今回は平成23年度 電力科目 A問題4を解説します。ウラン235を3%含む原子燃料1kgに含まれるウラン235がすべて核分裂したとき(質量欠損0.09%)、発生するエネルギー[J]を求める問題です。
E=mc²シリーズの中で最短の問題。燃料換算がなく、エネルギーをJのまま答えるので、①濃縮度3%を掛ける②0.09%を掛ける③c²=9×10¹⁶を掛ける——掛け算3回で終わりです。
平成23年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 平成23年度 A問題4
ウラン235を3[%]含む原子燃料が1[kg]ある。この原子燃料に含まれるウラン235がすべて核分裂したとき、ウラン235の核分裂により発生するエネルギー[J]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、ウラン235が核分裂したときには、0.09[%]の質量欠損が生じるものとする。
(1)2.43×10¹² (2)8.10×10¹³ (3)4.44×10¹⁴ (4)2.43×10¹⁵ (5)8.10×10¹⁶ J

核分裂1回あたりのエネルギー
本問の結果を、原子1個あたりに直してみましょう。
★原子の個数
★約200 MeV
核分裂1回で約200 MeV(3.2×10-11 J)——原子核の世界では標準的な値です。
化学反応(燃焼)は1分子あたり数 eV——核分裂はその1億倍近いことになります。
だから燃料の量が桁違いに少なくて済む——エネルギー密度の差はここから来ています。
濃縮度が高いとどうなるか
| 濃縮度 | 1 kg 中のウラン235 | 発生エネルギー |
| ★0.7 %(天然) | ★7 g | ★5.67×1011 J |
| ★3 %(本問) | ★30 g | ★2.43×1012 J |
| 5 % | 50 g | 4.05×1012 J |
濃縮度に正比例します——同じ1 kg でも、濃縮度が高いほど多くのエネルギーが取り出せるのです。
だから濃縮度を上げれば、燃料交換の間隔を延ばせます——近年は5 % 近くまで高める傾向にあります。
要点をもう一度
「原子燃料1 kg」なので、まず濃縮度3 % を掛けます——核分裂するのは0.03 kg だけです。
そこから0.09 % が質量欠損——2.7×10-5 kg になります。
E=2.7×10-5×9×1016=2.43×1012 J——本問は J で答えるので、ここで終わりです。
2つの割合を混同しない
| 割合 | 意味 | 掛ける相手 |
| ★濃縮度3 % | ★燃料のうちウラン235の割合 | ★燃料全体の質量 |
| ★質量欠損0.09 % | ★核分裂で失われる質量の割合 | ★ウラン235の質量 |
2つは意味がまったく違います——順に掛けていくことになります。
濃縮度を忘れると8.10×1013=選択肢(2)——そのまま用意されています。
問題文が「原子燃料が1 kg」と書いているのが手がかり——「ウラン235が1 kg」なら濃縮度は不要です。
濃縮度から核分裂する質量を出す
本問は「原子燃料1 kg」であって「ウラン235が1 kg」ではありません——ここが最初の関門です。
| 質量 | 核分裂するか | |
| 原子燃料の全体 | 1 kg | — |
| ★ウラン235(3 %) | ★0.03 kg | ★する |
| ウラン238など(97 %) | 0.97 kg | しない |
核分裂するのは、含まれるウラン235だけ——まず3 % を掛けます。
問題文も「この原子燃料に含まれるウラン235がすべて核分裂したとき」と明記しています。
★核分裂する質量
★2.43×10¹² J
2段階の掛け算——濃縮度を掛けてから、質量欠損の割合を掛けるのです。
0.03×0.0009=2.7×10-5——まとめて0.000027 を掛けても同じになります。
答えがエネルギーそのもの
本問は燃料に換算しません——E=mc² で止まります。
| 年度 | 与えられる質量 | 換算先 | 答え |
| ★平成23年度 A4 | ★燃料1 kg(濃縮度3 %) | ★エネルギーそのもの | ★2.43×1012 J |
| ★平成24年度 A4 | ★ウラン0.01 kg | ★重油[L] | ★19,000 L |
| ★令和元年度 A4 | ★ウラン1 g | ★石炭[kg](2.51×104) | ★3,200 kg |
| ★令和6年度上期 A4 | ★ウラン1 g | ★石炭[kg](25,000) | ★3,200 kg |
他の年度は燃料に換算する形——本問だけが J で答えます。
だから kJ への換算も不要——最も短い手順で終わることになります。
| 順 | やること | 注意 |
| ① | 核分裂する質量を求める | ★濃縮度が与えられたら掛ける |
| ② | 質量欠損=質量×0.09 % | ★0.0009 を掛ける |
| ③ | kg に直す | ★g のままだと1000倍ずれる |
| ④ | E=mc²(c²=9×1016) | ★答えは J |
| ⑤ | 燃料の発熱量で割る | ★J を kJ に直してから |
本問は①が必要(濃縮度3 %)で⑤が不要——手順の前半だけを使います。
選択肢の桁を確かめる
| 選択肢 | 値 | どんな誤りか |
| ★(1) | ★2.43×1012 | ★正解 |
| (2) | 8.10×1013 | 濃縮度を掛けず1 kg で計算 |
| (3) | 4.44×1014 | 別の誤り |
| (4) | 2.43×1015 | ★1000倍(g と kg の取り違え) |
| (5) | 8.10×1016 | 濃縮度なし+1000倍 |
(2)は濃縮度3 % を掛け忘れた値——1 kg 全部が核分裂したと考えた結果です。
★選択肢(2)
(4)は正解のちょうど1000倍——単位を g で計算した場合にあたります。
2つの典型的な誤りに、それぞれ選択肢が用意されている——よくできた出題だと言えます。
⚠️ よくある間違い
濃縮度3 % を掛け忘れる——8.10×1013 となって選択肢(2)に一致します。最も多い誤りでしょう。
「原子燃料が1 kg」であって「ウラン235が1 kg」ではない——問題文をよく読むことです。
質量を g で計算する——2.43×1015 となって選択肢(4)に一致します。
3 % と0.09 % を足してしまう——2つは掛け合わせるものです。「3 % のうちの0.09 %」という関係になります。
c を2乗し忘れる——桁が大きく外れます。
⏱️ 本番での進め方
①★「原子燃料1 kg」なので濃縮度3 % を先に掛ける。
②忘れると8.10×1013=選択肢(2)に誘導される。
③★2段階の掛け算:0.03×0.0009=2.7×10-5。
④本問は J で答えるので、燃料への換算は不要。
💡 覚え方
「燃料全体のうち3 %、そのうち0.09 %」——2回掛けるのが本問の要点です。そして答えは J のまま——換算する必要がありません。
燃料に換算する型は平成24年度 A問題4(原子力:ウラン0.01kgを重油に換算)にあります。
まとめ
| 核分裂する質量 | 1kg×0.03=0.03kg |
| 質量欠損 | 0.03×0.0009=2.7×10⁻⁵kg |
| E=mc² | 2.7×10⁻⁵×9×10¹⁶ |
| 答え | 2.43×10¹²J→(1) |
| 注意 | 濃縮度を掛け忘れると8.10×10¹³の誤答へ |
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