原子力16【電験3種 電力】プルトニウムは自然界にない!結合エネルギー・連鎖反応の正誤 平成26年度 A問題4 完全解説

電験3種 電力科目 原子力 平成26年度 A問題4 プルトニウムは自然界にない!正誤を見抜く

今回は平成26年度 電力科目 A問題4を解説します。原子力発電について、核分裂で原子エネルギーを取り出せる物質・結合エネルギー・核反応・ウラン1gのエネルギー・連鎖反応の5つの記述から誤っているものを選ぶ問題です。

ねらいは「プルトニウムは自然界にも十分に存在している」の一節。プルトニウムはウラン238が中性子を吸収して人工的に生まれる核種で、自然界にはほぼ存在しません。原子力10で覚えた「親物質」の知識がそのまま効きます。

目次

平成26年度 電力科目 A問題4:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 原子力 平成26年度 A問題4 問題文
平成26年度 電力科目 A問題4 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題4

電験3種 電力科目 【原子力】 平成26年度 A問題4

 原子力発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

現在、核分裂によって原子エネルギーを取り出せる物質は、原子量の大きなウラン(U)、トリウム(Th)、プルトニウム(Pu)であり、ウランとプルトニウムは自然界にも十分に存在している。
原子核を陽子と中性子に分解させるには、エネルギーを外部から加える必要がある。このエネルギーを結合エネルギーと呼ぶ。
原子核に何らかの外力が加えられて、他の原子核に変換される現象を核反応と呼ぶ。
ウラン235を1g核分裂させたとき、発生するエネルギーは、石炭数トンの発熱量に相当する。
ウランに熱中性子を衝突させると、核分裂を起こすが、その際放出する高速中性子の一部が減速して熱中性子になり、この熱中性子が他の原子核に分裂を起こさせ、これを繰り返すことで、連続的な分裂が行われる。この現象を連鎖反応と呼ぶ。

答え誤っている記述は (1)です。

誤りは(1):プルトニウムは自然界にほとんどない

「ウランとプルトニウムは自然界にも十分に存在している」——プルトニウムが誤りです

物質自然界での存在備考
★ウラン★鉱石として存在する★地殻に約2.7 ppm
★トリウム★ウランより多い★地殻に約10 ppm
★プルトニウム★ほとんど存在しない★原子炉の中で作られる人工の物質

プルトニウム239は、ウラン238が中性子を吸ってできます——自然界には中性子がほとんどありません

半減期は約2.4万年——地球の年齢46億年に比べれば、はるかに短いのです。

だから仮に地球誕生時にあったとしても、とうに消えている——今あるものは原子炉で作られたものになります。

ごく微量なら天然ウラン鉱石中に見つかります——けれども「十分に存在」とは言えません

(2) 結合エネルギーとは

原子核をばらばらにするのに必要なエネルギー——それが結合エネルギーです。

原子核の質量は、中の陽子と中性子を足した値より軽い——この差が質量欠損になります。

\( \Delta m=\left(Zm_p+Nm_n\right)-M_{\text{核}} \)
ばらばらのときとの質量差
\( E=\Delta m\,c^2 \)
結合エネルギー
★これだけ加えないと分解できない

結合が強いほど、原子核は安定しています——だから軽くなるのです。

なぜ核分裂でエネルギーが出るのか

核子1個あたりの結合エネルギーは、鉄の付近が最大です。

原子核核子1個あたり安定さ
水素・ヘリウム★小さい★融合すると安定になる
★鉄(質量数56付近)★最大★最も安定
ウラン★やや小さい★分裂すると安定になる

ウランが分裂すると、より安定な核に変わります——余った結合エネルギーが放出されるのです。

軽い核なら逆に融合したほうが安定——それが核融合になります。

核分裂も核融合も、鉄に近づく向きの変化——1つの図で両方が説明できます

(4) ウラン1 g は石炭数トン

\( E=1\times 0.0009\times 10^{-3}\times 9\times 10^{16} \)
1 g のウラン235
\( =8.1\times 10^{10}\ [\mathrm{J}] \)
計算する
\( \dfrac{8.1\times 10^{10}}{2.6\times 10^7}=3\,100\ [\mathrm{kg}] \)
石炭26 MJ/kg で割る
★約3 t

「石炭数トン」という記述と一致します——約3 tです。

1 g と3 t——約300万倍の差になります。

⚠️ よくある間違い
(1)の「トリウム」を疑ってしまう——トリウムから核エネルギーは取り出せます中性子を吸ってウラン233に変わるのです。
誤りは「プルトニウムが自然界にも十分に存在」の部分——人工の物質です。
(2)の「外部からエネルギーを加える」を疑ってしまう——正しいのです。結合しているものを引き離すにはエネルギーが要る
(4)の「石炭数トン」を疑ってしまう——計算すると約3 t で一致します。
(5)の連鎖反応の説明を疑ってしまう——正しい高速中性子が減速して熱中性子になる流れです。
長い記述ほど正しいことが多い——短くて断定的な(1)を疑うのが定石になります。

⏱️ 本番での進め方
①★プルトニウムは自然界にほとんど存在しない人工の物質。
②★結合エネルギー=原子核をばらばらにするのに要るエネルギー。
③★核子1個あたりの結合エネルギーは鉄が最大。
④ウラン1 g =石炭約3 t。約300万倍。

💡 覚え方
「プルトニウムは原子炉が作る」——自然界にはありませんウランとトリウムは天然、プルトニウムは人工——この3つの区別が本問の核心です。

ウラン1 g のエネルギーを実際に計算する問題が平成23年度 A問題4原子力:濃縮度3%・燃料1kgのエネルギー)にあります。

トリウムという選択肢

(1)にトリウムが挙がっています——ウランと並ぶ、もう1つの核燃料資源です。

★ウラン★トリウム
★地殻中の量★約2.7 ppm★約10 ppm(3〜4倍)
★天然の核分裂性物質★U235が0.7 % ある★ない(Th232のみ)
★変わる先★U238→Pu239★Th232→U233

トリウムはそれ自体では核分裂しません——親物質です。

中性子を吸ってウラン233に変わり、それが燃える——ウラン238とプルトニウムの関係と同じになります。

資源量が多く、プルトニウムが生まれにくい——だから研究が続けられています

ただし種火となる核分裂性物質を外から入れる必要がある——実用化の難しさはそこにあります

核反応と化学反応

核分裂1回のエネルギー
\( E\ \fallingdotseq\ 200\ [\mathrm{MeV}] \)

化学反応は数 eV

けたにして約1億倍——これがウラン1 g =石炭3 t の正体です。

化学反応は電子のやりとり、核反応は原子核の変化——扱うエネルギーの階層が違います

(3) 核反応という言葉

「他の原子核に変換される現象」——核反応は核分裂より広い言葉です。

核反応の種類内容
★核分裂★重い核が2つに割れる★U235+n
★核融合★軽い核どうしがくっつく★重水素+三重水素
★中性子捕獲★中性子を吸って別の核になる★U238→Pu239
★放射性崩壊★自然に別の核へ変わる★α崩壊・β崩壊

4つとも「原子核が変わる」点で共通——だから核反応です。

化学反応では原子核は変わりません——電子のやりとりだけになります。

その違いが、エネルギーの桁の差を生んでいるのです。

(5) 連鎖反応が続く条件

核分裂1回で2〜3個の中性子が出ます——そのうち1個が次を起こせば連鎖が続く

実効増倍率状態運転
★1未満★未臨界★反応が止まっていく
★1★臨界★一定出力を保つ
★1超★超臨界★出力が上がっていく

通常運転は臨界=ちょうど1——制御棒でこの1を保ちます

要点をもう一度

誤りは(1)の「プルトニウムは自然界にも十分に存在」です。

記述正誤決め手
★(1)★誤★プルトニウムは人工の物質
(2)結合エネルギーの定義
(3)核反応の定義
(4)ウラン1 g ≒石炭3 t
(5)連鎖反応の説明

ウランとトリウムは天然、プルトニウムは人工——この3分類が本問の核心です。

「自然界にも十分に存在」という言い切りが手がかり——断定的な表現ほど疑う価値があります

まとめ

(1)存在Puは自然界にほぼない(人工核種)→誤り
(2)結合エネルギー核を分解するのに要するエネルギー→正しい
(3)核反応他の原子核に変換される現象→正しい
(4)U235 1g石炭数トン(約3.2t)に相当→正しい
(5)連鎖反応高速中性子→減速→熱中性子→次の分裂→正しい。答えは(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・核分裂性物質・親物質の用語(原子力10):【電力】令和2年度 A問題4

・この年度の問題を通しで解く:電験3種 平成26年度 問題一覧(全4科目)

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