誘導電動機の問題で出てくる「同期ワット」。名前に「ワット」と付いているのに、トルクの話で使われるので、何を表しているのか分かりにくい用語です。
この記事では、同期ワットの意味から、二次入力・二次銅損・機械出力の関係、同期速度と同期角速度、トルクの計算までを一本の流れで整理します。
この記事でわかること
✓ 同期ワットとは何か(トルクとの関係)
✓ 二次入力・二次銅損・機械出力の比 1 : s : (1−s)
✓ 同期速度・同期角速度・滑りの関係
✓ トルクの計算のしかた(2通り)
よくあるつまずき:同期ワットを「電動機の出力」と思い込むと、トルクや二次銅損の計算で答えを外します。同期ワットは、出力ではなく二次入力のことです。
同期ワットとは:二次入力でトルクを表す呼び方
誘導電動機では、一次側(固定子)から回転子側へ電力が送られます。この電力が二次入力 \(P_2\) です。二次入力は、トルク \(T\) と同期角速度 \(\omega_s\) の積になります。
\[ P_2 = \omega_s T \quad\Longrightarrow\quad T = \frac{P_2}{\omega_s} \]
同期角速度 \(\omega_s\) は、電源の周波数と極数で決まる一定の値です。そのため、二次入力はトルクに比例します。そこで、トルクの大きさを二次入力のワット数で表したものを同期ワットと呼びます。「同期速度で回っていると考えたときの出力」でトルクを表している、とイメージすると覚えやすいでしょう。
電力の流れ:二次入力から二次銅損を引いたのが機械出力

二次入力のうち、回転子の巻線で熱になる分(二次銅損)が \(sP_2\)、残りが機械的な出力 \((1-s)P_2\) です。滑り \(s\) を使うと、3つの電力は次の比で表せます。
\[ P_2 : P_{c2} : P_o = 1 : s : (1-s) \]
この比が成り立つのは、二次銅損が \(P_{c2} = I_2^{\,2} r_2\)、二次入力が \(P_2 = I_2^{\,2} \dfrac{r_2}{s}\) と表せるからです。二次銅損は二次入力の \(s\) 倍、という関係を比で覚えておくと、どの量が与えられても残りがすぐ出せます。
同期速度・同期角速度・滑り

回転磁界の速さ(同期速度)と、その角速度(同期角速度)は次の式で求めます。
\[ N_s = \frac{120 f}{p}\ [\mathrm{min^{-1}}], \qquad \omega_s = \frac{2\pi N_s}{60} = \frac{4\pi f}{p}\ [\mathrm{rad/s}] \]
| 極数 | 50 Hz のときの ωs | 60 Hz のときの ωs |
|---|---|---|
| 4極 | 約 157.1 rad/s | 約 188.5 rad/s |
| 6極 | 約 104.7 rad/s | 約 125.7 rad/s |
回転子は同期速度より少しだけ遅く回ります。その遅れの割合が滑り \(s\) で、回転速度は \(N = (1-s)N_s\)、角速度は \(\omega = (1-s)\omega_s\) です。
ここで、トルクを機械出力から求めても、同じ答えになることを確かめておきます。\(P_o = (1-s)P_2\)、\(\omega = (1-s)\omega_s\) なので、\(\dfrac{P_o}{\omega} = \dfrac{(1-s)P_2}{(1-s)\omega_s} = \dfrac{P_2}{\omega_s}\) です。二次入力÷同期角速度でも、機械出力÷回転角速度でも、トルクは同じになります。
計算例:二次入力からトルクを求める
計算例:4極・50 Hz の三相誘導電動機で、二次入力が 10 kW、滑りが 4 % のとき、トルク・二次銅損・機械出力を求めます。
- 同期速度:\(N_s = 120 \times 50 / 4 = 1500\ \mathrm{min^{-1}}\)、同期角速度:\(\omega_s = 2\pi \times 1500 / 60 \fallingdotseq 157.1\ \mathrm{rad/s}\)
- トルク:\(T = P_2 / \omega_s = 10000 / 157.1 \fallingdotseq 63.7\ \mathrm{N \cdot m}\)
- 二次銅損:\(P_{c2} = sP_2 = 0.04 \times 10 = 0.4\ \mathrm{kW}\)、機械出力:\(P_o = 10 – 0.4 = 9.6\ \mathrm{kW}\)
- 検算:\(N = 0.96 \times 1500 = 1440\ \mathrm{min^{-1}}\)、\(\omega \fallingdotseq 150.8\ \mathrm{rad/s}\)、\(T = 9600 / 150.8 \fallingdotseq 63.7\ \mathrm{N \cdot m}\)(一致)
解くときのコツ:トルクは「二次入力÷同期角速度」と「機械出力÷回転角速度」のどちらでも求められます。問題で与えられている量に合わせて使い分け、もう一方で検算すると確実です。
よくある間違い
- 同期ワットを機械出力と混同する:同期ワットは二次入力です。機械出力は (1−s) 倍した値です。
- ωs と ω を取り違える:二次入力には同期角速度 ωs、機械出力には回転角速度 ω を組み合わせます。
- min⁻¹ のまま計算する:角速度は rad/s です。2π を掛けて 60 で割るのを忘れないようにしましょう。
- 二次銅損を (1−s)P₂ とする:二次銅損は sP₂ です。滑りが小さいほど、二次銅損も小さくなります。
過去問で確かめる
この記事の内容は、次の過去問で実際に問われています。
誘導機のほかの論点は誘導機の頻出公式と論点まとめに、回転磁界と同期速度のしくみは回転磁界と交番磁界の違いにまとめています。
まとめ
- 同期ワットは二次入力 P₂ のこと。P₂ = ωsT なので、トルクに比例する。
- P₂ : 二次銅損 : 機械出力 = 1 : s : (1−s)。
- 同期速度 Ns = 120f/p、同期角速度 ωs = 2πNs/60 = 4πf/p。
- トルクは P₂/ωs でも Po/ω でも同じ値になる。

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