原子力17【電験3種 電力】BWRに蒸気発生器はない!炉心の蒸気を混合するという引っかけ 平成25年度 A問題4 完全解説

電験3種 電力科目 原子力 平成25年度 A問題4 BWRに蒸気発生器はない!巧妙な引っかけ

今回は平成25年度 電力科目 A問題4を解説します。原子力発電に用いられる軽水炉(加圧水型PWRと沸騰水型BWR)について、誤っているものを選ぶ問題です。

ねらいは「BWRに蒸気発生器がある」かのような記述。蒸気発生器はPWR専用の設備で、BWRは炉心で発生した蒸気をそのままタービンへ送ります。「混合して送る」という文はBWRの構成としてあり得ません。

目次

誤りは(4):沸騰水型に蒸気発生器はない

「炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合」——両方が存在する炉はありません

方式炉心の蒸気蒸気発生器タービンへ送るもの
★沸騰水型★ある★ない★炉心の蒸気そのもの
★加圧水型★ない★ある★蒸気発生器で作った蒸気

沸騰水型は炉内で直接蒸気を作ります——だから蒸気発生器は不要です。

加圧水型は炉内で沸騰させません——だから炉心に蒸気はありません

どちらの方式でも、蒸気の出どころは1つだけ——混合するという発想が成り立たないのです。

平成25年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 原子力 平成25年度 A問題4 問題文
平成25年度 電力科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4

電験3種 電力科目 【原子力】 平成25年度 A問題4

 原子力発電に用いられる軽水炉には、加圧水型(PWR)と沸騰水型(BWR)がある。この軽水炉に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

軽水炉では、低濃縮ウランを燃料として使用し、冷却材や減速材に軽水を使用する。
加圧水型では、構造上、一次冷却材を沸騰させない。また、原子炉の反応度を調整するために、ほう酸を冷却材に溶かして利用する。
加圧水型では、高温高圧の一次冷却材を炉心から送り出し、蒸気発生器の二次側で蒸気を発生してタービンに導くので、原則的に炉心の冷却材がタービンに直接入ることはない。
沸騰水型では、炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合して、タービンに送る。
沸騰水型では、冷却材の蒸気がタービンに入るので、タービンの放射線防護が必要である。

答え誤っている記述は (4)です。

この引っかけは繰り返し出ている

「蒸気を混合する」という記述は、複数の年度で誤りとして使われています

年度設問該当する記述
★平成22年度 A4★正しいものを選ぶ★(4) 炉心と蒸気発生器で発生した蒸気を混合
★平成25年度 A4(本問)★誤っているものを選ぶ★(4) 炉心で発生した蒸気と蒸気発生器で発生した蒸気を混合

ほとんど同じ文が、設問の向きを変えて出ています——平成22年度では「誤りの1つ」、本問では「唯一の誤り」です。

どちらでも判定は同じ——あり得ない記述だということです。

「蒸気発生器」という語が出てきたら加圧水型——そこに「炉心の蒸気」が並んでいたら矛盾だと気づけます。

残る4つの記述

記述内容要点
(1)低濃縮ウラン、冷却材と減速材に軽水★軽水炉の定義
(2)加圧水型は一次冷却材を沸騰させず、ほう酸で反応度調整★ほう素濃度による調整
(3)加圧水型は炉心の冷却材がタービンに直接入らない★二次系が分離されている
(5)沸騰水型はタービンの放射線防護が必要★蒸気が直接入るから

(3)と(5)は対になっています——加圧水型は防護不要、沸騰水型は必要

系統が分かれているかどうかが、そのまま放射線防護の要否を決める——2つの方式の最も実務的な違いだと言えます。

(2)の「ほう酸」は、ほう素を含む化合物——水に溶かして使うのでほう酸の形になります。

⚠️ よくある間違い
(4)を「沸騰水型にも蒸気発生器がある」と思って正しいと判断する——沸騰水型に蒸気発生器はありません
炉内で直接蒸気を作るのが沸騰水型の定義——だから熱交換器が要らないのです。
(5)を疑ってしまう——「タービンの放射線防護が必要」は正しい炉心を通った蒸気がそのままタービンに入るからです。
(2)の「ほう酸」を疑ってしまう——正しいのです。ほう素を水に溶かす形がほう酸になります。
(1)(2)(3)(5)はいずれも他の年度で繰り返し出る定番——見慣れない(4)を疑うのが解き方です。

⏱️ 本番での進め方
①★沸騰水型に蒸気発生器はない。加圧水型に炉心の蒸気はない。
②どちらの方式でも、蒸気の出どころは1つだけ。
③★同じ引っかけが平成22年度にも出ている。
④(3)と(5)は対。系統の分離が放射線防護の要否を決める。

💡 覚え方
「蒸気の出どころは1つだけ」——混合するという記述は、それだけで誤りです。炉心で作るか、蒸気発生器で作るか——どちらか一方になります。

同じ引っかけが平成22年度 A問題4原子力:PWRで「正しいもの」を選ぶ)にあります。そちらは「正しいものを選ぶ」型です。

加圧水型と沸騰水型の対比

本問の5つの記述を、方式ごとに整理しましょう

項目★加圧水型(PWR)★沸騰水型(BWR)
★炉内の沸騰★させない★させる
★蒸気発生器★ある★ない
★反応度の調整★ほう酸を冷却材に溶かす★再循環流量
★タービンへ入る蒸気★二次系(放射能なし)★炉心の蒸気(放射能あり)
★タービンの放射線防護★不要★必要

(2)(3)が加圧水型、(5)が沸騰水型の記述——いずれも正しいものです。

(4)だけが、両方の設備を同時に持つと述べています——そこが誤りになります。

ほう酸という形で使う理由

ほう素そのものは固体——水に溶かすには化合物にする必要があります

ほう酸(H₃BO₃)は水によく溶ける——だから濃度を自由に変えられるのです。

制御棒に使うのは炭化ほう素(B₄C)——固体のまま棒にするので別の化合物になります。

同じほう素でも、使い方に応じて形が変わる——中性子を吸うという働きは同じです。

なぜ沸騰水型に蒸気発生器が要らないのか

蒸気発生器は「炉の水」と「タービンの水」を分けるための装置です。

★沸騰水型★加圧水型
★水の系統★1つ★2つ(一次系・二次系)
★分ける装置★不要★蒸気発生器が必要
★構造★単純★複雑
★代償★タービンに放射能が回る★熱を1回受け渡す分の損失

沸騰水型は炉の中で蒸気を作り、そのままタービンへ送ります——系統が1つしかないのです。

分けるものがなければ、分ける装置も要らない——だから蒸気発生器がないことになります。

その代わり、タービンや復水器まで放射線管理区域になる——点検時の被ばく管理が課題です。

加圧器という装置

加圧水型には、もう1つ特有の装置があります——加圧器です。

一次系を約15 MPa に保ち、沸騰させないための装置——ヒーターとスプレーで圧力を調整します

沸騰水型は約7 MPa で、あえて沸騰させる——だから加圧器も不要になります。

要点をもう一度

誤りは(4)——「炉心の蒸気」と「蒸気発生器の蒸気」を混合する炉はありません

記述正誤判定の決め手
(1)軽水炉の定義
(2)加圧水型はほう酸で反応度調整
(3)加圧水型は二次系が分かれている
★(4)★誤★沸騰水型に蒸気発生器はない
(5)沸騰水型はタービンに放射線防護が要る

「沸騰水型」と「蒸気発生器」が同じ文にあれば、それだけで誤り——本問はその1点で決まります

2方式の名前が示すもの

沸騰水型は炉内で沸騰させる、加圧水型は加圧して沸騰させない——名前が構造をそのまま表しています

この対比を押さえれば、原子力の記述問題はほぼ解けます

反応度調整の方法を比べる

(2)の「ほう酸」は、加圧水型に特有の調整手段です

手段使う方式特徴
制御棒両方式★速い。緊急停止にも使う
★ほう素濃度★加圧水型★ゆっくり。燃焼の進行に合わせる
★再循環流量★沸騰水型★ボイドの量を変えて調整する

加圧水型は炉内が沸騰しないので、ボイドで調整できません——だから水に溶かした中性子吸収材を使うのです。

ほう素は中性子をよく吸います——濃度を上げれば反応が抑えられることになります。

運転開始直後は濃度を高く、燃焼が進むにつれて薄めていく——燃料が減る分を補う使い方です。

沸騰水型は制御棒を下から挿入します——上は蒸気で埋まっているからです。

加圧水型は上から挿入する——これも「沸騰させるかどうか」から生じた違いになります。

まとめ

(1)軽水炉共通低濃縮ウラン+軽水→正しい
(2)PWR沸騰させない+ほう酸で反応度調整→正しい
(3)PWR蒸気発生器の二次側の蒸気→タービンへ→正しい
(4)BWR蒸気発生器は存在しない(混合もない)→誤り
(5)BWR冷却材の蒸気がタービンへ→放射線防護が必要→正しい。答えは(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・PWR特有は加圧器と蒸気発生器(原子力15):【電力】平成27年度 A問題4

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成25年度 問題一覧(全4科目)

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