今回は令和4年度上期 電力科目 B問題15を解説します。揚程450m・ポンプ効率90%・電動機効率98%の揚水発電所について、(a)180万m³を揚水するのに必要な電力量、(b)電動機入力300MWでの揚水流量を求める問題です。
揚水に必要な位置エネルギーはρgVH[J]。電動機の電力量はこれを効率で割ります。J→MW·hは÷3.6×10⁹。流量は P=9.8QH/(ηp·ηm) を変形して求めます。
令和4年度上期 電力科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 B問題15
電験3種 電力科目 【水力】 令和4年度上期 B問題15
揚水発電所について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、水の密度を1000kg/m³、重力加速度を9.8m/s²とする。
ただし、水の密度を1000kg/m³、重力加速度を9.8m/s²とする。
(a) 揚程450m、ポンプ効率90%、電動機効率98%の揚水発電所がある。揚水により揚程及び効率は変わらないものとして、下池から1800000m³の水を揚水するのに電動機が要する電力量の値[MW·h]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。(1)1 500 (2)1 750 (3)2 000 (4)2 250 (5)2 500 MW·h
(b) この揚水発電所において、発電電動機が電動機入力300MWで揚水運転しているときの流量の値[m³/s]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)50.0 (2)55.0 (3)60.0 (4)65.0 (5)70.0 m³/s
出題のポイント:位置エネルギー・効率・単位換算をつなぐ

水の位置エネルギーはρgVH、流量Qの水動力はρgQHで表します。必要な電気入力は総合揚水効率ηmηpで割り、JからMW·hへは3.6×10^9で割ります。(a)は2500 MW·hで(5)、(b)は60.0 m³/sで(3)です。
(a) 仕事[J]から電力量[W·h]へ

水を持ち上げる仕事を求めてから、電力量に直します——3600で割るところが肝です。
理論上の仕事
★2,205 MW·h
J は「W×秒」——時間の単位にするには3600で割るのです。ここを忘れると桁が3つずれます。
効率で割って電動機の電力量に
★2,500 MW·h
揚水では効率で割ります——理論値より多くの電気が要るからです。2,205より大きい2,500になるのが正しい向きです。
(b) 入力から流量を逆算する
(a)と同じ式を、流量について解くだけです。
★60.0 m³/s
効率が分子に来ていることに注意——元の式で分母にあったものを移項したからです。
効率が悪いほど、同じ電力で汲み上げられる水は少なくなる——だから η が分子にあるのは自然です。
検算:(a)と(b)はつながっている
★(a)と一致
2つの小問が同じ揚水発電所の話——整合するかを確かめられます。時間があれば必ず検算しましょう。
⚠️ よくある間違い
(a)で3600 で割り忘れる——J のまま「MW·h」と答えてしまうのが典型です。
J は W·s——W·h にするには3600で割る。桁が大きく外れるので、選択肢と照らせば気づけます。
(a)で効率を掛けてしまう——2205×0.882=1,945 となり、選択肢のどれにも当たりません。揚水は割る のが鉄則です。
(b)で効率を分母に置いてしまう——300,000/(9.8×450×0.882)=77.1。選択肢にないので気づけますが、式を立てるときに向きを確認するほうが確実です。
⏱️ 本番での進め方
①★J→W·h は÷3600。ここが最頻出のつまずき。
②★揚水は効率で割る。理論値より大きくなる。
③(b)は(a)の式を Q について解くだけ。
④★T=V/Q で(a)と(b)の整合を検算できる。
💡 覚え方
「J を3600で割れば W·h」——1時間=3600秒だからです。そして揚水は割る、発電は掛ける——常に損をする向きになります。
揚水発電の出力計算は平成28年度 A問題1(水力:揚水発電所の発電出力・揚水入力)、令和6年度上期 A問題2(水力:揚水発電の電動機入力と発電機出力)にもあります。
エネルギーと電力量の単位
本問でつまずくとしたら、ここです——J と W·h の関係を整理しておきましょう。
| 単位 | 意味 | 換算 |
| J(ジュール) | 仕事・エネルギー | ★1 J=1 W·s |
| ★W·h | ★電力量(1 W を1時間) | ★1 W·h=3600 J |
| kW·h | 家庭の電気料金の単位 | 3.6×106 J |
| MW·h | 発電所規模 | 3.6×109 J |
J も W·h も、同じ「エネルギー」を表す単位——秒で数えるか時間で数えるかの違いだけです。
電気の世界では時間で数えるほうが便利——だから W·h が使われるのです。その架け橋が3600という数になります。
桁の見当をつける
★3.6×10⁹ で割る
MW·h に一気に直すなら3.6×109 で割る——3600(時間)×106(M)だからです。
選択肢が1,500〜2,500 MW·h の範囲ですから、計算結果が数万や数百になったら換算ミス——選択肢は検算の道具にもなります。
揚水発電の効率を段階で見る
本問には効率が2つ出てきます——どこで生じる損失なのかを整理しましょう。
| 効率 | 本問の値 | 失うもの |
| ★電動機効率 ηM | ★98 % | ★銅損・鉄損・機械損 |
| ★ポンプ効率 ηP | ★90 % | ★水力損・漏れ・軸受の摩擦 |
| 合計 | ★88.2 % | 電気→水の位置エネルギー |
電動機のほうが効率がよい——電気機器は一般に機械よりも損失が小さいのです。
水を扱うポンプでは、渦や漏れが避けられません——だから1割前後を失うことになります。
往復すると効率はどうなるか
★約78 %
汲み上げて発電するまでに、2回損をします——だから往復の総合効率は7割前後になるのです。
本問は揚水側だけを問うているので88.2 % で済みますが、「総合効率」を問われたら往復で考える——どちらを聞かれているかを見極めましょう。
まとめ

| (a)位置エネルギー | 1000×9.8×1.8e6×450=7.938×10¹²J |
| (a)電動機の電力量 | ÷(0.9×0.98)=9.0×10¹²J |
| (a)MW·h換算 | 9.0e12/3.6e9=2500MW·h→(5) |
| (b)流量の式 | Q=P·ηp·ηm/(9.8H) |
| (b)Q | 300000×0.882/4410=60.0m³/s→(3) |
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