今回は令和5年度上期 電力科目 A問題4を解説します。1kgのウラン燃料に3.5%含まれるウラン235が核分裂して0.09%の質量欠損が生じたとき、同じエネルギーを得るのに必要な重油の量[kL]を求める問題です。
原子力4(令和6年度上期)の石炭換算と同じE=mc²の型ですが、今回は①濃縮度3.5%を先に掛ける②発熱量がkJ/L(体積あたり)③答えの単位がkLという3つのひねりが加わっています。
令和5年度上期 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 令和5年度上期 A問題4
1kgのウラン燃料に3.5%含まれるウラン235が核分裂し、0.09%の質量欠損が生じたときに発生するエネルギーと同量のエネルギーを、重油の燃焼で得る場合に必要な重油の量[kL]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、計算上の熱効率を100%、使用する重油の発熱量は40000kJ/Lとする。
(1)13 (2)17 (3)70 (4)1.3×10³ (5)7.8×10⁴ kL
出題のポイント:濃縮度と質量欠損率を順に掛ける

1 kgのウラン燃料すべてがエネルギーになるわけではありません。まず濃縮度3.5%でウラン235の質量を求め、さらに質量欠損率0.09%を掛けてE=mc²へ代入します。得られたJをkJ、L、kLの順に換算します。
濃縮度が答えを大きく変える
本問の3.5 % を、他の値に変えるとどうなるでしょうか。
| 濃縮度 | 核分裂するウラン235 | 必要な重油 |
| ★0.7 %(天然) | ★7 g | ★約14 kL |
| ★3.5 %(本問) | ★35 g | ★約71 kL |
| 5 % | 50 g | 約101 kL |
濃縮度に正比例します——同じ1 kg でも、濃縮度が高いほど多くのエネルギーが出るのです。
だから濃縮度を上げれば、燃料交換の間隔を延ばせます——近年は5 % 近くまで高める傾向にあります。
「熱効率100 %」という条件の意味
問題文の「計算上の熱効率を100 %」——発生した熱がすべて取り出せるとみなすという意味です。
実際の原子力発電所の熱効率は33 % 前後——電力量として取り出すなら、さらに掛けることになります。
本問は「重油の燃焼で得る場合」と熱量どうしを比べている——だから効率を考えなくてよいのです。
条件文が計算の範囲を決めている——読み落とさないようにしましょう。
0.09 % という値の意味
核分裂で質量の0.09 % が失われます——この値はどこから来るのでしょうか。
★原子1個あたり
ウラン235原子1個の質量は約3.9×10-25 kg——比を取ると約0.0009になります。
つまり0.09 % は、200 MeV という核分裂エネルギーの言い換え——別々に覚える必要はありません。
重油40,000 kJ/L という値
重油の発熱量は約40 MJ/L——石炭は約26 MJ/kg、天然ガスは約55 MJ/kgです。
問題では単位が kJ/L か kJ/kg かで、体積か質量かが決まります——与えられた単位をそのまま追えばよいのです。
重油は L、石炭は kg で問われることが多い——液体と固体の扱いの違いによります。
要点をもう一度
本問は3つの掛け算と2つの割り算でできています。
| 操作 | 値 | 意味 |
| ★×0.035 | ★濃縮度3.5 % | ★核分裂する質量 |
| ★×0.0009 | ★質量欠損0.09 % | ★エネルギーになる質量 |
| ★×9×1016 | ★c² | ★J に変わる |
| ★÷103 | ★J→kJ | ★発熱量の単位に合わせる |
| ★÷40,000 | ★重油の発熱量 | ★L が出る |
最後にもう一度÷103 して kL——約70 kLです。
ドラム缶(200 L)で約350本ぶん——ウラン燃料1 kg に相当します。
核燃料のエネルギー密度
重油70 kL は質量にすると約69 t——ウラン燃料1 kg の約7万倍です。
燃料の輸送も貯蔵も桁違いに楽になる——原子力の最大の利点だと言えます。
濃縮度3.5 % を先に掛ける
「1 kg のウラン燃料に3.5 % 含まれるウラン235」——核分裂するのはその3.5 % だけです。
★核分裂する質量
★2.835×10¹² J
2段階の掛け算——濃縮度を掛けてから、質量欠損の割合を掛けるのです。
0.035×0.0009=3.15×10-5——まとめて掛けても同じになります。
質量欠損から核分裂エネルギーを求める

発熱量が kJ/L なので、まず L が出ます——それを kL に直します。
★÷10³
★÷10³
÷103 が2回出てきます——J → kJ と、L → kL。
選択肢に70と1.3×103 と7.8×104 が並んでいる——換算を忘れると、そちらへ落ちます。
重油量をkLへ換算して選択肢(3)と照合する

| 順 | やること | 注意 |
| ① | 核分裂する質量を求める | ★濃縮度が与えられたら掛ける |
| ② | 質量欠損=質量×0.0009 | 0.09 % |
| ③ | kg に直す | ★g のままだと1000倍ずれる |
| ④ | E=mc²(c²=9×1016) | 答えは J |
| ⑤ | 問われた形に換算する | ★発熱量で割る/効率を掛ける |
本問は①〜⑤をすべて使います——最も手数の多い形です。
①の濃縮度、③の kg、⑤の kJ と kL——換算が3か所あります。
「計算上の熱効率を100 %」という条件——効率を掛けなくてよいという意味です。
実際には熱効率33 % 程度——電力量として取り出すなら、さらに掛けることになります。
⚠️ よくある間違い
濃縮度3.5 % を掛け忘れる——1 kg 全部が核分裂したとして計算すると2,025 kL。選択肢にありませんが、桁が大きく外れます。
kL への換算を忘れる——70,875 L のままとなり、選択肢(5)の7.8×104 に近づいて危険です。
J を kJ に直し忘れる——1000倍ずれます。
0.09 % を0.9 % と読む——709 kL となり、選択肢にありません。
選択肢が13/17/70/1.3×103/7.8×104——桁の誤りが素直に現れる作りになっています。
⏱️ 本番での進め方
①★「ウラン燃料1 kg」なので濃縮度3.5 % を先に掛ける。
②★c²=9×1016。
③★J → kJ と L → kL で÷103 が2回。
④「熱効率100 %」は効率を掛けなくてよいという意味。
💡 覚え方
「濃縮度を掛けて、質量欠損を掛けて、c² を掛ける」——3つ掛けてから、発熱量で割ります。最後に kL へ直すのを忘れないことです。
濃縮度3 % で J を答える問題が平成23年度 A問題4(原子力:濃縮度3%・燃料1kgのエネルギー)、重油[L]に換算する問題が平成24年度 A問題4(原子力:ウラン0.01kgを重油に換算)にあります。
まとめ
| 核分裂する質量 | 1kg×0.035=0.035kg |
| 質量欠損 | 0.035×0.0009=3.15×10⁻⁵kg |
| エネルギー | E=3.15×10⁻⁵×9×10¹⁶=2.835×10¹²J=2.835×10⁹kJ |
| 重油の量 | 2.835×10⁹/40000=70875L |
| kLへ | ≒70.9kL→(3)70((5)7.8×10⁴はL単位の引っかけ) |
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