配電計算15【電験3種 電力】単相3線式の損失3.02kW・中性線断線で負荷A電圧127V!令和4年度下期 B問題17 完全解説

電験3種 電力科目 配電の計算 令和4年度下期 B問題17 中性線が切れると電圧が偏る!127Vまで上昇

今回は令和4年度下期 電力科目 B問題17、単相3線式低圧配電線路の線路損失と、中性線が断線したときの負荷電圧を求める計算問題です。中性線断線は不平衡負荷で危険な現象です。

(a)は一次電力から二次電流を求め、各線(外線2本+中性線)の I²R 損失を合算。(b)は中性線断線で負荷A・Bが220Vに直列接続されるため、抵抗の大きい軽負荷側(A)に高い電圧がかかります。

目次

令和4年度下期 電力科目 B問題17:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 配電 令和4年度下期 B問題17 問題文
令和4年度下期 電力科目 B問題17 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題17

電験3種 電力科目 【配電の計算】 令和4年度下期 B問題17

 図のように配電用変圧器二次側の単相3線式低圧配電線路に負荷A及び負荷Bが接続されている場合について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、変圧器は、励磁電流、内部電圧降下及び内部損失などを無視できる理想変圧器で、一次電圧は6600V、二次電圧は110/220Vで一定であるものとする。また、低圧配電線路及び中性線の電線1線当たりの抵抗は0.06Ω、負荷A及び負荷Bは純抵抗負荷とし、これら以外のインピーダンスは考慮しないものとする。

(a) 変圧器の電流を測定したところ、一次電流が5A、二次電流IaとIbの比が2:3であった。二次側低圧配電線路及び中性線における損失の合計値[kW]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)2.59 (2)2.81 (3)3.02 (4)5.83 (5)8.21 kW

(b) 低圧配電線路の中性線が点Fで断線した場合に負荷Aにかかる電圧の値[V]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)88 (2)106 (3)123 (4)127 (5)138 V

令和4年度下期 B問題17 単相3線式低圧配電線路(負荷A・B)
令和4年度下期 B問題17 単相3線式低圧配電線路(負荷A・B)
令和4年度下期 B問題17 単相3線式低圧配電線路(負荷A・B)
令和4年度下期 B問題17 単相3線式低圧配電線路(負荷A・B)
答え(a) 線路損失の合計は約 3.02 kWです。

出題のポイント:3線の電流と中性線断線を分けて考える

単相3線式の正常時電流と中性線断線後の直列回路を比較する解説
正常時は中性線に不平衡電流が流れ、中性線断線後は負荷Aと負荷Bが220 Vに直列接続されます。

正常時は理想変圧器の一次電力から Ia+Ib を求め、比2:3で Ia=120 A、Ib=180 A、中性線電流 IN=60 A とします。(a)では外線2本と中性線の I²R を合計します。(b)では断線前の電圧降下から負荷抵抗を求め、中性線断線後に負荷A・Bと外線抵抗が220 Vへ直列接続されることを使います。

(a) の答えは(3):約 3.02 kW

単相3線式の外線2本と中性線の損失を合計して3.024kWを求める計算
Ia=120 A、Ib=180 A、中性線電流60 Aから3本のI²R損失を合計すると3.024 kWとなり、選択肢(3)です。

一次側の電力から、二次側の電流を求めます

\( P_1=6600\times 5=33000\ \mathrm{W} \)
一次電力(理想変圧器)
\( 110(I_a+I_b)=33000\ \Rightarrow\ I_a+I_b=300\ \mathrm{A} \)
二次側の電力と等しい
\( I_a:I_b=2:3\ \Rightarrow\ I_a=120,\ I_b=180\ \mathrm{A} \)
比で分ける
\( I_N=|180-120|=60\ \mathrm{A} \)
中性線には差が流れる
\( P_{loss}=(120^2+180^2+60^2)\times 0.06 \)
3本それぞれの I²R
\( =(14400+32400+3600)\times 0.06=3024\ \mathrm{W} \)
整理して
★答え

理想変圧器なので、一次電力と二次電力が等しくなります——損失がないから。

中性線にも60 A 流れるので、その損失も足します——不平衡だからです。

(b) の答えは(4):約 127 V

中性線断線前の負荷抵抗から断線後の負荷A電圧127Vを求める計算
断線前からRA=0.887 Ω、RB=0.531 Ωを求め、断線後の220 V直列回路を計算すると負荷A電圧は約127 Vとなり、選択肢(4)です。

中性線が切れると、2つの負荷が220 V に直列になります

\( 110=120\times 0.06+120R_A+(120-180)\times 0.06 \)
断線前の回路から負荷Aの抵抗
\( 110=7.2+120R_A-3.6\ \Rightarrow\ R_A\fallingdotseq 0.887\ \Omega \)
解く
\( R_B\fallingdotseq 0.531\ \Omega \)
同様に負荷B
\( I=\dfrac{220}{0.06+0.887+0.531+0.06}\fallingdotseq 143\ \mathrm{A} \)
直列回路の電流
\( V_A=143\times 0.887\fallingdotseq 127\ \mathrm{V} \)
負荷Aにかかる電圧
★答え
負荷A(軽い)負荷B(重い)
★断線前の電流★★120 A★★180 A
★抵抗★★0.887 Ω(大きい)★★0.531 Ω(小さい)
★断線後の電圧★★127 V(過電圧)★★76 V(低電圧)

抵抗の大きい負荷Aに、高い電圧がかかります——直列回路では抵抗に比例して分かれるから。

110 V の機器に127 V がかかると、焼損の恐れがあります——これが中性線断線の危険です。

中性線だけを単独で開放する過電流遮断器は設けません——中性点が失われると不平衡電圧が生じるからです。

答え(b) 負荷Aにかかる電圧は約 127 Vです。

軽い負荷ほど危ないという逆説

軽い負荷重い負荷
★電流★★小さい★★大きい
★抵抗★★大きい★★小さい
★断線時の電圧★★高くなる★★低くなる
★被害★★焼損する恐れ★★動作不良

ふだん電気をあまり使っていない側が、危険にさらされます——直感に反するところです。

抵抗が大きいほど、直列回路では多くの電圧が分かれるからです——オームの法則です。

本問では負荷Aが127 V、負荷Bが76 V になります——合わせて203 V(残りは線路分)。

この現象を数字で確かめるのが本問の狙いです

⚠️ よくある間違い
中性線の損失を忘れる——60 A 流れています
二次電圧を220 V として電流を出す——各負荷は110 Vです。
断線後に重い負荷側が過電圧と考える——軽い側です。
線路抵抗を無視する——直列回路に含めます
比を3対2と読む——Ia:Ib=2:3です。

⏱️ 本番での進め方
①★理想変圧器なら一次電力=二次電力。
②★損失は外線2本+中性線の I²R を合計。
③★中性線断線で2つの負荷が220 V に直列になる。
④★抵抗の大きい軽負荷側が過電圧になる。

💡 覚え方
「軽い側ほど高い電圧」——抵抗が大きいからです。だから中性線は切らない——遮断器を入れない理由です。

バランサによる不平衡改善は平成28年度 B問題17配電の計算:バランサ)にあります。

負荷抵抗を求める式の立て方

\( 110=I_a r+I_a R_A+(I_a-I_b)r \)
上側のループを一周
\( 110=120\times 0.06+120R_A+(120-180)\times 0.06 \)
数値を入れる
\( 110=7.2+120R_A-3.6 \)
整理する
\( R_A=\dfrac{106.4}{120}\fallingdotseq 0.887\ \Omega \)
解く

上側の外線・負荷A・中性線を一周する経路で式を立てます——キルヒホッフの第2法則です。

中性線の項が負になるのは、電流の向きが逆だから——Ia−Ib=−60 Aです。

符号を丁寧に扱わないと、抵抗値がずれます

中性線断線が起きたときの被害

負荷正常時断線時結果
★負荷A(軽い)★★110 V★★127 V★★過電圧で焼損の恐れ
★負荷B(重い)★★110 V★★約76 V★★動作不良

両方とも正常な電圧から外れてしまいます——片方は高すぎ、片方は低すぎ

とりわけ過電圧側は、機器が壊れる恐れがあります——だから危険なのです。

この現象を防ぐため、中性線だけを単独で開放する遮断器は設けません

理想変圧器という前提

前提意味本問での効き方
★励磁電流を無視★★無負荷でも電流が流れない★★一次電流5 A がすべて負荷分
★内部電圧降下を無視★★二次電圧が110/220 V で一定★★電圧が変わらない
★内部損失を無視★★一次電力=二次電力★★33000 W がそのまま

3つの前提があるので、一次側の値から二次電流が出せます——損失がないから。

実際の変圧器には数%の損失がありますが、試験では無視します

但し書きが計算を成り立たせているのです

損失の内訳を分けて見る

電流損失割合
★上外線★★120 A★★864 W★★29 %
★下外線★★180 A★★1944 W★★64 %
★中性線★★60 A★★216 W★★7 %

電流の大きい下外線が、全損失の約64%を占めています——損失は電流の2乗で効くからです。

もし平衡していれば、両外線とも150 A で損失は2700 W になります——324 W 少ないのです。

不平衡は損失を増やす、ということが数字で分かります

負荷Bの断線時電圧も求めてみる

\( V_B=143\times 0.531\fallingdotseq 76\ \mathrm{V} \)
負荷Bにかかる電圧
\( 127+76=203\ \mathrm{V} \)
2つの負荷の合計
\( 220-203=17\ \mathrm{V} \)
線路抵抗での降下

負荷Bは76 V まで下がります——110 V の機器なので正常に動きません

両方合わせて203 V、残りの17 V が線路で消費されます——合計220 Vです。

片方は過電圧、片方は低電圧という、どちらも困る状態になります

まとめ

Ia・Ib120A・180A(Ia+Ib=300)
In60A
(a)損失(120²+180²+60²)·0.06=3024W
RA・RB0.887Ω・0.531Ω
(b)VA220/1.538×0.887=127V
答え(a)-(3),(b)-(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・単相3線式の電力損失(配電計算10):【電力】令和5年度下期 A問題13
・単相3線式とバランサ(配電計算35):【電力】平成23年度 A問題9

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