今回は令和6年度上期 電力科目 A問題4を解説します。1gのウラン235が核分裂して0.09%の質量欠損が生じたとき、発生するエネルギーを発熱量25000kJ/kgの石炭に換算する問題です。
原子力計算の主役はアインシュタインの式 E=mc²。手順は①質量欠損をkgで出す②c²(=9×10¹⁶)を掛けてJにする③kJに直して石炭の発熱量で割るの3つ。単位(g→kg、J→kJ)の変換だけが落とし穴です。
出題のポイント:質量欠損から石炭換算

1 gのウラン235の0.09%に相当する質量欠損をkgへ直し、E=mc²でエネルギーを求めます。JをkJへそろえて石炭の発熱量で割る単位換算が要点です。
令和6年度上期 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 令和6年度上期 A問題4
1gのウラン235が核分裂し、0.09%の質量欠損が生じたとき、発生するエネルギーを石炭に換算した値[kg]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、石炭の発熱量を25000kJ/kgとする。
(1)32 (2)320 (3)1 600 (4)3 200 (5)6 400 kg
質量欠損から石炭換算までの道筋

★★ここが最大の関門
★約3,200 kg
ウラン1 g が石炭3.2 t——約320万倍のエネルギー密度です。
選択肢が32/320/1,600/3,200/6,400 と桁で並んでいる——単位換算を1つ間違えると、きれいに別の選択肢へ落ちる作りです。
E=mc²で石炭換算する

設定も選択肢も酷似していますが、発熱量だけが違います。
| ★令和元年度 A4 | ★令和6年度上期 A4(本問) | |
| ウランの質量 | 1 g | 1 g(同じ) |
| 質量欠損 | 0.09 % | 0.09 %(同じ) |
| ★石炭の発熱量 | ★2.51×104 kJ/kg | ★25,000 kJ/kg |
| 計算結果 | 3,227 kg | 3,240 kg |
| ★答え | ★(4) | ★(4) |
2.51×104 と25,000 は、ほとんど同じ値——だから答えも同じ3,200 kg になります。
表記のしかたが違うだけ——指数表記か、そのまま書くかという違いです。
解き方はまったく同じ——手順を覚えておけば、どちらも確実に取れます。
| 年度 | 与えられる質量 | 換算先 | 答え |
| ★平成23年度 A4 | ★燃料1 kg(濃縮度3 %) | ★エネルギーそのもの | ★2.43×1012 J |
| ★平成24年度 A4 | ★ウラン0.01 kg | ★重油[L] | ★19,000 L |
| ★令和元年度 A4 | ★ウラン1 g | ★石炭[kg](2.51×104) | ★3,200 kg |
| ★令和6年度上期 A4 | ★ウラン1 g | ★石炭[kg](25,000) | ★3,200 kg |
4年度で出題されている頻出パターン——形が変わっても骨格は同じです。
計算手順を一枚にまとめる
| 順 | やること | 注意 |
| ① | 核分裂する質量を求める | ★濃縮度が与えられたら掛ける |
| ② | 質量欠損=質量×0.09 % | ★0.0009 を掛ける |
| ③ | kg に直す | ★g のままだと1000倍ずれる |
| ④ | E=mc²(c²=9×1016) | ★答えは J |
| ⑤ | 燃料の発熱量で割る | ★J を kJ に直してから |
本問は①が不要(濃縮度なし)で、②〜⑤をすべて使います——最も標準的な形だと言えます。
③の kg への換算が、最も多い誤りの原因——1 g=10-3 kg を忘れないことです。
⚠️ よくある間違い
質量を g のまま計算する——答えが1000倍の3.24×106 kg となり、選択肢にありません。
J を kJ に直し忘れる——8.1×1010/25,000=3.24×106。やはり1000倍になります。
2つの誤りは、どちらも1000倍——両方やってしまうと100万倍です。
0.09 % を0.9 % と読む——32,400 kg となり、選択肢にありませんが桁を1つ間違えた6,400((5))に近づくと危険です。
c を2乗し忘れる——2.7×102/25,000 となってごく小さな値になります。
⏱️ 本番での進め方
①★1 g=10-3 kg。E=mc² は kg で計算。
②★c²=9×1016 を覚えておく。
③J → kJ は÷10³。発熱量の単位に合わせる。
④★令和元年度と発熱量だけが違う。答えは同じ(4)。
💡 覚え方
「kg に直して9×1016 を掛け、kJ に直して割る」——4つの操作だけです。換算を1つ忘れるたびに1000倍ずれる——そこだけ気をつけましょう。
ほぼ同じ問題が令和元年度 A問題4(原子力:E=mc²で石炭換算)にあります。
エネルギー密度を実感する
ウラン1 g が石炭3.2 t——この差を別の見方でも確かめておきましょう。
★22,500 kW·h
★7,400 kW·h
一般家庭の年間使用量は約4,000 kW·h——ウラン1 g で2年近くまかなえる計算です。
| 発電所 | 100万 kW を1年運転する燃料 | 1日あたり |
| ★原子力 | ★ウラン約30 t | ★約80 kg |
| 石炭火力 | 石炭約235万 t | 約6,400 t |
| LNG火力 | LNG約95万 t | 約2,600 t |
石炭なら毎日6,400 t を運び込む必要があります——10 t トラックで640台ぶんです。
原子力なら1日80 kg——実際には1年から1年半に一度、まとめて交換します。
数年分をあらかじめ備蓄できる——エネルギー安全保障の面で評価される理由がここにあります。
要点をもう一度
1 g=10-3 kg に直してから E=mc²——g のままだと1000倍ずれます。
8.1×1010 J を kJ に直して25,000 で割る——約3,240 kg=3,200 kg になります。
令和元年度と発熱量だけが違い、答えは同じ(4)——2.51×104 と25,000 はほぼ同じ値だからです。
換算を忘れると1000倍ずれる
| 忘れたもの | 結果 |
| ★g → kg | ★1000倍大きい |
| ★J → kJ | ★1000倍大きい |
| ★両方 | ★100万倍大きい |
どちらも「1000で割る」操作——忘れると同じ方向にずれます。
選択肢は32/320/1,600/3,200/6,400——1000倍の誤りは選択肢に現れません。
だから桁が合わなければ、すぐ気づける——選択肢が検算の道具になります。
この型が繰り返し出る理由
E=mc² の計算は、原子力の頻出パターンです。
| 問われ方 | 手順 | 年度 |
| ★エネルギーを J で答える | ★E=mc² まで | ★平成23年度 |
| ★重油の体積[L]に換算 | ★kJ/L で割る | ★平成24年度 |
| ★石炭の質量[kg]に換算 | ★kJ/kg で割る | ★令和元年度・令和6年度上期 |
骨格はいつも E=mc²——その後に換算するかどうかだけが変わります。
だから手順を1つ覚えておけば、どの形でも対応できる——確実に得点したい問題です。
気をつけるのは単位の換算だけ——質量は kg、エネルギーは発熱量の単位に合わせることになります。
まとめ
| 質量欠損 | Δm=1×10⁻³×0.0009=9×10⁻⁷kg |
| E=mc² | 9×10⁻⁷×9×10¹⁶=8.1×10¹⁰J |
| kJへ | 8.1×10¹⁰J=8.1×10⁷kJ |
| 石炭換算 | 8.1×10⁷/25000=3240kg |
| 答え | ≒3200kg→(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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