考慮して倒壊しないこと。人家が多く連なる場所は風圧荷重を2分の1にできる。根入れ深さは全長15m以下なら6分の1以上。
⚠️ よくある間違い
風速を60m/sとしない——10分間平均で40m/s。「重量荷重」ではなく引張荷重。緩和は3分の2ではなく2分の1。
まとめ
| (ア) | 引張荷重 |
| (イ) | 40(m/s・10分間平均) |
| (ウ) | 気象(の変化) |
| (エ) | 2分の1 |
| 緩和の条件 | 人家が多く連なっている場所 |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・支持物の倒壊の防止(電技省令27):【法規】令和1年度 A問題4
・発電機等の機械的強度(電技省令46):【法規】平成19年度 A問題6

コメント