今回は令和4年度下期 電力科目 B問題17、単相3線式低圧配電線路の線路損失と、中性線が断線したときの負荷電圧を求める計算問題です。中性線断線は不平衡負荷で危険な現象です。
(a)は一次電力から二次電流を求め、各線(外線2本+中性線)の I²R 損失を合算。(b)は中性線断線で負荷A・Bが220Vに直列接続されるため、抵抗の大きい軽負荷側(A)に高い電圧がかかります。
令和4年度下期 電力科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題17
電験3種 電力科目 【配電の計算】 令和4年度下期 B問題17
図のように配電用変圧器二次側の単相3線式低圧配電線路に負荷A及び負荷Bが接続されている場合について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、変圧器は、励磁電流、内部電圧降下及び内部損失などを無視できる理想変圧器で、一次電圧は6600V、二次電圧は110/220Vで一定であるものとする。また、低圧配電線路及び中性線の電線1線当たりの抵抗は0.06Ω、負荷A及び負荷Bは純抵抗負荷とし、これら以外のインピーダンスは考慮しないものとする。
(a) 変圧器の電流を測定したところ、一次電流が5A、二次電流IaとIbの比が2:3であった。二次側低圧配電線路及び中性線における損失の合計値[kW]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)2.59 (2)2.81 (3)3.02 (4)5.83 (5)8.21 kW
(b) 低圧配電線路の中性線が点Fで断線した場合に負荷Aにかかる電圧の値[V]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)88 (2)106 (3)123 (4)127 (5)138 V


出題のポイント:3線の電流と中性線断線を分けて考える

正常時は理想変圧器の一次電力から Ia+Ib を求め、比2:3で Ia=120 A、Ib=180 A、中性線電流 IN=60 A とします。(a)では外線2本と中性線の I²R を合計します。(b)では断線前の電圧降下から負荷抵抗を求め、中性線断線後に負荷A・Bと外線抵抗が220 Vへ直列接続されることを使います。
(a) の答えは(3):約 3.02 kW

一次側の電力から、二次側の電流を求めます。
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★答え
理想変圧器なので、一次電力と二次電力が等しくなります——損失がないから。
中性線にも60 A 流れるので、その損失も足します——不平衡だからです。
(b) の答えは(4):約 127 V

中性線が切れると、2つの負荷が220 V に直列になります。
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★答え
| 負荷A(軽い) | 負荷B(重い) | |
| ★断線前の電流 | ★★120 A | ★★180 A |
| ★抵抗 | ★★0.887 Ω(大きい) | ★★0.531 Ω(小さい) |
| ★断線後の電圧 | ★★127 V(過電圧) | ★★76 V(低電圧) |
抵抗の大きい負荷Aに、高い電圧がかかります——直列回路では抵抗に比例して分かれるから。
110 V の機器に127 V がかかると、焼損の恐れがあります——これが中性線断線の危険です。
中性線だけを単独で開放する過電流遮断器は設けません——中性点が失われると不平衡電圧が生じるからです。
軽い負荷ほど危ないという逆説
| 軽い負荷 | 重い負荷 | |
| ★電流 | ★★小さい | ★★大きい |
| ★抵抗 | ★★大きい | ★★小さい |
| ★断線時の電圧 | ★★高くなる | ★★低くなる |
| ★被害 | ★★焼損する恐れ | ★★動作不良 |
ふだん電気をあまり使っていない側が、危険にさらされます——直感に反するところです。
抵抗が大きいほど、直列回路では多くの電圧が分かれるからです——オームの法則です。
本問では負荷Aが127 V、負荷Bが76 V になります——合わせて203 V(残りは線路分)。
この現象を数字で確かめるのが本問の狙いです。
⚠️ よくある間違い
中性線の損失を忘れる——60 A 流れています。
二次電圧を220 V として電流を出す——各負荷は110 Vです。
断線後に重い負荷側が過電圧と考える——軽い側です。
線路抵抗を無視する——直列回路に含めます。
比を3対2と読む——Ia:Ib=2:3です。
⏱️ 本番での進め方
①★理想変圧器なら一次電力=二次電力。
②★損失は外線2本+中性線の I²R を合計。
③★中性線断線で2つの負荷が220 V に直列になる。
④★抵抗の大きい軽負荷側が過電圧になる。
💡 覚え方
「軽い側ほど高い電圧」——抵抗が大きいからです。だから中性線は切らない——遮断器を入れない理由です。
バランサによる不平衡改善は平成28年度 B問題17(配電の計算:バランサ)にあります。
負荷抵抗を求める式の立て方
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上側の外線・負荷A・中性線を一周する経路で式を立てます——キルヒホッフの第2法則です。
中性線の項が負になるのは、電流の向きが逆だから——Ia−Ib=−60 Aです。
符号を丁寧に扱わないと、抵抗値がずれます。
中性線断線が起きたときの被害
| 負荷 | 正常時 | 断線時 | 結果 |
| ★負荷A(軽い) | ★★110 V | ★★127 V | ★★過電圧で焼損の恐れ |
| ★負荷B(重い) | ★★110 V | ★★約76 V | ★★動作不良 |
両方とも正常な電圧から外れてしまいます——片方は高すぎ、片方は低すぎ。
とりわけ過電圧側は、機器が壊れる恐れがあります——だから危険なのです。
この現象を防ぐため、中性線だけを単独で開放する遮断器は設けません。
理想変圧器という前提
| 前提 | 意味 | 本問での効き方 |
| ★励磁電流を無視 | ★★無負荷でも電流が流れない | ★★一次電流5 A がすべて負荷分 |
| ★内部電圧降下を無視 | ★★二次電圧が110/220 V で一定 | ★★電圧が変わらない |
| ★内部損失を無視 | ★★一次電力=二次電力 | ★★33000 W がそのまま |
3つの前提があるので、一次側の値から二次電流が出せます——損失がないから。
実際の変圧器には数%の損失がありますが、試験では無視します。
但し書きが計算を成り立たせているのです。
損失の内訳を分けて見る
| 線 | 電流 | 損失 | 割合 |
| ★上外線 | ★★120 A | ★★864 W | ★★29 % |
| ★下外線 | ★★180 A | ★★1944 W | ★★64 % |
| ★中性線 | ★★60 A | ★★216 W | ★★7 % |
電流の大きい下外線が、全損失の約64%を占めています——損失は電流の2乗で効くからです。
もし平衡していれば、両外線とも150 A で損失は2700 W になります——324 W 少ないのです。
不平衡は損失を増やす、ということが数字で分かります。
負荷Bの断線時電圧も求めてみる
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負荷Bは76 V まで下がります——110 V の機器なので正常に動きません。
両方合わせて203 V、残りの17 V が線路で消費されます——合計220 Vです。
片方は過電圧、片方は低電圧という、どちらも困る状態になります。
まとめ
| Ia・Ib | 120A・180A(Ia+Ib=300) |
| In | 60A |
| (a)損失 | (120²+180²+60²)·0.06=3024W |
| RA・RB | 0.887Ω・0.531Ω |
| (b)VA | 220/1.538×0.887=127V |
| 答え | (a)-(3),(b)-(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・単相3線式の電力損失(配電計算10):【電力】令和5年度下期 A問題13
・単相3線式とバランサ(配電計算35):【電力】平成23年度 A問題9

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