比率差動継電器とは?変圧器の内部故障を見分けるしくみと「比率」の意味【電験3種 機械】

比率差動継電器|変圧器の内部故障を見分けるしくみ(電験3種 機械 学習ガイド)

変圧器の保護で必ず出てくる「比率差動継電器」。「差動」と「比率」がそれぞれ何を意味するのか、なぜわざわざ比率を使うのかが分かりにくい用語です。

この記事では、差動継電器の原理から、比率特性が必要な理由、励磁突入電流への対策、Δ-Y変圧器での注意点までを図で整理します。

この記事でわかること
✓ 差動継電器が内部故障を見分ける原理
✓ 「比率」特性が必要な理由
✓ 励磁突入電流で誤動作しないしくみ(第2高調波抑制)
✓ Δ-Y変圧器で必要な補正

よくあるつまずき:「比率」を「感度を上げるためのもの」と考えると、論説問題で選択肢を外します。比率特性は、外部故障のときに誤動作しないようにするためのしくみです。

目次

比率差動継電器とは:変圧器の内部故障を検出する保護継電器

比率差動継電器は、変圧器の一次側と二次側の電流を変流器(CT)で取り出して比べ、変圧器の内部で故障が起きたときだけ動作する保護継電器です。変圧器のほか、発電機などの保護にも使われます。

差動の原理:入る電流と出る電流の差を見る

差動継電器の原理図。正常時や外部故障では変圧器に入る電流I1と出る電流I2が等しく差が0で動作せず、内部故障では故障電流が流れて差が大きくなり動作する
正常時・外部故障では差は 0、内部故障のときだけ差が生じる

正常に運転しているときや、変圧器の外(負荷側など)で故障が起きたときは、変圧器に入る電流と出る電流は等しくなります(CT の変流比で大きさをそろえて比べます)。そのため、2つの電流の差はほぼ 0 です。

一方、変圧器の内部で故障が起きると、故障点に電流が流れ込むため、入る電流と出る電流に差が生じます。差動継電器は、この差電流を検出して動作します。

なぜ「比率」が必要なのか

実際には、外部故障でも差電流は完全には 0 になりません。CT の誤差や、変圧器のタップ切換えによる変圧比のずれがあるためです。外部故障で大きな電流が変圧器を通過すると、このわずかな誤差による差電流も大きくなり、単純な差動継電器では誤動作してしまいます。

そこで、差電流を「通過している電流の大きさ(抑制電流)」と比べ、その比率が設定値を超えたときだけ動作するようにしたのが、比率差動継電器です。

\[ |I_1 – I_2| > k \times (\text{抑制電流}) \]

比率差動継電器の動作特性。横軸が抑制電流、縦軸が差電流で、傾きが比率の線より上が動作域、下が不動作域。外部故障は不動作域、内部故障は動作域に入る
通過する電流が大きいほど、動作に必要な差電流も大きくなる

特性の線の傾きが「比率」です。通過電流が大きいほど、動作に必要な差電流も大きくなるので、外部故障の大電流による誤差では動作せず、内部故障だけを確実に検出できるようになります。

励磁突入電流と第2高調波抑制

変圧器に電圧をかけた(投入した)直後には、定格電流の何倍もの大きな励磁突入電流が流れることがあります。この電流は一次側だけに流れるので、差動継電器から見ると差電流に見え、内部故障と間違えて動作するおそれがあります。

励磁突入電流には、第2高調波が多く含まれるという特徴があります。そこで、差電流に含まれる第2高調波の割合が大きいときは動作を止める「第2高調波抑制」で、誤動作を防ぎます。

Δ-Y変圧器での注意点

Δ-Y結線の変圧器では、一次と二次の電流の位相が 30° ずれます(角変位)。そのままでは正常時にも差電流が出てしまうため、CT の結線を変圧器と逆(Y-Δ)にして位相を補正し、大きさの違いは補助 CT などで合わせます。角変位のしくみは変圧器の角変位の解説で詳しく説明しています。

誤動作の原因対策
CT の誤差・タップ切換え(外部故障時の大電流)比率特性(差電流を通過電流と比べる)
励磁突入電流(投入時)第2高調波抑制
Δ-Y 結線の位相差(30°)CT の結線を逆(Y-Δ)にして補正

よくある間違い

  • 外部故障でも動作すると思う:外部故障では入る電流と出る電流が等しいので、動作しません。
  • 比率は感度を上げるためのものと思う:比率特性は、外部故障時の誤差による誤動作を防ぐためのものです。
  • 励磁突入電流の見分け方を取り違える:突入電流に多く含まれるのは第2高調波です。
  • Δ-Y の位相補正を忘れる:CT の結線を変圧器と逆にして、30° のずれを打ち消します。

解くときのコツ:論説問題では、選択肢を「内部故障を検出するしくみ(差動)」と「誤動作を防ぐしくみ(比率・第2高調波抑制・位相補正)」に分けて読むと、どこが誤りかを見つけやすくなります。

過去問で確かめる

この記事の内容は、次の過去問で実際に問われています。

変圧器のほかの論点は変圧器の頻出公式と論点まとめにまとめています。

まとめ

  • 比率差動継電器は、変圧器に入る電流と出る電流の差から、内部故障を検出する。
  • 外部故障では差電流は小さく、比率特性によって誤動作を防ぐ。
  • 励磁突入電流は第2高調波が多いことを利用して、動作を止める。
  • Δ-Y 変圧器では、CT の結線を逆にして 30° の位相差を補正する。
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