今回は平成25年度 電力科目 A問題4を解説します。原子力発電に用いられる軽水炉(加圧水型PWRと沸騰水型BWR)について、誤っているものを選ぶ問題です。
ねらいは「BWRに蒸気発生器がある」かのような記述。蒸気発生器はPWR専用の設備で、BWRは炉心で発生した蒸気をそのままタービンへ送ります。「混合して送る」という文はBWRの構成としてあり得ません。
誤りは(4):沸騰水型に蒸気発生器はない
「炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合」——両方が存在する炉はありません。
| 方式 | 炉心の蒸気 | 蒸気発生器 | タービンへ送るもの |
| ★沸騰水型 | ★ある | ★ない | ★炉心の蒸気そのもの |
| ★加圧水型 | ★ない | ★ある | ★蒸気発生器で作った蒸気 |
沸騰水型は炉内で直接蒸気を作ります——だから蒸気発生器は不要です。
加圧水型は炉内で沸騰させません——だから炉心に蒸気はありません。
どちらの方式でも、蒸気の出どころは1つだけ——混合するという発想が成り立たないのです。
平成25年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 平成25年度 A問題4
原子力発電に用いられる軽水炉には、加圧水型(PWR)と沸騰水型(BWR)がある。この軽水炉に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
軽水炉では、低濃縮ウランを燃料として使用し、冷却材や減速材に軽水を使用する。
加圧水型では、構造上、一次冷却材を沸騰させない。また、原子炉の反応度を調整するために、ほう酸を冷却材に溶かして利用する。
加圧水型では、高温高圧の一次冷却材を炉心から送り出し、蒸気発生器の二次側で蒸気を発生してタービンに導くので、原則的に炉心の冷却材がタービンに直接入ることはない。
沸騰水型では、炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合して、タービンに送る。
沸騰水型では、冷却材の蒸気がタービンに入るので、タービンの放射線防護が必要である。

この引っかけは繰り返し出ている
「蒸気を混合する」という記述は、複数の年度で誤りとして使われています。
| 年度 | 設問 | 該当する記述 |
| ★平成22年度 A4 | ★正しいものを選ぶ | ★(4) 炉心と蒸気発生器で発生した蒸気を混合 |
| ★平成25年度 A4(本問) | ★誤っているものを選ぶ | ★(4) 炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合 |
ほとんど同じ文が、設問の向きを変えて出ています——平成22年度では「誤りの1つ」、本問では「唯一の誤り」です。
どちらでも判定は同じ——あり得ない記述だということです。
「蒸気発生器」という語が出てきたら加圧水型——そこに「炉心の蒸気」が並んでいたら矛盾だと気づけます。
残る4つの記述
| 記述 | 内容 | 要点 |
| (1) | 低濃縮ウラン、冷却材と減速材に軽水 | ★軽水炉の定義 |
| (2) | 加圧水型は一次冷却材を沸騰させず、ほう酸で反応度調整 | ★ほう素濃度による調整 |
| (3) | 加圧水型は炉心の冷却材がタービンに直接入らない | ★二次系が分離されている |
| (5) | 沸騰水型はタービンの放射線防護が必要 | ★蒸気が直接入るから |
(3)と(5)は対になっています——加圧水型は防護不要、沸騰水型は必要。
系統が分かれているかどうかが、そのまま放射線防護の要否を決める——2つの方式の最も実務的な違いだと言えます。
(2)の「ほう酸」は、ほう素を含む化合物——水に溶かして使うのでほう酸の形になります。
⚠️ よくある間違い
(4)を「沸騰水型にも蒸気発生器がある」と思って正しいと判断する——沸騰水型に蒸気発生器はありません。
炉内で直接蒸気を作るのが沸騰水型の定義——だから熱交換器が要らないのです。
(5)を疑ってしまう——「タービンの放射線防護が必要」は正しい。炉心を通った蒸気がそのままタービンに入るからです。
(2)の「ほう酸」を疑ってしまう——正しいのです。ほう素を水に溶かす形がほう酸になります。
(1)(2)(3)(5)はいずれも他の年度で繰り返し出る定番——見慣れない(4)を疑うのが解き方です。
⏱️ 本番での進め方
①★沸騰水型に蒸気発生器はない。加圧水型に炉心の蒸気はない。
②どちらの方式でも、蒸気の出どころは1つだけ。
③★同じ引っかけが平成22年度にも出ている。
④(3)と(5)は対。系統の分離が放射線防護の要否を決める。
💡 覚え方
「蒸気の出どころは1つだけ」——混合するという記述は、それだけで誤りです。炉心で作るか、蒸気発生器で作るか——どちらか一方になります。
同じ引っかけが平成22年度 A問題4(原子力:PWRで「正しいもの」を選ぶ)にあります。そちらは「正しいものを選ぶ」型です。
加圧水型と沸騰水型の対比
本問の5つの記述を、方式ごとに整理しましょう。
| 項目 | ★加圧水型(PWR) | ★沸騰水型(BWR) |
| ★炉内の沸騰 | ★させない | ★させる |
| ★蒸気発生器 | ★ある | ★ない |
| ★反応度の調整 | ★ほう酸を冷却材に溶かす | ★再循環流量 |
| ★タービンへ入る蒸気 | ★二次系(放射能なし) | ★炉心の蒸気(放射能あり) |
| ★タービンの放射線防護 | ★不要 | ★必要 |
(2)(3)が加圧水型、(5)が沸騰水型の記述——いずれも正しいものです。
(4)だけが、両方の設備を同時に持つと述べています——そこが誤りになります。
ほう酸という形で使う理由
ほう素そのものは固体——水に溶かすには化合物にする必要があります。
ほう酸(H₃BO₃)は水によく溶ける——だから濃度を自由に変えられるのです。
制御棒に使うのは炭化ほう素(B₄C)——固体のまま棒にするので別の化合物になります。
同じほう素でも、使い方に応じて形が変わる——中性子を吸うという働きは同じです。
なぜ沸騰水型に蒸気発生器が要らないのか
蒸気発生器は「炉の水」と「タービンの水」を分けるための装置です。
| ★沸騰水型 | ★加圧水型 | |
| ★水の系統 | ★1つ | ★2つ(一次系・二次系) |
| ★分ける装置 | ★不要 | ★蒸気発生器が必要 |
| ★構造 | ★単純 | ★複雑 |
| ★代償 | ★タービンに放射能が回る | ★熱を1回受け渡す分の損失 |
沸騰水型は炉の中で蒸気を作り、そのままタービンへ送ります——系統が1つしかないのです。
分けるものがなければ、分ける装置も要らない——だから蒸気発生器がないことになります。
その代わり、タービンや復水器まで放射線管理区域になる——点検時の被ばく管理が課題です。
加圧器という装置
加圧水型には、もう1つ特有の装置があります——加圧器です。
一次系を約15 MPa に保ち、沸騰させないための装置——ヒーターとスプレーで圧力を調整します。
沸騰水型は約7 MPa で、あえて沸騰させる——だから加圧器も不要になります。
要点をもう一度
誤りは(4)——「炉心の蒸気」と「蒸気発生器の蒸気」を混合する炉はありません。
| 記述 | 正誤 | 判定の決め手 |
| (1) | 正 | 軽水炉の定義 |
| (2) | 正 | 加圧水型はほう酸で反応度調整 |
| (3) | 正 | 加圧水型は二次系が分かれている |
| ★(4) | ★誤 | ★沸騰水型に蒸気発生器はない |
| (5) | 正 | 沸騰水型はタービンに放射線防護が要る |
「沸騰水型」と「蒸気発生器」が同じ文にあれば、それだけで誤り——本問はその1点で決まります。
2方式の名前が示すもの
沸騰水型は炉内で沸騰させる、加圧水型は加圧して沸騰させない——名前が構造をそのまま表しています。
この対比を押さえれば、原子力の記述問題はほぼ解けます。
反応度調整の方法を比べる
(2)の「ほう酸」は、加圧水型に特有の調整手段です。
| 手段 | 使う方式 | 特徴 |
| 制御棒 | 両方式 | ★速い。緊急停止にも使う |
| ★ほう素濃度 | ★加圧水型 | ★ゆっくり。燃焼の進行に合わせる |
| ★再循環流量 | ★沸騰水型 | ★ボイドの量を変えて調整する |
加圧水型は炉内が沸騰しないので、ボイドで調整できません——だから水に溶かした中性子吸収材を使うのです。
ほう素は中性子をよく吸います——濃度を上げれば反応が抑えられることになります。
運転開始直後は濃度を高く、燃焼が進むにつれて薄めていく——燃料が減る分を補う使い方です。
沸騰水型は制御棒を下から挿入します——上は蒸気で埋まっているからです。
加圧水型は上から挿入する——これも「沸騰させるかどうか」から生じた違いになります。
まとめ
| (1)軽水炉共通 | 低濃縮ウラン+軽水→正しい |
| (2)PWR | 沸騰させない+ほう酸で反応度調整→正しい |
| (3)PWR | 蒸気発生器の二次側の蒸気→タービンへ→正しい |
| (4)BWR | 蒸気発生器は存在しない(混合もない)→誤り |
| (5)BWR | 冷却材の蒸気がタービンへ→放射線防護が必要→正しい。答えは(4) |
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