今回は平成20年度 法規科目 A問題7、ケーブルを使用する交流電路の絶縁耐力試験(電気設備技術基準の解釈第15条)に関する空欄補充問題です。試験電圧の倍率と加圧時間が問われます。
覚える骨格は「絶縁耐力試験は連続10分間」「ケーブルの交流電路は交流試験電圧の2倍の直流でもよい」「試験電圧は最大使用電圧7000V以下で1.5倍・7000V超(中性点非接地)で1.25倍」。10分・2倍・1.5倍・1.25倍がキーです。
平成20年度 法規科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」法規科目 A問題7
電験3種 法規科目 【電気設備技術基準の解釈】 平成20年度 A問題7
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」に基づく、ケーブルを使用する交流電路の絶縁耐力試験に関する記述の一部である。上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる数値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
・高圧又は特別高圧の電路は、規定の試験電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては心線相互間及び心線と大地との間)に連続して(ア)分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。
・電線にケーブルを使用する交流電路においては、規定の交流試験電圧の(イ)倍の直流電圧を電路と大地との間に連続して(ア)分間加えたとき、これに耐える性能を有すること(交流に代えて直流で試験する場合)。
・交流試験電圧は、最大使用電圧が7000V以下の電路では最大使用電圧の(ウ)倍、最大使用電圧が7000Vを超え中性点非接地式の電路では最大使用電圧の(エ)倍とする。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 5 1.5 2 1.25 (2) 10 2 1.5 1.25 (3) 5 2.5 2 1.5 (4) 10 2 1.5 1.5 (5) 10 1.5 1.5 1.5

答えは(2):10分・2倍・1.5倍・1.25倍
令和2年度 A問題3は6 600V電路の試験電圧を実際に計算する問題です。
この記事は「なぜ直流2倍なのか」を掘り下げます。
★なぜケーブルは交流試験が難しいのか
静電容量Cに比例するので、ケーブルでは非常に大きくなる
試験電圧Eの2乗に比例するので、容量が急激に膨らむ
ケーブルは導体と遮へい層が近接しているので、静電容量が架空線より桁違いに大きいのです。
長い線路なら、充電電流が数A〜数十Aに達します——10 350Vでそれだけ流すには大型の試験装置が要るのです。
現場に持ち込めない大きさになってしまう——だから直流での代替が認められています。
★直流ならなぜ小さい装置で済むのか
周波数がゼロなので、定常状態では充電電流が流れない
健全な絶縁ならμA〜mAオーダー
直流では、最初に充電する分だけ電流が流れ、あとは止まります——定常的には漏れ電流だけです。
だから小型の直流試験装置で足りる——現場での実施が可能になります。
しかも漏れ電流を測れば、絶縁の状態も同時にわかります。
★なぜ2倍なのか
| 交流試験 | 直流試験 | |
| ★絶縁体にかかる電圧 | ★★瞬時値は実効値の√2倍まで達する | ★★常にその値がかかり続ける |
| ★電界分布 | ★★誘電率で決まる | ★★抵抗率で決まる |
| ★ストレス | ★★交番するので部分放電が起きやすい | ★★交番しないぶんストレスが小さい |
直流は絶縁体へのストレスが交流より小さい——だから同等の試験にするには電圧を上げる必要があります。
その倍率が2倍——√2(波高値)より大きく設定されています。
★試験電圧の倍率表
| 最大使用電圧 | 種別 | 倍率 | 最低値 |
| ★7 000V以下 | ★★— | ★★1.5倍 | ★★500V |
| ★7 000V超 60 000V以下 | ★★中性点非接地 | ★★1.25倍 | ★★10 500V |
| ★60 000V超 | ★★中性点接地式 | ★★1.1倍 | ★★75 000V |
| ★60 000V超 | ★★中性点直接接地式 | ★★0.72倍 | ★★— |
電圧が高くなるほど倍率は下がります——絶対値がすでに十分大きいからです。
中性点直接接地式の0.72倍が最も低い——地絡時の電位上昇が小さいからです。
多心ケーブルの試験箇所
| 条文の言葉 | ダミー語 | 違い | |
| 心線相互間及び心線と大地との間 | ★★心線相互間及び心線と大地との間 | ★心線と大地との間だけ | ★★多心ケーブルは心線どうしの絶縁も試験する |
| 単心ケーブル | ★★単心ケーブル | ★多心ケーブル | ★★試験箇所の数が違う |
多心ケーブルは、1本の中に複数の心線が入っています——心線どうしの絶縁も守るべき対象です。
だから条文が括弧書きで明示しています——試験の手間は増えますが、必要な確認です。
直流試験の後始末
ケーブルには大きな静電容量があるので、試験後も電荷が残ります。
放電せずに触れれば感電します——数十kVが残っていることもあるのです。
だから放電棒で確実に放電し、しばらく接地しておきます——吸収電荷が徐々に出てくるからです。
絶縁抵抗測定との違い
| 絶縁抵抗測定 | 絶縁耐力試験 | |
| ★電圧 | ★★500V・1 000V等(メガー) | ★★試験電圧(数kV〜数十kV) |
| ★わかること | ★★絶縁抵抗の値 | ★★試験電圧に耐えるかどうか |
| ★性質 | ★★非破壊 | ★★弱っていれば破壊される |
絶縁耐力試験は、弱い箇所を見つけるためにあえて高い電圧をかける試験です。
だから試験前に必ず絶縁抵抗を測ります——明らかに悪いものに高電圧をかけないためです。
試験の手順
| 段階 | 内容 |
| ★① 事前確認 | ★★絶縁抵抗測定・接続の確認・関係者への周知 |
| ★② 昇圧 | ★★ゆっくり試験電圧まで上げる |
| ★③ 10分間保持 | ★★漏れ電流を監視する |
| ★④ 降圧・放電 | ★★残留電荷を確実に放電する |
| ★⑤ 事後確認 | ★★再度絶縁抵抗を測定する |
試験そのものが危険な作業です——感電災害も実際に起きています。
手順を守ることが安全につながります。
試験用変圧器の容量を見積もる
ケーブルの静電容量は1kmあたり0.2〜0.5μF程度
約1Aの電流を10 350Vで流す必要がある
現場に持ち込むには大きすぎる
わずか数百mのケーブルで10kVA級の装置が要ります——実務では持ち運べません。
直流なら数百VA以下の装置で済みます——これが直流試験が認められる実務上の理由です。
⏱️ 本番での進め方
① 加圧時間は10分間——5分ではない。
② ケーブルは交流試験電圧の2倍の直流で代替可。
③ 7 000V以下は1.5倍、7 000V超(非接地)は1.25倍。
④ 多心ケーブルは心線相互間も試験する。
💡 覚え方
解釈15条=高圧・特別高圧の電路は試験電圧を電路と大地との間(多心ケーブルは心線相互間及び心線と大地との間)に連続10分間加えて耐える。ケーブルを使用する交流電路は交流試験電圧の2倍の直流電圧でもよい。交流試験電圧は7 000V以下で1.5倍、7 000V超(中性点非接地)で1.25倍。
⚠️ よくある間違い
加圧時間は「5分」ではなく10分間。直流は「1.5倍」ではなく2倍。7 000V以下は1.5倍、7 000V超は1.25倍——倍率を逆にしない。
まとめ
| (ア)加圧時間 | 連続10分間 |
| (イ)ケーブル直流 | 交流試験電圧の2倍 |
| (ウ)最大使用電圧7000V以下 | 1.5倍 |
| (エ)7000V超(中性点非接地) | 1.25倍 |
| 試験の趣旨 | 絶縁性能の確認 |
| 答え | (2) |
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