今回は令和元年度 電力科目 A問題1を解説します。我が国の水力発電所(又は揚水発電所)に用いられる水車(又はポンプ水車)及び発電機(又は発電電動機)に関する5つの記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
揚水発電所の3方式——別置式(別軸)・タンデム式(同一軸に水車とポンプを別々に直結)・ポンプ水車式(1台の可逆機)——の区別がポイント。国内の大半はポンプ水車式ですが、水車とポンプを別々に最適設計できるのはタンデム式です。
令和元年度 電力科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題1
電験3種 電力科目 【水力】 令和元年度 A問題1
我が国の水力発電所(又は揚水発電所)に用いられる水車(又はポンプ水車)及び発電機(又は発電電動機)に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)ガイドベーン(案内羽根)は、その開度によってランナに流入する水の流量を変え、水車の出力を調整することができる水車部品である。
(2)同一出力のフランシス水車を比較すると、一般に落差が高い地点に適用する水車の方が低い地点に適用するものより比速度が小さく、ランナの形状が扁平になる。
(3)揚水発電所には、別置式、タンデム式、ポンプ水車式がある。発電機と電動機を共用し、同一軸に水車とポンプをそれぞれ直結した方式がポンプ水車式であり、水車の性能、ポンプの性能をそれぞれ最適に設計できるため、国内で建設される揚水発電所はほとんどこの方式である。
(4)水車発電機には突極形で回転界磁形の三相同期発電機が主に用いられている。落差を有効に利用するために、水車を発電機の下方に直結した立軸形にすることも多い。
(5)調速機は水車の回転速度を一定に保持する機能を有する装置である。また、自動電圧調整器は出力電圧の大きさを一定に保持する機能を有する装置である。

誤りは(3):説明されているのはタンデム式
「同一軸に水車とポンプをそれぞれ直結」——これはタンデム式の説明です。
| 方式 | 構成 | 特徴 |
| 別置式 | 発電機+水車と、電動機+ポンプを別々に持つ | それぞれ最適設計できるが高価 |
| ★タンデム式 | ★1本の軸に発電電動機・水車・ポンプを並べる | ★水車とポンプを別々に最適設計できる |
| ★ポンプ水車式 | ★1台の機械が水車にもポンプにもなる | ★安価・省スペース。国内の主流 |
「水車の性能、ポンプの性能をそれぞれ最適に設計できる」——2つの機械を別々に持つからこそできることです。1台で兼ねるポンプ水車では、両立させるための妥協が必要になります。
ただし「国内で建設される揚水発電所はほとんどこの方式」という後半は、ポンプ水車式について言えば正しい——方式の名前と説明が食い違っているのが誤りの正体です。
ポンプ水車式が主流な理由
| 観点 | ポンプ水車式 | タンデム式 |
| 機械の台数 | ★1台 | 2台(水車+ポンプ) |
| 建屋の大きさ | ★小さい | 軸が長くなり大きい |
| 建設費 | ★安い | 高い |
| 切替時間 | ★逆転が必要で数分かかる | ★クラッチで切り替えるので速い |
ポンプ水車は、発電時と揚水時で回転方向が逆——いったん止めて逆転させる必要があります。
それでも数分で済む——火力の起動に比べれば圧倒的に速いのですから、実用上は問題になりません。
だから費用の安さが決め手になり、ポンプ水車式が主流になりました。
(2) 比速度とランナの形
同じ出力のフランシス水車でも、落差によって形が変わります。
| 高落差 | 低落差 | |
| 比速度 | ★小さい | 大きい |
| 流量 | ★少ない | 多い |
| ランナの形 | ★幅が狭く径が大きい(扁平) | 幅が広い |
高落差では少ない水で足りる——だからランナの通路を狭くできるのです。その結果、平べったい形になります。
低落差では大量の水を通す必要がある——通路を広げるので幅が増すことになります。さらに落差が下がれば、プロペラ水車のような軸流の形へ移っていきます。
⚠️ よくある間違い
(3)の後半「国内でほとんどこの方式」に引きずられる——ポンプ水車式が主流というのは事実です。
誤りは、その方式の説明が「水車とポンプをそれぞれ直結」となっている点——それはタンデム式。名前と中身が入れ替わっています。
「それぞれ最適に設計できる」という一句が手がかり——1台で兼ねるなら、それぞれ最適にはできません。論理の矛盾から気づけます。
(2)を疑ってしまう——「扁平」という表現が耳慣れないかもしれませんが、高落差=低比速度=幅の狭いランナで正しい記述です。
⏱️ 本番での進め方
①★ポンプ水車式=1台が両方を兼ねる。国内の主流。
②タンデム式=1軸に水車とポンプを並べる。
③★「それぞれ最適に設計」できるのは2台持つ方式。
④(2) 高落差=低比速度=扁平なランナ。
💡 覚え方
「1台で兼ねるなら妥協が要る」——「それぞれ最適に」と書いてあればタンデム式か別置式です。方式の名前と説明が入れ替わる出題に注意しましょう。
ポンプ水車と反動水車の関係は平成20年度 A問題1(水力:反動/衝動の使い分けと多極)、揚水の計算は平成28年度 A問題1(水力:揚水発電所の発電出力・揚水入力)にあります。
(1) ガイドベーンの働き
反動水車で流量を調整する部品——ランナの手前に並んでいます。
| 水車 | 流量調整の部品 |
| ペルトン | ★ニードル弁 |
| ★フランシス | ★ガイドベーン |
| プロペラ | ガイドベーン |
| ★カプラン | ★ガイドベーン+ランナベーン(可動羽根) |
ガイドベーンは、渦形室から入ってきた水の通路を狭めたり広げたりします——同時に、水がランナへ入る角度も変えるのです。
すべてのベーンが連動して動く——調速機からの信号で、一斉に開度が変わります。
全閉にすれば水を止められるので、停止装置としても働くことになります。
(4) 立軸形にする理由
「落差を有効に利用するために、水車を発電機の下方に」——問題文のこの記述は正しいものです。
水車を低い位置に置けば、それだけ落差が稼げます——放水面に近づけられるからです。
発電機は水に濡らせないので上に置く——水車が下、発電機が上という配置が自然になります。立軸なら、この上下配置がそのまま実現できるのです。
正誤判定の進め方
5つとも設備の説明——名前と中身が対応しているかを確かめます。
| 記述 | 内容 | 判定 |
| (1) | ガイドベーンで流量を調整 | 正しい |
| (2) | 高落差ほど比速度小・扁平なランナ | 正しい |
| ★(3) | ★ポンプ水車式の説明がタンデム式 | ★誤り |
| (4) | 突極形・回転界磁形・立軸 | 正しい |
| (5) | 調速機は回転速度、AVR は電圧 | 正しい |
(3)だけが3つの方式を並べて説明している——情報量が多い記述ほど、誤りを紛れ込ませやすいのです。
「別置式、タンデム式、ポンプ水車式がある」という前半は正しい——誤りは、その次にどれを説明しているかです。
回転界磁形とは
| 方式 | 回るもの | 使われ方 |
| ★回転界磁形 | ★磁石(界磁) | ★同期発電機の標準 |
| 回転電機子形 | コイル(電機子) | 小容量に限られる |
大電流が流れる電機子を止めておくほうが有利——スリップリングで大電流を取り出さずに済むからです。
界磁は直流で、電流も小さい——だから回転させてもスリップリングの負担が軽いことになります。これが回転界磁形が標準になった理由です。
揚水発電所の3方式をもう一度
混同しやすいので、機械の台数で整理しましょう。
| 方式 | 電気機械 | 水機械 | 軸 |
| ★別置式 | ★発電機と電動機の2台 | ★水車とポンプの2台 | ★別々 |
| ★タンデム式 | ★発電電動機の1台(共用) | ★水車とポンプの2台 | ★同一軸 |
| ★ポンプ水車式 | ★発電電動機の1台 | ★ポンプ水車の1台 | ★同一軸 |
台数が減るほど安くなり、性能の最適化は難しくなる——一貫した傾向です。
問題文(3)の「発電機と電動機を共用し」はタンデム式にも当てはまります——決め手は「水車とポンプをそれぞれ直結」の部分。ポンプ水車式なら水機械は1台ですから、「それぞれ」とは言えません。
方式名と台数の対応さえ覚えておけば、この種の入れ替えに気づけます。
別置式は、水車とポンプが別々の場所にあってもよい方式——それぞれに最適な高さへ据えられるのが利点です。
ポンプは水中に沈めないと吸い込めない——水車より低い位置に置きたいという事情があるのです。
ポンプ水車式では、その要求を1台で満たさなければなりません——だからかなり低い位置に据えられることになります。
まとめ
| (3)誤り | 水車+ポンプを同一軸に別々に直結=タンデム式 |
| 別置式 | 発電電動機・水車・ポンプが別軸 |
| ポンプ水車式 | 1台の可逆機(国内の大半) |
| (1)(2) | ガイドベーンで流量調整・高落差ほど比速度小(正) |
| (4)(5) | 突極形/立軸形・調速機とAVR(正)→(3) |
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