今回は令和5年度下期 電力科目 A問題4を解説します。軽水炉で使用されている原子燃料について、核分裂性物質・燃料の形状・濃縮度・親物質・天然ウランの組成の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。
またも濃縮度の引っかけですが、今回は「90%程度の高濃縮」という極端な数字。軽水炉の燃料は3〜5%程度の低濃縮ウランです。90%は原子力潜水艦や核兵器の世界の話で、発電用軽水炉にはあり得ません。
出題のポイント:軽水炉燃料とウラン濃縮度

軽水炉の燃料には、天然ウラン中に約0.7%しかないウラン235の割合を約3〜5%へ高めた低濃縮ウランを用います。二酸化ウラン粉末を焼き固めたペレットを被覆管に詰めて燃料棒とします。
令和5年度下期 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 令和5年度下期 A問題4
軽水炉で使用されている原子燃料に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
中性子を吸収して核分裂を起こすことのできる核分裂性物質には、ウラン235やプルトニウム239がある。
ウラン燃料は、二酸化ウランの粉末を焼き固め、ペレット状にして使用される。
ウラン燃料には、濃縮度90%程度の高濃縮ウランが使用される。
ウラン238は中性子を吸収してプルトニウム239に変わるので、親物質と呼ばれる。
天然ウランは約0.7%のウラン235を含み、残りはほとんどウラン238である。
核分裂性物質・親物質・燃料ペレット

「濃縮度90 % 程度の高濃縮ウラン」——発電用の軽水炉では使いません。
| 濃縮度 | 呼び名 | 用途 |
| ★0.7 % | ★天然ウラン | ★重水炉・黒鉛炉ならそのまま使える |
| ★3〜5 % | ★低濃縮ウラン | ★軽水炉の燃料(発電用) |
| 20 % 未満 | 低濃縮ウラン | 研究炉など |
| ★20 % 以上 | ★高濃縮ウラン | ★発電には使わない |
| ★90 % 以上 | ★兵器級 | ★民生用ではあり得ない |
軽水炉の燃料は3〜5 %——90 % は桁が違います。
なぜ低い濃縮度でよいのでしょうか——軽水が中性子をよく減速するからです。
熱中性子は核分裂を起こしやすい——だから燃料が薄くても連鎖反応が続くことになります。
むしろ濃縮度を上げすぎると危険——制御が難しくなるのです。
軽水炉燃料はウラン235を約3〜5%に濃縮する

2つの言葉は、対になっています。
| 区分 | 意味 | 該当する核種 |
| ★核分裂性物質 | ★熱中性子を吸って核分裂する | ★ウラン235・プルトニウム239・ウラン233 |
| ★親物質 | ★中性子を吸って核分裂性物質に変わる | ★ウラン238・トリウム232 |
親物質は、それ自体では燃えません——けれども中性子を吸えば燃料に変わるのです。
★プルトニウム239になる
だから「親」物質——燃料を産み出すものという意味です。
トリウム232も同じ仕組みでウラン233に変わります——トリウム炉の構想はここから生まれました。
(2) 燃料ペレットの作り方
ウラン燃料は、粉から焼き固めて作ります。
| 順 | 工程 | 状態 |
| ① | ウラン鉱石を精錬する | イエローケーキ |
| ② | 六ふっ化ウランにして濃縮する | ★気体 |
| ③ | ★二酸化ウランの粉末にする | ★黒い粉 |
| ④ | ★圧縮して1,700 ℃ 前後で焼き固める | ★セラミックのペレット |
| ⑤ | 被覆管に詰めて燃料集合体にする | 燃料棒 |
ペレットは直径・高さとも約1 cm——指先ほどの大きさです。
なぜ金属ではなくセラミックなのでしょうか——融点が約2,800 ℃ と高いからです。
万一冷却が失われても、すぐには溶けない——安全上の余裕になります。
ペレット1個で、一般家庭の約8か月分の電気——石油ならドラム缶約1本ぶんにあたります。
⚠️ よくある間違い
(3)の「90 %」を見落とす——数値が具体的すぎて、正しく見えてしまうのです。
軽水炉は3〜5 %——問われているのが「軽水炉で使用されている原子燃料」だと確認しましょう。
(1)の「プルトニウム239」を疑ってしまう——正しいのです。核分裂性物質はウラン235だけではありません。
(4)の「親物質」という用語を疑ってしまう——正式な用語です。ウラン238はプルトニウム239の親になります。
(5)の「約0.7 %」を疑ってしまう——天然ウランの組成として正しい。この0.7 % を3〜5 % に高めるのが濃縮です。
(3)と(5)を並べれば、0.7 % と90 % の落差で気づけます。
⏱️ 本番での進め方
①★軽水炉は3〜5 % の低濃縮。90 % は兵器級。
②★核分裂性物質=U235・Pu239/親物質=U238・Th232。
③★ペレットは二酸化ウランを焼き固めたセラミック。
④天然ウランは0.7 %。それを濃縮して使う。
💡 覚え方
「0.7 % を3〜5 % に高める、それが濃縮」——90 % まで上げる必要はどこにもありません。軽水がよく減速するから、薄い燃料でも連鎖反応が続くのです。
同じ濃縮度の引っかけが令和6年度下期 A問題4(原子力:原子力発電の基礎)にあります。そちらは「2〜4 % の高濃縮ウラン」——数値は正しいのに呼び名が誤りという形です。
燃料集合体の姿
ペレットは、被覆管に詰めて燃料棒になります。
| 単位 | 大きさ | 数の目安 |
| ★ペレット | ★直径・高さ約1 cm | ★— |
| ★燃料棒 | ★長さ約4 m | ★ペレット350個前後 |
| ★燃料集合体 | ★1辺約14 cm の束 | ★燃料棒60〜260本 |
| ★炉心 | ★直径3〜4 m | ★集合体150〜800体 |
被覆管はジルコニウム合金——中性子をほとんど吸わない金属だからです。
被覆管は放射性物質を閉じ込める最初の壁——五重の壁の1つ目にあたります。
ペレット自体も、核分裂生成物を内部に留めます——セラミックの緻密な構造が働くのです。
燃料はどれくらい使うか
1体の燃料集合体は、炉内で3〜4年使われます。
毎年3分の1ずつ取り替える——古い燃料と新しい燃料が混在することになります。
取り出した燃料には、まだウラン235が1 % 前後残っています——天然ウランより濃いのです。
だから再処理して回収する価値がある——そこが核燃料サイクルの出発点になります。
放射性物質を閉じ込める5つの壁
ペレットと被覆管は、その壁の1つ目と2つ目です。
| 順 | 壁 | 役割 |
| ★① | ★ペレット | ★核分裂生成物をセラミックの中に留める |
| ★② | ★被覆管 | ★ジルコニウム合金で密封する |
| ③ | 原子炉圧力容器 | 厚さ約20 cm の鋼鉄 |
| ④ | 原子炉格納容器 | 圧力容器全体を覆う |
| ⑤ | 原子炉建屋 | 鉄筋コンクリート |
燃料そのものが最初の壁になっている——ペレットの緻密さがそれを支えます。
粉のまま使わず、焼き固める理由の1つ——閉じ込め性能を持たせるためです。
被覆管にジルコニウムを使う理由
| 求められる性質 | ジルコニウム合金は |
| ★中性子を吸わない | ★吸収がきわめて小さい |
| 耐熱・耐食 | 高温の水に耐える |
| 強度 | 圧力差に耐える |
ステンレスでは中性子を吸いすぎます——そのぶん濃縮度を上げる必要が出るのです。
弱点は高温で水と反応して水素を出すこと——約350 ℃ が使用の限界になります。
要点をもう一度
誤りは(3)の「濃縮度90 % 程度」——軽水炉は3〜5 %です。
| 記述 | 正誤 | 決め手 |
| (1) | 正 | 核分裂性物質=U235・Pu239 |
| (2) | 正 | 二酸化ウランを焼き固めたペレット |
| ★(3) | ★誤 | ★90 % は兵器級。発電用ではない |
| (4) | 正 | U238は親物質 |
| (5) | 正 | 天然ウランは0.7 % |
(5)の0.7 % と(3)の90 % を並べれば、落差で気づけます——同じ問題の中に手がかりがあるのです。
核分裂性物質と親物質の対、天然0.7 % と濃縮3〜5 % の対——2つの対を押さえれば全問対応できます。
まとめ
| (1)核分裂性物質 | U235・Pu239→正しい |
| (2)燃料の形状 | UO₂粉末を焼き固めたペレット→正しい |
| (3)濃縮度 | 軽水炉は3〜5%の低濃縮(90%は兵器級)→誤り |
| (4)親物質 | U238は吸収してPu239に変わる→正しい |
| (5)天然ウラン | U235約0.7%・残りはU238→正しい。答えは(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
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