今回は平成26年度 電力科目 A問題4を解説します。原子力発電について、核分裂で原子エネルギーを取り出せる物質・結合エネルギー・核反応・ウラン1gのエネルギー・連鎖反応の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。
ねらいは「プルトニウムは自然界にも十分に存在している」の一節。プルトニウムはウラン238が中性子を吸収して人工的に生まれる核種で、自然界にはほぼ存在しません。原子力10で覚えた「親物質」の知識がそのまま効きます。
平成26年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4
電験3種 電力科目 【原子力】 平成26年度 A問題4
原子力発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
現在、核分裂によって原子エネルギーを取り出せる物質は、原子量の大きなウラン(U)、トリウム(Th)、プルトニウム(Pu)であり、ウランとプルトニウムは自然界にも十分に存在している。
原子核を陽子と中性子に分解させるには、エネルギーを外部から加える必要がある。このエネルギーを結合エネルギーと呼ぶ。
原子核に何らかの外力が加えられて、他の原子核に変換される現象を核反応と呼ぶ。
ウラン235を1g核分裂させたとき、発生するエネルギーは、石炭数トンの発熱量に相当する。
ウランに熱中性子を衝突させると、核分裂を起こすが、その際放出する高速中性子の一部が減速して熱中性子になり、この熱中性子が他の原子核に分裂を起こさせ、これを繰り返すことで、連続的な分裂が行われる。この現象を連鎖反応と呼ぶ。

誤りは(1):プルトニウムは自然界にほとんどない
「ウランとプルトニウムは自然界にも十分に存在している」——プルトニウムが誤りです。
| 物質 | 自然界での存在 | 備考 |
| ★ウラン | ★鉱石として存在する | ★地殻に約2.7 ppm |
| ★トリウム | ★ウランより多い | ★地殻に約10 ppm |
| ★プルトニウム | ★ほとんど存在しない | ★原子炉の中で作られる人工の物質 |
プルトニウム239は、ウラン238が中性子を吸ってできます——自然界には中性子がほとんどありません。
半減期は約2.4万年——地球の年齢46億年に比べれば、はるかに短いのです。
だから仮に地球誕生時にあったとしても、とうに消えている——今あるものは原子炉で作られたものになります。
ごく微量なら天然ウラン鉱石中に見つかります——けれども「十分に存在」とは言えません。
(2) 結合エネルギーとは
原子核をばらばらにするのに必要なエネルギー——それが結合エネルギーです。
原子核の質量は、中の陽子と中性子を足した値より軽い——この差が質量欠損になります。
★これだけ加えないと分解できない
結合が強いほど、原子核は安定しています——だから軽くなるのです。
なぜ核分裂でエネルギーが出るのか
核子1個あたりの結合エネルギーは、鉄の付近が最大です。
| 原子核 | 核子1個あたり | 安定さ |
| 水素・ヘリウム | ★小さい | ★融合すると安定になる |
| ★鉄(質量数56付近) | ★最大 | ★最も安定 |
| ウラン | ★やや小さい | ★分裂すると安定になる |
ウランが分裂すると、より安定な核に変わります——余った結合エネルギーが放出されるのです。
軽い核なら逆に融合したほうが安定——それが核融合になります。
核分裂も核融合も、鉄に近づく向きの変化——1つの図で両方が説明できます。
(4) ウラン1 g は石炭数トン
★約3 t
「石炭数トン」という記述と一致します——約3 tです。
1 g と3 t——約300万倍の差になります。
⚠️ よくある間違い
(1)の「トリウム」を疑ってしまう——トリウムから核エネルギーは取り出せます。中性子を吸ってウラン233に変わるのです。
誤りは「プルトニウムが自然界にも十分に存在」の部分——人工の物質です。
(2)の「外部からエネルギーを加える」を疑ってしまう——正しいのです。結合しているものを引き離すにはエネルギーが要る。
(4)の「石炭数トン」を疑ってしまう——計算すると約3 t で一致します。
(5)の連鎖反応の説明を疑ってしまう——正しい。高速中性子が減速して熱中性子になる流れです。
長い記述ほど正しいことが多い——短くて断定的な(1)を疑うのが定石になります。
⏱️ 本番での進め方
①★プルトニウムは自然界にほとんど存在しない人工の物質。
②★結合エネルギー=原子核をばらばらにするのに要るエネルギー。
③★核子1個あたりの結合エネルギーは鉄が最大。
④ウラン1 g =石炭約3 t。約300万倍。
💡 覚え方
「プルトニウムは原子炉が作る」——自然界にはありません。ウランとトリウムは天然、プルトニウムは人工——この3つの区別が本問の核心です。
ウラン1 g のエネルギーを実際に計算する問題が平成23年度 A問題4(原子力:濃縮度3%・燃料1kgのエネルギー)にあります。
トリウムという選択肢
(1)にトリウムが挙がっています——ウランと並ぶ、もう1つの核燃料資源です。
| ★ウラン | ★トリウム | |
| ★地殻中の量 | ★約2.7 ppm | ★約10 ppm(3〜4倍) |
| ★天然の核分裂性物質 | ★U235が0.7 % ある | ★ない(Th232のみ) |
| ★変わる先 | ★U238→Pu239 | ★Th232→U233 |
トリウムはそれ自体では核分裂しません——親物質です。
中性子を吸ってウラン233に変わり、それが燃える——ウラン238とプルトニウムの関係と同じになります。
資源量が多く、プルトニウムが生まれにくい——だから研究が続けられています。
ただし種火となる核分裂性物質を外から入れる必要がある——実用化の難しさはそこにあります。
核反応と化学反応
けたにして約1億倍——これがウラン1 g =石炭3 t の正体です。
化学反応は電子のやりとり、核反応は原子核の変化——扱うエネルギーの階層が違います。
(3) 核反応という言葉
「他の原子核に変換される現象」——核反応は核分裂より広い言葉です。
| 核反応の種類 | 内容 | 例 |
| ★核分裂 | ★重い核が2つに割れる | ★U235+n |
| ★核融合 | ★軽い核どうしがくっつく | ★重水素+三重水素 |
| ★中性子捕獲 | ★中性子を吸って別の核になる | ★U238→Pu239 |
| ★放射性崩壊 | ★自然に別の核へ変わる | ★α崩壊・β崩壊 |
4つとも「原子核が変わる」点で共通——だから核反応です。
化学反応では原子核は変わりません——電子のやりとりだけになります。
その違いが、エネルギーの桁の差を生んでいるのです。
(5) 連鎖反応が続く条件
核分裂1回で2〜3個の中性子が出ます——そのうち1個が次を起こせば連鎖が続く。
| 実効増倍率 | 状態 | 運転 |
| ★1未満 | ★未臨界 | ★反応が止まっていく |
| ★1 | ★臨界 | ★一定出力を保つ |
| ★1超 | ★超臨界 | ★出力が上がっていく |
通常運転は臨界=ちょうど1——制御棒でこの1を保ちます。
要点をもう一度
誤りは(1)の「プルトニウムは自然界にも十分に存在」です。
| 記述 | 正誤 | 決め手 |
| ★(1) | ★誤 | ★プルトニウムは人工の物質 |
| (2) | 正 | 結合エネルギーの定義 |
| (3) | 正 | 核反応の定義 |
| (4) | 正 | ウラン1 g ≒石炭3 t |
| (5) | 正 | 連鎖反応の説明 |
ウランとトリウムは天然、プルトニウムは人工——この3分類が本問の核心です。
「自然界にも十分に存在」という言い切りが手がかり——断定的な表現ほど疑う価値があります。
まとめ
| (1)存在 | Puは自然界にほぼない(人工核種)→誤り |
| (2)結合エネルギー | 核を分解するのに要するエネルギー→正しい |
| (3)核反応 | 他の原子核に変換される現象→正しい |
| (4)U235 1g | 石炭数トン(約3.2t)に相当→正しい |
| (5)連鎖反応 | 高速中性子→減速→熱中性子→次の分裂→正しい。答えは(1) |
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