今回は令和6年度上期 電力科目 A問題1を解説します。水力発電所に関する5つの記述(衝動水車、ペルトン水車のニードル弁とデフレクタ、小水力発電、クロスフロー水車)のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
ペルトン水車を急停止させるときは、デフレクタで噴流をランナから逸らすのが先で、ニードル弁はゆっくり閉じるのが鉄則です。急閉すると水圧管内に水撃作用(ウォーターハンマ)が生じてしまいます。
出題のポイント:ペルトン水車の急停止と小水力

ペルトン水車を急停止するときは、デフレクタで噴流を直ちにそらし、その後ニードル弁をゆっくり閉じます。水撃作用を避ける理由と、小水力・クロスフロー水車の特徴も整理します。
令和6年度上期 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 令和6年度上期 A問題1
水力発電所に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)衝動水車にはペルトン水車などがある。
(2)ペルトン水車の水圧管の先端ノズル内にはニードル弁があり、通常運転時は出力変化に応じて流量調整を行う。
(3)故障発生時などでペルトン水車を急停止させるときは、ニードル弁でノズルから出る噴流を急速に止めると同時にデフレクタを停止位置にして噴流を完全に遮断する。
(4)小水力発電は、主に流れ込み式、水路式が多く、比較的小規模な発電設備で発電を行う。一般河川の水のエネルギーの利用だけでなく、農業用水、上下水道など低落差あるいは少流量の水のエネルギーも活用している。
(5)クロスフロー水車は小水力発電で多く用いられ、円筒状のランナの軸に直角方向から流水が流入しランナ内を貫通して流出する水車である。ガイドベーンを有し低流量時でも効率低下が小さい。
ペルトン水車の急停止手順

ペルトン水車を急に止めたいとき、ニードル弁を急閉してはいけません——水撃作用で水圧管が壊れるおそれがあるからです。
| 部品 | 急停止時の動き | 速さ |
| ★デフレクタ | ★噴流をバケットからそらす | ★瞬時(数秒) |
| ★ニードル弁 | ★ノズルを閉じて流量を止める | ★ゆっくり(数十秒) |
デフレクタは水の流れ自体は止めません——向きを変えてバケットに当たらないようにするだけ。だから管の中の流速は変わらず、水撃も起きません。
その間にニードル弁をゆっくり閉じていく——流速がゆるやかに落ちるので衝撃が出ないのです。「まずそらす、あとで止める」という順序が要点になります。
(3)は「ニードル弁で急速に止めると同時にデフレクタを」としており、ニードル弁を急速に閉じる点が誤りです。
水撃作用の理由と選択肢照合

流速を1 m/s 変えるだけで、約1 MPa(10気圧)の圧力変動——桁違いに大きいのです。
★約100 m の水柱に相当
100 m の水柱ぶんの圧力が上乗せされる——有効落差100 m の発電所なら、圧力が2倍になる計算です。水圧管がもたないのは当然でしょう。
だから「急に止めない」ことが鉄則——デフレクタ、サージタンク、ゆっくりした弁操作は、すべてこの1点のための工夫です。
(4)(5) 小水力発電とクロスフロー水車
後半の2つは小水力の話——いずれも正しい記述です。
| 項目 | 内容 |
| 方式 | ★流れ込み式・水路式が多い(ダムを造らない) |
| 水源 | ★農業用水・上下水道など低落差・少流量 |
| 水車 | ★クロスフロー水車が多用される |
クロスフロー水車は、円筒状のランナを水が横切って貫通します——外から入り、中を通り、反対側から出る。2回羽根に当たることになります。
ガイドベーンで流入幅を変えられるので、水量が減っても効率が落ちにくい——流量が季節で変わる小水力に向いている理由です。
構造が簡単で安価——効率は最高ではありませんが、保守しやすさが優先される場面で選ばれます。
⚠️ よくある間違い
(3)を「デフレクタも使っているから正しい」と流してしまう——デフレクタは確かに使います。
問題は「ニードル弁で急速に止める」という部分——ここが逆です。ニードル弁はゆっくりでなければなりません。
「同時に」という語も引っかかりやすい——実際はデフレクタが先で、ニードル弁は後からゆっくり。順序が違います。
正しい部品名が出ていても、動かし方が誤っている——正誤判定では、名詞だけでなく動詞まで確認してください。
⏱️ 本番での進め方
①★急停止はデフレクタが先。ニードル弁はゆっくり。
②理由は水撃作用。急に止めると圧力が急上昇する。
③(2) 通常運転の流量調整はニードル弁で正しい。
④★部品名が合っていても動かし方が誤っている場合がある。
💡 覚え方
「まずそらす、あとで止める」——デフレクタは瞬時、ニードル弁はゆっくり。水撃作用を避けるための順序です。
水撃作用とサージタンクは令和2年度 A問題1(水力:水撃作用とサージタンク)にあります。
ペルトン水車の各部と役割
問題文に出てくる部品を、水の流れに沿って並べます。
| 部品 | 役割 | 動かす速さ |
| ノズル | 圧力水頭を速度水頭に変えて噴流を作る | 固定 |
| ★ニードル弁 | ★ノズル内で前後して噴流の太さを変える | ★ゆっくり(数十秒) |
| ★デフレクタ | ★噴流の前に割り込んで向きをそらす | ★瞬時(数秒) |
| バケット | 噴流を受けて回る。中央に切欠き | — |
| 制動ノズル | 停止時に裏から水を当てて早く止める | — |
ニードル弁は噴流の太さ=流量を変えます——速さは変えません。噴流の速度は落差で決まってしまうからです。
だから流量を絞っても効率が落ちにくい——ペルトンが部分負荷に強い理由になります。
バケットの切欠きと2枚の椀
バケットは2つの椀を背中合わせにした形——噴流を左右に分けて、真横へ跳ね返します。
まっすぐ跳ね返すと、戻った水が次の噴流とぶつかる——だから斜め横へ逃がすのです。
中央の切欠き(ノッチ)は、噴流がバケットの根元から入れるようにするため——切欠きがないと、椀の縁が噴流を先に切ってしまうことになります。
正誤判定の進め方
5つの記述のうち、動作の順序に触れているのは(3)だけ——そこに目を付けます。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| (1) | ペルトンの構造(ノズル・バケット) | 正しい |
| (2) | ニードル弁で流量を調整 | 正しい |
| ★(3) | ★ニードル弁で急速に止める | ★誤り |
| (4) | 小水力は流れ込み式が多い | 正しい |
| (5) | クロスフロー水車 | 正しい |
(2)と(3)は同じニードル弁の話——通常運転の流量調整は正しく、急停止の使い方が誤りです。
正誤判定では「速く」「ゆっくり」「同時に」といった副詞に注意——部品名が正しくても、動かし方で誤りにされることが多いのです。
なぜデフレクタが必要なのか
ペルトンは無負荷になると危険なほど加速します——無拘束速度は定格の1.8倍前後。すぐに噴流を切り離さなければなりません。
ところがニードル弁を急に閉じれば水撃作用——「速く止めたい」と「急に止めてはいけない」が両立しないのです。
そこを解決するのがデフレクタ——水は流れ続けたまま、水車への入力だけをゼロにする。この矛盾を解く装置だと理解すれば、順序を忘れません。
小水力発電の位置づけ
問題文の(4)(5)は、近年よく問われるテーマです。
| 区分 | 出力の目安 | FIT での扱い |
| 大水力 | 10 MW 超 | 対象外 |
| 中小水力 | 1〜10 MW | 区分あり |
| ★小水力 | ★1,000 kW 以下 | ★買取価格が高く設定 |
未利用の落差はまだ各地に残っています——農業用水路の段差、上水道の減圧弁、工場の排水など。そこに水車を置けば、新たにダムを造らずに発電できるのです。
環境への影響が小さく、地域で運営しやすい——だから制度面でも後押しされています。
課題は、落差も流量も小さいために出力が伸びないこと——P=9.8QHη ですから、両方が小さければ出力は掛け算で小さくなるのです。
だからこそ、部分負荷でも効率が落ちにくいクロスフロー水車が選ばれます——少ない発電量を取りこぼさないためだと言えます。
まとめ
| (3)誤り | 急停止はデフレクタ。ニードル弁の急閉は水撃作用の原因 |
| (1) | 衝動水車=ペルトン(正) |
| (2) | ニードル弁で通常運転の流量調整(正) |
| (4) | 小水力は流れ込み・水路式(正) |
| (5) | クロスフローはランナ貫通流(正) |
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