今回は令和4年度下期 電力科目 A問題1を解説します。水力発電に関する5つの記述(ベルヌーイの定理、水力発電所の特徴、我が国の発電電力量比率、流況曲線、有効落差)のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
我が国の水力発電は昭和30年代前半まで主力電源でしたが、現在の発電電力量に占める比率は10%程度です。この「数字」を押さえておくのがポイント。ベルヌーイの定理・流況曲線・有効落差の定義も基本知識として頻出です。
令和4年度下期 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 令和4年度下期 A問題1
水力発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるベルヌーイの定理は、エネルギー保存の法則に基づく定理である。
(2)水力発電所には、一般的に短時間で起動・停止ができる、耐用年数が長い、エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。
(3)水力発電は昭和30年代前半まで我が国の発電の主力であったが、現在ではエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されており、我が国における水力発電の近年の発電電力量の比率は20%程度である。
(4)河川の1日の流量を、年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は、発電電力量の計画において重要な情報となる。
(5)総落差から損失水頭を差し引いたものを一般に有効落差という。有効落差に相当する位置エネルギーが水車に動力として供給される。
出題のポイント:5つの記述を基本法則と事実で判定する

誤っている記述を選ぶ問題では、各文を一つずつ基本法則や定義と照合します。ベルヌーイの定理、水力発電の特長、近年の発電電力量比率、流況曲線、有効落差の順に確認すると、20%程度とする(3)だけが不適切だと判断できます。
誤りは(3):水力の比率は20 % もない
我が国の発電電力量に占める水力の割合は、近年おおむね8 % 前後——「20 % 程度」は大きすぎます。
| 時期 | 水力の比率 | 主力電源 |
| 昭和30年代前半まで | ★50 % 超 | ★水力(水主火従) |
| 昭和40年代以降 | 低下 | 火力(火主水従) |
| ★近年 | ★8 % 前後 | 火力が7割前後 |
水力そのものが減ったわけではありません——電力需要が何倍にも増えたのです。分母が大きくなったので、比率が下がったことになります。
適地がほぼ開発し尽くされているのも理由——大規模な水力を新設できる場所は、もう多く残っていません。
(4) 流況曲線の読み方

1年365日の流量を、多い順に並べ替えた曲線——発電計画の基礎資料になります。
| 呼び名 | 順位 | 意味 |
| 豊水量 | ★95日目 | 1年で95日はこれ以上ある |
| 平水量 | ★185日目 | ★年の半分はこれ以上ある |
| 低水量 | ★275日目 | 275日はこれ以上ある |
| 渇水量 | ★355日目 | ほぼ最低の流量 |
横軸は日付ではなく「日数」——いつ多いかではなく、どれくらいの期間どれだけ流れるかを見る図です。
この曲線から、水車の使用水量を決めます——大きくすれば稼働できる日数が減り、小さくすれば余った水を捨てることになります。その折り合いを図の上で探るのです。
曲線を積分すれば年間の総流量——そこから年間発電電力量も見積もれます。
(2) 水力発電の長所

| 長所 | 内容 |
| ★起動が速い | ★数分で全出力(火力は数十分〜数時間) |
| ★耐用年数が長い | ★水車・発電機で40年以上、土木構造物はさらに長い |
| ★効率が高い | ★総合効率80 % 以上(火力は40〜60 %) |
| 燃料不要 | 運転費が安く、CO2を出さない |
効率が高いのは、位置エネルギーを直接運動エネルギーに変えるから——熱を経由しません。火力は熱機関なので、原理的な上限(カルノー効率)に縛られるのです。
⚠️ よくある間違い
「20 % 程度」を見て、なんとなく正しいと思ってしまう——数字は覚えていないと判断できません。
電源構成のおおまかな数字は押さえておくべきです——火力7割前後、水力8 % 前後、原子力と再エネで残り。年によって動きますが、桁の感覚があれば十分です。
「昭和30年代前半まで主力だった」という前半は正しい——正誤問題では、正しい記述の後ろに誤った数字を付ける手口がよく使われます。
他の4つが確実に正しいと分かれば、消去法でも(3)に行き着けます。
⏱️ 本番での進め方
①★水力の比率は8 % 前後。20 % は大きすぎる。
②(4) 流況曲線=流量を多い順に並べた曲線。
③(2) 起動が速い・寿命が長い・効率が高いはすべて正しい。
④★数字を含む記述は疑ってかかる。
💡 覚え方
「水主火従から火主水従へ」——昭和30年代が分かれ目です。流況曲線は95・185・275・355日——豊・平・低・渇の順に覚えます。
有効落差と損失水頭は令和5年度上期 A問題1(水力:総落差・損失水頭・有効落差)にあります。
(1) ベルヌーイの定理は何を保存しているのか
「エネルギー保存の法則に基づく」——問題文のこの一句が、定理の正体を言い当てています。
| 項 | 名前 | 正体 |
| p/(ρg) | 圧力水頭 | ★押される力が持つエネルギー |
| v2/(2g) | 速度水頭 | ★運動エネルギー |
| z | 位置水頭 | ★位置エネルギー |
3つとも単位は [m]——エネルギーを「水の高さ」に換算しているのです。だから水頭(head)と呼ばれます。
水圧管を下るにつれて、位置水頭が圧力水頭に移っていきます——合計は変わりません。そして水車で、そのエネルギーが取り出されることになります。
損失があると成り立たないのか
厳密には、摩擦のない理想流体でだけ成り立つ定理です——実際には損失水頭のぶんだけ減っていきます。
だから実務では、損失水頭を項として書き足します——それが(5)の「総落差から損失水頭を差し引く」という話につながります。
正誤判定の進め方
5つの記述のうち、数字が入っているのは(3)だけ——まずそこを疑います。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| (1) | ベルヌーイの定理はエネルギー保存 | 正しい |
| (2) | 起動が速い・寿命が長い・効率が高い | 正しい |
| ★(3) | ★水力の比率は20 % 程度 | ★誤り(8 % 前後) |
| (4) | 流況曲線は発電計画に重要 | 正しい |
| (5) | 有効落差=総落差−損失水頭 | 正しい |
(1)(2)(4)(5)はいずれも定義や一般的な性質——言い切りの形で書かれていて、疑う余地がありません。
数値を含む記述だけが、覚えているかどうかで決まります——出題者が正誤を作りやすい場所だとも言えます。
覚えておきたい電源構成のおおよそ
| 電源 | 近年の比率の目安 |
| ★火力(LNG・石炭・石油) | ★7割前後 |
| ★水力 | ★8 % 前後 |
| 太陽光 | 1割前後まで拡大 |
| 原子力 | 年によって大きく変動 |
細かい数字を暗記する必要はありません——「水力は1割に届かない」という感覚があれば、20 % という記述に違和感を持てます。
再生可能エネルギー全体で見れば2割前後——その中に水力8 % が含まれるという位置づけです。「再エネの中では水力が最大」だという点も押さえておきましょう。
流況曲線から使用水量を決める
(4)の「発電電力量の計画において重要」——具体的にどう使うのかを見ておきましょう。
| 最大使用水量 | 設備 | 稼働日数 | 捨てる水 |
| 大きくする | ★大きく高価 | ★少ない | 少ない |
| 小さくする | 安い | ★多い | ★多い |
豊水量に合わせて水車を大きくすると、1年の大半は能力を持て余します——設備費が無駄になります。
逆に渇水量に合わせると、増水期の水をほとんど捨てることに——発電量を取りこぼします。
だいたい平水量から低水量のあたりで折り合いをつけるのが一般的——曲線を描いてこそ判断できるのです。
流況曲線と発電電力量
曲線の下の面積が、年間に流れる水の総量——そのうち使用水量の線より下の部分だけが発電に使われます。
はみ出した上の部分は、そのまま川へ流れていく——図の上で「使える水」と「捨てる水」が分けて見えることになります。
調整池や貯水池があれば、はみ出した水を溜めておけます——捨てる部分を減らせるのです。池の効果も、この曲線の上で評価できることになります。
まとめ
| (3)誤り | 水力の発電電力量比率は近年約10%(20%は過大) |
| (1) | ベルヌーイ=エネルギー保存則(正) |
| (2) | 起動停止が速く効率が高い(正) |
| (4) | 流況曲線=流量の多い順に配列(正) |
| (5) | 有効落差=総落差−損失水頭(正) |
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