今回は平成23年度 電力科目 A問題9、単相3線式配電線路の各線に流れる電流・負荷電圧(Va・Vb)と変圧器の一次電流を求める計算問題です。
ポイントは各負荷がどの線間に接続されているかを読み取ること。負荷1(L1-N・50A)、負荷2(N-L2・60A)、負荷3(L1-L2両線間・40A)から各線電流を求め、線路抵抗0.08Ωで電圧降下を計算、一次電流は電力バランスで求めます。
答えは(1):Va=98.6 V、Vb=96.2 V、I₁=3.12 A
どの負荷がどの線間につながっているかを読み取ります。
| 負荷 | 接続 | 電流 | どの線を流れるか |
| ★負荷1 | ★★L₁−N間 | ★★50 A | ★★L₁線と中性線 |
| ★負荷2 | ★★N−L₂間 | ★★60 A | ★★中性線とL₂線 |
| ★負荷3 | ★★L₁−L₂間 | ★★40 A | ★★L₁線とL₂線(中性線は通らない) |
★
★
★負荷3は通らない
★
★
負荷3は両外線につながるので、中性線を通りません——だから中性線には現れないのです。
中性線の電流は、負荷1と負荷2の差だけです——10 Aになります。
中性線の電流は、L₁側では電圧を上げ、L₂側では下げます——向きが逆だから。
平成23年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【配電の計算】 平成23年度 A問題9
一次電圧6400[V]、二次電圧210[V]/105[V]の柱上変圧器がある。図のような単相3線式配電線路において三つの無誘導負荷が接続されている。負荷1の電流は50[A]、負荷2の電流は60[A]、負荷3の電流は40[A]である。L₁とN間の電圧Va[V]、L₂とN間の電圧Vb[V]、及び変圧器の一次電流I₁[A]の値の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、変圧器から低圧負荷までの電線1線当たりの抵抗を0.08[Ω]とし、変圧器の励磁電流、インピーダンス、低圧配電線のリアクタンス、及びC点から負荷側線路のインピーダンスは考えないものとする。負荷1はL₁-N間、負荷2はN-L₂間、負荷3はL₁-L₂両線間に接続されている。
一次電圧6400[V]、二次電圧210[V]/105[V]の柱上変圧器がある。図のような単相3線式配電線路において三つの無誘導負荷が接続されている。負荷1の電流は50[A]、負荷2の電流は60[A]、負荷3の電流は40[A]である。L₁とN間の電圧Va[V]、L₂とN間の電圧Vb[V]、及び変圧器の一次電流I₁[A]の値の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、変圧器から低圧負荷までの電線1線当たりの抵抗を0.08[Ω]とし、変圧器の励磁電流、インピーダンス、低圧配電線のリアクタンス、及びC点から負荷側線路のインピーダンスは考えないものとする。(負荷1:L1-N、負荷2:N-L2、負荷3:L1-L2両線間)
Va Vb I₁ (1) 98.6 96.2 3.12 (2) 97.0 97.8 3.28 (3) 97.0 97.8 2.95 (4) 96.2 98.6 3.12 (5) 98.6 96.2 3.28



一次電流は電力のつり合いから
★
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★答え
一次側の電力は、負荷の電力と線路損失の合計です——どちらも一次側から供給されるのです。
線路損失を忘れると、2.89 A になってしまいます——選択肢にない値です。
負荷3の電圧は Va+Vb=194.8 V です——両外線の間だから。
両外線につながる負荷の扱い
| L₁−N間の負荷 | L₁−L₂間の負荷 | |
| ★かかる電圧 | ★★約105 V | ★★約210 V |
| ★流れる線 | ★★L₁と中性線 | ★★L₁とL₂ |
| ★中性線への影響 | ★★電流が流れる | ★★流れない |
| ★不平衡への影響 | ★★不平衡を生む | ★★両外線に等しく流れるので生まない |
200 V の機器は、両外線につながります——エアコンやIH調理器です。
そういう負荷は、中性線に電流を流しません——両側に同じだけ流れるから。
だから不平衡も生みません——200 V 化が平衡にも有利な理由です。
本問はその性質を計算で確かめる問題になっています。
⚠️ よくある間違い
負荷3を中性線に含める——両外線間なので通りません。
中性線の電流を110 A とする——差の10 Aです。
一次電流で線路損失を忘れる——2.89 A になってしまう。
Va とVb を取り違える——電流の大きいL₂側が低い。
負荷3の電圧を105 V とする——Va+Vb です。
⏱️ 本番での進め方
①★両外線間の負荷は中性線を通らない。
②★中性線の電流は片側負荷どうしの差。
③★中性線の降下は片側で加算、他方で減算。
④★一次電流は負荷電力+線路損失から求める。
💡 覚え方
「200 V 負荷は中性線を通らない」——だから不平衡も生みません。一次電流は損失も含めて——忘れると答えが合わないのです。
単相3線式の損失計算は令和4年度下期 B問題17(配電の計算:単相3線式の損失と中性線断線)にあります。
中性線の電圧降下の向き
| L₁側(Va) | L₂側(Vb) | |
| ★外線での降下 | ★★−90×0.08=−7.2 V | ★★−100×0.08=−8.0 V |
| ★中性線での影響 | ★★+10×0.08=+0.8 V | ★★−10×0.08=−0.8 V |
| ★結果 | ★★98.6 V | ★★96.2 V |
中性線の電流は、片側では電位を上げ、他方では下げます——向きが逆だから。
だからVa は上がり、Vb は下がります——不平衡の現れ方です。
負荷2(60 A)のほうが重いので、L₂側の電圧が低くなります。
無誘導負荷という条件
| 無誘導負荷 | 誘導性負荷 | |
| ★力率 | ★★1.0 | ★★1より小さい |
| ★電流の向き | ★★電圧と同相 | ★★遅れる |
| ★計算 | ★★算術和でよい | ★★ベクトル和が必要 |
無誘導負荷とは、力率1の抵抗負荷のことです——電熱器や白熱電球など。
だから電流をそのまま足し引きできます——計算が簡単になります。
リアクタンスも無視するとあるので、抵抗だけで解けます。
選択肢の組合せから絞る
| 選択肢 | Va | Vb | 判断 |
| ★★(1) | ★★98.6 | ★★96.2 | ★★正解 |
| ★(2)(3) | ★★97.0 | ★★97.8 | ★★Vb>Va は不自然 |
| ★(4) | ★★96.2 | ★★98.6 | ★★VaとVbが逆 |
| ★(5) | ★★98.6 | ★★96.2 | ★★I₁ が3.28で違う |
L₂側のほうが電流が大きいので、Vb < Va になるはずです——それだけで絞れるのです。
残るのは(1)と(5)で、一次電流の違いだけ——そこを計算すればよいのです。
電圧の大小関係から見当をつけるのが、速く解くこつです。
一次電流を求める別の考え方
| 考え方 | 式 | 注意 |
| ★★電力のつり合い | ★★P₁=負荷電力+線路損失 | ★★損失を忘れない |
| ★巻数比から | ★★使えない | ★★不平衡なので単純換算できない |
単相3線式で不平衡なので、巻数比だけでは一次電流が出せません——電力で考えるのです。
理想変圧器なので、一次電力=二次側で消費される全電力になります。
線路損失も二次側で消費されるので、含める必要があります。
単相3線式の電圧が110Vでない理由
| 二次側の定格 | 負荷端の電圧 | |
| ★L₁−N間 | ★★105 V | ★★98.6 V |
| ★N−L₂間 | ★★105 V | ★★96.2 V |
| ★L₁−L₂間 | ★★210 V | ★★194.8 V |
変圧器の二次側は105 V ですが、線路で降下して負荷端では下がります。
本問では6〜9 V も下がっており、許容範囲(95〜107 V)のぎりぎりです。
負荷が重いと、こうした低電圧が問題になります——タップ調整などで対策します。
まとめ
| L1電流 | 負荷1+負荷3=90A |
| L2電流 | 負荷2+負荷3=100A |
| N電流 | |50−60|=10A |
| Va | 105−90·0.08+0.8=98.6V |
| Vb | 105−100·0.08−0.8=96.2V |
| I1 | 105(90+100)/6400=3.12A |
| 答え | (1) |
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