今回は令和6年度上期 電力科目 A問題2を解説します。総落差200m・流量100m³/sの揚水発電所について、揚水時の電動機入力[MW]と発電時の発電機出力[MW]を求める計算問題です。
揚水時は揚程=総落差+損失水頭で水動力を効率で割り、発電時は有効落差=総落差−損失水頭で水動力に効率を掛ける——この「加減」と「乗除」の向きが最大のポイントです。
出題のポイント:揚水と発電で逆になる向き

揚水時は損失水頭を足して効率で割り、発電時は損失水頭を引いて効率を掛けます。総落差200 m、流量100 m³/sから電動機入力と発電機出力を順に求めます。
令和6年度上期 電力科目 A問題2:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題2
電験3種 電力科目 【水力】 令和6年度上期 A問題2
総落差200m、ポンプ水車・発電電動機1台よりなる揚水発電所がある。揚水時・発電時共に流量は100m³/s、損失水頭は揚水・発電共に総落差の2.5%、ポンプ効率・水車効率共に85%、発電効率・電動機効率共に98%とし、損失水頭及び上記4種の効率は、揚程、落差、出力、入力の変化によらず一定とする。揚水時の電動機入力[MW]と、発電時の発電機出力[MW]の組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
電動機入力[MW] 発電機出力[MW] (1) 235 163 (2) 235 159 (3) 241 163 (4) 241 159 (5) 229 167
揚水と発電で逆になる2つの向き

本問の急所はここだけ——2つとも逆になることを押さえれば解けます。
| ★揚水時(ポンプ) | ★発電時(水車) | |
| 使う高さ | ★揚程=総落差+損失水頭 | ★有効落差=総落差−損失水頭 |
| 効率の扱い | ★割る(入力を求める) | ★掛ける(出力を求める) |
| 求めるもの | 電動機入力 | 発電機出力 |
なぜ揚水では損失を足すのか——摩擦に打ち勝ってさらに持ち上げなければならないからです。200 m 上げるのに、摩擦の5 m 分も余計に仕事をする——だから205 m 分の仕事になります。
発電では逆に、摩擦で目減りした分しか使えません——200 m あっても実際は195 m 分。損失は常に「損をする方向」に働くと考えれば、符号を間違えません。
効率も同じ発想——揚水では「これだけ入れないと足りない」ので割り算、発電では「これだけしか取り出せない」ので掛け算です。
揚水発電所の入力・出力を計算

総落差の2.5 %
★足す
★効率で割る
★引く
★効率を掛ける
★答え
総合効率0.85×0.98=0.833 を先に出しておく——揚水も発電も同じ値なので、1回計算すれば使い回せます。
9.8×100=980 も共通——980×205=200,900、980×195=191,100。あとは0.833 で割るか掛けるかだけになります。
選択肢はすべて符号の取り違え
| 選択肢 | 値[MW] | どんな誤りか |
| (1)(2) | 揚水235 | ★揚水で損失を足さなかった(200 m のまま) |
| (1)(3) | 発電163 | ★発電で損失を引かなかった(200 m のまま) |
| ★(4) | ★241/159 | ★正解 |
| (5) | 229/167 | ★揚水で引き、発電で足した(符号が両方逆) |
(5)がいちばん惜しい誤り——損失を考慮してはいるが、向きが逆です。「損失は常に損をする方向」と考えれば防げます。
(1)〜(3)は損失を片方または両方無視した場合——235 と163 は、どちらも200 m で計算した値です。問題文がわざわざ2.5 % を与えているのですから、使わなければおかしいと気づけます。
⚠️ よくある間違い
揚水時と発電時で同じ扱いをしてしまう——これが本問で最も多い誤りです。
「ポンプは損をする、水車も損をする」——どちらも損失は不利に働くのですが、不利の向きが逆になります。
揚水は「余計に仕事をする」=高さが増える・入力が増える。発電は「取り分が減る」=高さが減る・出力が減る。どちらも「損」だと確認してください。
電動機入力241 > 発電機出力159——この大小関係も検算になります。もし入力より出力が大きく出たら、必ずどこかで間違えています。
揚水発電の総合効率
★約66 %
241 MW で汲み上げて、159 MW しか返ってこない——3分の1が失われる計算です。それでも揚水発電が使われる理由を考えてみましょう。
| 役割 | 内容 |
| ★ピークシフト | ★夜間の余剰電力を昼間の需要へ移す |
| 調整力 | ★数分で起動でき、需要の変動に追従できる |
| 再エネの受け皿 | 太陽光の余剰を吸収する |
効率が悪くても、電気を「貯める」手段はほかにほとんどありません——大規模に貯蔵できるのは揚水発電だけというのが現状です。
しかも起動が速い——火力の起動には数時間かかるのに対し、揚水は数分で全出力。系統の急な変動に応えられる貴重な存在になります。
⏱️ 本番での進め方
①損失水頭=総落差×2.5 %=5 m。
②★揚水は足して割る(205 m、÷0.833)。
③★発電は引いて掛ける(195 m、×0.833)。
④入力>出力を確認。逆なら必ず誤り。
💡 覚え方
「損失は常に損をする方向」——揚水なら高さが増え、発電なら高さが減る。効率も同じで、揚水は割り、発電は掛ける——2つとも逆だと覚えてください。
ポンプ水車が反動水車である理由は平成20年度 A問題1(水力:反動水車と衝動水車の使い分け)にあります。
揚水発電所の構成
上池と下池を持ち、その間を水が往復します——設備としては水力発電所とほぼ同じです。
| 設備 | 役割 |
| 上池(上部調整池) | ★汲み上げた水を貯める=エネルギーの貯蔵庫 |
| 下池(下部調整池) | 発電後の水を受け止める |
| ★ポンプ水車 | ★発電時は水車、揚水時はポンプ |
| ★発電電動機 | ★発電時は発電機、揚水時は電動機 |
本問が「ポンプ水車・発電電動機1台よりなる」と書いているのは、1台で両方をこなす方式だという意味です。
下池が必要なのが、ふつうの水力発電所との違い——水を使い捨てにせず、循環させるからです。だから「発電した水を捨てない」=同じ水を何度も使えることになります。
純揚水と混合揚水
| 方式 | 上池への流入 | 特徴 |
| ★純揚水 | ★汲み上げた水のみ | 純粋な蓄電設備 |
| 混合揚水 | 河川からの流入もある | 自流分でも発電できる |
純揚水は「電気を貯める」ことだけが目的——だから総合効率66 % でも成り立つのです。混合揚水なら、自然の流れ込みの分は丸ごと利益になります。
揚水発電の運転パターン
1日のうちで、汲み上げと発電を使い分けます——電力需要のかたちに合わせた運転です。
| 時間帯 | 運転 | 理由 |
| ★深夜〜早朝 | ★揚水 | ★需要が少なく電気が余る |
| 昼のピーク | ★発電 | ★需要が最大になる |
| 近年の昼間 | 揚水することも | ★太陽光の出力が余る |
従来は「夜に汲んで昼に出す」が基本でした——ところが太陽光発電が増えて、昼に電気が余る日が出てきたのです。
そこで昼に揚水し、夕方に発電するという運転も行われています——太陽光が落ちる夕方こそ需要のピークだからです。揚水発電の役割が時代とともに変わってきていることになります。
効率66 % をどう見るか
3分の1が失われる——一見すると大きな損です。
ところが「捨てるはずだった電気」を貯めるなら話は別——0 になるものが66 % 残るのですから、差し引きで得になります。
出力を絞れない原子力や、止められない太陽光が増えるほど、この価値が高まる——効率の数字だけでは測れない役割だと言えます。
まとめ
| 損失水頭 | 200×0.025=5m |
| 揚水時の揚程 | 200+5=205m |
| 電動機入力 | 9.8×100×205/(0.85×0.98)≒241MW |
| 発電時の有効落差 | 200−5=195m |
| 発電機出力 | 9.8×100×195×0.85×0.98≒159MW→(4) |
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