今回は平成22年度 電力科目 A問題4を解説します。わが国の商業発電用の加圧水型原子炉(PWR)の記述として正しいものを選ぶ問題です。
この問題の仕掛けはシンプルで、正解の(3)以外はぜんぶBWR(沸騰水型)の記述。「炉内で蒸発」「再循環ポンプ」「放射線を受けた蒸気がタービンへ」と来たらBWR——PWRとBWRの仕分けがそのまま点になります。
正しいのは(3):一次冷却水を蒸気発生器へ送る
本問は「正しいものを選ぶ」型——残る4つはすべて沸騰水型の記述です。
| 記述 | 内容 | どちらの方式か |
| (1) | 炉心内で水を蒸発させて蒸気を発生 | ★沸騰水型 |
| (2) | 再循環ポンプで蒸気泡の発生量を変える | ★沸騰水型 |
| ★(3) | ★高温・高圧の水を炉心から蒸気発生器へ | ★加圧水型(正解) |
| (4) | 炉心と蒸気発生器で発生した蒸気を混合 | ★どちらでもない(あり得ない) |
| (5) | 放射線を受けた蒸気がタービンを通過 | ★沸騰水型 |
(1)(2)(5)は沸騰水型の特徴——加圧水型では炉内を沸騰させません。
(4)は加圧水型でも沸騰水型でもあり得ない記述——加圧水型の炉心では蒸気が発生しないからです。
加圧水型では、一次冷却水は高温・高圧の「水」のまま——それを蒸気発生器へ送って、二次系の水を蒸気に変えるのです。
平成22年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 平成22年度 A問題4
わが国における商業発電用の加圧水型原子炉(PWR)の記述として、正しいのは次のうちどれか。
炉心内で水を蒸発させて、蒸気を発生する。
再循環ポンプで炉心内の冷却水流量を変えることにより、蒸気泡の発生量を変えて出力を調整できる。
高温・高圧の水を、炉心から蒸気発生器に送る。
炉心と蒸気発生器で発生した蒸気を混合して、タービンに送る。
炉心を通って放射線を受けた蒸気が、タービンを通過する。

加圧水型の水の流れ
| 系統 | 流れ | 状態 |
| ★一次系 | ★炉心 → 蒸気発生器 → 一次冷却材ポンプ → 炉心 | ★高温・高圧の水(沸騰しない) |
| ★二次系 | ★蒸気発生器 → タービン → 復水器 → 給水ポンプ | ★蒸気と水(沸騰する) |
一次系は閉じた輪——炉心と蒸気発生器の間をぐるぐる回ります。
二次系も閉じた輪——火力発電所とまったく同じ形です。
2つの輪が蒸気発生器で接している——けれども水は混ざりません。
だから(4)の「蒸気を混合」はあり得ない——そもそも一次系に蒸気はありません。
「正しいものを選ぶ」型の解き方
4つが誤りで1つが正しい——ふつうの正誤問題とは逆です。
| 型 | 選択肢の構成 | 解き方 |
| 誤っているものを選ぶ | 4つ正しく、1つ誤り | おかしいものを探す |
| ★正しいものを選ぶ | ★4つ誤りで、1つ正しい | ★確実に正しいものを1つ見つける |
本問では、加圧水型の特徴を1つでも確実に覚えていれば解けます——「蒸気発生器がある」という一点です。
逆に沸騰水型の特徴(炉内で沸騰・再循環ポンプ・タービンに放射能)を知っていれば、消去法でも絞れます。
設問の向きを読み飛ばすと真逆を選んでしまいます——問題文の最後を必ず確認しましょう。
⚠️ よくある間違い
「誤っているもの」と読み違える——本問は「正しいのは次のうちどれか」です。
(1)を選んでしまう——「炉心内で水を蒸発させて蒸気を発生」は沸騰水型。加圧水型は加圧器で沸騰を防ぎます。
(2)を選んでしまう——再循環ポンプは沸騰水型の設備。加圧水型にはありません。
(5)を選んでしまう——加圧水型では二次系が分離されているので、タービンに放射性物質は来ません。
(4)は両方式ともあり得ない——もっともらしく見えますが、一次系に蒸気はないのです。
⏱️ 本番での進め方
①★本問は「正しいもの」を選ぶ。設問の向きを確認。
②★(3)以外はすべて沸騰水型の記述((4)を除く)。
③加圧水型は炉内を沸騰させず、一次冷却水は水のまま。
④(4)は両方式ともあり得ない。一次系に蒸気はない。
💡 覚え方
「加圧水型の炉心に蒸気はない」——これだけで(1)(4)(5)が消えます。再循環ポンプも沸騰水型の設備——残るのが(3)になります。
PWR と BWR の設備の違いは平成27年度 A問題4(原子力:原子力発電の設備概要)、出力調整は平成20年度 A問題4(原子力:PWRとBWRの出力調整)にあります。
沸騰水型の記述を見分ける
本問の誤りの選択肢は、いずれも沸騰水型の特徴です。
| 沸騰水型の特徴 | 本問での記述 |
| ★炉内で沸騰させる | ★(1) 炉心内で水を蒸発させて蒸気を発生 |
| ★再循環ポンプで出力調整 | ★(2) 蒸気泡の発生量を変えて出力を調整 |
| ★蒸気が直接タービンへ | ★(5) 放射線を受けた蒸気がタービンを通過 |
3つとも「炉内で沸騰させる」ことから生じる特徴——根は同じです。
沸騰させるから蒸気ができ、その泡の量で出力が変わり、その蒸気がそのままタービンへ行く——一本の流れになっています。
加圧水型はこの流れをすべて否定します——沸騰させないので泡もなく、蒸気も炉から出ません。
(4) がどちらでもない理由
「炉心と蒸気発生器で発生した蒸気を混合して」——2つの前提が矛盾しています。
| 方式 | 炉心の蒸気 | 蒸気発生器 |
| ★加圧水型 | ★ない | ★ある |
| ★沸騰水型 | ★ある | ★ない |
炉心の蒸気と蒸気発生器の両方があるのは、どちらの方式でもありません——だから(4)は成り立たないのです。
もっともらしく見えますが、設備の組み合わせがあり得ない——2つの方式を混ぜた記述だと言えます。
加圧水型の3つの特有設備
「炉内を沸騰させない」ために必要な設備です。
| 設備 | 役割 | 本問での関係 |
| ★加圧器 | ★一次冷却材を15.4 MPa に保ち沸騰を防ぐ | ★(1)を否定する |
| ★蒸気発生器 | ★一次系の熱を二次系に渡す | ★(3)が正しい根拠 |
| ★一次冷却材ポンプ | ★一次系の水を循環させる | ★(2)の再循環ポンプとは別物 |
15.4 MPa では水の沸点は約345 ℃——炉心を出る水は約325 ℃ ですから沸騰しません。
だから(1)の「炉心内で水を蒸発させて」は成り立たないのです。
一次冷却材ポンプと再循環ポンプ
| ★一次冷却材ポンプ | ★再循環ポンプ | |
| 方式 | ★加圧水型 | ★沸騰水型 |
| 役割 | ★一次系を循環させる(流量は一定) | ★流量を変えて出力を調整する |
どちらも水を回すポンプですが、目的が違います——加圧水型では出力調整に使いません。
加圧水型の出力調整はほう素濃度——だから(2)は沸騰水型の記述だと分かります。
要点をもう一度
正しいのは(3)「高温・高圧の水を炉心から蒸気発生器に送る」——加圧水型の一次系そのものです。
(1)(2)(5)は沸騰水型の記述——いずれも「炉内で沸騰させる」ことから生じる特徴になります。
(4)は両方式ともあり得ない——炉心の蒸気と蒸気発生器が同時に存在する炉はありません。
設問の向きを確かめる
本問は「正しいのは次のうちどれか」——4つが誤りで、1つだけが正しい形です。
過去問を解き慣れているほど「誤っているもの」と思い込みやすい——問題文の最後を必ず読むことです。
「正しいものを選ぶ」型は、1つでも確信できれば決まります——加圧水型に蒸気発生器があると知っていれば、それで足りるのです。
2つの方式を一枚で覚える
| 項目 | ★加圧水型(PWR) | ★沸騰水型(BWR) |
| 炉内の沸騰 | ★させない | ★させる |
| 系統 | ★一次系と二次系 | ★1つ |
| 特有の設備 | ★加圧器・蒸気発生器 | ★再循環ポンプ |
| 出力調整 | ★ほう素濃度 | ★再循環流量 |
| タービン側の放射能 | ★ない | ★ある |
「沸騰させるかどうか」から、すべての違いが生まれています。
本問の5つの選択肢は、この表のどこかに対応しています——表を覚えれば即答できることになります。
まとめ
| (1)炉内で蒸発 | BWRの説明→誤り |
| (2)再循環ポンプ | BWR特有の出力調整→誤り |
| (3)一次水を蒸気発生器へ | PWRの構成→正しい |
| (4)蒸気の混合 | 架空の構成(H25問4でも誤り)→誤り |
| (5)放射性の蒸気がタービンへ | BWRの話→誤り。答えは(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・BWRに蒸気発生器はない(原子力17・同じ引っかけ):【電力】平成25年度 A問題4
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