今回は令和4年度下期 電力科目 A問題2を解説します。水圧管の先端のノズルから噴出する噴流でランナを回す水車について、そのエネルギー変換・名称・代表例・適用落差・比速度の空欄を補充する問題です。
ノズル出口では有効落差が全て運動エネルギーになり、その噴流の衝撃力でバケットを回すのが衝動水車=ペルトン水車。高落差・少流量に適し、比速度は小さい(ns≒12〜25)のが特徴です。
令和4年度下期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【水力】 令和4年度下期 A問題2
次の文章は、水車に関する記述である。水圧管の先端がノズルになっていると、有効落差は全て(ア)エネルギーとなり、水は噴流となって噴出し、ランナのバケットにあたってランナを回転させる。このような水の力で回転する水車を(イ)水車という。代表的なものとして(ウ)水車があり、(エ)で、流量の比較的少ない場所に用いられ、比速度は(オ)。上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 運動 衝動 ペルトン 高落差 大きい (2) 圧力 反動 フランシス 低落差 大きい (3) 位置 反動 カプラン 高落差 大きい (4) 圧力 衝動 フランシス 低落差 小さい (5) 運動 衝動 ペルトン 高落差 小さい
| 分類 | 代表的な水車 | 利用するもの | 落差・流量 | 比速度 |
| ★衝動水車 | ペルトン | ★速度水頭(運動エネルギー) | 高落差・少流量 | ★小さい |
| 反動水車 | フランシス | ★圧力水頭も利用 | 中〜高落差 | 中 |
| 反動水車(軸流) | プロペラ・カプラン | 圧力水頭も利用 | 低落差・大流量 | ★大きい |
| 小水力 | クロスフロー | 速度水頭 | 低落差・少流量 | — |
出題のポイント:ペルトン水車のエネルギー変換を順に追う

水圧管の先端にあるノズルは、有効落差を高速噴流の運動エネルギーへ変えます。噴流をランナ外周のバケットへ接線方向に当てるペルトン水車は衝動水車で、高落差・比較的少流量の地点に適し、比速度は小さくなります。
(ア)(イ) ノズルを出た水は何を持っているか
「水圧管の先端がノズルになっている」——ここが決め手です。ノズルから大気中へ噴き出した瞬間、圧力は大気圧になります。
圧力が使えないのだから、残るのは速度だけ——有効落差はすべて運動エネルギーに変わるのです。だから(ア)は運動——「圧力」や「位置」ではありません。
その噴流をバケットにぶつけて回すのが衝動水車——水が当たる衝撃で回すので、この名があります。
(オ) 比速度とは何か

本問の山場は「比速度は小さい」——比速度という量の意味を押さえておきましょう。
「その水車を、落差1 m で出力1 kW にまで縮めたときの回転速度」——水車の形を表す指標です。大きさによらず、同じ形の水車なら同じ値になります。
| 水車 | 比速度 ns の目安 | 適する落差 |
| ★ペルトン | ★12〜25 | ★200 m 以上(高落差) |
| フランシス | 50〜350 | 40〜500 m |
| プロペラ・カプラン | ★400〜800 | ★80 m 以下(低落差) |
式のH が5/4乗で分母にある——落差が大きいほど比速度は小さくなるのです。ペルトンは高落差用だから比速度が小さい——式から必然的にそうなることになります。
「高落差=比速度小」「低落差=比速度大」——この対応さえ押さえれば、(エ)と(オ)はセットで決まります。片方が分かればもう片方も決まるのです。
比速度が大きすぎるとどうなるか
比速度を上げると水車は小型・高速になり、経済的です——ところが上げすぎるとキャビテーションが起きやすくなる。
だから落差に応じて比速度の上限が決められています——「限界比速度」と呼ばれるものです。経済性と安全性の折り合いをつけていることになります。
⚠️ よくある間違い
(オ)の比速度の大小を逆にする——選択肢(1)がまさにそれ(ペルトン・高落差なのに比速度が大きい)。
(1)と(5)は(オ)だけが違います——ここが本問の核心だと分かります。
ns=nP1/2/H5/4 で H が分母——高落差なら小さい。式を思い出せば迷いません。
(ア)を「圧力」とする選択肢(2)(4)——ノズルから空気中へ出た水に圧力は残りません。(ア)だけで2つ落とせます。
⏱️ 本番での進め方
①(ア) ノズルを出れば圧力は大気圧。残るのは運動エネルギー。
②(イ)(ウ) 噴流の衝撃で回す=衝動水車=ペルトン。
③(エ)(オ)★高落差なら比速度は小さい。セットで決まる。
④ns=nP1/2/H5/4。H が分母にあることが根拠。
💡 覚え方
「高落差は比速度が小さい」——比速度の式で H が分母(5/4乗)だからです。ペルトン12〜25/フランシス50〜350/カプラン400〜800——桁で覚えておけば十分でしょう。
水車の分類全体は平成25年度 A問題1(水力:水車の分類)にあります。
ペルトン水車の構造
衝動水車の代表格——部品ごとの役割を押さえておきましょう。
| 部品 | 役割 |
| ★ノズル | ★圧力を速度に変えて噴流をつくる |
| ★ニードル弁 | ★ノズル断面を変えて流量を調整 |
| バケット | 噴流を受けて反転させる(お椀が2つ並んだ形) |
| デフレクタ | ★急な負荷遮断時に噴流をそらす |
バケットが2つのお椀を並べた形なのは、水を左右へ反転させるため——水の運動量変化を最大にできるのです。まっすぐ跳ね返すより、向きを180°変えるほうが力が大きくなります。
デフレクタは水撃作用(ウォーターハンマ)を防ぐ装置——負荷が急に切れたとき、ニードル弁を急に閉じると水圧管に衝撃圧が生じます。だから先に噴流をそらしてから、ゆっくり弁を閉じるのです。
流量調整の違い
ペルトンはニードル弁、反動水車はガイドベーン——調整する場所が違います。
ペルトンは複数のノズルを持つものもあり、使うノズルの数で大きく流量を変えられます——だから部分負荷でも効率が落ちにくいのが特徴です。
空欄を2つで絞り込む

5つの空欄がありますが、2つ決まれば確定します。
| 確定させる欄 | 正しい値 | 残る選択肢 |
| (ア) | 運動 | ★(1)(5) |
| (オ) | 小さい | ★(5)に確定 |
(ア)は「ノズルになっていると有効落差は全て〜エネルギー」——大気中へ噴き出すので運動エネルギー。これで3つ落ちます。
残る(1)と(5)の違いは(オ)の比速度だけ——ペルトンは高落差用なので比速度は小さい。2手で確定します。
「高落差=比速度小」を体で覚える
高落差の水車は、少ない水を高速でぶつける——だから直径が大きくゆっくり回るイメージです。
低落差の水車は、大量の水をゆっくり通す——羽根が大きく、比較的速く回る。比速度はその「形の指標」ですから、高落差ほど小さくなるのです。
衝動水車と反動水車の見分け方
試験では、いくつかのキーワードで判別できます。
| 問題文のキーワード | 指している水車 |
| ★ノズル/噴流/バケット | ★衝動水車(ペルトン) |
| ★ガイドベーン/吸出管/ランナが水没 | ★反動水車(フランシス等) |
| 高落差・少流量・比速度小 | 衝動水車 |
| 低落差・大流量・比速度大 | 反動水車(軸流) |
「ノズル」という語が出たら、まず衝動水車を疑う——圧力を速度に変える部品だからです。
逆に「吸出管」が出たら反動水車——衝動水車には存在しない部品です。語彙で半分は絞れることになります。
本問は「水圧管の先端がノズル」から始まっている——この時点で衝動水車の話だと確定します。(イ)を読む前に答えの方向が決まるのです。
比速度の値で水車を選ぶ
| 水車 | 比速度〔m・kW〕 | 適する落差 |
| ★ペルトン | ★★12〜25 | ★★200 m 以上 |
| ★フランシス | ★★50〜350 | ★★50〜500 m |
| ★プロペラ・カプラン | ★★400〜800 | ★★80 m 以下 |
比速度が小さいほど高落差用です——ペルトンが最小、プロペラが最大という並びになります。
比速度を上げすぎると、キャビテーションが起きやすくなります——だから上限が決められているのです。
数値そのものより、3種類の大小関係を覚えておけば十分に戦えます。
まとめ
| (ア) | 有効落差は全て運動エネルギーに |
| (イ) | 噴流の衝撃力で回る=衝動水車 |
| (ウ) | 代表はペルトン水車 |
| (エ) | 高落差・少流量に適する |
| (オ) | 比速度は小さい→(5) |
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